2022.3.23 第32回口頭弁論

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2022.3.23 浜岡原発第32回口頭弁論    

中部電力からの準備書面(24)の説明。原子力発電所内の火災対策について。発電所内への浸水による安全機能喪失防止対策などについて。安全性向上対策工事の説明。規制委員会の審査(12/17、3/18)状況の説明。

原告から準備書面(36)の説明

栗田弁護士;準備書面(36)の内容の説明。浜岡原発の広域避難計画は、実行可能性、実行しうる体制が整えられていると言うにはほど遠い状態にあり、深層防護の第5の防護レベルを欠いている。この状態で再稼働させることは、人権侵害の具体的危険がある。
2021年3月18日の東海第二原発に関する水戸地裁判決(注;運転差し止め判決)に関して、マスコミは、この判決の他の原発訴訟への影響の大きさに触れ、「原発30キロ圏内の人口」では、「東海原発が最多(94万人)で、次いで浜岡原発の約83万人、柏崎刈羽原発が約44万人で、これだけの人口密集地域での原発立地は世界で例がない」と指摘した。
よって、浜岡原発による人格権侵害の具体的危険性を考える上で、実現可能な避難計画及びこれを実行しうる体制が整っているかどうか、厳密に検討されるべき重要課題である。
浜岡原発周辺の住民は、PAZ(おおむね5km圏内)・UPZ(おおむね30km圏内)合計で、約82万6千人であり、東海第二に次ぐ人口密集地域の原発立地である。
県及び原発災害対策重点区域関係自治体(11市町)における避難計画の策定状況では、「避難先」として、「原発単独災害」「地震・津波などとの複合災害」の二つに分けて、避難先として、各市町ごとに県内と12都県の市町村名を示している。
しかし避難経路が実はなかなかの難問である。「避難先の地域と協議のうえ定める」という作業も、かなりの困難を伴っている。この11市町のうち、焼津市と藤枝市は、いまだに避難計画策定自体ができていない。避難元自治体としての広域避難計画がほぼ「確定した」と言えるのは、11市町のうち、5市だけである。この策定作業自体が“道半ば”であって、避難計画の実施可能性等を問う以前の状況というほかない。
浜岡原発周辺地域における避難の困難性(実現不可能性)と、実行し得る体制の不備に関して、項目だけをあげれば、1.避難の各段階における問題、2.広域避難計画における移動距離、3.移動の困難さ、4.避難の所要時間、5.避難先の問題、6.屋内退避の困難性、7.ヨウ素剤配布の非現実性、8.避難に必要な情報の取得について、9.要支援者と集団輸送体制、10.人的リソースの不足、11.要支援者と集団輸送体制、
よって結論として、静岡県及び原発災害対策重点区域関係自治体(11市町)における避難計画策定の現状や、この地域における避難そのものの困難性及びこれを実行し得る体制作りの困難性に照らすと、本件浜岡原発に係るPAZ及びUPZにおいて、原発災害対策指針が想定する段階的避難等の防護措置が実現可能な避難計画及びこれを実行し得る体制が整えられているというには、ほど遠い状態にあると言わざるを得ない。
少なくとも、本件浜岡原発に係るPAZ及びUPZ圏内に居住する約83万人住民とに関係においては、深層防護の第5レベルに欠けるところがあり、この現状で本件浜岡原発が再稼働されることになれば、人格権侵害の具体的危険性があることが明白である。
次回の弁論では、引き続き主張をしたい。

次回の第33回口頭弁論は、2022年7月25日(月)11時~

地域情報センターでの報告集会(11:20~)

司会;落合;大変お疲れさまでした。報告集会を開催します。被告の主張について、弁護団から説明お願いします。

大橋弁護士;まだ被告の準備書面が弁護団に渡っていない。

司会;落合;了解しました。桜井さん、地層のことでお話、お願いします。

桜井;二つのことが話された。一つはH断層のこと。14本のうち、どれをとっても同じであるので、どれでも代表になりうる。おおむね評価をもらったと。中電の主張のH9。分かっている断層では一番北にある。断層の上に泥の層が載っている。活断層でない時代にたまったもの。それ以来、切られていないので、活断層ではないと。これについては追加報告をしろと指摘をした。資料がそろったところで現地調査をすると。

司会;落合;中電側の書類がまだ来ていないので、詳細が分からないが、おやっと思った点はありませんか。

阿部弁護士;今の点は、準備書面に書いていたことではなくて、最新の審査会合の内容について報告があったということだ。活断層のことについては、これまでも、何回か審査会合が開かれていて、いままでの会合の内容については、原告の準備書面で書いてまとめて主張してきた。今回の3/18の会合については、まだ把握していなかったので、次回にその内容を紹介したいと思っています。肝心のH9断層の上に載った地層が、12~3万年以降、活動があったかどうかについて、原発にとって活断層であるかないかは大事な点で、前回の審査会合でも議論がされ、今回も規制委員会の納得のいく説明がなされなかったと。その内容についても、次回にまとめて紹介したい。

司会;落合;ありがとうございました。何か質問はありますか。これまで2回の規制委員会の会合が開かれた。昨年の12/17の規制委員会では、津波のことで若干の議論がされた。中電側も最大限の状況を見た場合、22.5mの津波がくることを審査委員会で議論したと。詳細は分かりませんが、そんな話でした。
  こちら側からの準備書面について、塩沢弁護士からお話を伺いたい。

塩沢弁護士;今日の法廷に入れなかった原告の方はどのくらい見えますか。ご苦労様です。コロナを理由に座席を制限し、なおかつたくさんの人が集まったところで、長時間の説明はまずいので、発言時間を5分にお願いしたいと。今回の準備書面は、5分ではとても話せない内容ですが、栗田弁護士がきわめて要領よくまとめました。実はかなりの力作をいってよい内容です。浜岡原発にかかわるPAZ及びUPZの11市町について、県の避難計画を受けての避難計画の全体を見て言及をしました。焼津市は先日、計画を形ばかりのものですが、作成したようですが、藤枝市はまだだ。
  避難計画がどのくらい実行されるのかを、全体を見ながら俯瞰し、その上で、交通工学の専門家である上岡直見という方の論文が出ています。これに準拠した、いかに静岡県の極めて危険なところに、しかも80万人を超える人口のところで、災害があった場合、一体どうなるのか、それを具体的に危険性を論証しているこの論文に基づいて、浜岡に当てはめた場合、どうなるのかを、論じています。目を通していただきたい。
  いま全国の原発差し止め訴訟で特徴的なことは、仙台の女川原発の差し止めでは、避難計画に踏み込んで裁判が進められています。電力側はどういう主張をしているか。
およそ事故は起きない、第5層の防護で大丈夫か。福島原発のような事故は起こりえない。起こりえないけれども、念のため防災の観点から避難計画がある、避難計画を作ったから 原告は本当に危険と言うのであれば、女川原発で、福島の事故のような具体的危険性を、立証すべきであると。それに触れずに、避難計画だけ言ったって、具体的危険性があるわけではないと。つまり第5層の考えを完全に否定する考えだ。
第5層の深層防護は、第4層で大丈夫だではなくて、第5層は単独でも必要だというもの。だから東海第二原発の判決で、避難計画のことで運転差し止めを命じている。
女川原発での被告の主張は、これを根本的に否定する考えだ。避難計画が不備であるかに答えない。釈明にも応じないというもの。こういう状況で仙台はどういう判断を下すか。高裁がどういう判断をするかがすごく大事になっている。
さて、浜岡原発ですが、避難計画で全国的な裁判の動きに注視しながら、どう中部電力が出てくるか、注目してください。
昨日の朝日で、「福島の事故から11年。原発は未来に禍根を残す」という長い社説を掲載している。当時、朝日新聞自身が、安全神話に取り込まれていたことを深く反省して、社説で原発に否定的な考えを繰り返し主張していますが、今回もそういう立場で言っている。「ロシアのウクライナ侵略も原発の危険性を明らかにしている。朝日は震災後、原発に頼らない社会を早く作ることを提言し、段階的に低減することを訴えてきた。その主張は揺るぎがない。福島の内部放射線被害で、普通の生活ができる 福島を忘れてはならない」
これからも原発の危険性を訴えていきたい。

司会;落合;ありがとうございました。避難計画の問題に触れていただきました。林さん、避難計画の問題では特別に強い思いがあると思いますが、一言発言お願いします。

林 克;塩沢先生、ありがとうございました。私はIAEAのとりくみを浜岡原発に当てはめて主張した。
今回の原告の書面は県民が関心を持っているところにスポットライトを当てて、避難計画の実例にもとづいた主張で、具体的で分かりやすい書面であった。運動でも使っていけるものだった。浜岡原発は、H断層をはじめ、論点はいっぱいある。避難計画を含めて、浜岡原発は世界一危険だというのは、誰でも分かっている。震源域の真上にあるので、避難そのものが難しいので、そこで押していくことはとても大事だと思う。お疲れさまでした。ありがとうございました。

司会;落合;地元の運動や様子はどうですか。ご質問等、遠慮なくご発言ください。地元の清水さん、ご発言願えますか。最近の寒さの中で、電力がひっ迫していることを受けて、「それ見ろ」とばかり、日経連の会長は原発を早く再稼働しなくてはと。一層そういう傾向が強まるのではないかと思いますが。

清水;一週間前、中電の社員と話す機会があった。「浜岡原発は10何年止まり続けているが、今後どうなるのか」と言ったところ、「もう、ちょっとね……」と。規制委員会は早く動かしたいという気持ちを持っているかもしれないが、中電社員自体が現状を考えると、動かすことまで言っていない。UPZの仲間と会うと、原発事故の悲惨さを考えると、世界一危険な原発という認識は非常に高まっているので、簡単に動かすことにはならないと。仲間と結束して引き続き運動を取り組んでいきたい。

桜井;東電の電力供給について、大変ひっ迫していると。節電を!と。震災時、計画停電と。今では「だまし」の戦術だったということが分かってきているが、昨日の東北の電力のひっ迫状況を政府もあげて大騒ぎしているが、どうとらえてらいいのか。

大橋弁護士;意図は分からないが、本当にそうかもしれない。そのことを利用して原発再稼働の方向にもっていくかもしれない。電力不足の心配。脆弱性をもっている日本。原発はなくさなくてはいけない。再生可能エネルギーにもっていくことに確信していきたい。
  先ほどの清水さんの話。11年も動かずの施設、お釈迦になる。中電自身、そう思っているのではないか。経団連会長の発言もあったが。1~2年で終わることにはならない。規制委員会の長が推進派の人に変わった。審査を進めていくだろう。10年くらいは続くだろう。

桜井;100%を何をもとに決めたのか? 予定した量に対しての100%だ。発電容量の98%とかいうことではないと思う。やはり、だましが入っているのではないか。

塩沢弁護士;ついしゃべりたくなる。改めてどのくらい電力に依存していくかをしみじみと感じる。水と電気はなくてはならない。エネルギー政策を根本的に考え直さなくてはならないことは間違いがない。相変わらず原発に頼っていることの見通しが、今だからこそ考えていく必要がある。

司会;落合;他にいかがですか。今日の中日新聞に中電のことが載っていた。福島の二つの原発が地震で動けなくなった。原発に頼らない世の中にしていくべきだと。
  3/27 福島原発の生業訴訟。鈴木正樹弁護士(磐田市出身)が浜松に来て講演をしてくれる。この会場で講演予定だ。ご参加ください。

  次回は、7月25日(月)11:00~ 第33回口頭弁論です。  
    (11:50 終了)

(文責 長坂)




 
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