浜岡原発永久停止裁判 第29回口頭弁論 

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浜岡原発永久停止裁判 第29回口頭弁論
2020年12月14日(月)晴れ
10:00 浜松市地域情報センターホールに原告や傍聴者が集まり始めた。
10:30 裁判所内の部屋で傍聴抽選。結果的に約20名が傍聴できた。
11:00 裁判が開始。
7月20日の前回の口頭弁論の時と同じ事情(新型コロナ感染症の影響)のために、原告傍聴も、一般の傍聴も人数を半減にする措置がとられた。
裁判長は川淵健司、右陪審は三橋泰友(前回の28回口頭弁論の時も)、左陪審は丸谷昴資。
   訴訟代理弁護団計 16 名の弁護団のうち、今日の参加者は 7名。
   大橋昭夫、森下文雄、塩沢忠和、阿部浩基、平野晶規、北上絃生、 栗田芙友香、
被告側は国と中電の 10 名。
11:00 裁判長;被告・中電から準備書面(21)が提出された。陳述あり。原告から準備書面(31)が提出された。原告より陳述がある。
11:02 被告・中電・代理人より陳述。
被告・中電の代理人は、準備書面(21)の概要説明を約3分で行った。
「1、本件原子力発電所の安全確保対策」、「2、事故防止対策」、「3、福島第一原発事故を踏まえた炉心の著しい損傷防止対策及び格納容器の破損防止対策」として、それぞれの対策の要点を説明した。
11:05 原告の代理人・阿部浩基弁護士が準備書面(31)の要約を説明した。
  (ここでは、準備書面(31)をそのまま掲載する)
はじめに
広島高裁は、令和2年1月17日、伊方原発3号機について、申立を却下した山口地裁岩国支部の決定を取り消し、運転差止を命ずる仮処分決定をだした。広島高裁が伊方原発につき運転差止を命ずる仮処分を出したのは今回が二度目である。前回の平成29年12月13日決定(判例時報2367・2358合併号300頁)には、運転停止に期限が付されていたが、今回は期限はない。

第1 司法審査の在り方
1 差止請求の要件としての具体的危険性
原子炉等規制法の改正の経緯及びその内容からすると、同法は、①最新の科学技術的知見を踏まえて合理的に予測される規模の自然災害を想定した発電用原子炉施設の安全性の確保を求め、②その上で想定を越える事態が生じた場合の対処を求めるものであり、同法43条の3の6第1項4号の「災害」は上記①の自然災害を意味するものである。
   そして、差止請求の要件としての具体的危険性については、原則として、上記のような原子炉等規制法の改正の経緯を踏まえ、そこで求められている安全性を具備としているか否かが重要な指標となるということができる。ただし、その一方で、どの範囲までの危険が許されるかについては、社会通念をもって判断せざるを得ないことも否定できない。
抗告人らが絶対的安全性に近い安全性を主張したことに対しては、「福島事故のような過酷事故を絶対起こさないという意味での高度な安全性を要求すべきであるという理念は尊重すべきもの」とし、抗告人らの主張した具体的基準についても、その理念ないし精神に則った解釈適用が必要となることも否定できないとした。具体的には、ある問題について専門家の間で意見が対立している場合には、支配的・通説的な見解であるという理由で保守的でない設定となる見解を安易に採用することがあってはならないとした。

2 主張・疎明責任
(1)債権者において、自らが発電用原子炉施設の安全性の欠如に起因して生じる放射性物質が周辺の環境へ放出されるような事故によってその生命、身体又はその生活基盤に直接的かつ重大な被害を受けるものと想定される地域に居住していることを疎明すれば、当該原子炉施設の設置運転主体である債務者(事業者)の側において、上記の具体的危険が存在しないことについて、相当の根拠、資料に基づき、主張・疎明する必要があり、債務者がこの主張、疎明を尽くさない場合には、上記の具体的危険の存在が事実上推定される。
 (2)もっとも、相手方は、規制委員会から本件原子炉施設が新規制基準に適合するとして発電用原子炉設置変更許可を受けているところ、具体的な審査基準の設定及び当該審査基準への適合性の審査において、原子力工学に限らず自然科学分野を含む多方面にわたる極めて高度な最新の科学的、専門技術的知見に基づく総合的判断が必要であることなどに照らすと、規制委員会により、新規制基準に適合する旨の判断が示されている場合には、①現在の科学技術水準に照らし、当該具体的審査基準に不合理な点のないこと、②当該発電用原子炉施設が上記審査基準に適合するとした規制委員会の判断について、その調査審議及び判断の過程に看過しがたい過誤、欠落がないことなど、不合理な点がないこと、以上の2点を相当の根拠、資料に基づき、主張、疎明することにより、上記の具体的危険が存在しないことについて、相当の根拠に基づき主張・疎明をしたということができる。

第2 活断層
1 「敷地ごとに震源を特定し策定する地震動」

   内陸地殻内地震の地震動を策定するに当たっては、地震を引き起こす活断層の位置・形状・活動性を評価する必要がある。
その際、震源地が原発敷地に極めて近い場合は、地表に変異を伴う断層全体を考慮した上で、震源モデルの形状及び位置の妥当性、敷地及びそこに設置する施設との位置関係、並びに震源特性パラメータの設定の妥当性について詳細に検討するなど、基準地震動を策定するにあたって特別の規定を設けている。(設置許可基準規則解釈別記2)
そして、「震源が敷地に極めて近い場合」について、規制委員会は、震源から2km以上離れていれば浅部地盤の影響は無視し得るものの、敷地から2km程度以内の浅部地盤が変位する場合には、比較的軟らかい地盤の活動といえどもその影響を無視できないという研究結果をあらわしている。
2 佐田岬半島沿岸の活断層について
相手方は、佐田岬半島北岸部には活断層は存在せず、活断層が敷地に極めて近い場合の評価は必要ないとして、活断層が敷地に極めて近い場合の地震動評価を行っていない。
相手方は、詳細な海上音波調査を行い、その結果、本件発電所敷地沿岸部に活断層がないことを確認しているなどとして、佐田岬半島北岸部活断層は存在しないと主張する。
   しかし、政府の地震調査研究推進本部の出した「中央構造線断層帯長期評価」(第二版)には、伊予灘海域部については相手方により詳細な調査がされたことが記載されているのに、佐田岬半島沿岸については、そこに存在すると考えられる中央構造線(地質境界)について「現在までのところ探査がなされていないため活断層と認定されていない。今後の詳細な調査が求められる」と記載されている。これは相手方の主張する海上音波調査では不十分であることを前提にしたものである。
本件発電所の敷地至近距離にある地質境界としての中央構造線は正断層面を含む横ずれ断層である可能性は否定できない。その場合、地表断層から本件原子力発電所敷地までの距離は2km以内と認められるから、仮に調査が十分に行われて、活断層だということになれば「震源が極めて近い場合」の地震動評価をする必要がある。しかし、相手方は十分な調査をしないまま活断層は存在しないとして、原子炉設置許可等の申請を行い、規制委員会もこれを問題ないと判断したのであるから、規制委員会の判断には、その過程に過誤ないし欠落がある。
3 コメント
   常識的で無理のない判断である。

第3 火山事象の影響による危険性
 1 新規制基準と火山ガイド

新規制基準のうち、火山事象の影響による危険性に関して定めた内規として火山ガイドがある。
   火山ガイドは、火山事象の影響による危険性評価を、立地評価と影響評価の二段階で評価することにしている。
 2 立地評価
(1)火山ガイドの内容
   火山ガイドは、当該原子炉に影響を及ぼしうる火山を抽出し、①その火山が過去の火山活動の分析、地球物理学的、地球化学的調査により当該原子力発電所の運用期間中に活動する可能性が十分小さいとは言えない場合には、②噴火規模を推定し、噴火規模における設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に到達する可能性が十分小さいかどうか評価し、これにより原子力発電所の立地の適否を判断する、としている。
 (2)火山ガイドの不合理な部分
上記の火山ガイドの内容からすると、過去の火山活動の分析、地球物理学的、地球化学的調査により、対象火山の噴火の時期や規模について、少なくとも原子炉の運転を停止し、核燃料物質を敷地外へ運び出すのに要する期間的余裕を持って、予測できることを前提としていると理解せざるを得ない。
しかし、現在の科学水準においては、噴火の時期及び規模についての的確な予測は困難であり、VE16以上の巨大噴火についても中長期的な予測の方法は確立しておらず、原子力発電所の運用期間中にその火山が噴火する可能性やその時期及び規模を的確に予測することは困難であるという見解が多数であり、この多数の見解を前提にして検討すべきである。
    したがって、火山ガイドのうち、予測が可能であことを前提とする部分は不合理である。
    そうすると、上記の①については、原子力発電所の運用期間中における検討対象火山の活動の可能性が十分小さいとは言えないことになり、②の設計対応不可能な火山事象が当該原子力発電所に及ぶか否かの判断に進むことになる。
(3)設計対応不可能な火山事象
火山ガイドは、巨大噴火とそれ以外の噴火とを区別しておらず、検討対象の火山の過去最大の噴火規模を想定して、設計対応不可能な火山事象が原子力発電所敷地に到達する可能性が十分小さいかどうか判断すべきことになる。
 阿蘇については、過去最大の噴火規模である阿蘇4噴火を想定して、この判断をすることになる。
本件発電所敷地は、阿蘇4の火砕流が到達した範囲に入り、阿蘇の噴火により設計対応不可能な火山事象が本件発電所敷地に及ぶ可能性はあるというべきである。
そうすると、火山ガイドによれば、立地が不適ということになる。
 (4)しかし、人格権に基づく差し止め訴訟における具体的危険性の判断にあたっては、どの範囲までの危険が許されるかという社会通念をもって判断する必要がある。
 破局的噴火が起きた場合には、原子力発電所から放射性物質が周辺の環境へ放出される事故が起きるか否かにかかわらず、周辺住民は、その生命、身体又はその生活基盤に重大な被害を受ける。
    現時点で阿蘇4噴火のような破局的噴火が起きた場合には、九州の中部以北は火砕流の直撃でほぼ全滅し、死者は1000万人を越え、北海道を含む日本列島全体が15cm以上の厚い火山灰で覆われて、家屋の倒壊が相次ぎ、ライフラインが機能停止し、食料生産も不可能になり、かろうじて生き残った人々も日本列島から海外への避難、移住が必要となる。
 にもかかわらず、これを想定した法規制や行政による防災対策が原子力規制以外の分野において行われているという事実は認められない。
    以上によれば、破局的噴火の場合におけるリスクに対する社会通念、すなわち、わが国の社会における受け止め方は、それ以外の自然現象に関するものとは異なっており、相当程度容認しているといわざるを得ず、破局的噴火による火砕流が原子力発電所に到達する可能性を否定できないからといって、それだけで立地不適とするのは、社会通念に反する。
(5)阿蘇4(VE17)による火砕流が原子力発電所に到達する可能性が否定できないことを理由に、立地不適として具体的危険性を認めるのは社会通念に反して許されないとしても、このような場合には、それに準じるVE16の噴火(噴出量数十㎦ )が起こる可能性も十分小さいとしはいえないとして、この噴火規模を前提にして立地評価をするのが当然である。 しかし、阿蘇4噴火の火砕流が本件原子力発電所に到達したかどうかについてさえ専門家の意見が分かれていることなどからすると、阿蘇におけるこの程度の規模の噴火で火災物密度流が本件発電所敷地に到達する可能性は十分小さい。
    したがって、立地不適ではない。
3 影響評価
阿蘇については、阿蘇4噴火に準ずる噴出量数十㎦の噴火規模を考慮すべきである。そうすると、その噴出量を20~30㎦としても、相手方が想定した九重第一軽石の噴出量(6.2㎦)の約3~5倍に上り、本件原子力発電所からみて阿蘇が九重山よりやや遠方に位置していることを考慮しても、相手方による降下火災物の想定は過少であり、これを前提として算定された大気中濃度の想定(約3.1g/㎥ )も過少であるといわなければならない。
相手方は、非常用ディーセル発電機の火山灰フィルターは上記3.1g/㎥に対して大きな余裕を持って工事をしていてると主張するが、3~5倍もの噴出量まで想定しているとは認められない。相手方は、想定される気中降下火災物濃度が約3.1g/㎥であり、ディーゼル発電機の機能は喪失しないことを前提に、原子炉設置変更許可、工事計画認可及び保安規定変更認可の各申請を行い、規制委員会もこれを前提として各申請を許可ないし認可しているのであるから、降下火災物濃度が不合理ならばそれを前提とした上記各申請及びこれに対する規制委員会の判断自体も不合理であると言うべきであって、非常用発電機が機能喪失した場合にも本件原子炉の冷却が一定期間可能であるからといって、上記判断は覆らない。
このように影響評価の点で規制委員会の判断は不合理だとした。
4 コメント
  阿蘇4のような巨大カルデラ噴火を想定するの「社会通念」を用いて否定した点に疑問があるが、影響評価での判断は常識的な判断である。

11:15 裁判長;その他にどうか。
被告・中電;安全性対策工事の報告と、規制委員会での審議の報告がされた。
裁判長;次回日程について。原告の主張はどうか。
原告;大阪地裁の大飯原発の判決で、基準地震動そのものについて、疑問が出されているので、それについて主張したい。活断層について、規制委員会の審査は途中であるが、現時点での問題点を主張したい。
被告・中電;引き続く主張する。
国;特になし。
裁判長;次回期日は、2021年5月31日(月)11:00~ 第一号法廷で行う。
                                    11:21 終了

11:30 地域情報センターで報告集会
司会・高柳さん;今日は落合事務局長が、市議会の関係で遅れてきます。
最初に阿部弁護士より報告をお願いします。

阿部弁護士;今日傍聴できなかった方はどのくらいいますか。結構いらっしゃいますね。コロナの関係で、法廷での発言も制限されていますので、今日のことを報告します。
その前に、原発をめぐる裁判で大きかったのは、大阪地裁で、大飯原発の許可が取り消された(注;2020年12月4日)という、衝撃的な判決がありました。設置許可そのものを取り消す行政処分は3.11以後初めてのこと。取り消した理由は、基準地震動の決め方が、平均値からはずれた値を考慮していないというもので、全国の原発の裁判に影響する内容だ。浜岡原発にとっても重要な判決だ。
今日の法廷で原告から出したものは、今年の1月に出た広島高裁の伊方原発についての運転差止を命ずる仮処分決定についてのもの。広島高裁が伊方原発につき運転差止を命ずる仮処分を出したのは今回が二度目である。前回は、平成29年12月13日でその時は、運転停止に期限が付けられていたが、今回の仮処分は期限が付いていない。
広島高裁の内容ですが、「差止請求の要件としての具体的危険性」があるかどうかが争点で、あれば差し止める、なければ止められないということで、我々もそうですが、全国各地の原告・弁護団は、具体的危険性については、絶対的安全性に近い安全性を主張した。裁判所はそこまでの安全性は採用しなかった。しかしながら広島高裁の判決のいいところは、「福島事故のような過酷事故を絶対起こさないという意味での高度な安全性を要求すべきであるという理念は尊重すべきもの」とし、具体的基準についても、その理念ないし精神に則った解釈適用が必要となることも否定できないとした。具体的にある問題について専門家の間で意見が対立している場合には、支配的・通説的な見解であるという理由で保守的でない設定となる見解を安易に採用することがあってはならないとした。
それから、規制委員会により、新規制基準に適合する旨の判断が示されている場合には、①現在の科学技術水準に照らし、当該具体的審査基準に不合理な点のないこと、②当該発電用原子炉施設が上記審査基準に適合するとした規制委員会の判断について、その調査審議及び判断の過程に看過しがたい過誤、欠落がないことなど、不合理な点がないことなど、相当の根拠、資料に基づき、主張したということができるとしている。
この判断は、かつての伊方原発に関する最高裁判決を援用したものです。
具体的な論点として、差し止め請求の根拠については、「活断層」がある。
原発で「活断層」が問題になるのは二つの場面がある。一つは、「活断層」の上に原発の需要施設を建ててはいけないという場面。浜岡原発の場合も、原発の敷地内に、5本の東西に走るH断層があり、その上に重要な施設があるので、もしそれが活断層ならば、運転停止となる。
もう一つの場面は、どれだけ大きな地震が原発を襲うかということ。それを計算するときに活断層が問題となる。長い活断層の場合、大きな地震動となる。活断層の長さから地震の規模を推定する。広島高裁の伊方の場合、この活断層が原発の近いところにあるのではないかと。その場合は、違った計算方法をしなさいと規制委員会が言っていた。どの程度近ければというと、原発から2kmという。原発から2kmの近くにあれば、計算方法は違いますよと。
伊方原発はご存じのように、四国の佐田岬半島の根っこのところにある。その伊方原発の沖合に大分方面に向かう「中央構造線」というのが通っている。それが活断層ではないかと。相手側は、海上音波調査を行ったけれども、活断層ではなかったと。
ところが政府の地質調査研究推進本部というところが、「中央構造線断層帯長期評価」(第二版)というのを出していて、伊予灘海域部については相手方により詳細な調査がされたけれども、佐田岬半島沿岸の沖合については「現在までのところ探査がなされていないため活断層と認定されていない。今後の詳細な調査が求められる」と記載されている。「中央構造線断層帯長期評価」(第二版)として、政府の地質調査研究推進本部というところが正式の報告書を出している限りは、調査すべきであるのに、相手は十分な調査をしないまま、活断層は存在しないとして、原子炉設置許可等の申請を行い、規制委員会もこれを問題ないと判断したのであるから、規制委員会の判断には、その過程に過誤ないし欠落がある。
もう一つ、火山についてですが、浜岡原発の場合は、火山の影響については論点にしていない。富士山の爆発がどうかということはありますが、論点にしていない。火山を論点にしている原発のところはかなりある。
伊方原発の場合の火山はどこの火山を指すかというと、特に大きな火山はない。中国地方には大山はあるが遠い。九州地方に阿蘇山や九重山など、過去に大規模の爆発をした火山がある。南九州にも大きな火山があるが距離的に遠い。阿蘇山の2万年前くらいの大爆発では、九州全部を覆う大噴火で、日本全国に火山灰が積もった。伊方原発のところにも火砕流が到達したという記述がある。そういうところに原発を建てていいのかということで立地不適と判断される。
何万年前に起きた火砕流が20年30年の間に起きるのかというと、起きないかもしれないけど、起きるかもしれない。どっちか分からない。その時は起きることを前提に考えなくてはならないと。
だけど裁判所は考え方を変えて、しかしながら日本の災害の例をみても、このような巨大な火山噴火を予想するような災害対策の法律はないではないかと。台風とか水害とか原発とかは想定しても、火山の大噴火を想定したような法律はないと。ということは、そういうことは想定しなくてもいいのだと国民や社会が考えているからではないかと。社会がそれを許容しているのだと。伊方原発はそういうものなので、だから立地不適ではない、と言っている。
しかし、影響評価という点では引っかかる。火砕流が直接原発に届かなくても、火山灰などの量が多いと、原発の運転に影響を与えるというもの。特に、非常用ディーセル発電機のフィルターは、九重山の噴火での火山灰を3.1g/㎥と想定して、それには備えていて、余裕を持って工事をしていると主張するが、阿蘇山の巨大爆発の噴出量は3~5倍くらいになる。さすがに、多少余裕をもたしているといっても、そこまで想定しているとは認められない。そういうことを前提に、規制委員会も認可している。
活断層のことと、火山の影響評価の点の2点において、規制委員会の判断には過誤ないし欠落があるとして、伊方原発を動かさない判断をした、ということを説明しました。
中部電力からは、準備書面(21)が出て、原発についていろんな安全対策をしているという説明をしていましたが、まだ十分読み込んでいませんが、やはり避難計画とか、大阪地裁で出た基準地震動や、活断層のことなど、比較的わかりやすい論点でやっていくことがいいのかなと思う。あまり細かなことで、技術的なところでやっても反論できないので、そういうことでやるよりも、裁判所にもわかりやすい論点でやったほうがいいと。

11:48 阿部弁護士:次回は、5月31日(月)11:00からです。すごく期間は空きますが、規制委員会の判断が出ていない間は、裁判所も判断ができない。広島高裁の伊方原発では、規制委員会が合格を出し、稼働しているので、規制委員会の審議や判断に問題がないかどうかの観点から、裁判所の決定が出された。浜岡原発は、基準地震動、活断層、津波など、まだ議論が途中なので、裁判所も規制委員会の判断が出てから、その判断がどうだったのかということで、書きたいのではないかと。そういう判断の仕方は問題なのだと、規制委員会の判断を待たずに、どんどん判決を出すべきという議論ももちろんあります。福井地裁の判決を書いた樋口元裁判官などもそういうように主張しています。

11:50 大橋弁護士;次回の弁護団・原告団会議は、2021年1月21日18:00~県教育会館地下で行います。そこでどういうことをやるか、また書面で出します。

11:52 塩沢弁護士;大阪地裁判決から勇気をもらった。そういう裁判官もいるのだと、私たちも確信をもって活動していかなくてはいけないと。裁判官は市民サイド、国民サイドの目を向けているわけではないが、若手の裁判官が判決を書いた。結論からみれば当たり前と言えば当たり前。原発というものを考える時に、これから起きる地震を平均的にとらえて、平均でとらえるというのはどう考えてもおかしい。平均を超える地震はいくらでもあるわけで、ばらつきを考慮すべきと言っていながら考慮しないで、規制委員会がゴーサインを出したのだからこれはおかしいと。非常に当たり前の判決だった。当たり前だと思ったから判決を書けたと思いますが、これで高裁ではどうなるか、非常に気になる。電力会社や規制委員会は、ばらつきをまったく考慮していないわけではないのだと、判決に誤認があると。平均値を出すときに、不確かな要素は考慮していると。ばらつきをいうなら、不確かな要素の考慮は言葉上のことで、根本的に違うのだと。
科学的な根拠でものを言ってくれる内山成樹先生が「原発地震動想定の問題点」という本をかなり前から出されている。ここで言われていることは、平均値を出す時の考慮について、それはめくらましであると。大事なことは、平均値からいかに乖離があるか、平均値からの最大の乖離、これが大事だということを非常に強く強調されていました。
最近、赤旗日曜版に、3・11以降、初めて差し止めの判決を書いたあの樋口さん、樋口さんはこう言ったのです。「原発を将来襲うであろう最大の地震の強さ、それに見合った対策を取るべきである。ところが今の地震学の勉強では、そういう計算がそもそもできない。できない以上は再稼働させるしか方法はない」と。より踏み切ったコメントだ。ばらつきを考慮することなど当たり前であって、全国各地の原発、浜岡原発の場合、どうなっているのか。規制委員会の判断がまだ出ていない。東京高裁ではどうか。

11:55 阿部弁護士;そこのところは、もう一度浜岡の場合は検討しなければいけないと思っています。3・11の前であれば、規模の小さい地震を想定しようとしていたけれども、3・11後は、南海トラフのことが出てきて、想定される最大規模の地震を出しなさいと。その結果浜岡には9mの津波。地震動もどこが破壊されるかなども出している。それにもとづいて、中電は検討している。まだ議論しているようだ。どの程度の地震がおきるかということについては、最大規模と言っているから、それが平均値とどうかかわるのか分からないが、地震学者が最大規模と言っているのであれば、それ以上の地震はないと裁判官はいう可能性がある。ただ、地震の規模がそういう事であって、そこから実際に原発を襲う地震動はそうではなくて、例えば駿河湾地震(注;2009年8月)の時、5号機が非常に強く揺れたということは、その地下に地震動に関して低速度層分(注;低速度層とは、5号機東側の地下浅部で、地震波であるS波の速度が周囲の岩盤に比べて3割程度低下している岩盤のこと)があったと言われているけれども、震源地から原発までの間にどういう地層があるかを考慮して、計算過程も計算方法も、いろんな平均値、ばらつきを考慮してやっていくしかないのかなと。

11:59 塩沢弁護士:もう一つ。今度話をしますが、10月15日に、NHKの「クローズアップ現代」という番組がありますね。あの番組で、核燃料サイクルの「まぼろしの見直し案―徹底取材」という非常に興味深い内容を取り上げていた。核燃料サイクルで、つまり原発で核のゴミが出る。それを六ヶ所村に持っていって、取り出したプルトニウムをMOX燃料に変えて、ぐるぐる回すとエネルギーが効率的に利用できるという夢のような話です。それがとうの昔に挫折していると。ある時に民間会社の担当者が「これは経済的に成りたたない。やめるべきだ」と。かなりのところまできっちり認識していて、電力会社のトップに提案していたけれども、それが国のいろんな圧力によって押しつぶされてしまって、いまのような状態が続いているという。それを詳しく取材したドラマというか、レポートです。これなどもビデオとして証拠として出したい。世論としてはどう考えても、エネルギー政策は破綻していることは明らかになっている。NHKは、だから反対だとはいわない。そういうことを抜きにして考えているのはおかしくはありませんかと、国民の前に問題点を提起して、議論する場が必要ではないかという提言なのです。そういうものも、再度皆さんに取り上げていきたいと思います。

12:02 司会;ありがとうございました。今日の裁判について、阿部弁護士から詳しい報告がありました。そのあと、原子力発電が持っている、最近出てきた問題点についてもていねいに触れられて、ありがとうございました。何か質問はあるでしょうか?
    最後に塩沢弁護士がいわれた番組というのは、取り出していくことはできるのですね?

塩沢弁護士;NHKの許可は必要でしょうね。

司会;できるのでしょうね。何か、何年か前に横浜に報道センターみたいなものができて、過去の番組をストックしてあると聞いたことがある。別のルートでも取れると思う。いま取り上げられた問題で、私も六ヶ所村では(核燃料サイクルは)絶対できないと思う。報道もそういう方向でなされていたと思いますが、急に、プルトニウムが使い物になるという論調が出てきたのは、意図して出してきたのかなと思います。少し余分なことを言いましたが、他に。

12;04 林 弘文・原告団長;いま塩沢弁護士がいわれたことですが、「プルトニウム」の問題について言うと、東大の先生で、ちょっと名前が浮かんでこないのですが、「プルトニウム」という本を書かれて、その方が夢のような燃料を取り出すためには、何回サイクルを回さなくてはいけないかの計算をしている。単純な計算ですが、60回燃料を燃やして再処理をして、また分解して再処理やって燃料を取り出す、こういうことを60回やらないとできないと、書いている。現在どういうことかというと、1回でもそれは非常に困難になっている。だから夢のような原子炉はできないというのが明らかになっている。
それから2番目ですが、大阪地裁の大飯原発3,4号機の判決文を福井の方が送ってくれたのですが、もし読みたい人は連絡していただければメールで送ります。183ページもあります。ようやくコピーを取りましたが、非常に読みがいのあるものではないかと思います。
今日は、阿部弁護士が分かりやすく説明していただきありがとうございました。これからどういう問題が起こるかについて言われましたが、浜岡原発の活断層の話がこれから出てくるわけで、先ほど桜井さんから非常にていねいな説明を受けたものですから、できれば桜井さんの方から何かコメントがあればお願いします。浜岡原発については、規制委員会が、871回目ですか、「針貫入試験」というのをやって、浜岡原発の調査をやって、非常に柔らかいという。そんなに古いものではないと言われだしている。桜井さんの方から何かコメントをお願いします。

12:06 原告・桜井;突然の話ですが、規制委員会が7/3の会合で、H断層が活断層の可能性があると指摘しています。中部電力がいろいろ言っても、しかしこれは、爪で傷がつくほどに柔らかいと。
そして最近起こった大きな断層と考えてもさしつかえないほど柔らかい。それについていま私たちが持っている知識でまとめてみました。赤い色の部分が浜岡原発の敷地になります。そして、一番下からH1からH9までH断層。そして海側にもⅯ0、M1、HM5ですか、とにかく海の側にも4つある。これまで指摘してきたのですが、そのうちの8番目の断層のすぐ東側に、活断層が見つかっている。H断層と同じように東西方向だ。中部電力はこのあたりからは点々で表わしていて、はっきりしないということです。でも実際にはこの延長線上のBF2と名前をつけられた場所を掘ってちゃんと調査している。ところがそのデータを一切示していない。そしてその40m南側に実は活断層が見つかっている。産業経済委員会ですか、国が関わっている機関の、坂本さんという方が最近、明らかに活断層だと。これが8万年くらい前に活動していることが分かっていると。ということは、H8断層も8万年くらい前に活動している。その延長上か、枝分かれとして、いま見つかっている活断層が動いているということが考えられる。その場所は、大きな三角形の先っぽのところということになる。
これについては、2月8日に、新潟大の地質の専門家である立石雅昭先生が静岡に来て、私たちが県連の弁護士と「浜岡原発の再稼働を許さない静岡県ネットワーク」として、記者会見で説明してくれるということになっています。私たちが説明をしても説得力はないですが、地質学者が記者団の前で説明をしてくれる。県の危機管理官ですか、そういう人たちにも説明をしてもらう。そのあと、現地見学会も考えている。立石先生もそこまでがんばるよと言っている。その前日には林克さんが中心にやっている「静岡原発をなくす会」が立石先生の講演を企画している。現実にH断層が活断層だということがはっきりしてきて、非常に面白くなってきている。裁判でもぜひやっていただきたいと思います。

12:11 林 克・原告 「静岡原発をなくす会」の林です。ひまわり集会(注;11月15日・駿府公園)の実行委員長をやりましたが、コロナ禍の下で少ないと思っていたのですが、700人の方たちに集まっていただき、ありがとうございました。そして来年知事選があり、浜岡原発再稼働に関しては大事な選挙になる。再稼働にタガをはめるには、茨城の伊藤さんや、新潟の検証委員会の方が言われていたように、県民が要求を出していくことが大事だと。この間、元東大総長で、文部大臣もやった有馬氏が亡くなった。原子力村の村長中の村長と言われていた人ですが、県知事も有馬さんには頭が上がらないと言われていましたが、これからは県の会議も変わるかもしれない。県知事選が大事。2月7日「静岡原発をなくす会」総会では、立石先生の講演があり、H断層の詳しい説明があります。弁護士の皆さんもぜひ参加を。裁判に生かしてほしい。
司会:ほかに質問などありますか。それでは、長い間のご参加ありがとうございました。次回口頭弁論は、2021年5月31日(月)11:00からです。多くの参加をよろしくお願いします。
                                       12:15 終了
 (文責・長坂)


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浜岡原発永久停止裁判 第29回口頭弁論 
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