2019年12月17日13:16
浜岡原発永久停止裁判 第27回口頭弁論 2019年11月20日(水)≫
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浜岡原発永久停止裁判 第27回口頭弁論 2019年11月20日(水) 概要
被告・中電から準備書面(19)、原告から準備書面(29)がそれぞれ提出され、陳述を行った。
●原告からは、原告の林克さんが約15分、準備書面(29)の要約の説明をした(これ自体が異例のこと)。
原発設置県では、原発事故からの避難が最大関心事であること、福島原発事故以来、静岡県のUPZ圏内の市町での避難計画策定が進められているが、住民の安全が確保されておらず、今の状況では、浜岡原発の再稼働はできない声が強いことをまず紹介した。
我が国の原子力災害対策指針が、IAEA安全基準の基本から外れており、新規制基準では、避難計画を対象としていない。
UPZの範囲を31kmに決めた根拠は、被爆線量の過小評価であり、これでは、静岡市、浜松市が防護区域から切り捨てられることになる。
●被告・中電の代理人は、準備書面(19)の概要説明を行った。
「1、本件原子力発電所の安全確保」、「2、電源設備」を柱にして、中電がこれまで主張立証してきた原発の安全確保の概要について説明した。どの項目でも「最新の知見に基づく見直し」を行い、対策の強化をはかり、「安全機能が喪失することは考えられない」としている。その主張をもとに、原告の準備書面(23)と準備書面(25)での「原発の安全機能が失われる危険性の主張」に対する「反論」を展開している。
●次回口頭弁論は、2020年3月9日(月)11:00~ 第一号法廷で行う。
●地域情報センターで報告集会
法廷での準備書面(29)の陳述を行った原告の林克さんの感想、女川原発の再稼働の動き、11/17の「ひまわり集会」の報告、静岡での本庁裁判の報告、今の浜松支部での裁判の現状に対する弁護士としての思いなどが語られた。
被告・中電から準備書面(19)、原告から準備書面(29)がそれぞれ提出され、陳述を行った。
●原告からは、原告の林克さんが約15分、準備書面(29)の要約の説明をした(これ自体が異例のこと)。
原発設置県では、原発事故からの避難が最大関心事であること、福島原発事故以来、静岡県のUPZ圏内の市町での避難計画策定が進められているが、住民の安全が確保されておらず、今の状況では、浜岡原発の再稼働はできない声が強いことをまず紹介した。
我が国の原子力災害対策指針が、IAEA安全基準の基本から外れており、新規制基準では、避難計画を対象としていない。
UPZの範囲を31kmに決めた根拠は、被爆線量の過小評価であり、これでは、静岡市、浜松市が防護区域から切り捨てられることになる。
●被告・中電の代理人は、準備書面(19)の概要説明を行った。
「1、本件原子力発電所の安全確保」、「2、電源設備」を柱にして、中電がこれまで主張立証してきた原発の安全確保の概要について説明した。どの項目でも「最新の知見に基づく見直し」を行い、対策の強化をはかり、「安全機能が喪失することは考えられない」としている。その主張をもとに、原告の準備書面(23)と準備書面(25)での「原発の安全機能が失われる危険性の主張」に対する「反論」を展開している。
●次回口頭弁論は、2020年3月9日(月)11:00~ 第一号法廷で行う。
●地域情報センターで報告集会
法廷での準備書面(29)の陳述を行った原告の林克さんの感想、女川原発の再稼働の動き、11/17の「ひまわり集会」の報告、静岡での本庁裁判の報告、今の浜松支部での裁判の現状に対する弁護士としての思いなどが語られた。
浜岡原発永久停止裁判 第27回口頭弁論
2019年11月20日(水)晴れ
10:00 浜松市地域情報センターホールに原告や傍聴者が集まり始めた。
10:30 裁判所内の部屋で傍聴抽選の予定であったが、全員が傍聴できた。
11:00 裁判が開始。
裁判長は川淵健司、右陪審は荒井格、左陪審は丸谷昴資。
訴訟代理弁護団計22名の弁護団のうち、今日の参加者は10名。
大橋昭夫、森下文雄、塩沢忠和、杉山繁三郎、阿部浩基、佐野雅則、平野晶規、北上紘生、栗田芙友香、青柳恵仁、
被告側は国と中電の15名。
11:00 裁判長;被告・中電から準備書面(19)、原告から準備書面(29)が提出された。原告より補足説明がある。
原告・阿部弁護士:準備書面の要約を原告本人の林克から説明を行う。
原告・林克:(以下に「読み原稿」を掲載します。)
原発事故からの避難は、原発設置県の住民にとって原発事故防護の中で最大の関心事といってもいいと思います。なぜなら福島原発事故時の悲惨な記憶はことあるごとに呼び覚まされるからです。福島原発事故によって実感として原発事故はありうると認識され、原発から至近の距離に住む者にとっては自分が安全に逃げられるのかといつも自分自身に問われることになります。
さて、福島原発事故以来、原発事故の防護対策は大きな変化が見られます。新たな法的な措置にもとづいて、静岡県の広域避難計画に続いてUPZ(緊急防護措置区域)圏内の市町においても避難計画が進んでいます。それは自治体の努力にもかかわらず、住民の関心にこたえ安心できるものになっているでしょうか? 5月に行われた中日新聞の「浜岡原発再稼働の是非とその理由」を首長に聞くアンケートにおいて、「住民の安全が確保される状況にないので答えられない」(牧之原市)「住民の安全安心が確保され、市民の理解がなければ再稼働できない」(掛川市)「市民の安心安全が確実に担保されておらず再稼働できない」(島田市)と、住民の安全安心を再稼働の是非に考える回答が多く、必ずしも避難計画の策定でそれが担保できないと考えているのではないでしょうか。
より安全な住民避難のためには、福島原発事故の原因究明と避難状況の分析、国際基準への依拠・発展が欠かせないと考えますが、これまでの準備書面は、日本の法体系がIAEA(国際原子力機関)安全基準に整合しないこと、避難計画についての個別な課題を述べてきました。今回は国際基準であるIAEA基準との比較で見た場合の我が国の原子力災害対策の問題点、とりわけ、2012年10月に制定した「原子力災害対策指針」の枠組みが、IAEA基準の基本から外れ、静岡県においては最も人口の多い区域の県民の浜岡原発の危険からの安全を損ねていることなどを明らかにしていきます。
第5層を切り離してしまった日本の深層防護
浜岡原発は世界一危険な原発と言われ、やがて必ず来る東海地震の震源域の真上にあります。もし万が一浜岡原発が事故が起きたときに安全に避難できる仕組み、体制になっているでしょうか。住民が確信を持って放射能の危険を回避、低減することができ、それを持って安心を計れるでしょうか。現地に暮らしている実感として、残念ながらそれは否と言わざるをえません。
原災指針は、その前文で、IAEAの「安全基準の最新の国際的知見を積極的に取り入れる等」明記しています。そして日本も批准した原子力安全条約は、原発事故の発生で深層防護の原則、事故の発生を軽い方から重い方へ五つの層によって対処することに基づいて防護措置を講ずることを述べています。
この深層防護の中で、第5層の防護レベル、すなわち原発周辺の住民避難を中心とする住民等と環境に対する放射線防護はもっとも需要な課題です。それは、IAEA安全基準の深層防護に限らず原子力分野における国際的な深層防護の最も需要な基本的問題として、アメリカの原子力規制委員会NRC、西ヨーロッパ原子力規制協会WENRAでも位置づけられています。
実際アメリカのショアハム原発は、原発が完成しながら避難計画が不備だという理由で稼働しませんでした。
しかし新たに設けられた原発の稼働の是非を審査する新規制基準において、防災計画、避難計画を対象とせず、切り離されたものとして自治体の責務としました。これでは住民にとってほんとうに安全に逃げられるのかについて、原発の稼働の条件とならず、どこも審査しないことになります。
原子力規制委員会が作成した『実用発電用原子炉に係る新規制基準の考え方について』は、避難計画の実効性の評価・審査は、規制委員会の権限外である、原子炉の設置に係る許可基準に避難計画を含める必要はないと断言しています。
しかしこれは、IAEA安全基準が義務付けではないという国の裁量の問題、また法体系が違うという形式論を言っているに過ぎず、地震などの自然災害が他国と比べて著しく頻発すると言っていいい我が国において、なぜ採用する必要がないのか? それで国民の安全安心は守られるのかについて何も説明していないと考えます。
静岡県は、やがて必ず来る東海地震の複合地震による広域避難が必至といえるほど可能性の高い地域、したがって安全な避難計画が求められていますが、それを稼働の条件として検証しないことによって住民を危険に陥れています。
無理やり「おおむね30km?」
世界一危険と言われる浜岡原発の至近に住みながら、静岡県における二大都市、浜松市民と静岡市民は、原発災害について何の手立ても実施されておらず、平穏に生きる権利が脅かされています。事故時に全村避難した福島県飯館村の村役場と福島第一原発までの距離は約40km、静岡県における大都市、浜松市、静岡市のそれぞれの市役所と浜岡原発の距離は、39km、45kmであるにもかかわらず、地域防災計画の中にも市民の防災をうたっていません。2013年の指針策定時においては、PPA(プルーム通過時の被ばくを避けるための防護措置を実施する地域)の検討をうたわれましたが、2015年の改定でこれが削除され、PPA(参考値として50キロ以内)は法的規制を実質的に解除されたことで外されてしまいました。
一方、防護区域のUPZのおおむね30kmはどのように線引きされたのでしょうか? 福島原発事故の放射性物質の放出量と各発電所の合計出力などによってシミュレーションし、小さい方から累積した場合の97%累積出現率にあたる距離を算出しています。静岡県の場合にはこの97%方式によってUPZの範囲を31kmと決めました。しかし原告らはこの決め方について、①「放射性物質の放出量」は、福島第一原発事故と同等と想定したのはあまりに過小ではないか? ②既出の97%方式により3%切り捨てる根拠がなく、過小評価の一因、③「避難計画作成の基準にする被ばく線量」について、IAEA基準を参照して「最初の7日間の被ばく線量合計で100ミリシーベルトに達する範囲」を目安にしているが、100ミリシーベルトは高すぎる。 といった理由から、UPZがおおむね30kmというのはあまりに狭すぎると主張します。
静岡県においてもし97%方式をやめ、100%値で計算すれば、62.0kmとなり、富士川西側から愛知県境にまで広がることになります。浜岡原発から50km以内の区域に住む人口は、静岡市、浜松市を含めて214万人、50km圏内では全国でいちばん多くの人口がありますが、これらの区域がすべて防護区域から切り捨てられています。
PPAを放棄した弊害
元々PPAは、プルームについて空間放射線量率の測定だけでは防護措置を講じることは難しいというのが、設置の趣旨でした。
しかし2015年3月の改正で「緊急時においては、どの程度の規模の漏えいがどのようなタイミングで起こるかを事前に正確に把握することは困難」として、スピーディの廃止を含む予測主義から実測主義に転換され、PPAの廃止が決まりました。
はたしてそうでしょうか? 予測システムは迅速に対応するために必要だから実施するのであって、その精度こそ上げるべきです。知事さんの集まり、全国知事会も「避難ルート等の検討や準備・モニタリングの実施などには放射性物質の拡散を予測する情報も重要と考えられる」として予測主義も重要としています。
原子力規制庁は、迅速な判断をするには予測システムの精度を上げ、実測と合わせて活用すべきなのに、予測そのものをやめるという不合理な結論を導いており、防護措置の迅速な決定・実施が遅れることになります。
IAEAはUPZ圏外にゾーンの設定をしていないのでしょうか? IAEAは、経口摂取被ばくに対して「全面緊急事態の宣言に基づく取り決めが準備段階で整備される距離」として2つのゾーン設定を推奨しています。拡大計画距離(EPD)と飲食物摂取及び日用品計画距離(ICPD)です。熱出力1000MW以上の原子力発電所については、EPD半径を100km、ICPD半径を300kmとする。これらのゾーンは、住民の健康を守るために重要だと考えられますが、原災指針は採用していません。
注目すべきは指示の出し方です。EPD内の人には、放射性プルームの放出の前かまたは直後に「不注意による経口摂取を減らすよう」指示が行われ、ICPD内の人にも、放出の前か又は直後に、取り決められた制限内容を実行するよう指示が出されています。
日本においても早期防護措置、飲食物摂取制限の措置という経口被ばくに対する防護措置は設定されていますが、ここでも実測主義が貫かれていて迅速な手が打てません。
IAEAは、具体的なゾーンを導入するのは、そのことで放射能の防護の実施すべき措置とその準備の必要性を「強調するためである」としています。ゾーンが設定されていればその住民は、こういうことがおきたらこれこれこうするのだと言うことが分かります。しかも、ゾーン指定をしておくことで、公衆を防護するために必要な措置を迅速に実施できます。実測によって放射能の正確な沈着状態を確認することが容易ではないからです。
これは経口被ばくの防護措置についてのIAEAと日本の現行制度との違いを述べたものですが、ゾーンを導入しての防護対策は、廃止をされたプルーム対策PPAの設置においても大いに検討に値するものです。
静岡県で最も人口の多いところの住民の安全が守られない
静岡県においては、31km圏外の、静岡市や浜松市を含む大きな人口の間近かに、世界一危険な浜岡原発があるにもかかわらず、そしてまた福島原発事故全村避難した飯館村と原発からの距離が大差ないにもかかわらず、ほとんど原発災害に防護措置が為されないことになります。
静岡県民にとって、安心して生きる権利を奪われている、まさに重大事であるといわなければなりません。
(以下に、準備書面(29)を掲載します。)
(はじめに)
1.これまでの、避難計画をめぐる原被告間の主張
(1)原告らはこれまで、いわゆる「深層防護」を基本とする原子力災害対策、とりわけ第5の防護階層である避難計画が実効性あるものとして確立されていることが原発再稼働の必須条件でなければならないとの立場から、平成26年4月9日付準備書面(6)、同27年7月6日付同(11)、同
28年2月16日付同(15)、同年11月9日付同(17)、同月13日付同(18)により、本件浜岡原発に関する避難計画がこの必須条件を満たしていないことを、繰り返し主張してきた。即ち、我が国の原発関連法体系は、原子力災害対策に関する「確立された国際的な基準」としてのIAEA安全基準が求めている避難計画事項を、原発の設置許可、従ってまた再稼働許可の要件とはしておらず、原子力規制委員会による審査対象とはせず、その策定を自治体の責任にしてしまっているのである。なぜ原発事故時の住民避難について自治体に全責任が負わされているのか。事故原因者である電力事業者が明確に存在し、国がエネルギー政策の位置づけをもって設置・稼働を許可しているにもかかわらずである。原告らは、ここに原子力災害の特殊性を軽視、無視した日本の原子力政策の問題点が如実に表れていると見る。責任を押しつけられた自治体からこれまで提出された「地域防災計画(原子力災害対策編)」はいずれも全く現実性がなく、本件浜岡原発に関するそれも同様である。それがいかに不備で実効性・実行可能性がないかは、前記準備書面で具体的に指摘している。
(2)これに対し被告は、平成29年3月6日付準備書面(8)で、乙A第2号証として提出された原子力規制委員会の略称「考え方」に全面的に依拠し、原告らの前記主張に対する反論をしている。しかしこの「考え方」は、原発の安全を確保するために原子力事業者たる電力会社を規制する立場である規制委員会が、自らの審査対象から住民避難計画事項を外して自治体の責任としてしまったことが全国各地の原発訴訟で重大な争点の1つになっている中で、この争点に関する被告電力会社側の準備書面のいわば「虎の巻」として作成・公表されたと言うべきものであるが、自治体任せにすることを正当化する積極的理由付けはなく、言い訳に終始している内容である。
(3)この被告準備書面(8)に対する反論として、原告平成29年7月4日付準備書面(21)では、日本の法体系がIAEA安全基準に整合しないこと、IAEA安全基準が避難計画の実行可能性を原子力事業者に対する規制としていること、本件原発に関する避難計画に明らかな不備があることの3点を、重ねて明らかにしている。
2.本準備書面の目的
(1)今回の準備書面(29)は、国際基準であるIAEA基準との比較で見た場合の我が国の原子力災害対策の問題点、とりわけ、規制委員会が、自治体における地域原子力災害広域避難計画等作成のための指針として2012年10月に制定した「原子力災害対策指針」(以下「原災指針」)の枠組みが、IAEA基準の基本から外れ、静岡県においては最も人口の多い区域の県民の浜岡原発の危険からの安全を損ねていることなどを明らかにする。
そのことを踏まえ次回には、IAEA基準と原災指針との矛盾の集中点であるUPZ圏(緊急防護措置計画区域、浜岡原発では31km圏)について、実際のUPZ圏内の各自治体における避難計画の策定状況がどうなっているかを、各自治体に対するアンケート調査結果等を踏まえて明らかにする予定である。
3.折りしも今
去る11月12日、仙台地裁に対し、東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)から30キロ圏内に住む石巻市民17人が、石巻市などが策定した広域避難計画には実効性がないとして、宮城県及び石巻市を相手方とし、再稼働の事実上の前提となる地元同意差し止めを求める仮処分を申し立てた。
今後全国各地で、避難計画の不備が鋭く問われていく。
第1 福島原発事故から原発災害対策が変わったが・・・
1.重い責任が問われるべき避難過程における多くの悲劇的な死
(1)2011年3月の東京電力福島第一原発事故(以下「福島原発事故」)をめぐり、旧経営陣3人が業務上過失致死傷罪で強制起訴された裁判で、東京地裁は同年9月19日、3被告人にいずれも無罪の判決を言い渡した。3人は、原発の主要施設の敷地の標高(約10メートル)を上回る津波が来ると予想できたのに対策を怠って事故を招き、4・5キロ離れた双葉病院(福島県大熊町)の入院患者らに避難を余儀なくさせ、44人を栄養失調や脱水症状で死亡させたなどとして強制起訴された(東京地裁平成28年(わ)374号事件)。
(2)被告人らは無罪とされたものの、起訴理由としての原発災害における避難の過程における甚大な被害は、原発事故の責任を問うわかりやすい事例であることはまちがいない。原発事故がなければ避難の必要はなく、安全に避難できるかどうかは原発を運営する上で必須の条件の一つであると一般的には考えられる。
しかし福島原発事故までは、国や事業者は「原発は放射能を敷地外にまで放出しない」と説明し、それに基づいた安全対策が採られてきた。静岡県においてもかつて浜岡原発設置に反対する住民が避難計画を作ってほしいと要請しても、敷地外まで放出しないという国、事業者の主張を理由に避難計画をつくることはなかった。
2.新たな原発災害対策の枠組み
だが、福島原発事故で状況は一変した。
(1)まず、1999年に発生したJCO臨界事故を受け、災害対策基本法と核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の特別措置法として同年に制定された原子力災害対策特別措置法(以下「原災法」)を含む各種の法令、指針、計画、運用マニュアル等は、福島原発事故において事故の進行に対する事態に対応できず多くの混乱を生み出した。そのため、災害対策基本法(以下「災対法」)に「福島事故の反省にたち、防災に関する制度の在り方について所要の法改正を含む全般的な検討を行う」ことが加えられ、さらにこれを受けて原災法も、2012年9月に改正され、「国は、大規模な自然災害及びテロリズム等による原子力災害の発生も想定し、原子力災害を最小にすべく万全の措置を講ずる責務を有すること、原子力災害対策本部の強化と緊急事態応急対策の実施を盛り込むこと、原子力災害対策重点区域の見直し、新設される原子力委員会においては原子力災害対策指針を定めること」等が明確化された。
(2)そして、前述のとおり同年10月に規制委員会が制定した原災指針は、その目的を、「国民の生命及び身体の安全を確保することが最も重要であるという観点から、緊急事態における原子力施設周辺の住民等に対する放射線の重篤な確定的影響を回避し又は最小化するため、及び確率的影響のリスクを低減するための防護措置を確実なものとすること」とした。
3.新たな原発災害対策で静岡県民は守られるのか?
(1)原告らが暮らす静岡県に存在する浜岡原子力発電所(以下「浜岡原発」)は、たびたび「世界一危険」と言われる。やがて必ずくる東海地震の震源域に立地しており、こうした立地は世界でも例を見ないという意味で使われている。福島原発事故後、増々浜岡原発に対する安全と安心の両面から不安が増大している。「安全」というのは客観的な基準での科学的保障であることに対して、「安心」はそれをもとにした主観的な信頼感覚と言われている。2011年5月に、全国の原発の中で唯一政府が中部電力(以下「中電」)に対して浜岡原発の停止を要請し、中電もこれを受け入れたのは住民への安心の確保の措置であったと考える。
(2)では、前述のごとき法整備による放射線の重篤な影響を回避・最小化・低減するための防護措置によって、浜岡原発と隣接する静岡県民の安心を図ることができたのだろうか。それは福島原発事故の教訓をふまえ、もし万が一浜岡原発で事故が起きたときに安全に避難できる仕組み、体制になっているだろうか。住民が確信を持って放射能の危険を回避、低減することができ、それを持って安心を計れるだろうか。現地に暮らしている実感として、残念ながらそれは否と言わざるをえない。
4.IAEA安全基準の基本を外し弱めている
(1)新たな原発事故からの安全の枠組みについて、前記原災指針は、その前文で、国際原子力機関(以下「IAEA」)の「安全基準等の最新の国際的知見を積極的に取り入れる等、計画の立案に使用する判断基準等が常に最適なものになるよう見直しを行う」と明記している。
にもかかわらず実際は、いかにその基本を外し、それを弱めているために著しく避難計画における安全を損ねているかを、本準備書面では、京都自治体問題研究所の市川章人『IAEA基準との比較対照で見る日本の原子力災害対策の問題点』(以下「問題点」)に依拠して主張する。
(2)IAEAの防護措置と考え方については、「緊急事態時に公衆を防護するための措置について、その責任者の理解を促進すること」を目的にした IAEA文書に基づく。引用は、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構JAEAが翻訳した『軽水炉の過酷な状況に起因する緊急事態において公衆を防護するための措置(翻訳資料)』 (2016年5月)を用いる (以下「IAEA説明文書」という)。
第2 原発事故災害対策の国際基準としてのIAEA安全基準
1.原子力安全条約で深層防護をうたう
(1)電気事業連合会は、「原子力発電所の安全確保の考え方は『深層防護』を基本としている」とする。「人間はミスを犯す」「機械は故障する」ことを前提に、人間の誤操作や機械の誤動作があっても安全が確保されることを目指しており、仮にトラブルが発生しても、トラブルの拡大を抑え、影響を最小限に止めることを目指している(電事連HPより)。「深層防護」とは、原発における安全を確保するために、ある目標を持った防護レベルを設定して、あるレベルの防護に失敗したら次のレベルで防護するという概念で、多層の防護を組み合わせることによって、全体として防護策の信頼性と実効性を高めようとするものである。
1986年のチェルノブイリ原発事故を契機に、1991年にIAEAにより原子力施設の安全確保を目的とした「原子力の安全に関する条約(原子力安全条約)」が提案され、日本を含む38か国が署名、日本も1995年に批准し96年に発効した(現在80か国)。
これと同時に、IAEA安全基準として原子力安全の専門家による報告書INSAG-10が制定され、深層防護に基づき対応することが国際的に共通の基準となり、「原子力安全条約」においても深層防護が取り入れられた。
その中で、設計上想定される事故(著しい炉心損傷が発生する事故)の発生を防止する対策(第3層まで)に加え、 第4層を「事故の進展防止およびシビアアクシデントの影響緩和を含む、過酷なプラント状態の制御」、第5層を「放射性物質の大規模な放出による放射線影響の緩和」としてサイト外の緊急時対応をうたっている。このように、原子力災害時の避難が原発の安全確保の考え方として定められ、そのための具体的な防護策が講じられることになった。
(2)「原子力安全条約」は前文で、「原子力の安全に関する責任は原子力施設について統括権を有する国が負うことを再確認し」、目的として「原子力施設に起因する電離放射線による有害な影響から個人、社会及び環境を保護するため、原子力施設において、放射線による潜在的危険に対する効果的な防護を確立し及び維持すること」(1条)を掲げた。
放射線防護については「いかなる個人も国内で定める線量の限度を超える放射線量にさらされないことを確保するため、適当な措置をとる」(15条)。「原子力施設設計及び建設にあたり、事故の発生を防止し及び事故が発生した場合における放射線による影響を緩和するため、放射性物質の放出に対する信頼し得る多重の段階及び方法による防護(深層防護defence in depth)が講じられること」(18条)とうたわれた。
このように条約は、原発事故に関する国の責任が明記され、個人が限度を超える線量にさらされないために深層防護を講じることを確立した。
2.第5層の防護レベルが最も重要な課題
(1)そして、この深層防護の中で、第5層の防護レベルである放射性物質の大量放出時のオフサイト緊急対応、すなわち原発周辺の住民避難を中心とする住民等と環境に対する放射線防護はもっとも重要な課題である。それは、IAEA安全基準の深層防護に限らず原子力分野における国際的な深層防護の最も重要な基本的問題として、アメリカの原子力規制委員会NRC、西ヨーロッパ原子力規制協会WENRAでも位置づけられている。
(2)福島原発事故前までは第3層までの防護策しか講じられなかったが、あの実際の現場の混乱、放射線が降り注ぐ中でのむやみやたらの避難、家族がばらばらにふるさとを追われる困難、その中での人生が引き裂かれる思い、そして避難の過程での多くの悲惨な死、「その反省を元に」法令改正含む措置が実施され、本来ならばより多重に安全を守るべき第4層、そして第5層も含めた対策が必要となるはずだった。
3.第5層を切り離してしまった日本の深層防護
(1)しかしながらそれは果たされなかった。災対法は「国は、大規模な自然災害及びテロリズム等による原子力災害の発生も想定し、原子力災害を最小にすべく万全の措置を講ずる責務を有すること、原子力災害対策本部の強化と緊急事態応急対策の実施を盛り込むこと」と国の責務を規定したにもかかわらず、新たに設けられた原発の稼働の是非を審査する新規制基準において、防災計画、避難計画を対象とせず切り離されたものとして自治体の責務とした。これは安全基準の原則を分割分離するものである。
(2)アメリカでは、電気事業者が地元自治体の協力を得てつくる緊急対応計画が原発稼働の条件とされている。アメリカ・ニューハンプシャー州シーブルク原発では、10マイル圏内に4つの自治体を持つマサチューセッツ州知事が、避難計画の実効性、実現可能性に問題があることを指摘、緊急時対応計画の承認を撤回した。ニューヨーク州ショアハム原発でも1984年に完成したが、地元の州、自治体が緊急対応計画の作成協力を拒否、一度も稼働することなく89年に廃炉が決まった。
(3)なぜ日本では、第5層の措置が新規制基準から外されてノウハウのない自治体に任されたのか。
大混乱の福島事故からすれば、当然それを検証して避難計画を国の責任でつくり、安全かどうかを新たな規制基準に基づいて規制委員会がその地域の住民が安全に逃げられるのかどうかの実効性を判定し、原発再稼働の条件とすべきではないか。
しかし現状は、原発災害の避難計画の策定を、原発の稼働とは切り離して自治体に任せているのである。新規制基準は、機械装置の安全は取り上げても、人の命を守る措置については無視していると批判されるゆえんである。
4.第5層を切り離す規制委員会の「考え方」には道理がない
(1)新規制基準に基づいて原発の安全を審査する原子力規制委員会は、「確立された国際的な基準を踏まえて原子力利用における安全性をはかるため必要な施策を策定し、又は実施する事務」(原子力規制委員会設置法第1条)とし、「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資するため、原子力利用における安全の確保を図ること任務とする」(同第2条)とされている。この場合の「確立された国際的な基準」は、もちろんIAEAが安全基準として体系的に整理してまとめているものである。
しかるに、原子力規制委員会が作成した『実用発電用原子炉に係る新規制基準の考え方について』(以下「考え方」)では、新規制基準とIAEAの定める安全基準との関係性、日本国内における適用については次のようだとする。
①AEA安全基準は加盟国への義務付けではないのでそのまま日本に採用する必要はない。
②IAEAが安全基準に関連して採用している深層防護の考え方は、第1層から第5層まですべての対応を原子力事業者に求めていない。
③したがって日本の設置許可基準としては第4層に対応する防護レベルまでしか審査、許可の対象としない。
④第5層の防護レベルである所内(インサイト)と所外(オフサイト)の緊急計画と緊急手順の整備は、国、地方公共団体、原子力事業者が災対法、原災法に基づき実施すればいい。
つまり、①住民避難計画の提出を原子力事業者に求める必要はない、②避難計画の実効性の評価・審査は、規制委員会の権限外である、③原子炉の設置に係る許可基準に避難計画を含める必要はないと断言しているのである。
しかしこれは、IAEA安全基準が義務付けではないという国の裁量の問題、また法体系が違うという形式論を言っているに過ぎず、地震などの自然災害が他国と比べて著しく頻発すると言っていい我が国において、なぜ採用する必要がないのか?それで国民の安全安心は守れるのかについては何も説明していない。
(2)この対応は福島原発事故の教訓を学ばず、今後の原発事故の対応を困難にするものである。また日本が批准した「原子力安全条約」の「原子力の安全に関する責任は原子力施設について管轄権を有する国が負うことを再確認し」という精神に明らかに反するものである。
新規制基準とIAEAの基準の最も大きな齟齬は、見てきたように深層防護の第5層を他から切り離したことである。そのため、重要なところで外見は同じでもその理念に反していたり、それを弱めていたりしており、福島原発事故の教訓を反映したものとなっていない。
以下、具体的な問題で、IAEAの基準と比較しながらこの点を明らかにする。
第3 自治体だけに責任を負わせた避難の仕組み
1.災対法と原災法は整合しているか?
伊勢湾台風を機に制定された災対法によって、国土並びに国民を守るために、防災計画の作成、災害応急対策等の災害対策の基本を定めるとされ、その対象とされる災害は自然災害(地震災害対策、津波災害対策、風水害対策、火山災害対策、雪害対策)にとどまらず、海上災害対策、航空災害対策、鉄道災害対策などの事故災害も含まれており、その中に原子力災害対策が位置づけられている。そして自治体は、自ら策定する地域防災計画で、各災害のために処理すべき業務などを具体的に定めることになった。
一方、「原子力災害が放射能を伴う災害である特性に鑑みて」制定された原災法は、国民の生命、身体及び財産を守るために特別に制定された法律である。同法によれば、いったん事故が起きて内閣総理大臣が「原子力緊急事態」宣言を出した場合には、内閣総理大臣に全権が集中し、政府だけではなく地方自治体・原子力事業者をも直接指揮し、災害拡大防止や避難などをすることができることになっている。
では、この二つの法体系の整合性はどうだろうか。原発災害の放射能を伴う災害であることの特殊性は貫徹されているだろうか。
2.放射能を伴う災害であることの軽視
(1)前述のとおり、2012年10月に原災指針が制定され 、日本の原子力防災体制が新たなものとなったところ、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構JAEAは 「一番大きな変化は、(中略)原子力災害対策指針に、IAEAの定めた原子力防災に係る国際基準が取り入れられたこと」と述べている。原災指針も前文で、IAEAの「安全基準等の最新の国際的知見を積極的に取り入れる等、計画の立案に使用する判断基準等が常に最適なものになるよう見直しを行う」と明記している。
それでは原災指針は、どのように原子力災害の特殊性をとらえているかを見ると、次のような説明である。
・原子力災害が発生した場合には被ばくや汚染により復旧・復興作業が極めて困難となることから、原子力災害そのものの発生又は拡大の防止が極めて重要である。
・放射線測定器を用いることにより放射性物質又は放射線の存在は検知できるが、その影響をすぐに五感で感じることができない。
・平時から放射線についての基本的な知識と理解を必要とする。
・原子力に関する専門的知識を有する機関の役割、当該機関による指示、助言等が極めて重要である。
・放射線被ばくの影響は被ばくから長時間経過した後に現れる可能性があるので、住民等に対して、事故発生時から継続的に健康管理等を実施することが重要である。
(2)しかしそれにもかかわらず、原災指針はその後で「ただし、情報連絡、住民等の屋内退避・避難、被災者の生活に対する支援等の原子力災害対策の実施については、一般的な防災対策との共通性又は類似性があるため、これらを活用した対応の方が効率的かつ実効的である。したがって、原子力災害対策は、前記の特殊性を考慮しつつ、一般災害と全く独立した災害対策を講ずるのではなく、一般的な災害対策と連携して対応していく必要がある」とする。つまり、避難の核心部分で、一般災害と同じようなものだからそれに準じて計画を策定するというのである。これが、自治体の責任で避難計画をつくる根拠とされている。これでは、放射能の特殊性を有する原子力災害について、原災法の目的における前段の指摘が後段の結論に全く結びついておらず、とりわけ避難の過程での放射能災害の特殊性は著しく軽視されている。
(3)原子力安全条約にあるように、本来、原子力規制を一元的に規制管理する一環として国が実施すべき避難計画を、一自治体の責任と能力で住民を避難させることによってどれほどの困難が生じるかを、以下静岡県内の場合に照らして具体的に主張する。
第4 「原子力災害対策重点区域」の問題―静岡県民の安全は?
1.浜松市、静岡市の地域防災計画には原発災害対策がうたわれていない
(1)原災指針は、原発事故に対して緊急事態とその防護措置を設け、警戒事態、施設敷地緊急事態、全面緊急事態と進行ごとに緊急時活動レベルを設定する。また、緊急事態の防護措置についての手順が次の区域によって定められている。
①PAZ予防的防護措置を準備する区域5㎞
緊急事態の判断基準(EAL)に基づき 放射性物質放出前における即時避難 等を、予防的に準備する区域。
②UPZ緊急防護措置を準備する区域 30㎞
防護措置実施の判断基準(OIL)や緊急事態の判断基準(EAL)に基づき、避難、屋内退避、安定ヨウ素剤の予防服用等を準備する区域。
(2)世界一危険と言われる浜岡原発の至近に住みながら、静岡県における二大都市、浜松市民と静岡市民は、原発災害について何の手立ても実施されておらず、平穏に生きる権利が脅かされている。事故時に全村避難した福島県飯館村の村役場と福島第一原発までの距離は約40㎞、静岡県における大都市、浜松市、静岡市のそれぞれの市役所と浜岡原発までの距離は、39㎞、45㎞である。
下表は、京都自治体問題研究所が作成した「政令指定都市の『地域防災計画』における原子力災害対策計画の策定状況」であるが、「世界一危険」にもかかわらず静岡市も浜松市も地域防災計画の中には当該市民の原子力災害対策計画をうたっていない。全村避難した飯館村と原発からの距離はほぼ変わらないにもかかわらず、原発災害から市民を守る計画、原子力災害対策計画が策定されていない。災対法の中で地域防災計画においてそれを策定することがうたわれているのであるから、これは両市の怠慢と言わざるをえない。他の政令市と比べて原発からの距離があるわけではなく、逆に唯一政府が停止を要請した原発からの距離が至近であるにもかかわらず策定していないのである。
2.無理やり「おおむね30㎞?」
(1)2013年の指針策定時においては、PAZ、UPZとともに、「プルーム(気体又は微粒子状の放射性物質を含む気流)通過時に被ばくを避けるための防護措置を実施する地域」(以下「PPA」)の検討とうたわれたが、2015年の改定でこれが削除され、PPA(参考値として50キロ以内)は法的規制を実質的に解除された。静岡市、浜松市が地域防災計画に原発災害をうたっていない理由はここにある。
原発事故の「原子力災害対策重点区域」以外の防護は、「屋内退避」、「緊急時には、施設の状態をもとに原子力規制委員会が対応を判断」というのみである。
また自治体に任されているので、かなりの専門性を持たない限り策定は困難である。浜松市、静岡市以外の政令市の地域防災計画の中で原子力防災がうたわれている自治体においても、そう深いものになっているとは言えない。
(2)では重点区域の境界線である「おおむね30㎞」は、どのように線引きされたのだろうか。この区域を定めた原子力規制庁の計算は以下のとおりである。
まず、福島原発事故の放出量と各発電所の合計出力による補正を行った放出量(福島原発事故の放出量に、各発電所の合計出力と福島第一原発1~3号機の合計出力の比を乗じた放出量)の2種類を仮定した。そして放出継続時間は、福島第一原発2号機の放出継続時間10時間と仮定、年間1時間毎の8760(24時間×365日)の実気象データを使って方位別に線量を求め、小さい方から累積した場合の97%累積出現確率にあたる距離を算出している(97%方式)。
この結果浜岡原発においては、原子力災害対策重点区域の目安は、PAZの目安の最大距離が1.7㎞(東) 、UPZの目安の最大距離が30.9㎞(東)となり、UPZの範囲は31㎞と設定された。
原子力規制庁によるこの算定方式について、京都自治体問題研究所『原発事故 その時どこへ?』(P6)は次のように問題点を指摘している。
①「放射性物質の放出量」は、福島第一原発事故と同等と想定し、加えて原発の出力に比例した量の放出も考慮するのはあまりに過小。福島の場合は放射性物質の一部しか放出せず、全部していれば1400倍となる。さらに使用済み核燃料も拡散していれば膨大な量となる。
②「拡散の様子」は過去のある1年間の風速や風向のデータを用いて、原発からの方位や距離別にどの程度の汚染濃度があるかのシミュレーションで推定。既出の97%方式では風向きの出現頻度が少ない方位のデータが切り捨てられるため、頻度が少ない方位では線量が高くてもゼロとして扱われる。そもそも3%切り捨てる根拠がなく、100%データにすればかなり広い範囲に拡大する。また16方位に分けて各方位内の平均をとっているが、過小評価の一因である。
③「避難計画作成の基準にする被ばく線量」について、IAEA基準を参照して「最初の7日間の被ばく線量合計で100ミリシーベルトに達する範囲」を目安にしているが高すぎる。
(3)かかる指摘から明らかなとおり、規制庁の前記算出方式は、UPZ以外の原発災害に対する防護措置する区域について不当に狭めるものであり、住民にとっては、避難計画によって安心して暮らせる権利を奪われるものである。
②の算出について静岡県に関係させて指摘すると、静岡県においてもし97%値方式をやめ、100%値で計算すれば「すそ値」(原子力規制庁が算出、7日間で100ミリシーベルトになる区域)は62.0㎞となり、富士川西側から愛知県境にまで広がることになる。16方位のうち風下となる確率は平均6.25%(100%÷16)となり、そのうち放射線濃度の高い方から3%を切り捨てられるから3.25%しか残らない。100%値で計算すれば100mSvを超える最も遠い距離は、97%値の2倍となること(31㎞が62㎞)が裏付けられる。浜岡原発から50㎞以内の区域に住む人口は静岡市、浜松市を含め214万人、50㎞圏内では全国でいちばん多くの人口を有するが、これらの区域がすべて防護区域となることを切り捨てられることになる。
統計上、過大過小の値を双方とも切り捨てて平準化する手法はあるが、線量が高い値だけ3%切り捨てる根拠はなく、防護措置をする区域を過小にするためのものと見ざるを得ない。
3.人口の多い区域の防護措置を意図的に除外
(1)全国の原発所在地において100%値方式によって計算するならば、京都市をはじめとして多くの政令市や県庁所在地など、比較的大都市が入ることになる。恣意的にそれらの人口が多い区域を防護措置が必要とする区域になることを避けた措置と言わざるをえない。
結果として浜岡原発に関する防護措置においては、福島原発事故において全村避難した飯館村の事務所所在地と原発からの距離がほぼ同じである浜松市、静岡市など人口が集中する区域が外れることとなったのである。
4.PPAを放棄した弊害
(1)静岡県にかかわる、原災指針における防護措置が必要とする区域の問題は、これにとどまらない。
2013年の指針策定時においてはPAZ、UPZとともに「プルーム通過時に被ばくを避けるための防護措置を実施する地域」の検討という項目があり、「プルームについては、空間放射線量率の測定だけでは通過時しか把握できず、その到達以前に防護措置を講じることは困難である。このため、放射性物質が放出される前に原子力施設の状況に応じて、UPZ外においても防護措置の実施の準備が必要となる場合がある。」とし、迅速に防護措置を講じるため、事前にゾーンを設定するという積極的な立場が表明されていた。即ち、原災指針(2013年9月5日改正)には、「プルーム通過時の被ばくを避けるための防護措置を実施する地域(PPA)の検討」として以下の記述がなされていた。
「UPZ外においても、プルーム通過時には放射性ヨウ素の吸入による甲状腺被ばく等の影響もあることが想定される。つまり、UPZの目安である30kmの範囲外であっても、その周辺を中心に防護措置が必要となる場合がある。
プルーム通過時の防護措置としては、放射性物質の吸引等を避けるための屋内退避や安定ヨウ素剤の服用など、状況に応じた追加の防護措置を講じる必要が生じる場合もある。また、プルームについては、空間放射線量率の測定だけでは通過時しか把握できず、その到達以前に防護措置を講じることは困難である。 このため、放射性物質が放出される前に原子力施設の状況に応じて、UPZ外においても防護措置の実施の準備が必要となる場合がある。
以上を踏まえて、PPAの具体的な範囲及び必要とされる防護措置の実施の判断の考え方については、今後、原子力規制委員会において、国際的議論の経過を踏まえつつ検討し、本指針に記載する。」
(2)ところが、2015年3月4日原子力規制庁の『UPZ外の防護対策について』によれば、「緊急時においては、どの程度の規模の漏えいがどのようなタイミングで起こるかを事前に正確に把握することは困難」、「これらを的確に捉えて防護措置を講ずべき地点を正確に特定することはできない(P1)」のでこれまでPPAの役割としていたヨウ素剤の服用について効果が得られない、したがって「時間的・空間的に連続した放射線状況を把握できる緊急時モニタリング体制を整備することにより、放射性物質の到達や流跡の概要を把握することは可能である」とし、PPAの設定はやめにして「屋内退避が最も実効的である(P3)」というのである。
PPAを放棄する理由として、規制庁が指摘する上記の理由を整理すれば、以下のとおりである。
・放射性物質の拡散予測は困難だから予測システムの活用をやめ、モニタリングで判断する実測主義に変更する。
・緊急モニタリング体制の整備で放射性物質の到達・流跡の概要はつかめるから、PPAの区域設定は不要。
・実測後の安定ヨウ素剤服用は、服用時期が遅くて効果がないからやめる。
・UPZ外の防護措置は屋内退避で十分。
・UPZ外に拡張区域(PPA)を作って全域で屋内退避を実施するのはPAZやUPZの対応の妨げになる。
(3)だが、果たしてそうだろうか。予測システムは迅速に対応するために必要だから実施するのであって、それができないからやめるでは本末転倒であり、「正確に把握することが困難」であることを前提に、その精度を上げるべきである。
都道府県の知事で構成される全国知事会も、「避難ルート等の検討や準備・モニタリングの実施などには放射性物質の拡散を予測する情報も重要と考えられるため、『拡散計算も含めた情報提供の在り方』を検討する国の分科会において、引き続き関係地方公共団体の意見を十分聴いた上で、具体的な検討を進め、必要な対策を講じること」として、モニタリングと拡散予測双方が必要と「原子力発電所の安全対策及び防災対策に対する提言(2019年7月23日)」などで2015年以来要望している。
「プルーム通過時の防護措置が必要な範囲や実施すべきタイミングを正確に予測することはできず」を安定ヨウ素剤服用否定の理由にするのなら、屋内退避についても適切なタイミングでの開始・解除が無理になるのではないか。
原子力規制庁は、迅速な判断をするには予測システムの精度を上げ、実測と合わせて活用すべきなのに、予測そのものをやめるという不合理な結論を導いており、防護措置の迅速な決定・実施が遅れることとなる。また、実測主義は被ばくが前提になっている。
5.IAEAのUPZ圏外の防護措置
(1)ではIAEAでは、UPZ圏外で全く避難を行っていないのだろうか。日本のように実測主義で防護措置を行っているのだろうか。IAEAは、UPZ外の地域においても避難をさせる例を示している。注目すベきは、避難指示の発動の仕方と対象範囲である。IAEAが例示するのは、UPZ外の一地点でもモニタリングチームの測定値の一部がOIL1(IAEAでは空間線量率1000μSv/h)を超過すれば、その地点を含む行政上の区域全体の居住者に避難を勧告するというものである(IAEA説明文書)。これは、「早期の限られた矛盾を含む可能性のあるモニタリングデータをもとに、迅速な意思決定を可能とするために取り決めを整備しておく」という、住民防護優先の積極的立場を示している。
(2)IAEAではUPZ圏外への先に述べた行政区域のゾーン設定だけではない。IAEAは、経口摂取被ばくに対して「全面緊急事態の宣言に基づく取り決めが準備段階で整備される距離」として2つのゾーン設定を推奨する。拡大計画距離(EPD)と飲食物摂取及び日用品計画距離(ICPD)である。熱出力 1000MW 以上の原子力発電所については、EPD半径を100㎞、ICPD半径を300㎞とする。「IAEA説明文書」(P26)は以下のように説明している。
*拡大計画距離 Extended Planning Distance (EPD)
(a) 不注意による経口摂取を減らすための指示が行われる。(b)1日以内での避難や1週間から1ヶ月の移転が必要になるであろう放出の後に、ホットスポットを特定するために線量率の測定が行われる。放出後に更に避難が必要とならないように、患者及び特殊な治療を要する人々の EPD 外への避難が行われる。
*飲食物摂取及び日用品計画距離 Ingestion and Commodities Planning Distance (ICPD) 以下の指示が与えられる:
(a) 放牧家畜に保護(覆いをかけた)飼料を与える、(b) 雨水を直接使う飲料水供給施設を保護する(例えば、雨水収集管を外す)、(c) 必須でない地域産物、野生産品(例えば、きのこや猟鳥獣類)、放牧家畜のミルク、雨水、家畜飼料の消費を制限する、及び、(d) 再評価を行うまで商品の出荷を停止する。飲食物摂取及び日用品計画距離は、また、制御の適切性を確認するために、緊急時に地域産物、野生産品(きのこや猟鳥獣類)、放牧家畜のミルク、雨水、家畜飼料及び商品の試料を収集、分析する取り決めを準備段階において整備しておく距離である。
これらのゾーンは、住民の健康を守るため重要だと考えられるが、原災指針は採用していない。もともとプルーム通過時の被ばくを避けるための防護措置を実施する区域であって、ヨウ素剤の服用などが例示されていたが、具体的な検討をする前に廃止されてしまった。UPZ圏外の住民の安全に対して経口摂取被ばくも含め全く手が打てていない状況であることは間違いない。しかも理由として、実測主義とかかわっている。
6.実測主義は被ばくが前提
(1)注目すべきはその指示の出し方である。EPZ内の人には、放射性プルームの放出の前かまたは直後に、「不注意による経口摂取を減らすよう」指示が行われる。またICPD内の人にも、放出の前か又は直後に、取り決められた制限内容を実行するよう指示が出される。放射性プルームの放出の前かまたは直後とは、「重大な燃料損傷に至る状況」を確認してから45分以内としている。(IAEA説明文書P10)
これらの「指示」は、EPDに対してもICPDに対しても、実測とOILに基づく防護措置を講じる以前の 迅速対応として行われるのである。
日本においても早期防護措置、飲食物摂取制限の措置という経口被ばくに対する防護措置は設定されているが、IAEAは、「緊急時重点区域及び距離は、準備段階の間に前もって確認しておく必要がある」 という考えを経口摂取被ばくに対しても適用し、EPD及びICPDという区域を予め指定している。それに対して日本は予め範囲指定はせず、汚染を実測した後どの地域にどの措置を実施するかを決める。
(2)この点につき『問題点』は、次のように指摘する。
IAEAは、具体的な計画距離(ゾーン)を導入するのは、そのことで実施すべき措置と準備の必要性を「強調するためである」としている(IAEA説明文書P104)。 しかも、ゾーン指定をしておくことで、公衆を防護するために必要な措置を迅速に実施できる。先に見たように実測で評価を下す前に、「重大な燃料損傷に至る状況」を確認すれば45分以内に指定ゾーンの人々に「指示」を出すのである。
実測によっても正確な沈着状態を確認することが容易ではないことからも、予めの地域指定が必要である。IAEAは、チェルノブイリ原発事故や福島原発事故の例を挙げて、「放射性物質沈着のパターンは非常に複雑で、広域及び狭域にわたり非一様となる可能性がある」(IAEA説明文書P53)、とりわけ、100㎞以上の距離での放射性物質沈着のパターンは「非常に複雑なので、食物制限が必要となるすべての場所を効果的に確認するために、十分な地域をモニタリングすることは不可能」として、「モニタリング又はサンプリングを行う前」に防護と制限が必要であると強調している(IAEA説明文書P2)。現行の31㎞圏も含めての経口被ばくの防護措置は、ゾーン設定をしないことによって、その効果を発揮することができない。
これは経口被ばくの防護措置についてのIAEAとの違いを述べたものであるが、ゾーンを導入しての防護対策は、廃止をされたPPAの設置においても大いに検討に値するものである。ところが原災指針においては、2015年3月の『UPZ外の防護対策について』によってPPAは廃止された。
(3)これによって静岡県においては、31㎞圏外の、静岡市や浜松市を含む大きな人口の間近に、世界一危険な浜岡原発があるにもかかわらず、そしてまた福島原発事故で全村避難した飯館村と原発からの距離が大差ないにもかかわらず、ほとんど原発災害に防護措置が為されないことになる。
静岡県民にとって、安心して生きる権利を奪われている、まさに重大事である。
以上
11:16 裁判長;被告・中電の準備書面(19)の説明と、浜岡原発の工事の現状について。
被告中電・代理人:準備書面(19)の概要説明(概要報告を参照)。
被告中電・代理人:安全性向上対策工事の7月以降について(以下は、中電HPを参照)。
4号機の高圧注水系の運転可能のための工事、代替熱交換機用配管工事、フィルタベント放射線監視強化対策工事、サプレッションチェンバボックス耐震補強工事などを行った。県と御前崎市の点検を受け、被告中電のHPで公表している。
3号機、5号機については付け加えることはなし。
原子力規制委員会の審査は、地震・津波対策での2回の会合が持たれた。7/19 プレート間地震の地震動評価について、9/6、基準津波の策定のうち、地震以外の要因による津波について。
11:25 裁判長;双方の今後の予定はどうか。
原告・代理人:準備書面(26)の続編がある。引き続き主張を行う。
被告・中電代理人:引き続き主張を行う。
裁判長;被告・国からは。
被告国・代理人:予定なし。
裁判長;次回期日は、3月9日(月)11:00~ 第一号法廷で。書面は一週間前に提出を。
11:30終了
11:35 地域情報センターで報告集会
司会・落合さん;最初に阿部弁護士から報告をもらいます。
阿部弁護士;中電から準備書面(19)の提出。前に原告が主張したことへの反論であったが、安全だと言っているだけ。原告の準備書面は林さんが作成をして、本人が陳述した。原発の危険性について弁護士が詳しいわけではないので、避難計画について原告に書いてほしいと頼み、林さんにお鉢が回ってきた。あとは林さんどうぞ。
林克さん;裁判で話すのは初めて。2年前、リニア新幹線認可取り消しの訴訟で意見陳述をして以来のことだ。避難計画については、京都の研究所の原発の本に少し書いた。自治体ヒヤリングにもいくつかのところで一緒にやったりしたのでお鉢が回ってきたのかなと思う。
運動していると、県の避難計画は不備だとか、市町の計画ではこれでは避難できないと思いがち。しかし本当に悪いのは国。国がきちんとすべきこと。今日も出ていたが、規制基準の対象の中に避難計画が入っていないこと、IAEAの深層防護から外れていること、そこが抜け落ちていることが、非常に不十分でも自治体がやらざるを得ないことになっている。特に静岡県は避難が一番難しい。
なぜなら、複合災害といって、地震、津波、原発災害が、これが一緒に起きて、しかも、周りのところは南海トラフ地震で被害を受けるので、遠くに避難しなくてはならない。全国で最も難しいところ。それができてもチェックされない。勝手にやってくれと。あまりに国の指針がいいかげん。飯館村と同じ距離なのに、一番人口の多い、浜松市と静岡市が抜けている。その点を強調した。
次回は、31kmのこと、IAEAの基準を値切っていること。自治体のアンケートを実施している。31km圏外の防護計画に言及したい。
11:40 司会・落合さん;皆さんの方から質問があればどうぞ。
高柳さん;最後に言われたことは、次回の弁論でやるのか。
林克さん;家に閉じこもっていろということは、IAEAは言っていない。
司会・落合さん;他には。それでは、塩沢弁護士から、今日は大事なことが書いてあると。準備書面(29)の4ページの後段、宮城県の女川原発のことで大きな動きがあった。そのことの報告です。
塩沢弁護士;「3.折しも今」のところ。11/13の赤旗の記事に、女川2号機の再稼働の規制委員会のゴーサインが出そうだと。年度内に再稼働の許可か。過去の経験からすると、2020年の夏までには石巻市と宮城県が同意するだろう。最後の歯止めとして、石巻市の住民が、石巻市と宮城県に対して、決して動揺するなと、仮処分の訴えをした。電力会社に対する仮処分ではなくて、自治体の長に対する仮処分だ。
本来は、国が原則通りの計画を立てて、それを規制委員会が審査をしてOKがとれたらゴーサインとすべきだ。しかし、何かあったら自治体の責任になる。本来あってはならないけれども、自治体の長を訴えた。安全かどうか点検してくれと言わざるを得ない。国がやるべきことをやって、最後に自治体がやることなのに。二重の責任が自治体に課せられている。とてもこの避難計画では、避難できない。同意なしでも再稼働はできないわけではないけれども、これまで同意なしの再稼働はない。同意のもとでの再稼働が女川原発で問われている。いずれ浜岡原発でもそのことがやってくる。その先駆的な闘いが女川原発でとりくまれている。一度、女川の17人の原告住民のどなたか、弁護士を呼んでの学習会をやりたい。いま県知事は、再稼働に同意はしていないが、自治体相手の裁判とはどういうものなのかをあらかじめ知る必要はある。
司会・落合さん;ありがとうございました。今の問題を含めて、ご発言があれば。
大橋弁護士;被告は粛々と言っているが、規制委員会の審査は長引いていて、すぐには結論を出さないので、この裁判は長引く。いろんな論点が出ているので、これからの闘いが重要だ。何も事態が進展していないわけではない。規制委員会も審査が長引いているが、悪い方向で、再稼働に向けて粛々と動いていると思わざるを得ない。いづれどこかの段階で結論が出るだろうと思う。
原告はいま700人少し。1000名に到達させるために、長期戦で闘いをやっていただきたい。地元の清水さんから話を聞いているが、外からは分からないが、浜岡原発には再稼働と廃炉作業とで、3000~4000人の労働者が働いている。廃炉作業は30~50年かかる。放射性物質を放出させない廃炉作業は今の技術ではできないということになりかねないそういう危険なものがあってそこに多くの労働者が働いていると。我々もどこに逃げるか。静岡市民が浜松まで逃げるのか。まだまだ実感がなくてそこまでいっていないが。
11:50司会・落合さん;実は、浜岡原発裁判は、この浜松支部とともに本庁の裁判がやられている。昨日、本庁裁判があり、それに参加している西村さん、どうですか。
西村さん;5号機の仮処分の債権者だった。その時は公判の進行協議にも参加したが、取り下げたのでその後は傍聴の形になった。裁判は、工事の進捗報告で最後は終わり、原告の準備書面(32)で域内の断層のことを出すようにいっているが、被告は何も言ってこない。前々回、弁護団が頑張って、傍聴人でも進行協議の場に参加できるようになった。どこからかは分からないが、中電が6.1mの津波のことを言っているが、その点で、毎回、この根拠を求めて準備書面を出しているが、何の説明もない。19mの計算と6.1mの根拠を原告は求めている。裁判所は、結論を出すのではなく、双方の主張がかみ合うような争点整理をしたいと。一般傍聴人でも進行協議に入れたので、静岡市内の人も参加を。生々しいことが聞ける。これからの予定は、2/4 (火)10:30~、4/30(木)10:00~。
11:58司会・落合さん;林弘文さん、一言、お願いします。
林 弘文さん;今日の林克さんの陳述、ご苦労様でした。林克さんは11/20の静岡でのひまわり集会の実行委員長で大奮闘された。ひまわり集会は1000人の参加で、デモも500人を超える参加で、熱がこもっており、盛り上がった。数より質だ。芸人を呼び、非常にいいスピーチをされた。
雑誌「世界」で、何月号かは覚えていないが、「原子力産業の終焉」(注:2019年7月号)というタイトルと、そして「気候クライシス」(注:2019年12月号)というテーマで、気候温暖化についての論文が出ていた。台風15号、19号、21号と、大きな風雨で大きな災害を起こし、そして原発との関連では、一番気になっていることは、福島で100万トンを超える汚染水がたまっていて、50トン/日が追加され、さらに増えていく。先日の台風の大雨でどうなったかなと。放射性物質が漏れたというが、あまり報道されていないが、注視したい。地球の温暖化と原発、どちらも重要視しなくてはならない。女川原発のことは改めて考えたい。地震・津波のことも考えていかなくては。
12:02塩沢弁護士;今日の法廷に参加してくれた方々には敬意を表します。私たちの裁判は、長く、まだまだ続く運動の一環としてとらえてほしい。はがゆい感じのある法廷、かみ合うのではなく、双方がそれぞれ主張している。いろんな論点を主張することで、これはやむを得ない。法廷も報告集会も、分かりやすくて、参加してよかったというようにしたいが、そうするためにはどうしたらいいのかと頭を悩ましているが、弁護団としてはそういう努力をしていかなくてはという自覚は持っている。面白くもないのに参加してくれている参加者には敬意を表しますが、持続的に、まだまだ続く裁判に参加してもらえるようにしたい。
12:04司会・落合さん;中電の反論で「原告の主張は間違っている」には、怒り心頭だ。
次回口頭弁論は、2020年3月9日(月)11:00~ です。多くの参加をよろしくお願いします。
12:05終了
(文責・長坂)
2019年11月20日(水)晴れ
10:00 浜松市地域情報センターホールに原告や傍聴者が集まり始めた。
10:30 裁判所内の部屋で傍聴抽選の予定であったが、全員が傍聴できた。
11:00 裁判が開始。
裁判長は川淵健司、右陪審は荒井格、左陪審は丸谷昴資。
訴訟代理弁護団計22名の弁護団のうち、今日の参加者は10名。
大橋昭夫、森下文雄、塩沢忠和、杉山繁三郎、阿部浩基、佐野雅則、平野晶規、北上紘生、栗田芙友香、青柳恵仁、
被告側は国と中電の15名。
11:00 裁判長;被告・中電から準備書面(19)、原告から準備書面(29)が提出された。原告より補足説明がある。
原告・阿部弁護士:準備書面の要約を原告本人の林克から説明を行う。
原告・林克:(以下に「読み原稿」を掲載します。)
原発事故からの避難は、原発設置県の住民にとって原発事故防護の中で最大の関心事といってもいいと思います。なぜなら福島原発事故時の悲惨な記憶はことあるごとに呼び覚まされるからです。福島原発事故によって実感として原発事故はありうると認識され、原発から至近の距離に住む者にとっては自分が安全に逃げられるのかといつも自分自身に問われることになります。
さて、福島原発事故以来、原発事故の防護対策は大きな変化が見られます。新たな法的な措置にもとづいて、静岡県の広域避難計画に続いてUPZ(緊急防護措置区域)圏内の市町においても避難計画が進んでいます。それは自治体の努力にもかかわらず、住民の関心にこたえ安心できるものになっているでしょうか? 5月に行われた中日新聞の「浜岡原発再稼働の是非とその理由」を首長に聞くアンケートにおいて、「住民の安全が確保される状況にないので答えられない」(牧之原市)「住民の安全安心が確保され、市民の理解がなければ再稼働できない」(掛川市)「市民の安心安全が確実に担保されておらず再稼働できない」(島田市)と、住民の安全安心を再稼働の是非に考える回答が多く、必ずしも避難計画の策定でそれが担保できないと考えているのではないでしょうか。
より安全な住民避難のためには、福島原発事故の原因究明と避難状況の分析、国際基準への依拠・発展が欠かせないと考えますが、これまでの準備書面は、日本の法体系がIAEA(国際原子力機関)安全基準に整合しないこと、避難計画についての個別な課題を述べてきました。今回は国際基準であるIAEA基準との比較で見た場合の我が国の原子力災害対策の問題点、とりわけ、2012年10月に制定した「原子力災害対策指針」の枠組みが、IAEA基準の基本から外れ、静岡県においては最も人口の多い区域の県民の浜岡原発の危険からの安全を損ねていることなどを明らかにしていきます。
第5層を切り離してしまった日本の深層防護
浜岡原発は世界一危険な原発と言われ、やがて必ず来る東海地震の震源域の真上にあります。もし万が一浜岡原発が事故が起きたときに安全に避難できる仕組み、体制になっているでしょうか。住民が確信を持って放射能の危険を回避、低減することができ、それを持って安心を計れるでしょうか。現地に暮らしている実感として、残念ながらそれは否と言わざるをえません。
原災指針は、その前文で、IAEAの「安全基準の最新の国際的知見を積極的に取り入れる等」明記しています。そして日本も批准した原子力安全条約は、原発事故の発生で深層防護の原則、事故の発生を軽い方から重い方へ五つの層によって対処することに基づいて防護措置を講ずることを述べています。
この深層防護の中で、第5層の防護レベル、すなわち原発周辺の住民避難を中心とする住民等と環境に対する放射線防護はもっとも需要な課題です。それは、IAEA安全基準の深層防護に限らず原子力分野における国際的な深層防護の最も需要な基本的問題として、アメリカの原子力規制委員会NRC、西ヨーロッパ原子力規制協会WENRAでも位置づけられています。
実際アメリカのショアハム原発は、原発が完成しながら避難計画が不備だという理由で稼働しませんでした。
しかし新たに設けられた原発の稼働の是非を審査する新規制基準において、防災計画、避難計画を対象とせず、切り離されたものとして自治体の責務としました。これでは住民にとってほんとうに安全に逃げられるのかについて、原発の稼働の条件とならず、どこも審査しないことになります。
原子力規制委員会が作成した『実用発電用原子炉に係る新規制基準の考え方について』は、避難計画の実効性の評価・審査は、規制委員会の権限外である、原子炉の設置に係る許可基準に避難計画を含める必要はないと断言しています。
しかしこれは、IAEA安全基準が義務付けではないという国の裁量の問題、また法体系が違うという形式論を言っているに過ぎず、地震などの自然災害が他国と比べて著しく頻発すると言っていいい我が国において、なぜ採用する必要がないのか? それで国民の安全安心は守られるのかについて何も説明していないと考えます。
静岡県は、やがて必ず来る東海地震の複合地震による広域避難が必至といえるほど可能性の高い地域、したがって安全な避難計画が求められていますが、それを稼働の条件として検証しないことによって住民を危険に陥れています。
無理やり「おおむね30km?」
世界一危険と言われる浜岡原発の至近に住みながら、静岡県における二大都市、浜松市民と静岡市民は、原発災害について何の手立ても実施されておらず、平穏に生きる権利が脅かされています。事故時に全村避難した福島県飯館村の村役場と福島第一原発までの距離は約40km、静岡県における大都市、浜松市、静岡市のそれぞれの市役所と浜岡原発の距離は、39km、45kmであるにもかかわらず、地域防災計画の中にも市民の防災をうたっていません。2013年の指針策定時においては、PPA(プルーム通過時の被ばくを避けるための防護措置を実施する地域)の検討をうたわれましたが、2015年の改定でこれが削除され、PPA(参考値として50キロ以内)は法的規制を実質的に解除されたことで外されてしまいました。
一方、防護区域のUPZのおおむね30kmはどのように線引きされたのでしょうか? 福島原発事故の放射性物質の放出量と各発電所の合計出力などによってシミュレーションし、小さい方から累積した場合の97%累積出現率にあたる距離を算出しています。静岡県の場合にはこの97%方式によってUPZの範囲を31kmと決めました。しかし原告らはこの決め方について、①「放射性物質の放出量」は、福島第一原発事故と同等と想定したのはあまりに過小ではないか? ②既出の97%方式により3%切り捨てる根拠がなく、過小評価の一因、③「避難計画作成の基準にする被ばく線量」について、IAEA基準を参照して「最初の7日間の被ばく線量合計で100ミリシーベルトに達する範囲」を目安にしているが、100ミリシーベルトは高すぎる。 といった理由から、UPZがおおむね30kmというのはあまりに狭すぎると主張します。
静岡県においてもし97%方式をやめ、100%値で計算すれば、62.0kmとなり、富士川西側から愛知県境にまで広がることになります。浜岡原発から50km以内の区域に住む人口は、静岡市、浜松市を含めて214万人、50km圏内では全国でいちばん多くの人口がありますが、これらの区域がすべて防護区域から切り捨てられています。
PPAを放棄した弊害
元々PPAは、プルームについて空間放射線量率の測定だけでは防護措置を講じることは難しいというのが、設置の趣旨でした。
しかし2015年3月の改正で「緊急時においては、どの程度の規模の漏えいがどのようなタイミングで起こるかを事前に正確に把握することは困難」として、スピーディの廃止を含む予測主義から実測主義に転換され、PPAの廃止が決まりました。
はたしてそうでしょうか? 予測システムは迅速に対応するために必要だから実施するのであって、その精度こそ上げるべきです。知事さんの集まり、全国知事会も「避難ルート等の検討や準備・モニタリングの実施などには放射性物質の拡散を予測する情報も重要と考えられる」として予測主義も重要としています。
原子力規制庁は、迅速な判断をするには予測システムの精度を上げ、実測と合わせて活用すべきなのに、予測そのものをやめるという不合理な結論を導いており、防護措置の迅速な決定・実施が遅れることになります。
IAEAはUPZ圏外にゾーンの設定をしていないのでしょうか? IAEAは、経口摂取被ばくに対して「全面緊急事態の宣言に基づく取り決めが準備段階で整備される距離」として2つのゾーン設定を推奨しています。拡大計画距離(EPD)と飲食物摂取及び日用品計画距離(ICPD)です。熱出力1000MW以上の原子力発電所については、EPD半径を100km、ICPD半径を300kmとする。これらのゾーンは、住民の健康を守るために重要だと考えられますが、原災指針は採用していません。
注目すべきは指示の出し方です。EPD内の人には、放射性プルームの放出の前かまたは直後に「不注意による経口摂取を減らすよう」指示が行われ、ICPD内の人にも、放出の前か又は直後に、取り決められた制限内容を実行するよう指示が出されています。
日本においても早期防護措置、飲食物摂取制限の措置という経口被ばくに対する防護措置は設定されていますが、ここでも実測主義が貫かれていて迅速な手が打てません。
IAEAは、具体的なゾーンを導入するのは、そのことで放射能の防護の実施すべき措置とその準備の必要性を「強調するためである」としています。ゾーンが設定されていればその住民は、こういうことがおきたらこれこれこうするのだと言うことが分かります。しかも、ゾーン指定をしておくことで、公衆を防護するために必要な措置を迅速に実施できます。実測によって放射能の正確な沈着状態を確認することが容易ではないからです。
これは経口被ばくの防護措置についてのIAEAと日本の現行制度との違いを述べたものですが、ゾーンを導入しての防護対策は、廃止をされたプルーム対策PPAの設置においても大いに検討に値するものです。
静岡県で最も人口の多いところの住民の安全が守られない
静岡県においては、31km圏外の、静岡市や浜松市を含む大きな人口の間近かに、世界一危険な浜岡原発があるにもかかわらず、そしてまた福島原発事故全村避難した飯館村と原発からの距離が大差ないにもかかわらず、ほとんど原発災害に防護措置が為されないことになります。
静岡県民にとって、安心して生きる権利を奪われている、まさに重大事であるといわなければなりません。
(以下に、準備書面(29)を掲載します。)
(はじめに)
1.これまでの、避難計画をめぐる原被告間の主張
(1)原告らはこれまで、いわゆる「深層防護」を基本とする原子力災害対策、とりわけ第5の防護階層である避難計画が実効性あるものとして確立されていることが原発再稼働の必須条件でなければならないとの立場から、平成26年4月9日付準備書面(6)、同27年7月6日付同(11)、同
28年2月16日付同(15)、同年11月9日付同(17)、同月13日付同(18)により、本件浜岡原発に関する避難計画がこの必須条件を満たしていないことを、繰り返し主張してきた。即ち、我が国の原発関連法体系は、原子力災害対策に関する「確立された国際的な基準」としてのIAEA安全基準が求めている避難計画事項を、原発の設置許可、従ってまた再稼働許可の要件とはしておらず、原子力規制委員会による審査対象とはせず、その策定を自治体の責任にしてしまっているのである。なぜ原発事故時の住民避難について自治体に全責任が負わされているのか。事故原因者である電力事業者が明確に存在し、国がエネルギー政策の位置づけをもって設置・稼働を許可しているにもかかわらずである。原告らは、ここに原子力災害の特殊性を軽視、無視した日本の原子力政策の問題点が如実に表れていると見る。責任を押しつけられた自治体からこれまで提出された「地域防災計画(原子力災害対策編)」はいずれも全く現実性がなく、本件浜岡原発に関するそれも同様である。それがいかに不備で実効性・実行可能性がないかは、前記準備書面で具体的に指摘している。
(2)これに対し被告は、平成29年3月6日付準備書面(8)で、乙A第2号証として提出された原子力規制委員会の略称「考え方」に全面的に依拠し、原告らの前記主張に対する反論をしている。しかしこの「考え方」は、原発の安全を確保するために原子力事業者たる電力会社を規制する立場である規制委員会が、自らの審査対象から住民避難計画事項を外して自治体の責任としてしまったことが全国各地の原発訴訟で重大な争点の1つになっている中で、この争点に関する被告電力会社側の準備書面のいわば「虎の巻」として作成・公表されたと言うべきものであるが、自治体任せにすることを正当化する積極的理由付けはなく、言い訳に終始している内容である。
(3)この被告準備書面(8)に対する反論として、原告平成29年7月4日付準備書面(21)では、日本の法体系がIAEA安全基準に整合しないこと、IAEA安全基準が避難計画の実行可能性を原子力事業者に対する規制としていること、本件原発に関する避難計画に明らかな不備があることの3点を、重ねて明らかにしている。
2.本準備書面の目的
(1)今回の準備書面(29)は、国際基準であるIAEA基準との比較で見た場合の我が国の原子力災害対策の問題点、とりわけ、規制委員会が、自治体における地域原子力災害広域避難計画等作成のための指針として2012年10月に制定した「原子力災害対策指針」(以下「原災指針」)の枠組みが、IAEA基準の基本から外れ、静岡県においては最も人口の多い区域の県民の浜岡原発の危険からの安全を損ねていることなどを明らかにする。
そのことを踏まえ次回には、IAEA基準と原災指針との矛盾の集中点であるUPZ圏(緊急防護措置計画区域、浜岡原発では31km圏)について、実際のUPZ圏内の各自治体における避難計画の策定状況がどうなっているかを、各自治体に対するアンケート調査結果等を踏まえて明らかにする予定である。
3.折りしも今
去る11月12日、仙台地裁に対し、東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)から30キロ圏内に住む石巻市民17人が、石巻市などが策定した広域避難計画には実効性がないとして、宮城県及び石巻市を相手方とし、再稼働の事実上の前提となる地元同意差し止めを求める仮処分を申し立てた。
今後全国各地で、避難計画の不備が鋭く問われていく。
第1 福島原発事故から原発災害対策が変わったが・・・
1.重い責任が問われるべき避難過程における多くの悲劇的な死
(1)2011年3月の東京電力福島第一原発事故(以下「福島原発事故」)をめぐり、旧経営陣3人が業務上過失致死傷罪で強制起訴された裁判で、東京地裁は同年9月19日、3被告人にいずれも無罪の判決を言い渡した。3人は、原発の主要施設の敷地の標高(約10メートル)を上回る津波が来ると予想できたのに対策を怠って事故を招き、4・5キロ離れた双葉病院(福島県大熊町)の入院患者らに避難を余儀なくさせ、44人を栄養失調や脱水症状で死亡させたなどとして強制起訴された(東京地裁平成28年(わ)374号事件)。
(2)被告人らは無罪とされたものの、起訴理由としての原発災害における避難の過程における甚大な被害は、原発事故の責任を問うわかりやすい事例であることはまちがいない。原発事故がなければ避難の必要はなく、安全に避難できるかどうかは原発を運営する上で必須の条件の一つであると一般的には考えられる。
しかし福島原発事故までは、国や事業者は「原発は放射能を敷地外にまで放出しない」と説明し、それに基づいた安全対策が採られてきた。静岡県においてもかつて浜岡原発設置に反対する住民が避難計画を作ってほしいと要請しても、敷地外まで放出しないという国、事業者の主張を理由に避難計画をつくることはなかった。
2.新たな原発災害対策の枠組み
だが、福島原発事故で状況は一変した。
(1)まず、1999年に発生したJCO臨界事故を受け、災害対策基本法と核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の特別措置法として同年に制定された原子力災害対策特別措置法(以下「原災法」)を含む各種の法令、指針、計画、運用マニュアル等は、福島原発事故において事故の進行に対する事態に対応できず多くの混乱を生み出した。そのため、災害対策基本法(以下「災対法」)に「福島事故の反省にたち、防災に関する制度の在り方について所要の法改正を含む全般的な検討を行う」ことが加えられ、さらにこれを受けて原災法も、2012年9月に改正され、「国は、大規模な自然災害及びテロリズム等による原子力災害の発生も想定し、原子力災害を最小にすべく万全の措置を講ずる責務を有すること、原子力災害対策本部の強化と緊急事態応急対策の実施を盛り込むこと、原子力災害対策重点区域の見直し、新設される原子力委員会においては原子力災害対策指針を定めること」等が明確化された。
(2)そして、前述のとおり同年10月に規制委員会が制定した原災指針は、その目的を、「国民の生命及び身体の安全を確保することが最も重要であるという観点から、緊急事態における原子力施設周辺の住民等に対する放射線の重篤な確定的影響を回避し又は最小化するため、及び確率的影響のリスクを低減するための防護措置を確実なものとすること」とした。
3.新たな原発災害対策で静岡県民は守られるのか?
(1)原告らが暮らす静岡県に存在する浜岡原子力発電所(以下「浜岡原発」)は、たびたび「世界一危険」と言われる。やがて必ずくる東海地震の震源域に立地しており、こうした立地は世界でも例を見ないという意味で使われている。福島原発事故後、増々浜岡原発に対する安全と安心の両面から不安が増大している。「安全」というのは客観的な基準での科学的保障であることに対して、「安心」はそれをもとにした主観的な信頼感覚と言われている。2011年5月に、全国の原発の中で唯一政府が中部電力(以下「中電」)に対して浜岡原発の停止を要請し、中電もこれを受け入れたのは住民への安心の確保の措置であったと考える。
(2)では、前述のごとき法整備による放射線の重篤な影響を回避・最小化・低減するための防護措置によって、浜岡原発と隣接する静岡県民の安心を図ることができたのだろうか。それは福島原発事故の教訓をふまえ、もし万が一浜岡原発で事故が起きたときに安全に避難できる仕組み、体制になっているだろうか。住民が確信を持って放射能の危険を回避、低減することができ、それを持って安心を計れるだろうか。現地に暮らしている実感として、残念ながらそれは否と言わざるをえない。
4.IAEA安全基準の基本を外し弱めている
(1)新たな原発事故からの安全の枠組みについて、前記原災指針は、その前文で、国際原子力機関(以下「IAEA」)の「安全基準等の最新の国際的知見を積極的に取り入れる等、計画の立案に使用する判断基準等が常に最適なものになるよう見直しを行う」と明記している。
にもかかわらず実際は、いかにその基本を外し、それを弱めているために著しく避難計画における安全を損ねているかを、本準備書面では、京都自治体問題研究所の市川章人『IAEA基準との比較対照で見る日本の原子力災害対策の問題点』(以下「問題点」)に依拠して主張する。
(2)IAEAの防護措置と考え方については、「緊急事態時に公衆を防護するための措置について、その責任者の理解を促進すること」を目的にした IAEA文書に基づく。引用は、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構JAEAが翻訳した『軽水炉の過酷な状況に起因する緊急事態において公衆を防護するための措置(翻訳資料)』 (2016年5月)を用いる (以下「IAEA説明文書」という)。
第2 原発事故災害対策の国際基準としてのIAEA安全基準
1.原子力安全条約で深層防護をうたう
(1)電気事業連合会は、「原子力発電所の安全確保の考え方は『深層防護』を基本としている」とする。「人間はミスを犯す」「機械は故障する」ことを前提に、人間の誤操作や機械の誤動作があっても安全が確保されることを目指しており、仮にトラブルが発生しても、トラブルの拡大を抑え、影響を最小限に止めることを目指している(電事連HPより)。「深層防護」とは、原発における安全を確保するために、ある目標を持った防護レベルを設定して、あるレベルの防護に失敗したら次のレベルで防護するという概念で、多層の防護を組み合わせることによって、全体として防護策の信頼性と実効性を高めようとするものである。
1986年のチェルノブイリ原発事故を契機に、1991年にIAEAにより原子力施設の安全確保を目的とした「原子力の安全に関する条約(原子力安全条約)」が提案され、日本を含む38か国が署名、日本も1995年に批准し96年に発効した(現在80か国)。
これと同時に、IAEA安全基準として原子力安全の専門家による報告書INSAG-10が制定され、深層防護に基づき対応することが国際的に共通の基準となり、「原子力安全条約」においても深層防護が取り入れられた。
その中で、設計上想定される事故(著しい炉心損傷が発生する事故)の発生を防止する対策(第3層まで)に加え、 第4層を「事故の進展防止およびシビアアクシデントの影響緩和を含む、過酷なプラント状態の制御」、第5層を「放射性物質の大規模な放出による放射線影響の緩和」としてサイト外の緊急時対応をうたっている。このように、原子力災害時の避難が原発の安全確保の考え方として定められ、そのための具体的な防護策が講じられることになった。
(2)「原子力安全条約」は前文で、「原子力の安全に関する責任は原子力施設について統括権を有する国が負うことを再確認し」、目的として「原子力施設に起因する電離放射線による有害な影響から個人、社会及び環境を保護するため、原子力施設において、放射線による潜在的危険に対する効果的な防護を確立し及び維持すること」(1条)を掲げた。
放射線防護については「いかなる個人も国内で定める線量の限度を超える放射線量にさらされないことを確保するため、適当な措置をとる」(15条)。「原子力施設設計及び建設にあたり、事故の発生を防止し及び事故が発生した場合における放射線による影響を緩和するため、放射性物質の放出に対する信頼し得る多重の段階及び方法による防護(深層防護defence in depth)が講じられること」(18条)とうたわれた。
このように条約は、原発事故に関する国の責任が明記され、個人が限度を超える線量にさらされないために深層防護を講じることを確立した。
2.第5層の防護レベルが最も重要な課題
(1)そして、この深層防護の中で、第5層の防護レベルである放射性物質の大量放出時のオフサイト緊急対応、すなわち原発周辺の住民避難を中心とする住民等と環境に対する放射線防護はもっとも重要な課題である。それは、IAEA安全基準の深層防護に限らず原子力分野における国際的な深層防護の最も重要な基本的問題として、アメリカの原子力規制委員会NRC、西ヨーロッパ原子力規制協会WENRAでも位置づけられている。
(2)福島原発事故前までは第3層までの防護策しか講じられなかったが、あの実際の現場の混乱、放射線が降り注ぐ中でのむやみやたらの避難、家族がばらばらにふるさとを追われる困難、その中での人生が引き裂かれる思い、そして避難の過程での多くの悲惨な死、「その反省を元に」法令改正含む措置が実施され、本来ならばより多重に安全を守るべき第4層、そして第5層も含めた対策が必要となるはずだった。
3.第5層を切り離してしまった日本の深層防護
(1)しかしながらそれは果たされなかった。災対法は「国は、大規模な自然災害及びテロリズム等による原子力災害の発生も想定し、原子力災害を最小にすべく万全の措置を講ずる責務を有すること、原子力災害対策本部の強化と緊急事態応急対策の実施を盛り込むこと」と国の責務を規定したにもかかわらず、新たに設けられた原発の稼働の是非を審査する新規制基準において、防災計画、避難計画を対象とせず切り離されたものとして自治体の責務とした。これは安全基準の原則を分割分離するものである。
(2)アメリカでは、電気事業者が地元自治体の協力を得てつくる緊急対応計画が原発稼働の条件とされている。アメリカ・ニューハンプシャー州シーブルク原発では、10マイル圏内に4つの自治体を持つマサチューセッツ州知事が、避難計画の実効性、実現可能性に問題があることを指摘、緊急時対応計画の承認を撤回した。ニューヨーク州ショアハム原発でも1984年に完成したが、地元の州、自治体が緊急対応計画の作成協力を拒否、一度も稼働することなく89年に廃炉が決まった。
(3)なぜ日本では、第5層の措置が新規制基準から外されてノウハウのない自治体に任されたのか。
大混乱の福島事故からすれば、当然それを検証して避難計画を国の責任でつくり、安全かどうかを新たな規制基準に基づいて規制委員会がその地域の住民が安全に逃げられるのかどうかの実効性を判定し、原発再稼働の条件とすべきではないか。
しかし現状は、原発災害の避難計画の策定を、原発の稼働とは切り離して自治体に任せているのである。新規制基準は、機械装置の安全は取り上げても、人の命を守る措置については無視していると批判されるゆえんである。
4.第5層を切り離す規制委員会の「考え方」には道理がない
(1)新規制基準に基づいて原発の安全を審査する原子力規制委員会は、「確立された国際的な基準を踏まえて原子力利用における安全性をはかるため必要な施策を策定し、又は実施する事務」(原子力規制委員会設置法第1条)とし、「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資するため、原子力利用における安全の確保を図ること任務とする」(同第2条)とされている。この場合の「確立された国際的な基準」は、もちろんIAEAが安全基準として体系的に整理してまとめているものである。
しかるに、原子力規制委員会が作成した『実用発電用原子炉に係る新規制基準の考え方について』(以下「考え方」)では、新規制基準とIAEAの定める安全基準との関係性、日本国内における適用については次のようだとする。
①AEA安全基準は加盟国への義務付けではないのでそのまま日本に採用する必要はない。
②IAEAが安全基準に関連して採用している深層防護の考え方は、第1層から第5層まですべての対応を原子力事業者に求めていない。
③したがって日本の設置許可基準としては第4層に対応する防護レベルまでしか審査、許可の対象としない。
④第5層の防護レベルである所内(インサイト)と所外(オフサイト)の緊急計画と緊急手順の整備は、国、地方公共団体、原子力事業者が災対法、原災法に基づき実施すればいい。
つまり、①住民避難計画の提出を原子力事業者に求める必要はない、②避難計画の実効性の評価・審査は、規制委員会の権限外である、③原子炉の設置に係る許可基準に避難計画を含める必要はないと断言しているのである。
しかしこれは、IAEA安全基準が義務付けではないという国の裁量の問題、また法体系が違うという形式論を言っているに過ぎず、地震などの自然災害が他国と比べて著しく頻発すると言っていい我が国において、なぜ採用する必要がないのか?それで国民の安全安心は守れるのかについては何も説明していない。
(2)この対応は福島原発事故の教訓を学ばず、今後の原発事故の対応を困難にするものである。また日本が批准した「原子力安全条約」の「原子力の安全に関する責任は原子力施設について管轄権を有する国が負うことを再確認し」という精神に明らかに反するものである。
新規制基準とIAEAの基準の最も大きな齟齬は、見てきたように深層防護の第5層を他から切り離したことである。そのため、重要なところで外見は同じでもその理念に反していたり、それを弱めていたりしており、福島原発事故の教訓を反映したものとなっていない。
以下、具体的な問題で、IAEAの基準と比較しながらこの点を明らかにする。
第3 自治体だけに責任を負わせた避難の仕組み
1.災対法と原災法は整合しているか?
伊勢湾台風を機に制定された災対法によって、国土並びに国民を守るために、防災計画の作成、災害応急対策等の災害対策の基本を定めるとされ、その対象とされる災害は自然災害(地震災害対策、津波災害対策、風水害対策、火山災害対策、雪害対策)にとどまらず、海上災害対策、航空災害対策、鉄道災害対策などの事故災害も含まれており、その中に原子力災害対策が位置づけられている。そして自治体は、自ら策定する地域防災計画で、各災害のために処理すべき業務などを具体的に定めることになった。
一方、「原子力災害が放射能を伴う災害である特性に鑑みて」制定された原災法は、国民の生命、身体及び財産を守るために特別に制定された法律である。同法によれば、いったん事故が起きて内閣総理大臣が「原子力緊急事態」宣言を出した場合には、内閣総理大臣に全権が集中し、政府だけではなく地方自治体・原子力事業者をも直接指揮し、災害拡大防止や避難などをすることができることになっている。
では、この二つの法体系の整合性はどうだろうか。原発災害の放射能を伴う災害であることの特殊性は貫徹されているだろうか。
2.放射能を伴う災害であることの軽視
(1)前述のとおり、2012年10月に原災指針が制定され 、日本の原子力防災体制が新たなものとなったところ、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構JAEAは 「一番大きな変化は、(中略)原子力災害対策指針に、IAEAの定めた原子力防災に係る国際基準が取り入れられたこと」と述べている。原災指針も前文で、IAEAの「安全基準等の最新の国際的知見を積極的に取り入れる等、計画の立案に使用する判断基準等が常に最適なものになるよう見直しを行う」と明記している。
それでは原災指針は、どのように原子力災害の特殊性をとらえているかを見ると、次のような説明である。
・原子力災害が発生した場合には被ばくや汚染により復旧・復興作業が極めて困難となることから、原子力災害そのものの発生又は拡大の防止が極めて重要である。
・放射線測定器を用いることにより放射性物質又は放射線の存在は検知できるが、その影響をすぐに五感で感じることができない。
・平時から放射線についての基本的な知識と理解を必要とする。
・原子力に関する専門的知識を有する機関の役割、当該機関による指示、助言等が極めて重要である。
・放射線被ばくの影響は被ばくから長時間経過した後に現れる可能性があるので、住民等に対して、事故発生時から継続的に健康管理等を実施することが重要である。
(2)しかしそれにもかかわらず、原災指針はその後で「ただし、情報連絡、住民等の屋内退避・避難、被災者の生活に対する支援等の原子力災害対策の実施については、一般的な防災対策との共通性又は類似性があるため、これらを活用した対応の方が効率的かつ実効的である。したがって、原子力災害対策は、前記の特殊性を考慮しつつ、一般災害と全く独立した災害対策を講ずるのではなく、一般的な災害対策と連携して対応していく必要がある」とする。つまり、避難の核心部分で、一般災害と同じようなものだからそれに準じて計画を策定するというのである。これが、自治体の責任で避難計画をつくる根拠とされている。これでは、放射能の特殊性を有する原子力災害について、原災法の目的における前段の指摘が後段の結論に全く結びついておらず、とりわけ避難の過程での放射能災害の特殊性は著しく軽視されている。
(3)原子力安全条約にあるように、本来、原子力規制を一元的に規制管理する一環として国が実施すべき避難計画を、一自治体の責任と能力で住民を避難させることによってどれほどの困難が生じるかを、以下静岡県内の場合に照らして具体的に主張する。
第4 「原子力災害対策重点区域」の問題―静岡県民の安全は?
1.浜松市、静岡市の地域防災計画には原発災害対策がうたわれていない
(1)原災指針は、原発事故に対して緊急事態とその防護措置を設け、警戒事態、施設敷地緊急事態、全面緊急事態と進行ごとに緊急時活動レベルを設定する。また、緊急事態の防護措置についての手順が次の区域によって定められている。
①PAZ予防的防護措置を準備する区域5㎞
緊急事態の判断基準(EAL)に基づき 放射性物質放出前における即時避難 等を、予防的に準備する区域。
②UPZ緊急防護措置を準備する区域 30㎞
防護措置実施の判断基準(OIL)や緊急事態の判断基準(EAL)に基づき、避難、屋内退避、安定ヨウ素剤の予防服用等を準備する区域。
(2)世界一危険と言われる浜岡原発の至近に住みながら、静岡県における二大都市、浜松市民と静岡市民は、原発災害について何の手立ても実施されておらず、平穏に生きる権利が脅かされている。事故時に全村避難した福島県飯館村の村役場と福島第一原発までの距離は約40㎞、静岡県における大都市、浜松市、静岡市のそれぞれの市役所と浜岡原発までの距離は、39㎞、45㎞である。
下表は、京都自治体問題研究所が作成した「政令指定都市の『地域防災計画』における原子力災害対策計画の策定状況」であるが、「世界一危険」にもかかわらず静岡市も浜松市も地域防災計画の中には当該市民の原子力災害対策計画をうたっていない。全村避難した飯館村と原発からの距離はほぼ変わらないにもかかわらず、原発災害から市民を守る計画、原子力災害対策計画が策定されていない。災対法の中で地域防災計画においてそれを策定することがうたわれているのであるから、これは両市の怠慢と言わざるをえない。他の政令市と比べて原発からの距離があるわけではなく、逆に唯一政府が停止を要請した原発からの距離が至近であるにもかかわらず策定していないのである。
2.無理やり「おおむね30㎞?」
(1)2013年の指針策定時においては、PAZ、UPZとともに、「プルーム(気体又は微粒子状の放射性物質を含む気流)通過時に被ばくを避けるための防護措置を実施する地域」(以下「PPA」)の検討とうたわれたが、2015年の改定でこれが削除され、PPA(参考値として50キロ以内)は法的規制を実質的に解除された。静岡市、浜松市が地域防災計画に原発災害をうたっていない理由はここにある。
原発事故の「原子力災害対策重点区域」以外の防護は、「屋内退避」、「緊急時には、施設の状態をもとに原子力規制委員会が対応を判断」というのみである。
また自治体に任されているので、かなりの専門性を持たない限り策定は困難である。浜松市、静岡市以外の政令市の地域防災計画の中で原子力防災がうたわれている自治体においても、そう深いものになっているとは言えない。
(2)では重点区域の境界線である「おおむね30㎞」は、どのように線引きされたのだろうか。この区域を定めた原子力規制庁の計算は以下のとおりである。
まず、福島原発事故の放出量と各発電所の合計出力による補正を行った放出量(福島原発事故の放出量に、各発電所の合計出力と福島第一原発1~3号機の合計出力の比を乗じた放出量)の2種類を仮定した。そして放出継続時間は、福島第一原発2号機の放出継続時間10時間と仮定、年間1時間毎の8760(24時間×365日)の実気象データを使って方位別に線量を求め、小さい方から累積した場合の97%累積出現確率にあたる距離を算出している(97%方式)。
この結果浜岡原発においては、原子力災害対策重点区域の目安は、PAZの目安の最大距離が1.7㎞(東) 、UPZの目安の最大距離が30.9㎞(東)となり、UPZの範囲は31㎞と設定された。
原子力規制庁によるこの算定方式について、京都自治体問題研究所『原発事故 その時どこへ?』(P6)は次のように問題点を指摘している。
①「放射性物質の放出量」は、福島第一原発事故と同等と想定し、加えて原発の出力に比例した量の放出も考慮するのはあまりに過小。福島の場合は放射性物質の一部しか放出せず、全部していれば1400倍となる。さらに使用済み核燃料も拡散していれば膨大な量となる。
②「拡散の様子」は過去のある1年間の風速や風向のデータを用いて、原発からの方位や距離別にどの程度の汚染濃度があるかのシミュレーションで推定。既出の97%方式では風向きの出現頻度が少ない方位のデータが切り捨てられるため、頻度が少ない方位では線量が高くてもゼロとして扱われる。そもそも3%切り捨てる根拠がなく、100%データにすればかなり広い範囲に拡大する。また16方位に分けて各方位内の平均をとっているが、過小評価の一因である。
③「避難計画作成の基準にする被ばく線量」について、IAEA基準を参照して「最初の7日間の被ばく線量合計で100ミリシーベルトに達する範囲」を目安にしているが高すぎる。
(3)かかる指摘から明らかなとおり、規制庁の前記算出方式は、UPZ以外の原発災害に対する防護措置する区域について不当に狭めるものであり、住民にとっては、避難計画によって安心して暮らせる権利を奪われるものである。
②の算出について静岡県に関係させて指摘すると、静岡県においてもし97%値方式をやめ、100%値で計算すれば「すそ値」(原子力規制庁が算出、7日間で100ミリシーベルトになる区域)は62.0㎞となり、富士川西側から愛知県境にまで広がることになる。16方位のうち風下となる確率は平均6.25%(100%÷16)となり、そのうち放射線濃度の高い方から3%を切り捨てられるから3.25%しか残らない。100%値で計算すれば100mSvを超える最も遠い距離は、97%値の2倍となること(31㎞が62㎞)が裏付けられる。浜岡原発から50㎞以内の区域に住む人口は静岡市、浜松市を含め214万人、50㎞圏内では全国でいちばん多くの人口を有するが、これらの区域がすべて防護区域となることを切り捨てられることになる。
統計上、過大過小の値を双方とも切り捨てて平準化する手法はあるが、線量が高い値だけ3%切り捨てる根拠はなく、防護措置をする区域を過小にするためのものと見ざるを得ない。
3.人口の多い区域の防護措置を意図的に除外
(1)全国の原発所在地において100%値方式によって計算するならば、京都市をはじめとして多くの政令市や県庁所在地など、比較的大都市が入ることになる。恣意的にそれらの人口が多い区域を防護措置が必要とする区域になることを避けた措置と言わざるをえない。
結果として浜岡原発に関する防護措置においては、福島原発事故において全村避難した飯館村の事務所所在地と原発からの距離がほぼ同じである浜松市、静岡市など人口が集中する区域が外れることとなったのである。
4.PPAを放棄した弊害
(1)静岡県にかかわる、原災指針における防護措置が必要とする区域の問題は、これにとどまらない。
2013年の指針策定時においてはPAZ、UPZとともに「プルーム通過時に被ばくを避けるための防護措置を実施する地域」の検討という項目があり、「プルームについては、空間放射線量率の測定だけでは通過時しか把握できず、その到達以前に防護措置を講じることは困難である。このため、放射性物質が放出される前に原子力施設の状況に応じて、UPZ外においても防護措置の実施の準備が必要となる場合がある。」とし、迅速に防護措置を講じるため、事前にゾーンを設定するという積極的な立場が表明されていた。即ち、原災指針(2013年9月5日改正)には、「プルーム通過時の被ばくを避けるための防護措置を実施する地域(PPA)の検討」として以下の記述がなされていた。
「UPZ外においても、プルーム通過時には放射性ヨウ素の吸入による甲状腺被ばく等の影響もあることが想定される。つまり、UPZの目安である30kmの範囲外であっても、その周辺を中心に防護措置が必要となる場合がある。
プルーム通過時の防護措置としては、放射性物質の吸引等を避けるための屋内退避や安定ヨウ素剤の服用など、状況に応じた追加の防護措置を講じる必要が生じる場合もある。また、プルームについては、空間放射線量率の測定だけでは通過時しか把握できず、その到達以前に防護措置を講じることは困難である。 このため、放射性物質が放出される前に原子力施設の状況に応じて、UPZ外においても防護措置の実施の準備が必要となる場合がある。
以上を踏まえて、PPAの具体的な範囲及び必要とされる防護措置の実施の判断の考え方については、今後、原子力規制委員会において、国際的議論の経過を踏まえつつ検討し、本指針に記載する。」
(2)ところが、2015年3月4日原子力規制庁の『UPZ外の防護対策について』によれば、「緊急時においては、どの程度の規模の漏えいがどのようなタイミングで起こるかを事前に正確に把握することは困難」、「これらを的確に捉えて防護措置を講ずべき地点を正確に特定することはできない(P1)」のでこれまでPPAの役割としていたヨウ素剤の服用について効果が得られない、したがって「時間的・空間的に連続した放射線状況を把握できる緊急時モニタリング体制を整備することにより、放射性物質の到達や流跡の概要を把握することは可能である」とし、PPAの設定はやめにして「屋内退避が最も実効的である(P3)」というのである。
PPAを放棄する理由として、規制庁が指摘する上記の理由を整理すれば、以下のとおりである。
・放射性物質の拡散予測は困難だから予測システムの活用をやめ、モニタリングで判断する実測主義に変更する。
・緊急モニタリング体制の整備で放射性物質の到達・流跡の概要はつかめるから、PPAの区域設定は不要。
・実測後の安定ヨウ素剤服用は、服用時期が遅くて効果がないからやめる。
・UPZ外の防護措置は屋内退避で十分。
・UPZ外に拡張区域(PPA)を作って全域で屋内退避を実施するのはPAZやUPZの対応の妨げになる。
(3)だが、果たしてそうだろうか。予測システムは迅速に対応するために必要だから実施するのであって、それができないからやめるでは本末転倒であり、「正確に把握することが困難」であることを前提に、その精度を上げるべきである。
都道府県の知事で構成される全国知事会も、「避難ルート等の検討や準備・モニタリングの実施などには放射性物質の拡散を予測する情報も重要と考えられるため、『拡散計算も含めた情報提供の在り方』を検討する国の分科会において、引き続き関係地方公共団体の意見を十分聴いた上で、具体的な検討を進め、必要な対策を講じること」として、モニタリングと拡散予測双方が必要と「原子力発電所の安全対策及び防災対策に対する提言(2019年7月23日)」などで2015年以来要望している。
「プルーム通過時の防護措置が必要な範囲や実施すべきタイミングを正確に予測することはできず」を安定ヨウ素剤服用否定の理由にするのなら、屋内退避についても適切なタイミングでの開始・解除が無理になるのではないか。
原子力規制庁は、迅速な判断をするには予測システムの精度を上げ、実測と合わせて活用すべきなのに、予測そのものをやめるという不合理な結論を導いており、防護措置の迅速な決定・実施が遅れることとなる。また、実測主義は被ばくが前提になっている。
5.IAEAのUPZ圏外の防護措置
(1)ではIAEAでは、UPZ圏外で全く避難を行っていないのだろうか。日本のように実測主義で防護措置を行っているのだろうか。IAEAは、UPZ外の地域においても避難をさせる例を示している。注目すベきは、避難指示の発動の仕方と対象範囲である。IAEAが例示するのは、UPZ外の一地点でもモニタリングチームの測定値の一部がOIL1(IAEAでは空間線量率1000μSv/h)を超過すれば、その地点を含む行政上の区域全体の居住者に避難を勧告するというものである(IAEA説明文書)。これは、「早期の限られた矛盾を含む可能性のあるモニタリングデータをもとに、迅速な意思決定を可能とするために取り決めを整備しておく」という、住民防護優先の積極的立場を示している。
(2)IAEAではUPZ圏外への先に述べた行政区域のゾーン設定だけではない。IAEAは、経口摂取被ばくに対して「全面緊急事態の宣言に基づく取り決めが準備段階で整備される距離」として2つのゾーン設定を推奨する。拡大計画距離(EPD)と飲食物摂取及び日用品計画距離(ICPD)である。熱出力 1000MW 以上の原子力発電所については、EPD半径を100㎞、ICPD半径を300㎞とする。「IAEA説明文書」(P26)は以下のように説明している。
*拡大計画距離 Extended Planning Distance (EPD)
(a) 不注意による経口摂取を減らすための指示が行われる。(b)1日以内での避難や1週間から1ヶ月の移転が必要になるであろう放出の後に、ホットスポットを特定するために線量率の測定が行われる。放出後に更に避難が必要とならないように、患者及び特殊な治療を要する人々の EPD 外への避難が行われる。
*飲食物摂取及び日用品計画距離 Ingestion and Commodities Planning Distance (ICPD) 以下の指示が与えられる:
(a) 放牧家畜に保護(覆いをかけた)飼料を与える、(b) 雨水を直接使う飲料水供給施設を保護する(例えば、雨水収集管を外す)、(c) 必須でない地域産物、野生産品(例えば、きのこや猟鳥獣類)、放牧家畜のミルク、雨水、家畜飼料の消費を制限する、及び、(d) 再評価を行うまで商品の出荷を停止する。飲食物摂取及び日用品計画距離は、また、制御の適切性を確認するために、緊急時に地域産物、野生産品(きのこや猟鳥獣類)、放牧家畜のミルク、雨水、家畜飼料及び商品の試料を収集、分析する取り決めを準備段階において整備しておく距離である。
これらのゾーンは、住民の健康を守るため重要だと考えられるが、原災指針は採用していない。もともとプルーム通過時の被ばくを避けるための防護措置を実施する区域であって、ヨウ素剤の服用などが例示されていたが、具体的な検討をする前に廃止されてしまった。UPZ圏外の住民の安全に対して経口摂取被ばくも含め全く手が打てていない状況であることは間違いない。しかも理由として、実測主義とかかわっている。
6.実測主義は被ばくが前提
(1)注目すべきはその指示の出し方である。EPZ内の人には、放射性プルームの放出の前かまたは直後に、「不注意による経口摂取を減らすよう」指示が行われる。またICPD内の人にも、放出の前か又は直後に、取り決められた制限内容を実行するよう指示が出される。放射性プルームの放出の前かまたは直後とは、「重大な燃料損傷に至る状況」を確認してから45分以内としている。(IAEA説明文書P10)
これらの「指示」は、EPDに対してもICPDに対しても、実測とOILに基づく防護措置を講じる以前の 迅速対応として行われるのである。
日本においても早期防護措置、飲食物摂取制限の措置という経口被ばくに対する防護措置は設定されているが、IAEAは、「緊急時重点区域及び距離は、準備段階の間に前もって確認しておく必要がある」 という考えを経口摂取被ばくに対しても適用し、EPD及びICPDという区域を予め指定している。それに対して日本は予め範囲指定はせず、汚染を実測した後どの地域にどの措置を実施するかを決める。
(2)この点につき『問題点』は、次のように指摘する。
IAEAは、具体的な計画距離(ゾーン)を導入するのは、そのことで実施すべき措置と準備の必要性を「強調するためである」としている(IAEA説明文書P104)。 しかも、ゾーン指定をしておくことで、公衆を防護するために必要な措置を迅速に実施できる。先に見たように実測で評価を下す前に、「重大な燃料損傷に至る状況」を確認すれば45分以内に指定ゾーンの人々に「指示」を出すのである。
実測によっても正確な沈着状態を確認することが容易ではないことからも、予めの地域指定が必要である。IAEAは、チェルノブイリ原発事故や福島原発事故の例を挙げて、「放射性物質沈着のパターンは非常に複雑で、広域及び狭域にわたり非一様となる可能性がある」(IAEA説明文書P53)、とりわけ、100㎞以上の距離での放射性物質沈着のパターンは「非常に複雑なので、食物制限が必要となるすべての場所を効果的に確認するために、十分な地域をモニタリングすることは不可能」として、「モニタリング又はサンプリングを行う前」に防護と制限が必要であると強調している(IAEA説明文書P2)。現行の31㎞圏も含めての経口被ばくの防護措置は、ゾーン設定をしないことによって、その効果を発揮することができない。
これは経口被ばくの防護措置についてのIAEAとの違いを述べたものであるが、ゾーンを導入しての防護対策は、廃止をされたPPAの設置においても大いに検討に値するものである。ところが原災指針においては、2015年3月の『UPZ外の防護対策について』によってPPAは廃止された。
(3)これによって静岡県においては、31㎞圏外の、静岡市や浜松市を含む大きな人口の間近に、世界一危険な浜岡原発があるにもかかわらず、そしてまた福島原発事故で全村避難した飯館村と原発からの距離が大差ないにもかかわらず、ほとんど原発災害に防護措置が為されないことになる。
静岡県民にとって、安心して生きる権利を奪われている、まさに重大事である。
以上
11:16 裁判長;被告・中電の準備書面(19)の説明と、浜岡原発の工事の現状について。
被告中電・代理人:準備書面(19)の概要説明(概要報告を参照)。
被告中電・代理人:安全性向上対策工事の7月以降について(以下は、中電HPを参照)。
4号機の高圧注水系の運転可能のための工事、代替熱交換機用配管工事、フィルタベント放射線監視強化対策工事、サプレッションチェンバボックス耐震補強工事などを行った。県と御前崎市の点検を受け、被告中電のHPで公表している。
3号機、5号機については付け加えることはなし。
原子力規制委員会の審査は、地震・津波対策での2回の会合が持たれた。7/19 プレート間地震の地震動評価について、9/6、基準津波の策定のうち、地震以外の要因による津波について。
11:25 裁判長;双方の今後の予定はどうか。
原告・代理人:準備書面(26)の続編がある。引き続き主張を行う。
被告・中電代理人:引き続き主張を行う。
裁判長;被告・国からは。
被告国・代理人:予定なし。
裁判長;次回期日は、3月9日(月)11:00~ 第一号法廷で。書面は一週間前に提出を。
11:30終了
11:35 地域情報センターで報告集会
司会・落合さん;最初に阿部弁護士から報告をもらいます。
阿部弁護士;中電から準備書面(19)の提出。前に原告が主張したことへの反論であったが、安全だと言っているだけ。原告の準備書面は林さんが作成をして、本人が陳述した。原発の危険性について弁護士が詳しいわけではないので、避難計画について原告に書いてほしいと頼み、林さんにお鉢が回ってきた。あとは林さんどうぞ。
林克さん;裁判で話すのは初めて。2年前、リニア新幹線認可取り消しの訴訟で意見陳述をして以来のことだ。避難計画については、京都の研究所の原発の本に少し書いた。自治体ヒヤリングにもいくつかのところで一緒にやったりしたのでお鉢が回ってきたのかなと思う。
運動していると、県の避難計画は不備だとか、市町の計画ではこれでは避難できないと思いがち。しかし本当に悪いのは国。国がきちんとすべきこと。今日も出ていたが、規制基準の対象の中に避難計画が入っていないこと、IAEAの深層防護から外れていること、そこが抜け落ちていることが、非常に不十分でも自治体がやらざるを得ないことになっている。特に静岡県は避難が一番難しい。
なぜなら、複合災害といって、地震、津波、原発災害が、これが一緒に起きて、しかも、周りのところは南海トラフ地震で被害を受けるので、遠くに避難しなくてはならない。全国で最も難しいところ。それができてもチェックされない。勝手にやってくれと。あまりに国の指針がいいかげん。飯館村と同じ距離なのに、一番人口の多い、浜松市と静岡市が抜けている。その点を強調した。
次回は、31kmのこと、IAEAの基準を値切っていること。自治体のアンケートを実施している。31km圏外の防護計画に言及したい。
11:40 司会・落合さん;皆さんの方から質問があればどうぞ。
高柳さん;最後に言われたことは、次回の弁論でやるのか。
林克さん;家に閉じこもっていろということは、IAEAは言っていない。
司会・落合さん;他には。それでは、塩沢弁護士から、今日は大事なことが書いてあると。準備書面(29)の4ページの後段、宮城県の女川原発のことで大きな動きがあった。そのことの報告です。
塩沢弁護士;「3.折しも今」のところ。11/13の赤旗の記事に、女川2号機の再稼働の規制委員会のゴーサインが出そうだと。年度内に再稼働の許可か。過去の経験からすると、2020年の夏までには石巻市と宮城県が同意するだろう。最後の歯止めとして、石巻市の住民が、石巻市と宮城県に対して、決して動揺するなと、仮処分の訴えをした。電力会社に対する仮処分ではなくて、自治体の長に対する仮処分だ。
本来は、国が原則通りの計画を立てて、それを規制委員会が審査をしてOKがとれたらゴーサインとすべきだ。しかし、何かあったら自治体の責任になる。本来あってはならないけれども、自治体の長を訴えた。安全かどうか点検してくれと言わざるを得ない。国がやるべきことをやって、最後に自治体がやることなのに。二重の責任が自治体に課せられている。とてもこの避難計画では、避難できない。同意なしでも再稼働はできないわけではないけれども、これまで同意なしの再稼働はない。同意のもとでの再稼働が女川原発で問われている。いずれ浜岡原発でもそのことがやってくる。その先駆的な闘いが女川原発でとりくまれている。一度、女川の17人の原告住民のどなたか、弁護士を呼んでの学習会をやりたい。いま県知事は、再稼働に同意はしていないが、自治体相手の裁判とはどういうものなのかをあらかじめ知る必要はある。
司会・落合さん;ありがとうございました。今の問題を含めて、ご発言があれば。
大橋弁護士;被告は粛々と言っているが、規制委員会の審査は長引いていて、すぐには結論を出さないので、この裁判は長引く。いろんな論点が出ているので、これからの闘いが重要だ。何も事態が進展していないわけではない。規制委員会も審査が長引いているが、悪い方向で、再稼働に向けて粛々と動いていると思わざるを得ない。いづれどこかの段階で結論が出るだろうと思う。
原告はいま700人少し。1000名に到達させるために、長期戦で闘いをやっていただきたい。地元の清水さんから話を聞いているが、外からは分からないが、浜岡原発には再稼働と廃炉作業とで、3000~4000人の労働者が働いている。廃炉作業は30~50年かかる。放射性物質を放出させない廃炉作業は今の技術ではできないということになりかねないそういう危険なものがあってそこに多くの労働者が働いていると。我々もどこに逃げるか。静岡市民が浜松まで逃げるのか。まだまだ実感がなくてそこまでいっていないが。
11:50司会・落合さん;実は、浜岡原発裁判は、この浜松支部とともに本庁の裁判がやられている。昨日、本庁裁判があり、それに参加している西村さん、どうですか。
西村さん;5号機の仮処分の債権者だった。その時は公判の進行協議にも参加したが、取り下げたのでその後は傍聴の形になった。裁判は、工事の進捗報告で最後は終わり、原告の準備書面(32)で域内の断層のことを出すようにいっているが、被告は何も言ってこない。前々回、弁護団が頑張って、傍聴人でも進行協議の場に参加できるようになった。どこからかは分からないが、中電が6.1mの津波のことを言っているが、その点で、毎回、この根拠を求めて準備書面を出しているが、何の説明もない。19mの計算と6.1mの根拠を原告は求めている。裁判所は、結論を出すのではなく、双方の主張がかみ合うような争点整理をしたいと。一般傍聴人でも進行協議に入れたので、静岡市内の人も参加を。生々しいことが聞ける。これからの予定は、2/4 (火)10:30~、4/30(木)10:00~。
11:58司会・落合さん;林弘文さん、一言、お願いします。
林 弘文さん;今日の林克さんの陳述、ご苦労様でした。林克さんは11/20の静岡でのひまわり集会の実行委員長で大奮闘された。ひまわり集会は1000人の参加で、デモも500人を超える参加で、熱がこもっており、盛り上がった。数より質だ。芸人を呼び、非常にいいスピーチをされた。
雑誌「世界」で、何月号かは覚えていないが、「原子力産業の終焉」(注:2019年7月号)というタイトルと、そして「気候クライシス」(注:2019年12月号)というテーマで、気候温暖化についての論文が出ていた。台風15号、19号、21号と、大きな風雨で大きな災害を起こし、そして原発との関連では、一番気になっていることは、福島で100万トンを超える汚染水がたまっていて、50トン/日が追加され、さらに増えていく。先日の台風の大雨でどうなったかなと。放射性物質が漏れたというが、あまり報道されていないが、注視したい。地球の温暖化と原発、どちらも重要視しなくてはならない。女川原発のことは改めて考えたい。地震・津波のことも考えていかなくては。
12:02塩沢弁護士;今日の法廷に参加してくれた方々には敬意を表します。私たちの裁判は、長く、まだまだ続く運動の一環としてとらえてほしい。はがゆい感じのある法廷、かみ合うのではなく、双方がそれぞれ主張している。いろんな論点を主張することで、これはやむを得ない。法廷も報告集会も、分かりやすくて、参加してよかったというようにしたいが、そうするためにはどうしたらいいのかと頭を悩ましているが、弁護団としてはそういう努力をしていかなくてはという自覚は持っている。面白くもないのに参加してくれている参加者には敬意を表しますが、持続的に、まだまだ続く裁判に参加してもらえるようにしたい。
12:04司会・落合さん;中電の反論で「原告の主張は間違っている」には、怒り心頭だ。
次回口頭弁論は、2020年3月9日(月)11:00~ です。多くの参加をよろしくお願いします。
12:05終了
(文責・長坂)