2019年05月30日10:00
浜岡原発永久停止裁判 第24回口頭弁論 概要≫
カテゴリー │口頭弁論
2018年9月28日(金)
●中電から準備書面(16)(17)が提出。陳述があった。
★準備書面(16)の概要についての説明。
原告の、配管の経年変化事例などにより、安全性が確保できないとする主張への反論。
中電は、設計段階、運転段階で対策を講じている。SCC,配管の減肉及び中性子照射脆化の各経年変化事象についても、設計や建設で必要な対策を講じ、運転段階でも対策を講じている。
<これに対し、原告らは、抽象的な危険性を指摘するにとどまるものであると反論している>
★準備書面(17)の概要についての説明。
原子力発電所のテロ対策は、事業者と国とが密接な連携を保ちつつ、各自の責務に基づき対策を講じるものである。原告らの主張は、中部電力が常に強化されている法令の規則に基づき、合理的なテロ対策を講じていることを理解せずになされたものであって、理由がない。
●原告から準備書面(26)が提出。陳述を行った。
★準備書面(26)の概要についての説明。
原発に関する裁判例を、「3.11の前」と「3.11後」の原発訴訟の判決を取り上げ、その判決の特徴点を説明している。「3.11後」の決定はこれまで20件あるが、このうち住民側の請求を認めたものは6件である。
大飯原発3・4号機運転差止判決(2014年5月21日)や、高浜原発3・4号機運転差止仮処分命令(2015年4月14日)、大津地裁高浜3・4号機運転差止仮処分決定(2016年3月9日)、伊方原発3号機の運転差し止め広島高裁決定(野々上友之裁判長、2017年12月13日)。などの紹介と
これらの決定や判決を覆した判決・決定の紹介。
●次回は、2019年2月4日(月)11:00~ 一号法廷。
●地域情報センターで報告集会
・ 阿部弁護士がこれまでの裁判例の特徴を改めて分かりやすく解説した。大飯原発3・4号機運転差止判決(2014年5月21日)では、差し止めの根拠となる人格権に言及し、我が国の法制下においてはこれを超える価値を他に見出すことはできないとした。この判決をひっくり返した高裁判決は「止めなければいけないと言いながら、それからあとは政策的な判断なので、裁判所の介入することではない」とおかしな判決をした。もう一つのおかしな決定が川内原発の差し止めを争った抗告審の福岡高裁宮崎支部の決定。この決定は、「火山ガイド」が不合理であり川内原発は立地不適であると認めている。認めていながら、「危険性(リスク)については無視し得るものとして容認するという社会通念の反映とみることができる。」として、差止めを退けた。
一方で、広島高裁が伊方原発を差止めした仮処分がある。原子力規制委員会が作成した「火山ガイド」に従って検討していくとやはり立地は不適であるとして、福岡高裁宮崎支部決定の「社会通念」を否定した。
次回はもっと本質的な議論をしたい。本質的な議論というのは、原発事故は一度でも事故を起こしてはいけないのだということ。原発は非常に危険なのだと、だから原発の平和利用はできないと、そういう書面を書こうと思っていると、弁護団の考えを示した。
※詳しくは、以下の「口頭弁論記録」を見てください。
●中電から準備書面(16)(17)が提出。陳述があった。
★準備書面(16)の概要についての説明。
原告の、配管の経年変化事例などにより、安全性が確保できないとする主張への反論。
中電は、設計段階、運転段階で対策を講じている。SCC,配管の減肉及び中性子照射脆化の各経年変化事象についても、設計や建設で必要な対策を講じ、運転段階でも対策を講じている。
<これに対し、原告らは、抽象的な危険性を指摘するにとどまるものであると反論している>
★準備書面(17)の概要についての説明。
原子力発電所のテロ対策は、事業者と国とが密接な連携を保ちつつ、各自の責務に基づき対策を講じるものである。原告らの主張は、中部電力が常に強化されている法令の規則に基づき、合理的なテロ対策を講じていることを理解せずになされたものであって、理由がない。
●原告から準備書面(26)が提出。陳述を行った。
★準備書面(26)の概要についての説明。
原発に関する裁判例を、「3.11の前」と「3.11後」の原発訴訟の判決を取り上げ、その判決の特徴点を説明している。「3.11後」の決定はこれまで20件あるが、このうち住民側の請求を認めたものは6件である。
大飯原発3・4号機運転差止判決(2014年5月21日)や、高浜原発3・4号機運転差止仮処分命令(2015年4月14日)、大津地裁高浜3・4号機運転差止仮処分決定(2016年3月9日)、伊方原発3号機の運転差し止め広島高裁決定(野々上友之裁判長、2017年12月13日)。などの紹介と
これらの決定や判決を覆した判決・決定の紹介。
●次回は、2019年2月4日(月)11:00~ 一号法廷。
●地域情報センターで報告集会
・ 阿部弁護士がこれまでの裁判例の特徴を改めて分かりやすく解説した。大飯原発3・4号機運転差止判決(2014年5月21日)では、差し止めの根拠となる人格権に言及し、我が国の法制下においてはこれを超える価値を他に見出すことはできないとした。この判決をひっくり返した高裁判決は「止めなければいけないと言いながら、それからあとは政策的な判断なので、裁判所の介入することではない」とおかしな判決をした。もう一つのおかしな決定が川内原発の差し止めを争った抗告審の福岡高裁宮崎支部の決定。この決定は、「火山ガイド」が不合理であり川内原発は立地不適であると認めている。認めていながら、「危険性(リスク)については無視し得るものとして容認するという社会通念の反映とみることができる。」として、差止めを退けた。
一方で、広島高裁が伊方原発を差止めした仮処分がある。原子力規制委員会が作成した「火山ガイド」に従って検討していくとやはり立地は不適であるとして、福岡高裁宮崎支部決定の「社会通念」を否定した。
次回はもっと本質的な議論をしたい。本質的な議論というのは、原発事故は一度でも事故を起こしてはいけないのだということ。原発は非常に危険なのだと、だから原発の平和利用はできないと、そういう書面を書こうと思っていると、弁護団の考えを示した。
※詳しくは、以下の「口頭弁論記録」を見てください。
浜岡原発永久停止裁判 第24回口頭弁論
2018年9月28日(金)
10:00 浜松市地域情報センターホールに原告や傍聴者が集まり始めた。
10:30 裁判所内の部屋で傍聴抽選の予定であったが、全員が傍聴できた。
10:58 裁判が開始。
裁判長は上田賀代、右陪審は荒井格、左陪審は安藤巨、
訴訟代理弁護団計22名の弁護団のうち、今日の参加者は記録できず。
被告側は国と中電。
11:00 裁判長;書面の確認。双方から説明がある。中電から準備書面(16)(17)が提出。その他の書証の確認。
11:01 被告中電・村上代理人:準備書面(16)の概要についての説明(被告の準備書面より抜粋)。
第一 本件原子力発電所の安全確保対策、第二 SCC、配管の減肉及び中性子照射脆化への対処 結語 という目次の構成
原告は、配管の経年変化事例などにより、安全性が確保できないかのように主張する。それへの反論をする。
中電は、設計段階で、深層防護の考えを取り入れた重層的な事故防止対策を講じている。
運転段階で、科学的かつ合理的な機器の維持管理の枠組みを構築し、この枠組みの中で体系立てて機器の維持管理を実施している。
中電は、SCC,配管の減肉及び中性子照射脆化の各経年変化事象について、これらの原因や特徴を踏まえ、機器の具体的な設計や建設に当たって必要な対策を講じ、運転段階で、点検・検査を実施し、各経年変化事象の発生又は進展傾向を把握・管理し、これらから得られた知見に基づき、さらなる対策を講じている。
これに対し、原告らは、SCC,配管の減肉、中性子照射脆化の各経年変化事象を挙げるにすぎず、これらの経年変化事象が具体的にいかなる機器に対して、どのような影響を与え、それにより本件原子力発電所がどのような機序により事故に至るというのか何ら明らかにしておらず、あくまで抽象的な危険性を指摘するにとどまるものである。
従って、原告らの主張は失当である。
被告中電・代理人:準備書面(17)の概要についての説明(被告の準備書面より抜粋)。
1.原子力発電所におけるテロ対策に係る事業者と国の責務及び対策
2.原告らの主張に対する反論. という目次の構成
原子力発電所における安全対策は、第一次的には発電用原子炉設置者である事業者の責務であるが、テロリズム等は犯罪行為であり、犯罪行為の予防、鎮圧は警察や海上保安庁等の治安当局の責務である。このため、原子力発電所のテロ対策は、事業者と国とが密接な連携を保ちつつ、各自の責務に基づき対策を講じるものである。
原告らは、人の不法な侵入等を防止するための対策や、原子力発電所の職員の加担のリスク、取水塔や外部電源等の破壊などを取り上げ、対処できないとし、被告中電が各規則を遵守してテロ対策を講じても、その対策は合理性を欠くものとなるかのように主張する。
原告らの主張は、中部電力が常に強化されている法令の規則に基づき、合理的なテロ対策を講じていることを理解せずになされたものであって、理由がない。
11:05 裁判長;原告から準備書面(26)が提出。その他の書証の確認。準備書面(26)の説明を。
原告・阿部代理人:準備書面(26)の概要についての説明。原発に関する裁判例を簡単に述べたもの。
3.11の前には、伊方原発最高裁判決があり、立証責任等について述べられている。伊方最高裁判決は行政事件であり、すでに終わった時点での判決であった。これを民事訴訟に応用したのが女川原発についての仙台地裁判決とされる。この仙台地裁判決は、原子炉の安全性については、被告の側において、まず、その安全性に欠ける点のないことについて立証する必要があり、被告がその立証を尽くさない場合には、本件原発に安全性が欠ける点があることが事実上推定され、被告において、必要とされる立証を尽くした場合には、安全性に欠ける点があることについての事実上の推定は破れ、原告らにおいて、安全性に欠ける点があることについて更なる立証を行わなければならないとした。こういう「二段階構成」になっている。
3.11後、2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震が発生し、それに引き続き福島第一原発事故が発生した。史上最悪の原子力災害と言われるチェルノブイリ原発事故に匹敵する事故が日本で起こった。偶然に偶然が重なって首都滅亡という事態は避けられたが、多くの人が故郷を追われて避難を余儀なくされた。避難中に亡くなった人も数知れない。放射能に汚染された土地は莫大な費用をかけて除染作業が行われているが、未だに帰還できない地域が広がっている。
このような事故を二度と起こしてはならないというのが、国民の誰もが思う事である。そうであれば、福島第一原発のような事故を二度と起こさないために裁判所として何をすべきか、何ができるのか、真剣に向き合わなければならない状況が発生したのである。
3.11後の原発訴訟の判決、決定はこれまで20件あるが、このうち住民側の請求を認めたものは6件である。
一番最初に出たのが、大飯原発3・4号機運転差止判決(2014年5月21日)。この判決は、差し止めの根拠となる人格権について、人格権は憲法上の権利であり、また人の生命を基礎とするものであるがゆえに,我が国の法制下においてはこれを超える価値を他に見出すことはできない。
原発の安全性について述べて、原子力発電所に求められるべき安全性,信頼性は極めて高度なものでなければならず,万一の場合にも放射性物質の危険から国民を守るべく万全の措置がとられなければならないとしている。
その一方、原子力発電所の稼動は法的には電気を生み出すための一手段たる経済活動の自由に属するものであって,憲法上は人格権の中核部分よりも劣位に置かれるべきものであることを明確に述べている。
何を立証するかについては、原子力発電技術の危険性の本質及びそのもたらす被害の大きさは,福島原発事故を通じて十分に明らかになったといえる。本件訴訟においては,本件原発において,かような事態を招く具体的危険性が万が一でもあるのかが判断の対象とされるべきであり,福島原発事故の後において,この判断を避けることは裁判所に課された最も重要な責務を放棄するに等しいものと考えられる。
立証責任については、具体的危険性があることの立証責任は原告らが負うのであって,この点では人格権に基づく差止訴訟一般と基本的な違いはなく,具体的危険でありさえすれば万が一の危険性の立証で足りるところに通常の差止訴訟との違いがある、としている。
このような判断は地震動についても表れていて、基準地震動の信頼性について、被告は700ガルを超える地震が到来することはまず考えられないと主張する。しかし,この理論上の数値計算の正当性,正確性について論じるより,現に,全国で20箇所にも満たない原発のうち4つの原発に5回にわたり想定した地震動を超える地震が平成17年以後10年足らずの間に到来しているという事実を重視すべきは当然であるとして、基準地震動に立ち入ってはいない。
高浜原発3・4号機運転差止仮処分命令(2015年4月14日)、福井地裁の同じ裁判長で、内容は、大飯3・4号機についての前記福井地裁判決と基本的には同じであるが、規制委員会の新規制基準への適合性判断が終了していたため、新規制基準について合理性はないと明確に判断をしている。
そうすると、新規制基準に求められる合理性とは、原発の設備が基準に適合すれば深刻な災害を引き起こすおそれが万が一にもないといえるような厳格な内容を備えていることであると解すべきことになる。しかるに新規制基準は緩やかにすぎ、これに適合しても本件原発の安全性は確保されていないとしている。
次に、福井地裁による仮処分取消し決定がある。
上記(2)の決定に対する関西電力からの異議申立に対して福井地裁(林潤裁判長)は、2015年12月24日、仮処分決定を取り消した。裁判所は、安全性に関する原子力規制委員会の判断に不合理な点があるか否かという観点から審理・判断するのが相当であるとして、大飯原発の判決の主張とは異なる判断をしている。
「ここでいう安全性とは、当該原子炉施設の有する危険性が社会通念上無視しうる程度にまで管理されていることをいうと解すべきである。」とした。
しかし、何をもって社会通念上無視しうる程度なのかについて具体的な説明はなく、その内容は不明である。この決定では、安全性を切り下げるための枕詞として使用されている。
2018年7月4日名古屋高等裁判所金沢支部は、大飯原発3・4号機の運転差し止めを命じた前記福井地裁判決を取り消した。
この判決は、日本の原子力法制を紹介し、「このような法制度を前提とする限り、人格権に基づく原子力発電所の運転差止めの当否を考えるに当たっても、原子力発電所の運転に伴う本質的・内在的な危険があるからといって、それ自体で人格権を侵害するということはできない。」と述べる。
判決は「もっとも、この点は、法制度ないし政策の選択の問題であり、福島原発事故の深刻な被害の現状に照らし、ひとたび重大な原発事故が起きれば、大量の放射性物質が放出されるなどして、周辺住民等に広範かつ深刻な被害が生じるおそれがあり、しかも、被害が起きれば長期にわたって継続・拡大し、その回復がきわめて困難であることなどを考慮して、我が国のとるべき道として原子力発電そのものを廃止・禁止することは大いに可能であろう。しかし、その当否をめぐる判断は、もはや司法の役割を超えるものであり、国民世論として幅広く議論され、それを背景とした立法府や行政府による政治的な判断に委ねられるべき事柄である。」
しかし、住民らは、裁判所に原発を廃止するかどうかという政策的な判断を求めたのではなく、地震等によって原子炉が損傷し放射線被害を与える危険があるから人格権に基づいて運転を停止してくれという法的な判断を求めたのであるから議論のすり替えというほかない。すり替えて司法判断を回避しようとしたものである。
判決は「以上によれば、原子力発電所の運転差止めの当否、すなわち原子力発電所における具体的危険性の有無を判断するに当たっては、原子力発電所の設備が、想定される自然災害等の事象に耐えられるだけの十分な機能を有し、かつ、重大な事故の発生を防ぐために必要な措置が講じられているか否か、言い換えれば、上記のとおり、原子力発電の内在する危険性に対して適切な対処がなされ、その危険性が社会通念上無視しうる程度にまで管理・統制がされているか否かを検討すべきである。」ここでも「社会通念上無視しうる程度」という言葉が持ち出される。具体的な判断方法については、「規制委員会によって審査基準に適合しているとの判断がなされた場合は、当該審査に用いられた具体的審査基準について現在の科学技術の水準に照らし不合理な点があるか、あるいは当該原子力発電所が具体的審査基準に適合するとした原子力規制委員会の判断に見過ごしがたい過誤、欠落があるなど不合理な点があると認められるのでない限り、当該原子力発電所が有する危険性は社会通念上無視しうる程度にまで管理され、放射性物質の異常な放出を招くなどして周辺住民等の人格権を侵害する具体的危険性はないものと評価することができる。」とした。
何のことはない、原子力規制委員会が新規制基準に適合すると判断すれば原則として「社会通念上無視しうる程度まで」危険性が管理されているという話である。つまり判決の言う「社会通念」とは原子力規制委員会の判断と同義ということである。
判決は「本件ストレステストにおいてクリフエッジとされた基準地震動Ss(当時の最大加速度700ガル)の1.5倍を超える地震動は将来的に来ないとの確実な想定は本来的に不可能であることも、原判決の指摘するとおりである。」
クリフエッジを超える地震が来ないと言えないのであれば、それは原子炉や格納容器が損傷しメルトダウンが発生し福島第一原発のような事故が起きる可能性があるということを意味するから、少なくとも大飯原発3・4号機の運転は直ちに差し止めなければならない。しかるに判決はそれを全ての原発の問題にすり替えて、原発の建設や運転を否定したり禁止したりするのは政策的な選択の問題だとして、司法判断から逃げたのである。
この控訴審判決に対しては、一審の福井地裁の裁判長であった樋口英明元裁判官が次のように批判している(岩波書店「世界」10月号「原発訴訟と裁判官の責任」)。
「今回の控訴審判決の内容をみると、新規制基準に従っているから心配ないというもので、全く中身がなく、不安は募るばかりである。また、伊方方式を用いる場合に留意しなければならないことについて全く注意を払っておらず、3・11前の伊方方式から少しも前に進んでいないどころか後退したのではないかとさえ思える。科学、合理性、社会通念などの言葉がその意味を分析することなく多用されていることも他の住民側敗訴の決定と共通しているが、特異なところを二点あげることができる。
第一に、原発の内在的危険を問題とするのは政策論、立法論ということが冒頭に書いてあり、これは他の決定には見られないところである。原告らは『大飯原発に内在的危険があるから止めてください』と言っているのではなく、『今の地震対策では不十分で、地震によって原発の内在的危険が現実化するおそれがあるから止めてください』と主張している。原告らは、健全な疑問を提示して、まさに、司法の本来の役割を果たすことを裁判所に求めている。一方、判決文には原告らが立法論、政策論を述べているという部分がある。解釈論と立法論を混同したもので、金沢支部特有の見解であるが、もし仮に、原告らに対し極端な意見を述べる人たちだというレッテルを貼る意図があるならば許し難いことだと思う。
第二に、『・・・・クリフエッジを超える地震動は将来来ないとの確実な想定は本来的に不可能である』としている点が特徴的である。クリフエッジとは崖っぷちという意味で、要するに、電力会社も手の打ちようがなくメルトダウンが避けがたいほどの地震が来るかもしれないと言っていることになる。
もし、クリフエッジを超える地震が来て過酷事故を起こした場合、金沢支部以外の裁判官は、電力会社と規制委員会に騙されましたと弁解するだろう。金沢支部の裁判官にはどういう弁解の余地があるのだろうか。こんなに自分を追い詰めてまで、いったい彼らは何を守りたかったのか、不可思議である。」
大津地裁高浜3・4号機運転差止仮処分決定(2016年3月9日)で、山本善彦裁判長は、高浜原発3・4号機について運転差し止めを命ずる仮処分決定を出した。これにより運転中だった高浜原発は運転を停止した。
この大津地裁決定を取り消した大阪高裁決定(2017年3月28日)についての批判は書面で触れている。
火山と原発立地に関する川内原発をめぐる訴訟
福岡高裁宮崎支部2016年4月6日決定が特徴的である。この決定は、原子力規制委員会の定めた「火山ガイド」は不合理であり川内原発は立地不適であると認めながら、「社会通念」によると許容されているとして原発の運転差止めは認めなかった点で特異であり、原発再稼働のために「社会通念」という錦の御旗を立てた点で罪深い決定といえる。
伊方原発についての広島高裁決定(野々上友之裁判長、2017年12月13日)は広島地裁決定を取り消し、伊方原発3号機の運転差し止めを命じた。
11:21 裁判長;工事の状況について説明を。
被告・中電;安全性向上対策工事、4号機、前回4月以降、原子炉建屋の空調関係等、燃料プールの監視カメラの設置等。県と市の点検を受けて、その結果はHPで公表している。3号機、5号機については、追加工事はなし。
原子力規制委員会の適合審査について。地震、津波について合計4回の審査が行われた。いずれの分野もコメントが出され、引き続き審査が行われている。
11:24 裁判長;今後について。
原告;引き続き、原発の危険性について主張を出したい。
被告;引き続き主張したい。
裁判長;それぞれ、一週間前までに準備してほしい。
次回は、2019年2月4日(月)11:00~ 一号法廷で。 11:25終了
11:35 地域情報センターで報告集会
司会・高柳;司会の高柳です。最初に口頭弁論について、阿部弁護士からお願いします。参加者から質問があれば、また裁判について質問があればその後お願いします。
阿部弁護士;中部電力から出された準備書面は、配管の中性子照射脆化についての原告が指摘したことに対する反論です。原告指摘に対して今ごろになって反論してきた。もう一つの準備書面は、テロ対策をやっているかという指摘に対する反論。細かいことは読んでいない。
私の方からの準備書面は、裁判例を取り上げた。時間がないのでとても全部を紹介できないので途中ではしょってしまった。証拠で出した中に、雑誌「世界」の10月号に、福井地裁の判決を書いた樋口英明さんが「原発訴訟と裁判官の責任」という論文を書いている。樋口さんは退官され、弁護士はやっていないが、自分の書いた判決が今年の7月に高裁でひっくり返された。それに対する批判をこめて書いている。裁判官が、まだ比較的新しい自分の書いた判決について、コメントしたり書いたりすることは非常に珍しいことだ。それだけ腹に据えかねたということだと思う。
さっき法廷で言ったが、もう一度言うと、樋口判決を取り消した名古屋高裁金沢支部の判決というのは、問題があって、樋口さんが言いたいのは、一つは、原発のメルトダウンを引き起こすような地震動が大飯原発を襲う可能性があると。だから、原発稼働を差し止めなさいと言ったのが樋口判決であった。そこのところを高裁判決も認めている。地震が来ることを否定できない。そこは認めると。認めていながら原発は動かしてもいいという最終的判断をしている。どうしてそういう判断になるかというと、そこのところを読んでみると、「メルトダウンを引き起こすような強い地震動がくる可能性はないではないと。そうであってみれば、世界有数の地震国である我が国において、地震の発生や規模について正確な科学的予測を立てる事が不可能であることなどを理由として、一審原告らの主張するように過去最大又は既往最大の考え方に基づいて基準地震動を策定したり、更に進んで原子力発電所の建設又は運転そのものを否定したり禁止したりすることは、政策的な選択として十分にとりうるところであろう。
しかし、前記のとおり、現在の我が国の法制度は、原子力の平和利用としての原子力の発電を行うことを認めているのであって、司法判断として人格権侵害との関係を考えるに当たっては、最新の科学的・専門的技術的知見に照らし、原子力発電に内在する危険に適切に対処すべく管理・統制がされているか否かが問題とされるべきであることからすると、原子力発電所に来襲する可能性のある地震動に関しても、最新の科学的・専門技術的知見に照らし、その想定が合理的な内容となっているか否かが問われるべきである。」
止めなければいけないと言いながら、それからあとは政策的な判断なので、裁判所の介入することではないと。樋口判決をひっくり返した高裁判決の非常におかしなところだ。
それから、もう一つ、おかしな決定があって、それが川内原発の差し止めを争った一審の鹿児島地裁は却下であったが、その後、抗告審の福岡高裁宮崎支部の決定が、これがまた奇妙な決定で、この決定は、原子力規制委員会の定めた「火山ガイド」が不合理であり川内原発は立地不適であると認めている。認めていながら、「社会通念によって、その影響が著しく重大かつ深刻なものではあるが極めて低頻度で少なくとも歴史時代において経験したことがないような規模及び態様の自然災害の危険性(リスク)については、その発生の可能性が相応の根拠をもって示されない限り、建築規制をはじめとして安全性確保の上で考慮されていないのが実情であり、このことは、この種の危険性(リスク)については無視し得るものとして容認するという社会通念の反映とみることができる。」と。
火山の爆発で火砕流とかが原発を襲うという事態は容認しているが経験したことがないので、日本の法制をみると、そういうものに備えなさいという法規制はなされていない。頻度の低い大規模な自然災害については無視してもいいという社会的通念があったという。そうであるなら原発も一緒だと。
一般の建築と原発を一緒に並べて、普通の建物は一万年に一回の巨大噴火に備えていないから、そういうのは無視しなさいと。それが社会通念だと。そういう社会通念があるから原発も一緒でしょうというのが福岡高裁宮崎支部の決定だ。だから無視していいのだと。
福井地裁の判決をひっくり返した名古屋高裁金沢支部の判決にしても、クリフエッジを超える地震動が来る可能性は否定できないと言っていながら、結局、「社会通念」によって、原発の廃止までは求めるところまではいかないと。それは政策的な問題だからいいのだと。
火山のことが争われた福岡高裁宮崎支部の決定も、原子力規制委員会の定めた「火山ガイド」が信用できないけれども、一万年に一回の巨大噴火については備えなくてもいいという社会的通念があるとして、これも原発を動かしていいという。確かに一万年に一回の巨大噴火についてはいいのかということですが、活断層のところの議論を思い出してもらいたい。活断層は12~3万年以降に活動したことがあるかないかで判断しているが、活断層については12~3万年前以降の活動を問題にしていながら、1万年前の火山の巨大噴火について、活断層については12~3万年前までの議論をしていながら、火山については一万年に一回のことは無視していいのだと、それはおかしい。一万年に一回であれば、活断層でもそういう議論をすればいいのに、活断層では10万年に一回の議論をしながら、火山では一万年に一回でもいいのだと、それは矛盾している。
広島高裁が伊方原発を差止めした仮処分がある。広島地裁決定を取り消したが、原子力規制委員会が作成した「火山ガイド」は、「原子力規制委員会が高度な最新の科学的、技術的知見に基づく総合的判断に基づいて策定したものであるから、それは有効だと」言っている。火山ガイドに従って検討していくとやはり立地は不適であると。福岡高裁宮崎支部決定の「社会通念」を否定した。
普通に合理的に考えていけば原発は止めなければいけないのだと認めながら、それでも再稼働だと、何かわけの分からない議論を持ち出してひっくりかえすという考え方がある。それはやはり裁判所がそういう流れに乗っていくと、非常に危険なことになることを危惧している。そういうことで裁判例を拾ってみた。
次回はもっと本質的な議論をしたい。本質的な議論というのは、どこの裁判例でも、原発の絶対的安全性というのは要求することはできないと。だから相対的安全性でいいと。「絶対的安全性」というのは、原発はひとたび事故が起きれば今のような事態になることは充分可能性があるので、事故は起こってはいけないのだと、「絶対的安全性」でないといけないという議論だ。科学技術というのは、失敗を繰り返しながらそれに学んで安全なものになっていくものだが、原発の場合、同じことが起こっていいのですか、福島の場合もまずいことになった、安全対策を立てたのでこれでやりましょうと。また事故が起こった時にここはまずかったからこうしましょうと、こんなことばかりやっていては国が滅んでしまう。だから、原発事故は一度でも事故を起こしてはいけないのだと。皆さんはそういう考え方だと思う。だけど日本は原子力に関する法律がいっぱいあって、原子力発電は平和利用ならやってもいいことになっている。やってもいいからには多少の危険性があってもいいと法律が認めているのではないかと。いろんな裁判例で言っている。だからどの程度の危険性だったら許されるのかといって、一万年に一回、10万年に一回という議論をやっている。だけど、そもそも原発事故は危ないから絶対的に安全でなくてはならないと、そういうと、今度は原子力を認めている法律はそもそも憲法違反だと言わないといけなくなる。だからそういう法律的議論を次回は主張していきたい。そのことは、3・11以後の原発裁判が始まって以降、弁護団の中でさんざん議論されてきたことだが、最近の裁判例では、相対的安全でいい、多少の危険は法律自体が認めているのだと。どこまで危険なら許されるのか。社会的通念でこのくらいならいいよ、1万年に1回の程度であれば許されるのだという流れになりつつあるので、やはり元に戻って、原発は非常に危険なのだと、だから原発の平和利用はできないと、そういう書面を書こうと思っている。
11:54 司会;ありがとうございました。今の説明は、今日配布の準備書面で強調点もアンダーラインがあり、分かりやすくなっているのでお読みください。何か質問があれば。
野澤(磐田)さん;被告・中電は、経年変化で劣化していることへの対応、またテロ対策などについて反論したが、それについてはどうするのか、そういうやり取りはないのか。
阿部弁護士;本当は、法廷の場で被告中電側が反論すると、それに対してすぐに反論してやりとりすると面白いのだが、すぐできる内容ではない。被告中電の書面はたくさんある。細かくは立ち入れない。被告は書面でやっと反論してきている。これから書面での反論となる。裁判が進んでいくと、法廷でプレゼンをして、どのテーマで一時間くらいとかするが、いまの浜松ではそこまではない。仮処分でなく本裁判なので、法廷で時間を取ったプレゼンはこれからあるかもしれないが、いますぐにはない。浜松の裁判の進行の仕方は、原子力規制委員会で3,4号機の適合審査を終わって、耐震補強工事の終了段階で、どこに危険性があるのか、議論しようとしている。だから裁判長は毎回、工事の進捗具合と規制委員会の審査の報告をさせている。
全国の多くの裁判所のやり方だが、民事の場合も、規制委員会の判断を踏まえて、その判断に不合理がないかどうかを判断しようとしている。規制委員会の判断を待って、そこでの議論を踏まえて、その上で裁判所が判断しようとしている。そのやり方の危険なところは、規制委員会の議論は専門的・技術的判断になるので、その判断が適合だと出てしまうと、それで合理性もよしとなってしまう。裁判所の方はそれが楽だ。中身に踏み込まなくていいし、規制委員会の方がよほど詳しい。仮処分で勝った裁判では、規制委員会の判断の前に、裁判所の判断を出している。
いまの裁判官は、規制委員会の判断をみて判断しようとしている。
大橋弁護士;それに関して、重要な決定をした。皆さんには伝わっているとは思いますが、弁護団は、ゆっくりやろうという方針を決めた。いまの情勢は、裁判所は3・11当時反省をしていたが、今はそうなっていない。逆転現象が起きている。樋口、山本判決は異端だと。
法廷はこれまで通りの進め方をする。裁判はじっくりやっていく。裁判所は規制委員会に任せておけばいいのではという、思考停止状態。原告の運動や新たな政権で、状況は変わってくるかもしれないが、高裁の裁判も審議ストップ。本庁は粛々と進んでいる。それを優先させる。これを見て、浜松は後追いする。若手弁護士を入れて、地震・津波の学習も重ねて、学者の方々にも証人尋問にも協力してもらう。裁判費用も集めて、いまのやり方を外に伝えていく学習会も行うことが大事だ。敗北感を感じることはない。原発の平和利用はあり得ない。それは分かってきた。原発は危険。これでいきたい。みなさんもがんばってほしい。よろしくお願いします。
12:07 司会;原告団の活動は、各地域で考えていければと思う。林先生。
林 弘文さん;今日はありがとうございました。一つ質問。阿部先生には10分の時間でしたが、被告は5分でしたが、被告は5分でいいと主張したのか。(そうだ。)5分で説明できるのかと思った。阿部先生のは、ある程度準備書面を読んでいたのでたどれたのですが、被告は不真面目ではないかと。5分は被告の主張だったのですね。
次の時には追加の書面を出してほしいと言われたので考えたことを。第一は、北海道で9/6に地震が起こる。全道で停電になる。いままで経験したことがないことが起こった。この地震は震度7というので、東日本の大震災や熊本の震度と同じ。予想しなかったことが起こった。直径10kmに渡って、3800か所の山崩れが起こっていると。これも前代未聞のこと。貴重な経験を得た。観測値では、1505ガルとか、1795ガルとか、大きな値。さらに電源が集中していて、バランスを崩して全電源停止。ブラックアウトした。
もう一つは、今年の「科学」の8月号に、東電の幹部3人に対する刑事訴訟の経過が出ている。部下が津波対策をしなさいとしきりに言っているのに、幹部はそれを無視した。しかも東電だけはそういう余裕はない、他の電力会社には津波対策をしっかりやりなさいと依怙贔屓をしている。
伊方裁判では、仮処分の取り消しをした。いろんなことが起こっている。
林 克さん;直接には裁判とは関わりがないけど、運動のことで少し話したい。ひまわり集会を今年も11/18に行う。昨年22万人の署名を提出して、県知事が4年間は再稼働しないということを勝ち取った。その後がどうなるかが争点。いま、全国で注目を集めているのが、東海第2原発の周辺自治体の安全協定です。事前了解が一つでもできなければ、再稼働しない。これは地元の同意とは少し違うようですが、掛川市長がどういうことか勉強会をしようと呼びかけをしている。私は自治労連の原発対策のチームに入っていて、6月の終わりに、地元自治体のヒヤリングをした。小さい自治体が了解したというのはどういうことで判断するか、自分たちには専門的知識がない、何で評価するかというと、住民が安全に逃げられるかどうかで評価したいと言っていた。今の避難計画では逃げられないということで判断せざるを得ないと。皆さんが言われていたことは、この安全協定ができたのは、元東海村村長の村上さんが呼びかけてくれたからだと。人格者として地元では尊敬されている。話が長くなったが、今度のひまわり集会のメイン企画は、前東海村村長の村上達也さんをよんで、また彼を首長会議に誘った元湖西市長の三上さんもペアで呼んで、次の再稼働の地元の同意をさせない契機の集会にしたい。
もう一つ宣伝を。京都の自治体問題研究所から「原発事故~新規制基準と住民避難を考える」の本を出した。静岡県の原発安全対策課のヒヤリングをして、IAEAの深層防護のところから筆を起こして、今の日本の避難計画を批判的に取り扱った内容で、私も第8章で、浜岡をめぐる再稼働の状況を書いている。1200円。
12:18 司会;ありがとうございました。御前崎市で講演会があるということで、さきほどチラシを配布しましたが、その説明を。
杉山さん;原告団の杉山です。チラシを見てください。南相馬の桜井前市長を呼んでの10/28の企画。マスコミに報道されないこと、体験されたことも話をされる。
司会;関心がある方は足を運んでください。他には。
酒井さん;ひまわり集会で弁護士からいまの裁判の現状とこれからのとりくみについて話してほしい。
大橋弁護士;10/6の弁護団会議で検討します。
鹿野さん;法廷に入廷する時、原告の有無を確認するのは、なぜか。
平野弁護士;原告の出席者名簿を提出しているが、それと並行して確認する必要から行っている。
司会;傍聴のために並んでいる人に対しても原告かどうかを聞くことを聞いているのでは?
平野弁護士;裁判所の職員の入れ替わりもあって、多少の対応の違いが出ているかもしれない。原告は30名の傍聴券。一般で入る原告もある。
鹿野さん;裁判長の声が小さいことを前に言ったら、今日はマイクを使って多少配慮していた。やはり言わなければダメだ。ただ、裁判官と代理人の間で裁判はやっているわけではないので、代理人もマイクなども使ってもっと改善してほしい。
大橋弁護士;言うことを聞いてくれると思う。
司会;他には。
林弘文さん;自治体問題研究所の本の中の裁判例。ぜひ読んでほしい。
「原発はどのようにして崩れるか」今年発行されたもの。分かりやすく説明している、
ICRPの勧告111.ネットでダウンロードできる。3・11の直前に書かれたもの。世界の特筆される事故について記述。
ICRPの勧告109.ネットでダウンロードできない。買うしかない。汚染されたらどうなるかが書いてある。4000円する。
司会;他には。12月に自由法曹団の学習会があるので、その案内を。
平野弁護士;今日の配布物の中に案内がしてあります。12/21に「原発差止め訴訟の現状と今後の課題」の案内。自由法曹団静岡県支部が年4回の学習会を開いていて、今回は浜松で開催。原告をはじめ、広くご参加を。
司会;これで終わりにします。ご苦労様でした。 。
次回は、2月4日(月)11:00~。
12:30 終了
(文責;長坂)
2018年9月28日(金)
10:00 浜松市地域情報センターホールに原告や傍聴者が集まり始めた。
10:30 裁判所内の部屋で傍聴抽選の予定であったが、全員が傍聴できた。
10:58 裁判が開始。
裁判長は上田賀代、右陪審は荒井格、左陪審は安藤巨、
訴訟代理弁護団計22名の弁護団のうち、今日の参加者は記録できず。
被告側は国と中電。
11:00 裁判長;書面の確認。双方から説明がある。中電から準備書面(16)(17)が提出。その他の書証の確認。
11:01 被告中電・村上代理人:準備書面(16)の概要についての説明(被告の準備書面より抜粋)。
第一 本件原子力発電所の安全確保対策、第二 SCC、配管の減肉及び中性子照射脆化への対処 結語 という目次の構成
原告は、配管の経年変化事例などにより、安全性が確保できないかのように主張する。それへの反論をする。
中電は、設計段階で、深層防護の考えを取り入れた重層的な事故防止対策を講じている。
運転段階で、科学的かつ合理的な機器の維持管理の枠組みを構築し、この枠組みの中で体系立てて機器の維持管理を実施している。
中電は、SCC,配管の減肉及び中性子照射脆化の各経年変化事象について、これらの原因や特徴を踏まえ、機器の具体的な設計や建設に当たって必要な対策を講じ、運転段階で、点検・検査を実施し、各経年変化事象の発生又は進展傾向を把握・管理し、これらから得られた知見に基づき、さらなる対策を講じている。
これに対し、原告らは、SCC,配管の減肉、中性子照射脆化の各経年変化事象を挙げるにすぎず、これらの経年変化事象が具体的にいかなる機器に対して、どのような影響を与え、それにより本件原子力発電所がどのような機序により事故に至るというのか何ら明らかにしておらず、あくまで抽象的な危険性を指摘するにとどまるものである。
従って、原告らの主張は失当である。
被告中電・代理人:準備書面(17)の概要についての説明(被告の準備書面より抜粋)。
1.原子力発電所におけるテロ対策に係る事業者と国の責務及び対策
2.原告らの主張に対する反論. という目次の構成
原子力発電所における安全対策は、第一次的には発電用原子炉設置者である事業者の責務であるが、テロリズム等は犯罪行為であり、犯罪行為の予防、鎮圧は警察や海上保安庁等の治安当局の責務である。このため、原子力発電所のテロ対策は、事業者と国とが密接な連携を保ちつつ、各自の責務に基づき対策を講じるものである。
原告らは、人の不法な侵入等を防止するための対策や、原子力発電所の職員の加担のリスク、取水塔や外部電源等の破壊などを取り上げ、対処できないとし、被告中電が各規則を遵守してテロ対策を講じても、その対策は合理性を欠くものとなるかのように主張する。
原告らの主張は、中部電力が常に強化されている法令の規則に基づき、合理的なテロ対策を講じていることを理解せずになされたものであって、理由がない。
11:05 裁判長;原告から準備書面(26)が提出。その他の書証の確認。準備書面(26)の説明を。
原告・阿部代理人:準備書面(26)の概要についての説明。原発に関する裁判例を簡単に述べたもの。
3.11の前には、伊方原発最高裁判決があり、立証責任等について述べられている。伊方最高裁判決は行政事件であり、すでに終わった時点での判決であった。これを民事訴訟に応用したのが女川原発についての仙台地裁判決とされる。この仙台地裁判決は、原子炉の安全性については、被告の側において、まず、その安全性に欠ける点のないことについて立証する必要があり、被告がその立証を尽くさない場合には、本件原発に安全性が欠ける点があることが事実上推定され、被告において、必要とされる立証を尽くした場合には、安全性に欠ける点があることについての事実上の推定は破れ、原告らにおいて、安全性に欠ける点があることについて更なる立証を行わなければならないとした。こういう「二段階構成」になっている。
3.11後、2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震が発生し、それに引き続き福島第一原発事故が発生した。史上最悪の原子力災害と言われるチェルノブイリ原発事故に匹敵する事故が日本で起こった。偶然に偶然が重なって首都滅亡という事態は避けられたが、多くの人が故郷を追われて避難を余儀なくされた。避難中に亡くなった人も数知れない。放射能に汚染された土地は莫大な費用をかけて除染作業が行われているが、未だに帰還できない地域が広がっている。
このような事故を二度と起こしてはならないというのが、国民の誰もが思う事である。そうであれば、福島第一原発のような事故を二度と起こさないために裁判所として何をすべきか、何ができるのか、真剣に向き合わなければならない状況が発生したのである。
3.11後の原発訴訟の判決、決定はこれまで20件あるが、このうち住民側の請求を認めたものは6件である。
一番最初に出たのが、大飯原発3・4号機運転差止判決(2014年5月21日)。この判決は、差し止めの根拠となる人格権について、人格権は憲法上の権利であり、また人の生命を基礎とするものであるがゆえに,我が国の法制下においてはこれを超える価値を他に見出すことはできない。
原発の安全性について述べて、原子力発電所に求められるべき安全性,信頼性は極めて高度なものでなければならず,万一の場合にも放射性物質の危険から国民を守るべく万全の措置がとられなければならないとしている。
その一方、原子力発電所の稼動は法的には電気を生み出すための一手段たる経済活動の自由に属するものであって,憲法上は人格権の中核部分よりも劣位に置かれるべきものであることを明確に述べている。
何を立証するかについては、原子力発電技術の危険性の本質及びそのもたらす被害の大きさは,福島原発事故を通じて十分に明らかになったといえる。本件訴訟においては,本件原発において,かような事態を招く具体的危険性が万が一でもあるのかが判断の対象とされるべきであり,福島原発事故の後において,この判断を避けることは裁判所に課された最も重要な責務を放棄するに等しいものと考えられる。
立証責任については、具体的危険性があることの立証責任は原告らが負うのであって,この点では人格権に基づく差止訴訟一般と基本的な違いはなく,具体的危険でありさえすれば万が一の危険性の立証で足りるところに通常の差止訴訟との違いがある、としている。
このような判断は地震動についても表れていて、基準地震動の信頼性について、被告は700ガルを超える地震が到来することはまず考えられないと主張する。しかし,この理論上の数値計算の正当性,正確性について論じるより,現に,全国で20箇所にも満たない原発のうち4つの原発に5回にわたり想定した地震動を超える地震が平成17年以後10年足らずの間に到来しているという事実を重視すべきは当然であるとして、基準地震動に立ち入ってはいない。
高浜原発3・4号機運転差止仮処分命令(2015年4月14日)、福井地裁の同じ裁判長で、内容は、大飯3・4号機についての前記福井地裁判決と基本的には同じであるが、規制委員会の新規制基準への適合性判断が終了していたため、新規制基準について合理性はないと明確に判断をしている。
そうすると、新規制基準に求められる合理性とは、原発の設備が基準に適合すれば深刻な災害を引き起こすおそれが万が一にもないといえるような厳格な内容を備えていることであると解すべきことになる。しかるに新規制基準は緩やかにすぎ、これに適合しても本件原発の安全性は確保されていないとしている。
次に、福井地裁による仮処分取消し決定がある。
上記(2)の決定に対する関西電力からの異議申立に対して福井地裁(林潤裁判長)は、2015年12月24日、仮処分決定を取り消した。裁判所は、安全性に関する原子力規制委員会の判断に不合理な点があるか否かという観点から審理・判断するのが相当であるとして、大飯原発の判決の主張とは異なる判断をしている。
「ここでいう安全性とは、当該原子炉施設の有する危険性が社会通念上無視しうる程度にまで管理されていることをいうと解すべきである。」とした。
しかし、何をもって社会通念上無視しうる程度なのかについて具体的な説明はなく、その内容は不明である。この決定では、安全性を切り下げるための枕詞として使用されている。
2018年7月4日名古屋高等裁判所金沢支部は、大飯原発3・4号機の運転差し止めを命じた前記福井地裁判決を取り消した。
この判決は、日本の原子力法制を紹介し、「このような法制度を前提とする限り、人格権に基づく原子力発電所の運転差止めの当否を考えるに当たっても、原子力発電所の運転に伴う本質的・内在的な危険があるからといって、それ自体で人格権を侵害するということはできない。」と述べる。
判決は「もっとも、この点は、法制度ないし政策の選択の問題であり、福島原発事故の深刻な被害の現状に照らし、ひとたび重大な原発事故が起きれば、大量の放射性物質が放出されるなどして、周辺住民等に広範かつ深刻な被害が生じるおそれがあり、しかも、被害が起きれば長期にわたって継続・拡大し、その回復がきわめて困難であることなどを考慮して、我が国のとるべき道として原子力発電そのものを廃止・禁止することは大いに可能であろう。しかし、その当否をめぐる判断は、もはや司法の役割を超えるものであり、国民世論として幅広く議論され、それを背景とした立法府や行政府による政治的な判断に委ねられるべき事柄である。」
しかし、住民らは、裁判所に原発を廃止するかどうかという政策的な判断を求めたのではなく、地震等によって原子炉が損傷し放射線被害を与える危険があるから人格権に基づいて運転を停止してくれという法的な判断を求めたのであるから議論のすり替えというほかない。すり替えて司法判断を回避しようとしたものである。
判決は「以上によれば、原子力発電所の運転差止めの当否、すなわち原子力発電所における具体的危険性の有無を判断するに当たっては、原子力発電所の設備が、想定される自然災害等の事象に耐えられるだけの十分な機能を有し、かつ、重大な事故の発生を防ぐために必要な措置が講じられているか否か、言い換えれば、上記のとおり、原子力発電の内在する危険性に対して適切な対処がなされ、その危険性が社会通念上無視しうる程度にまで管理・統制がされているか否かを検討すべきである。」ここでも「社会通念上無視しうる程度」という言葉が持ち出される。具体的な判断方法については、「規制委員会によって審査基準に適合しているとの判断がなされた場合は、当該審査に用いられた具体的審査基準について現在の科学技術の水準に照らし不合理な点があるか、あるいは当該原子力発電所が具体的審査基準に適合するとした原子力規制委員会の判断に見過ごしがたい過誤、欠落があるなど不合理な点があると認められるのでない限り、当該原子力発電所が有する危険性は社会通念上無視しうる程度にまで管理され、放射性物質の異常な放出を招くなどして周辺住民等の人格権を侵害する具体的危険性はないものと評価することができる。」とした。
何のことはない、原子力規制委員会が新規制基準に適合すると判断すれば原則として「社会通念上無視しうる程度まで」危険性が管理されているという話である。つまり判決の言う「社会通念」とは原子力規制委員会の判断と同義ということである。
判決は「本件ストレステストにおいてクリフエッジとされた基準地震動Ss(当時の最大加速度700ガル)の1.5倍を超える地震動は将来的に来ないとの確実な想定は本来的に不可能であることも、原判決の指摘するとおりである。」
クリフエッジを超える地震が来ないと言えないのであれば、それは原子炉や格納容器が損傷しメルトダウンが発生し福島第一原発のような事故が起きる可能性があるということを意味するから、少なくとも大飯原発3・4号機の運転は直ちに差し止めなければならない。しかるに判決はそれを全ての原発の問題にすり替えて、原発の建設や運転を否定したり禁止したりするのは政策的な選択の問題だとして、司法判断から逃げたのである。
この控訴審判決に対しては、一審の福井地裁の裁判長であった樋口英明元裁判官が次のように批判している(岩波書店「世界」10月号「原発訴訟と裁判官の責任」)。
「今回の控訴審判決の内容をみると、新規制基準に従っているから心配ないというもので、全く中身がなく、不安は募るばかりである。また、伊方方式を用いる場合に留意しなければならないことについて全く注意を払っておらず、3・11前の伊方方式から少しも前に進んでいないどころか後退したのではないかとさえ思える。科学、合理性、社会通念などの言葉がその意味を分析することなく多用されていることも他の住民側敗訴の決定と共通しているが、特異なところを二点あげることができる。
第一に、原発の内在的危険を問題とするのは政策論、立法論ということが冒頭に書いてあり、これは他の決定には見られないところである。原告らは『大飯原発に内在的危険があるから止めてください』と言っているのではなく、『今の地震対策では不十分で、地震によって原発の内在的危険が現実化するおそれがあるから止めてください』と主張している。原告らは、健全な疑問を提示して、まさに、司法の本来の役割を果たすことを裁判所に求めている。一方、判決文には原告らが立法論、政策論を述べているという部分がある。解釈論と立法論を混同したもので、金沢支部特有の見解であるが、もし仮に、原告らに対し極端な意見を述べる人たちだというレッテルを貼る意図があるならば許し難いことだと思う。
第二に、『・・・・クリフエッジを超える地震動は将来来ないとの確実な想定は本来的に不可能である』としている点が特徴的である。クリフエッジとは崖っぷちという意味で、要するに、電力会社も手の打ちようがなくメルトダウンが避けがたいほどの地震が来るかもしれないと言っていることになる。
もし、クリフエッジを超える地震が来て過酷事故を起こした場合、金沢支部以外の裁判官は、電力会社と規制委員会に騙されましたと弁解するだろう。金沢支部の裁判官にはどういう弁解の余地があるのだろうか。こんなに自分を追い詰めてまで、いったい彼らは何を守りたかったのか、不可思議である。」
大津地裁高浜3・4号機運転差止仮処分決定(2016年3月9日)で、山本善彦裁判長は、高浜原発3・4号機について運転差し止めを命ずる仮処分決定を出した。これにより運転中だった高浜原発は運転を停止した。
この大津地裁決定を取り消した大阪高裁決定(2017年3月28日)についての批判は書面で触れている。
火山と原発立地に関する川内原発をめぐる訴訟
福岡高裁宮崎支部2016年4月6日決定が特徴的である。この決定は、原子力規制委員会の定めた「火山ガイド」は不合理であり川内原発は立地不適であると認めながら、「社会通念」によると許容されているとして原発の運転差止めは認めなかった点で特異であり、原発再稼働のために「社会通念」という錦の御旗を立てた点で罪深い決定といえる。
伊方原発についての広島高裁決定(野々上友之裁判長、2017年12月13日)は広島地裁決定を取り消し、伊方原発3号機の運転差し止めを命じた。
11:21 裁判長;工事の状況について説明を。
被告・中電;安全性向上対策工事、4号機、前回4月以降、原子炉建屋の空調関係等、燃料プールの監視カメラの設置等。県と市の点検を受けて、その結果はHPで公表している。3号機、5号機については、追加工事はなし。
原子力規制委員会の適合審査について。地震、津波について合計4回の審査が行われた。いずれの分野もコメントが出され、引き続き審査が行われている。
11:24 裁判長;今後について。
原告;引き続き、原発の危険性について主張を出したい。
被告;引き続き主張したい。
裁判長;それぞれ、一週間前までに準備してほしい。
次回は、2019年2月4日(月)11:00~ 一号法廷で。 11:25終了
11:35 地域情報センターで報告集会
司会・高柳;司会の高柳です。最初に口頭弁論について、阿部弁護士からお願いします。参加者から質問があれば、また裁判について質問があればその後お願いします。
阿部弁護士;中部電力から出された準備書面は、配管の中性子照射脆化についての原告が指摘したことに対する反論です。原告指摘に対して今ごろになって反論してきた。もう一つの準備書面は、テロ対策をやっているかという指摘に対する反論。細かいことは読んでいない。
私の方からの準備書面は、裁判例を取り上げた。時間がないのでとても全部を紹介できないので途中ではしょってしまった。証拠で出した中に、雑誌「世界」の10月号に、福井地裁の判決を書いた樋口英明さんが「原発訴訟と裁判官の責任」という論文を書いている。樋口さんは退官され、弁護士はやっていないが、自分の書いた判決が今年の7月に高裁でひっくり返された。それに対する批判をこめて書いている。裁判官が、まだ比較的新しい自分の書いた判決について、コメントしたり書いたりすることは非常に珍しいことだ。それだけ腹に据えかねたということだと思う。
さっき法廷で言ったが、もう一度言うと、樋口判決を取り消した名古屋高裁金沢支部の判決というのは、問題があって、樋口さんが言いたいのは、一つは、原発のメルトダウンを引き起こすような地震動が大飯原発を襲う可能性があると。だから、原発稼働を差し止めなさいと言ったのが樋口判決であった。そこのところを高裁判決も認めている。地震が来ることを否定できない。そこは認めると。認めていながら原発は動かしてもいいという最終的判断をしている。どうしてそういう判断になるかというと、そこのところを読んでみると、「メルトダウンを引き起こすような強い地震動がくる可能性はないではないと。そうであってみれば、世界有数の地震国である我が国において、地震の発生や規模について正確な科学的予測を立てる事が不可能であることなどを理由として、一審原告らの主張するように過去最大又は既往最大の考え方に基づいて基準地震動を策定したり、更に進んで原子力発電所の建設又は運転そのものを否定したり禁止したりすることは、政策的な選択として十分にとりうるところであろう。
しかし、前記のとおり、現在の我が国の法制度は、原子力の平和利用としての原子力の発電を行うことを認めているのであって、司法判断として人格権侵害との関係を考えるに当たっては、最新の科学的・専門的技術的知見に照らし、原子力発電に内在する危険に適切に対処すべく管理・統制がされているか否かが問題とされるべきであることからすると、原子力発電所に来襲する可能性のある地震動に関しても、最新の科学的・専門技術的知見に照らし、その想定が合理的な内容となっているか否かが問われるべきである。」
止めなければいけないと言いながら、それからあとは政策的な判断なので、裁判所の介入することではないと。樋口判決をひっくり返した高裁判決の非常におかしなところだ。
それから、もう一つ、おかしな決定があって、それが川内原発の差し止めを争った一審の鹿児島地裁は却下であったが、その後、抗告審の福岡高裁宮崎支部の決定が、これがまた奇妙な決定で、この決定は、原子力規制委員会の定めた「火山ガイド」が不合理であり川内原発は立地不適であると認めている。認めていながら、「社会通念によって、その影響が著しく重大かつ深刻なものではあるが極めて低頻度で少なくとも歴史時代において経験したことがないような規模及び態様の自然災害の危険性(リスク)については、その発生の可能性が相応の根拠をもって示されない限り、建築規制をはじめとして安全性確保の上で考慮されていないのが実情であり、このことは、この種の危険性(リスク)については無視し得るものとして容認するという社会通念の反映とみることができる。」と。
火山の爆発で火砕流とかが原発を襲うという事態は容認しているが経験したことがないので、日本の法制をみると、そういうものに備えなさいという法規制はなされていない。頻度の低い大規模な自然災害については無視してもいいという社会的通念があったという。そうであるなら原発も一緒だと。
一般の建築と原発を一緒に並べて、普通の建物は一万年に一回の巨大噴火に備えていないから、そういうのは無視しなさいと。それが社会通念だと。そういう社会通念があるから原発も一緒でしょうというのが福岡高裁宮崎支部の決定だ。だから無視していいのだと。
福井地裁の判決をひっくり返した名古屋高裁金沢支部の判決にしても、クリフエッジを超える地震動が来る可能性は否定できないと言っていながら、結局、「社会通念」によって、原発の廃止までは求めるところまではいかないと。それは政策的な問題だからいいのだと。
火山のことが争われた福岡高裁宮崎支部の決定も、原子力規制委員会の定めた「火山ガイド」が信用できないけれども、一万年に一回の巨大噴火については備えなくてもいいという社会的通念があるとして、これも原発を動かしていいという。確かに一万年に一回の巨大噴火についてはいいのかということですが、活断層のところの議論を思い出してもらいたい。活断層は12~3万年以降に活動したことがあるかないかで判断しているが、活断層については12~3万年前以降の活動を問題にしていながら、1万年前の火山の巨大噴火について、活断層については12~3万年前までの議論をしていながら、火山については一万年に一回のことは無視していいのだと、それはおかしい。一万年に一回であれば、活断層でもそういう議論をすればいいのに、活断層では10万年に一回の議論をしながら、火山では一万年に一回でもいいのだと、それは矛盾している。
広島高裁が伊方原発を差止めした仮処分がある。広島地裁決定を取り消したが、原子力規制委員会が作成した「火山ガイド」は、「原子力規制委員会が高度な最新の科学的、技術的知見に基づく総合的判断に基づいて策定したものであるから、それは有効だと」言っている。火山ガイドに従って検討していくとやはり立地は不適であると。福岡高裁宮崎支部決定の「社会通念」を否定した。
普通に合理的に考えていけば原発は止めなければいけないのだと認めながら、それでも再稼働だと、何かわけの分からない議論を持ち出してひっくりかえすという考え方がある。それはやはり裁判所がそういう流れに乗っていくと、非常に危険なことになることを危惧している。そういうことで裁判例を拾ってみた。
次回はもっと本質的な議論をしたい。本質的な議論というのは、どこの裁判例でも、原発の絶対的安全性というのは要求することはできないと。だから相対的安全性でいいと。「絶対的安全性」というのは、原発はひとたび事故が起きれば今のような事態になることは充分可能性があるので、事故は起こってはいけないのだと、「絶対的安全性」でないといけないという議論だ。科学技術というのは、失敗を繰り返しながらそれに学んで安全なものになっていくものだが、原発の場合、同じことが起こっていいのですか、福島の場合もまずいことになった、安全対策を立てたのでこれでやりましょうと。また事故が起こった時にここはまずかったからこうしましょうと、こんなことばかりやっていては国が滅んでしまう。だから、原発事故は一度でも事故を起こしてはいけないのだと。皆さんはそういう考え方だと思う。だけど日本は原子力に関する法律がいっぱいあって、原子力発電は平和利用ならやってもいいことになっている。やってもいいからには多少の危険性があってもいいと法律が認めているのではないかと。いろんな裁判例で言っている。だからどの程度の危険性だったら許されるのかといって、一万年に一回、10万年に一回という議論をやっている。だけど、そもそも原発事故は危ないから絶対的に安全でなくてはならないと、そういうと、今度は原子力を認めている法律はそもそも憲法違反だと言わないといけなくなる。だからそういう法律的議論を次回は主張していきたい。そのことは、3・11以後の原発裁判が始まって以降、弁護団の中でさんざん議論されてきたことだが、最近の裁判例では、相対的安全でいい、多少の危険は法律自体が認めているのだと。どこまで危険なら許されるのか。社会的通念でこのくらいならいいよ、1万年に1回の程度であれば許されるのだという流れになりつつあるので、やはり元に戻って、原発は非常に危険なのだと、だから原発の平和利用はできないと、そういう書面を書こうと思っている。
11:54 司会;ありがとうございました。今の説明は、今日配布の準備書面で強調点もアンダーラインがあり、分かりやすくなっているのでお読みください。何か質問があれば。
野澤(磐田)さん;被告・中電は、経年変化で劣化していることへの対応、またテロ対策などについて反論したが、それについてはどうするのか、そういうやり取りはないのか。
阿部弁護士;本当は、法廷の場で被告中電側が反論すると、それに対してすぐに反論してやりとりすると面白いのだが、すぐできる内容ではない。被告中電の書面はたくさんある。細かくは立ち入れない。被告は書面でやっと反論してきている。これから書面での反論となる。裁判が進んでいくと、法廷でプレゼンをして、どのテーマで一時間くらいとかするが、いまの浜松ではそこまではない。仮処分でなく本裁判なので、法廷で時間を取ったプレゼンはこれからあるかもしれないが、いますぐにはない。浜松の裁判の進行の仕方は、原子力規制委員会で3,4号機の適合審査を終わって、耐震補強工事の終了段階で、どこに危険性があるのか、議論しようとしている。だから裁判長は毎回、工事の進捗具合と規制委員会の審査の報告をさせている。
全国の多くの裁判所のやり方だが、民事の場合も、規制委員会の判断を踏まえて、その判断に不合理がないかどうかを判断しようとしている。規制委員会の判断を待って、そこでの議論を踏まえて、その上で裁判所が判断しようとしている。そのやり方の危険なところは、規制委員会の議論は専門的・技術的判断になるので、その判断が適合だと出てしまうと、それで合理性もよしとなってしまう。裁判所の方はそれが楽だ。中身に踏み込まなくていいし、規制委員会の方がよほど詳しい。仮処分で勝った裁判では、規制委員会の判断の前に、裁判所の判断を出している。
いまの裁判官は、規制委員会の判断をみて判断しようとしている。
大橋弁護士;それに関して、重要な決定をした。皆さんには伝わっているとは思いますが、弁護団は、ゆっくりやろうという方針を決めた。いまの情勢は、裁判所は3・11当時反省をしていたが、今はそうなっていない。逆転現象が起きている。樋口、山本判決は異端だと。
法廷はこれまで通りの進め方をする。裁判はじっくりやっていく。裁判所は規制委員会に任せておけばいいのではという、思考停止状態。原告の運動や新たな政権で、状況は変わってくるかもしれないが、高裁の裁判も審議ストップ。本庁は粛々と進んでいる。それを優先させる。これを見て、浜松は後追いする。若手弁護士を入れて、地震・津波の学習も重ねて、学者の方々にも証人尋問にも協力してもらう。裁判費用も集めて、いまのやり方を外に伝えていく学習会も行うことが大事だ。敗北感を感じることはない。原発の平和利用はあり得ない。それは分かってきた。原発は危険。これでいきたい。みなさんもがんばってほしい。よろしくお願いします。
12:07 司会;原告団の活動は、各地域で考えていければと思う。林先生。
林 弘文さん;今日はありがとうございました。一つ質問。阿部先生には10分の時間でしたが、被告は5分でしたが、被告は5分でいいと主張したのか。(そうだ。)5分で説明できるのかと思った。阿部先生のは、ある程度準備書面を読んでいたのでたどれたのですが、被告は不真面目ではないかと。5分は被告の主張だったのですね。
次の時には追加の書面を出してほしいと言われたので考えたことを。第一は、北海道で9/6に地震が起こる。全道で停電になる。いままで経験したことがないことが起こった。この地震は震度7というので、東日本の大震災や熊本の震度と同じ。予想しなかったことが起こった。直径10kmに渡って、3800か所の山崩れが起こっていると。これも前代未聞のこと。貴重な経験を得た。観測値では、1505ガルとか、1795ガルとか、大きな値。さらに電源が集中していて、バランスを崩して全電源停止。ブラックアウトした。
もう一つは、今年の「科学」の8月号に、東電の幹部3人に対する刑事訴訟の経過が出ている。部下が津波対策をしなさいとしきりに言っているのに、幹部はそれを無視した。しかも東電だけはそういう余裕はない、他の電力会社には津波対策をしっかりやりなさいと依怙贔屓をしている。
伊方裁判では、仮処分の取り消しをした。いろんなことが起こっている。
林 克さん;直接には裁判とは関わりがないけど、運動のことで少し話したい。ひまわり集会を今年も11/18に行う。昨年22万人の署名を提出して、県知事が4年間は再稼働しないということを勝ち取った。その後がどうなるかが争点。いま、全国で注目を集めているのが、東海第2原発の周辺自治体の安全協定です。事前了解が一つでもできなければ、再稼働しない。これは地元の同意とは少し違うようですが、掛川市長がどういうことか勉強会をしようと呼びかけをしている。私は自治労連の原発対策のチームに入っていて、6月の終わりに、地元自治体のヒヤリングをした。小さい自治体が了解したというのはどういうことで判断するか、自分たちには専門的知識がない、何で評価するかというと、住民が安全に逃げられるかどうかで評価したいと言っていた。今の避難計画では逃げられないということで判断せざるを得ないと。皆さんが言われていたことは、この安全協定ができたのは、元東海村村長の村上さんが呼びかけてくれたからだと。人格者として地元では尊敬されている。話が長くなったが、今度のひまわり集会のメイン企画は、前東海村村長の村上達也さんをよんで、また彼を首長会議に誘った元湖西市長の三上さんもペアで呼んで、次の再稼働の地元の同意をさせない契機の集会にしたい。
もう一つ宣伝を。京都の自治体問題研究所から「原発事故~新規制基準と住民避難を考える」の本を出した。静岡県の原発安全対策課のヒヤリングをして、IAEAの深層防護のところから筆を起こして、今の日本の避難計画を批判的に取り扱った内容で、私も第8章で、浜岡をめぐる再稼働の状況を書いている。1200円。
12:18 司会;ありがとうございました。御前崎市で講演会があるということで、さきほどチラシを配布しましたが、その説明を。
杉山さん;原告団の杉山です。チラシを見てください。南相馬の桜井前市長を呼んでの10/28の企画。マスコミに報道されないこと、体験されたことも話をされる。
司会;関心がある方は足を運んでください。他には。
酒井さん;ひまわり集会で弁護士からいまの裁判の現状とこれからのとりくみについて話してほしい。
大橋弁護士;10/6の弁護団会議で検討します。
鹿野さん;法廷に入廷する時、原告の有無を確認するのは、なぜか。
平野弁護士;原告の出席者名簿を提出しているが、それと並行して確認する必要から行っている。
司会;傍聴のために並んでいる人に対しても原告かどうかを聞くことを聞いているのでは?
平野弁護士;裁判所の職員の入れ替わりもあって、多少の対応の違いが出ているかもしれない。原告は30名の傍聴券。一般で入る原告もある。
鹿野さん;裁判長の声が小さいことを前に言ったら、今日はマイクを使って多少配慮していた。やはり言わなければダメだ。ただ、裁判官と代理人の間で裁判はやっているわけではないので、代理人もマイクなども使ってもっと改善してほしい。
大橋弁護士;言うことを聞いてくれると思う。
司会;他には。
林弘文さん;自治体問題研究所の本の中の裁判例。ぜひ読んでほしい。
「原発はどのようにして崩れるか」今年発行されたもの。分かりやすく説明している、
ICRPの勧告111.ネットでダウンロードできる。3・11の直前に書かれたもの。世界の特筆される事故について記述。
ICRPの勧告109.ネットでダウンロードできない。買うしかない。汚染されたらどうなるかが書いてある。4000円する。
司会;他には。12月に自由法曹団の学習会があるので、その案内を。
平野弁護士;今日の配布物の中に案内がしてあります。12/21に「原発差止め訴訟の現状と今後の課題」の案内。自由法曹団静岡県支部が年4回の学習会を開いていて、今回は浜松で開催。原告をはじめ、広くご参加を。
司会;これで終わりにします。ご苦労様でした。 。
次回は、2月4日(月)11:00~。
12:30 終了
(文責;長坂)