浜岡原発永久停止裁判 第28回口頭弁論 

カテゴリー │口頭弁論

 当初は、3月9日(月)の予定であったが、新型コロナ感染症のために、裁判所から延期の措置が取られた。

 特別傍聴席は、原告用としてこれまで30席であったが、6席となった。また、一般傍聴席は抽選で

多くて12席ということになった。結果的には法廷には陳述した原告を含めて17名、報告集会の会場で待機していた原告が23名で、合計40名の原告が参加した。



2020年7月20日(月)晴れ

10:00 浜松市地域情報センターホールに原告や傍聴者が集まり始めた。

10:30 裁判所内の部屋で傍聴抽選。結果的に合計17名が傍聴できた。



11:00 裁判が開始。

裁判長は川淵健司、右陪審は荒井格、左陪審は丸谷昴資。

   訴訟代理弁護団計16名の弁護団のうち、今日の参加者は6名。

     大橋昭夫、森下文雄、塩沢忠和、杉山繁三郎、阿部浩基、平野晶規、

被告側は国と中電の10名。

11:00 裁判長;コロナ感染の関係で傍聴を4割にする対応に協力いただき感謝する。それでも密な状態なので、弁論が簡潔にお願いしたい。

原告から準備書面(30)が提出された。原告より補足説明がある。被告・中電から準備書面(20)、被告・中電より証拠書類提出。

原告・阿部弁護士:準備書面の要約を原告本人の林克から説明を行う。

11:03原告・林克:(以下に「読み原稿」を掲載します)

準備書面(30)県民を脅かす原災指針に基づく避難計画

 コロナ禍が提起した原発災害における避難の困難をかみしめ、準備書面29の内容を踏まえ,静岡県の「原発事故における防護措置をする区域」についての問題点を述べます。

1.避難計画の対象となる区域の特徴

 静岡県における浜岡原発における防護措置をする区域の特徴は、当該自治体の総人口は約94万人,全国で茨城県の東海第二原発の防護区域に次ぐ人口数です。そしてこの区域内を東海道新幹線など日本の東と西を結ぶ大動脈が貫き,原発事故が起きれば甚大な社会的経済的影響が生じる区域です。

 またプレート境界型地震が周期的に繰り返されてきた地域であり,巨大な海溝型地震である南海トラフ地震も想定される危険区域です。また海からの圧力で生じた断層が数多く、一度プレート境界型地震が起これば断続的に強い地震が起きる可能性がある区域です。国の想定では最大死者数は約10万となります。

2.UPZでの防護措置の原則である屋内退避の問題

 UPZ(浜岡原発から5キロから31キロの自治体)の防護措置では、全面緊急事態において原則として屋内退避が行われます。しかし,IAEA国際原子力機関は,PAZだけでなくUPZにおいても,「最も効果的な」防護措置として「避難」を掲げています。原災指針は,国際基準がUPZにおいて最も効果があるする避難を基本的に採用しませんでした。

 IAEAは,屋内退避は1日以上実施すべきでないとして、食物,水,公衆衛生,電力,医療援助、モニタリングなどその例外基準を設けています。また屋内退避を実施する建物の性能について、致死線量を防ぐ大きな建物を選ぶことを重視しています。

 しかし,原災指針においては国際基準の「1日以上実施するべきではない」という限定規定は見られません。また,国際基準が提示する条件も記載されていません。にもかかわらず原災指針の屋内退避の期間に触れるのは、「プルームが長時間又は断続的に到来することが想定される場合避難に切り替える」というもの。こうした曖昧な規定では,避難する場合,住民は困惑するばかりです。

 新潟県の検証委員会によれば、屋内退避の意義と限界等について、「なぜ屋内退避を行うかといえば建物によって放射線の影響を避けるということ。一般的にはコンクリートの壁が厚いほど遮蔽効果は大きく、木造建物の遮蔽効果は小さい」としています。その資料によれば、木造家屋の上空成分(クラウドシャイン)からのガンマ線は1割しか低減されません。しかし,原災指針は「放射性物質の吸入抑制や中性子線及びガンマ線を遮蔽することにより被ばくの低減を図る防護措置である」と述べて,自宅の木造家屋でも十分な防護効果があるような印象を与えています。

 通常日本家屋は木造が多く、静岡県もその例外ではありません。その状況でIAEAの国際基準のような限定を付けない屋内退避を強いるのは住民の安全を脅かすものです。

3.「屋内退避」と安定ヨウ素剤服用のタイミングの問題点

 IAEAの国際基準では「屋内退避は安定ヨウ素剤の服用と同時に行う必要があり,公衆が安定ヨウ素剤を1日以上服用することは適切でないので,屋内退避の実施は制限される」とされています。

 それに対して国は「放射性ヨウ素にばく露される24時間前からばく露後2時間までの間に安定ヨウ素剤を服用することにより,放射性ヨウ素の甲状腺への集積の90%以上を抑制することができる」「しかし,ばく露後16時間以降であればその効果はほとんどないと報告されている。」「安定ヨウ素剤の服用効果を十分に得るためには,服用のタイミングが重要であり」「安定ヨウ素剤の備蓄,事前配布,緊急時の配布手段の設定等の平時からの準備が必要となる。」としています。

 ばく露後16時間以降であれば安定ヨウ素剤の服用の効果はほとんどないとされているにもかかわらず,UPZでは屋内退避が優先的な防護措置とされ,初動で安定ヨウ素剤を服用する旨の規定はありません。避難指示後に、一時避難所やスクリーニング検査場で安定ヨウ素剤を配布された時には既に服用のタイミングは過ぎているおそれが大きいと考えます。

 事前配布をすべきですが,住民に適切な服用のタイミングについて周知がされない限り,効果のない服用にならざるを得ません。

4.「屋内退避」に最も適さない地域 静岡県海岸部の地質の特徴と地震

 原災指針のIAEA国際基準からの逸脱にとどまらず、静岡県がやがて必ず来る東海地震の震源域であり,強烈な地震と津波に襲われることからも,静岡県では原則屋内退避はやめるべきです。

 2016年の熊本地震は,189名近い死者を出すなど,断続的な揺れ、特に2度目の揺れで大きな被害をもたらしました。熊本地震と静岡県では活断層型地震とプレート型地震という揺れの違いはあるものの,断続的な地震が襲うという点は同じです。直後の朝日のアンケートによると、原災指針の「屋内退避」について静岡県、牧之原市,掛川市,袋井市,藤枝市など37自治体が指針を「見直す必要はある」と答えています。

 静岡県で原災指針の通りに「屋内退避」を続ければ,予想を上回る甚大な被害が出るものであり、静岡県は屋内退避に最も適さない地域であり,これを押しつけることは静岡県民の生命,安全を犠牲にするものです。

5.「いかに実行が容易な対策にするか」を優先させてのIAEA原則からの後退

 原災指針は,IAEA国際基準の原則を後退させた理由として、JAEA の原子力防災情報文書によれば、「各国で適用する際には変更可能」「対策の実行可能性も加味」とあり、いかに実行が容易な対策にするかということを優先させて後退させたと言わざるを得ません。

 原災指針は,IAEAの国際原則を「対策の実行可能性」のために値切り,またそれを地域の特殊性も顧みないで自治体に押しつけ静岡県民の安全を二重の意味で脅かしています。

6.要配慮者の避難

 高齢者,障害者,乳幼児その他の要配慮者の避難が最も困難、原発災害の特殊性を見なければなりません。しかし国の責任で原災法に規定すべきにもかかわらず一般的な地震・津波の対応である災対法に分類されています。それゆえ,要配慮者がいる施設の避難の作成責任は,法的にその施設に委ねられています。

 様々なアンケートで施設側から「どうすればよいか具体的にわからない」の声が上がっており、もっとも困難な避難にもかかわらず手がつかない状況です。

 また要配慮者が利用する屋内退避施設(シェルター)は放射能除去などハード面の基準はあるものの、前述の国際的な基準、線量モニタリングや,適時の安定ヨウ素剤の服用といった「ソフト面」は皆無です。安全性を欠くことは明らかであり,しかも,設置は未だPAZ区域内に限られていますから,要配慮者の避難に有効な措置とは到底言えません。

 「効率的かつ実効的」な対応を大義名分として原災指針から要配慮者の避難を外したことが、一番困難な要配慮者放射能災害に対してノウハウのない自治体に押しつけ、老人や障がい者から安全な避難をする権利を奪っています。

7.深層防護の考え方に根本的に違反する事故想定、そして指針

 規制委員会は,最大でもセシウム137の放出量が100テラベクレルの事故を想定して避難計画を策定するよう支援(指導)していることから原災指針自体も,福島第一原発事故の100分の1の規模の事故想定を前提に策定されていることが窺えます。新規制基準で定めたシビアアクシデント対策(第4層)が全てうまく機能することが前提です。深層防護の,各層の間に優先劣後の関係は存在せず,各層が互いに依存することなく独立しているべきとする考え方に相反しています。この避難計画の前提がそもそも原発の安全を図る大原則、深層防護の原則から逸脱しています。



 大原則の逸脱を前提とし、「対策の実行可能性」を優先した原災指針に基づく避難計画は実効あるものとならず、それを欠く原発は県民を放射線被ばくの具体的な危険にさらすものです。

11:10 裁判長;被告・中電の準備書面(20)の説明と、浜岡原発の工事の現状について。

被告中電・代理人:準備書面(20)の概要説明。

原告が提出した準備書面(24)(H30年4月16日)に対しての反論。「岩盤が破壊する自然現象で

ある地震について、その揺れに関し不確定性を残すことなく予測することは困難を伴うとしても、地震学、地震工学の知見をふまえ調査をつくし、地域性を考慮し原子力発電所の安全性の確保の観点から適切な地震動として、基準地震動を策定することができる。そして、これを用いた耐震設計や既設の原子力発電所の耐震安全性の確認が行われることで、地震による施設の安全機能が損なわれることがないようにすることができる。」と主張。

被告中電・代理人:安全性向上対策工事の昨年11月以降について。

 4号機の電源設備、フィルター、スプレイ系、水質サポート強化、安全弁パラメーターの規制委員会への伝達等の工事を行った。

規制委員会の審査は5回行われた。プレート間地震の断層破壊について説明し了解された。地盤に関して、敷地内のすべての断層をH系断層で代表できるとし了解された。

 津波に関して、海底地すべりについては了解された。火山活動に関する審査は継続して行う(注;伊豆・小笠原の火山による津波への影響に関しては、2019年9月6日・第767回審査で論議)。

11:15 裁判長;双方の今後の予定はどうか。

原告・代理人:引き続き主張を行う。

被告・中電代理人:引き続き主張を行う。

裁判長;被告・国からは。

被告国・代理人:予定なし。

裁判長;次回期日は、12月14日(月)11:00~ 第一号法廷で。書面は一週間前に提出を。

                                 11:22終了



11:25 地域情報センターで報告集会

司会・長坂さん;今日は落合事務局長が、市議会の関係で遅れてきます。高柳さんも参加できないので、代わりに司会をします。不手際があるかもしれませんが、よろしくお願いします。

 最初に原告で陳述した林さんより報告をお願いします。

林克さん;準備書面(30)避難計画について。「避難計画の」の対象となる区域の特徴として、UPZでの防護措置の原則である屋内退避について。5~31kmでもし緊急事態が起きた時は、屋内退避をしてくださいと。まず御前崎市と牧之原市一部が避難をはじめて、他は屋内退避が原則だという取り決めになっている。ところが、IAEAが掲げたのは、まずUPZは「避難」だと言っている。屋内退避は被ばくする可能性が非常に高いということを言っている。「一日以上いてはいけない」ということもIAEAは言っている。もし、屋内退避をする場合は、いくつかの条件が必要だということを言っている。原災指針は、放射線が強くなって、500mSV以上になったら、避難に切り替えるとしか言っていない。全然安全のことを考えていない。

 しかも新潟県の検証委員会の資料によれば、木造の建物は、上からの放射線では一割しか低減されない。UPZの人たちは、木造の建物が多く、放射線を防ぐことはできないと主張した。

 ヨウ素剤服用のタイミングの問題点について。屋内退避の時に、ヨウ素剤の服用が大事だと言われている。16時間以上たつと効果がないと。的確に与えなくてはいけない。原災指針ではあいまいになっている。住民の安全を考えていない。

東海地震、南海トラフ地震のことを考えると、建物の崩壊で10万人を超える人達は避難が予想され、屋内退避ではもっと大変なことになると指摘した。

 要配慮者の避難について。高齢者、障がい者、乳幼児などの要配慮者の避難が最も困難。しかし「原災法」でなく「災対法」によって対応すると。本来放射線被害の対策なのに、それをなくしてしまって、施設に責任を負わせている。どうしてこんなことが起きるのか。「原災法」でやりますよといいながら、やりやすいところでやるということからきている。

 最後に、規制委員会は、100テラベクレル(1テラ=1012)の事故想定で、避難計画策定を指導しているので、原災指針も福島第一原発事故の1/100の規模の事故想定で策定されていることと思われる。第4層の対策がすべてうまく機能することが前提となっている。そもそもIAEAの深層防護の大原則から逸脱していることを指摘した。

11:32 司会・長坂さん;今日の口頭弁論では、原告被告の双方で何が主張されたのか、弁護団から説明をお願いします。

阿部弁護士:原告の方からは、引き続き、避難計画の問題について、林さんから補充をしてもらった。中電からは、基準地震動についてはしっかりした根拠があるという書面が出てきた。中電は、政府の基準地震動の策定決定をもとに、きちんとやっているので耐えられるというが、こちらは、これまで何回も基準地震動を超える地震が起きているではないか、科学的装いをしているが、本当に信用できないのではないかという原告の主張に対して、中電の準備書面は、いろんな知見を踏まえて、大丈夫だというものだ。

 もう一つ、準備書面ではないが、証拠書類として中電が出してきたものは、原子力規制委員会が裁判対策用に作ったもので、その資料をもとに主張するのだというもの。

 今後何をするかを、いろいろ考えているが、今日のやりとりはそういうことだ。

11:36 塩沢弁護士;前回の準備書面の(29)、今回の準備書面(30)について。(29)は避難計画の総論的なもの。今回の(30)は静岡県に当てはめた場合に、具体的にいかに避難計画が違うかを明らかにしている。準備書面の作成では、私なども加筆を行った。地震とか、津波とか活断層とか理系のことについては分からなくとも、文系の方々には避難計画がいかにずさんで、こんなことで本当に防げるのかと分かると思う。

 いずれこの問題は、いまの県知事がリニアの問題で頑張っているが、今日の法廷での中電の弁護士が説明している内容で、いずれ規制委委員会がOKを出した時、地元の知事や自治体の長が、こんなずさんな避難計画で地元の自治体が同意をしていいのかが問われる。その時のために、我々の主張はこうだということを示している。

 宮城県の女川原発で、規制委員会が合格として、県と地元が再稼働にどういう態度をとるかがクローズアップされ、宮城県知事が同意しそうだ。避難計画は静岡県も宮城県もずさんだ。県知事は同意をするなと、住民が再稼働同意差し止めの仮処分の訴えを行った。その根拠となるのが避難計画のこと。残念ながら、7月6日仮処分の申請が却下された。その理由は、差し迫った具体的な危険を立証していないと。住民は一生懸命頑張っているが、いずれ再稼働を止めるための争点となる。

11:40 阿部弁護士;女川の仮処分の中身について補足すると、これは原発が危険だという理由としては、避難計画のずさんさしか主張していない。その前に地震・津波のことで事故が起きているが、その点は主張していない。避難計画のずさんな原発はそれ自体としては、住民の具体的危険性を持っているのだと主張したが、それはIAEAの深層防護の考えに基づいてやった。深層防護の1~4層、5層が避難計画。深層防護の考え方は、1~4層がダメであっても、5層で持ちこたえられると。各層は独立してとらえていなくてはいけない。どこか一つでも欠ければ、被ばくする危険性があると言っている。答弁はその点をあいまいにしていて、女川の仮処分決定は、原告は避難計画だけで、実際に原発が事故を起こした時の問題を出していない。避難計画の不備だけでは、その危険性は立証できないと述べている。

そこはこれから避難計画を裁判所が判断するときに、問題になると思う。避難計画をそれとして判断した例はないと思うが、女川原発はそこだけを問うた。規制委員会は規制基準をつくる時に、避難計画を入れなかった。そもそも自治体がやることで、電力会社がやることではないと。前提としてそこに大きな間違いがある。

 もう一つ。実は今日時間があれば、伊方原発差し止めの広島高裁決定にふれるつもりだった。時間がなくて今回は取りやめたが、簡単に言うと、伊方原発は、前回一度、仮処分で止まった。あれは、期限がついていた。今回は、岩国支部の決定に対する高裁の判断。一つは、伊方原発は、中央構造線という大断層帯に沿っていて、瀬戸内海に突き出している半島の根っこのところにある。原発から2km以内に活断層がある場合は、特別な深層防護をしなくてはいけないとなっているが、四国電力は、音波調査などで活断層はなかったという。中央構造線断層帯第2版という資料には、活断層があるかないか分からないと書いてある。裁判所としては、それを採用して、もっと広い範囲に活断層があるかもしれないと、審議が不十分だ。

 もう一つ。火山によって原発が被害を受ける恐れがある。火山は、立地の評価と火山灰の影響   評価の二つがある。立地の評価は、火砕流が原発を襲うのであれば、火山そのものが危険で、阿蘇山の火砕流が海を越えてくる危険があるという疑問が出されるが、誰も来ないものとしている。来た時にどうするか。予見していなくていいのか。

 阿蘇山から伊方まで火山が噴火して、それによっての対策が取られていないからダメと、二つの理由で決定を出している。

次回、準備書面でやりたい。

11:50 塩沢弁護士;中電の弁護人は、火山の問題では、浜岡原発への影響はどこからかと聞いている。

阿部弁護士;多分、富士山ではないか。

 林弘文さん;今の火山のことは、私も気になった。今の規制委員会では、実際には陸の火山のこと

が問題になっている。今日の話では、中電の説明では、原子力規制委員会の5回の審査で、プレート間地震について、審査をやったという。「敷地内のすべての断層をH系断層で代表できる」と言っていた。この意味を詳しく聞きたい。海底の地滑りは、了解したという。中電からもっと聞きたいと思っていたので残念。火山は継続審議とのことだが、規制委員会の議事録をよく読んでいない。

桜井さん;(当日の発言に加筆してもらったものを、ここに掲載しました。) 中部電力は原子力規制委員会に対し2つのことを認めてくれるよう要求していました。

 1つめは「敷地内のすべての断層をH系断層で代表できる」というもので、2つめは「一番南側のHm4~一番北側のH9までの14本あるH系断層を、H9断層で代表できる」というものでした。原子力規制委員会は1つめの「敷地内のすべての断層をH系断層で代表できる」を認めました。敷地内にある他の断層より、H系断層の方が活動時期が新しく、しかも「H系断層が12~13万年前以降に活動していないならば、すべての敷地内断層が活断層ではない」ということになります。この結果、中部電力としては南北方向の断層を無視してよいことになり、基準地震動策定に大きく前進したと評価しています。私たちにとっては良くないことですが。

 2つめの「H系断層のすべてはH9断層で代表できる」について、原子力規制委員会はこれを認めず、継続審議となりました。理由は「H系断層の細粒部(断層境界面)の針貫入試験の結果、かなり柔らかく、中部電力が主張するように100~200万年以上前の断層というより一回り新しい断層である可能性がある」「反射波のデータからも中部電力が主張するように比較的浅い面に沿って、ドミノ的土砂崩れで同時期にH系断層ができたとは言い切れない」と指摘しました。中部電力の狙いはH9断層が上載地層である泥層(中部電力は12~13万年前に堆積した地層と主張している)を切っていないことを理由にH9断層が「活断層ではない」と主張できると自信を持っています。これが否定されたことは大きく評価できることだと思います。実は東西に走るH8断層の30mほど南に東西方向の活断層(相良層の上に8万年前に堆積した笠名礫層をこの断層が切っている)が見つかっています。この活断層はH8断層と同時期に形成された可能性が指摘されています。私はこの断層に注目しています。中部電力はこの断層のすぐ近くにあるBF2という地点を掘って調査していますが、データが公開されていません。その100mほど北側の御前崎礫層(12~13万年前に堆積)がH9断層の上に載っていると考えられるBF3地点の調査結果も公開されていません。活断層議論はこの付近に焦点がありそうな気がしています。

林克さん;「敷地内の断層を東西方向のH系断層で代表する」ということですが、県のリニアのことで活躍している塩坂さんは浜岡原発の本庁裁判でも、東京高裁でも「南北方向の断層がH系断層より優先する」という考えを主張しています。今回の規制委員会の判断はどういう意味なのか、7月26日に、産業経済会館で塩坂さんの講演が静岡であるので是非参加してお聞き下さい。

司会;今日は詳しく補足説明があり、参加者のとってはよく分かったと思います。ほかにはどうですか。

林弘文さん;静岡県の危機管理部の原子力学術会議で、津波に関する京都大学の今村さん、火山学会の会長の藤井さん、委員にしていながら話を聞いたことがない。もっと各先生方の発言を聞きたい。聞く機会を設けてほしい。

司会:次回口頭弁論は、2020年12月14日(月)11:00~ です。多くの参加をよろしくお願いします。

                                                  12:05終了

                                                 (文責・長坂)

避難計画の対象となる区域の特徴
 静岡県における浜岡原発における防護措置をする区域の特徴は、当該自治体の総人口は約94万人,全国で茨城県の東海第二原発の防護区域に次ぐ人口数です。そしてこの区域内を東海道新幹線など日本の東と西を結ぶ大動脈が貫き,原発事故が起きれば甚大な社会的経済的影響が生じる区域です。
 またプレート境界型地震が周期的に繰り返されてきた地域であり,巨大な海溝型地震である南海トラフ地震も想定される危険区域です。また海からの圧力で生じた断層が数多く、一度プレート境界型地震が起これば断続的に強い地震が起きる可能性がある区域です。国の想定では最大死者数は約10万となります。
2.UPZでの防護措置の原則である屋内退避の問題
 UPZ(浜岡原発から5キロから31キロの自治体)の防護措置では、全面緊急事態において原則として屋内退避が行われます。しかし,IAEA国際原子力機関は,PAZだけでなくUPZにおいても,「最も効果的な」防護措置として「避難」を掲げています。原災指針は,国際基準がUPZにおいて最も効果があるする避難を基本的に採用しませんでした。
 IAEAは,屋内退避は1日以上実施すべきでないとして、食物,水,公衆衛生,電力,医療援助、モニタリングなどその例外基準を設けています。また屋内退避を実施する建物の性能について、致死線量を防ぐ大きな建物を選ぶことを重視しています。
 しかし,原災指針においては国際基準の「1日以上実施するべきではない」という限定規定は見られません。また,国際基準が提示する条件も記載されていません。にもかかわらず原災指針の屋内退避の期間に触れるのは、「プルームが長時間又は断続的に到来することが想定される場合避難に切り替える」というもの。こうした曖昧な規定では,避難する場合,住民は困惑するばかりです。
 新潟県の検証委員会によれば、屋内退避の意義と限界等について、「なぜ屋内退避を行うかといえば建物によって放射線の影響を避けるということ。一般的にはコンクリートの壁が厚いほど遮蔽効果は大きく、木造建物の遮蔽効果は小さい」としています。その資料によれば、木造家屋の上空成分(クラウドシャイン)からのガンマ線は1割しか低減されません。しかし,原災指針は「放射性物質の吸入抑制や中性子線及びガンマ線を遮蔽することにより被ばくの低減を図る防護措置である」と述べて,自宅の木造家屋でも十分な防護効果があるような印象を与えています。
 通常日本家屋は木造が多く、静岡県もその例外ではありません。その状況でIAEAの国際基準のような限定を付けない屋内退避を強いるのは住民の安全を脅かすものです。
3.「屋内退避」と安定ヨウ素剤服用のタイミングの問題点
 IAEAの国際基準では「屋内退避は安定ヨウ素剤の服用と同時に行う必要があり,公衆が安定ヨウ素剤を1日以上服用することは適切でないので,屋内退避の実施は制限される」とされています。
 それに対して国は「放射性ヨウ素にばく露される24時間前からばく露後2時間までの間に安定ヨウ素剤を服用することにより,放射性ヨウ素の甲状腺への集積の90%以上を抑制することができる」「しかし,ばく露後16時間以降であればその効果はほとんどないと報告されている。」「安定ヨウ素剤の服用効果を十分に得るためには,服用のタイミングが重要であり」「安定ヨウ素剤の備蓄,事前配布,緊急時の配布手段の設定等の平時からの準備が必要となる。」としています。
 ばく露後16時間以降であれば安定ヨウ素剤の服用の効果はほとんどないとされているにもかかわらず,UPZでは屋内退避が優先的な防護措置とされ,初動で安定ヨウ素剤を服用する旨の規定はありません。避難指示後に、一時避難所やスクリーニング検査場で安定ヨウ素剤を配布された時には既に服用のタイミングは過ぎているおそれが大きいと考えます。
 事前配布をすべきですが,住民に適切な服用のタイミングについて周知がされない限り,効果のない服用にならざるを得ません。
4.「屋内退避」に最も適さない地域 静岡県海岸部の地質の特徴と地震
 原災指針のIAEA国際基準からの逸脱にとどまらず、静岡県がやがて必ず来る東海地震の震源域であり,強烈な地震と津波に襲われることからも,静岡県では原則屋内退避はやめるべきです。
 2016年の熊本地震は,189名近い死者を出すなど,断続的な揺れ、特に2度目の揺れで大きな被害をもたらしました。熊本地震と静岡県では活断層型地震とプレート型地震という揺れの違いはあるものの,断続的な地震が襲うという点は同じです。直後の朝日のアンケートによると、原災指針の「屋内退避」について静岡県、牧之原市,掛川市,袋井市,藤枝市など37自治体が指針を「見直す必要はある」と答えています。
 静岡県で原災指針の通りに「屋内退避」を続ければ,予想を上回る甚大な被害が出るものであり、静岡県は屋内退避に最も適さない地域であり,これを押しつけることは静岡県民の生命,安全を犠牲にするものです。
5.「いかに実行が容易な対策にするか」を優先させてのIAEA原則からの後退
 原災指針は,IAEA国際基準の原則を後退させた理由として、JAEA の原子力防災情報文書によれば、「各国で適用する際には変更可能」「対策の実行可能性も加味」とあり、いかに実行が容易な対策にするかということを優先させて後退させたと言わざるを得ません。
 原災指針は,IAEAの国際原則を「対策の実行可能性」のために値切り,またそれを地域の特殊性も顧みないで自治体に押しつけ静岡県民の安全を二重の意味で脅かしています。
6.要配慮者の避難
 高齢者,障害者,乳幼児その他の要配慮者の避難が最も困難、原発災害の特殊性を見なければなりません。しかし国の責任で原災法に規定すべきにもかかわらず一般的な地震・津波の対応である災対法に分類されています。それゆえ,要配慮者がいる施設の避難の作成責任は,法的にその施設に委ねられています。
 様々なアンケートで施設側から「どうすればよいか具体的にわからない」の声が上がっており、もっとも困難な避難にもかかわらず手がつかない状況です。
 また要配慮者が利用する屋内退避施設(シェルター)は放射能除去などハード面の基準はあるものの、前述の国際的な基準、線量モニタリングや,適時の安定ヨウ素剤の服用といった「ソフト面」は皆無です。安全性を欠くことは明らかであり,しかも,設置は未だPAZ区域内に限られていますから,要配慮者の避難に有効な措置とは到底言えません。
 「効率的かつ実効的」な対応を大義名分として原災指針から要配慮者の避難を外したことが、一番困難な要配慮者放射能災害に対してノウハウのない自治体に押しつけ、老人や障がい者から安全な避難をする権利を奪っています。
7.深層防護の考え方に根本的に違反する事故想定、そして指針
 規制委員会は,最大でもセシウム137の放出量が100テラベクレルの事故を想定して避難計画を策定するよう支援(指導)していることから原災指針自体も,福島第一原発事故の100分の1の規模の事故想定を前提に策定されていることが窺えます。新規制基準で定めたシビアアクシデント対策(第4層)が全てうまく機能することが前提です。深層防護の,各層の間に優先劣後の関係は存在せず,各層が互いに依存することなく独立しているべきとする考え方に相反しています。この避難計画の前提がそもそも原発の安全を図る大原則、深層防護の原則から逸脱しています。

 大原則の逸脱を前提とし、「対策の実行可能性」を優先した原災指針に基づく避難計画は実効あるものとならず、それを欠く原発は県民を放射線被ばくの具体的な危険にさらすものです。
11:10 裁判長;被告・中電の準備書面(20)の説明と、浜岡原発の工事の現状について。
被告中電・代理人:準備書面(20)の概要説明。
原告が提出した準備書面(24)(H30年4月16日)に対しての反論。「岩盤が破壊する自然現象で
ある地震について、その揺れに関し不確定性を残すことなく予測することは困難を伴うとしても、地震学、地震工学の知見をふまえ調査をつくし、地域性を考慮し原子力発電所の安全性の確保の観点から適切な地震動として、基準地震動を策定することができる。そして、これを用いた耐震設計や既設の原子力発電所の耐震安全性の確認が行われることで、地震による施設の安全機能が損なわれることがないようにすることができる。」と主張。
被告中電・代理人:安全性向上対策工事の昨年11月以降について。
 4号機の電源設備、フィルター、スプレイ系、水質サポート強化、安全弁パラメーターの規制委員会への伝達等の工事を行った。
規制委員会の審査は5回行われた。プレート間地震の断層破壊について説明し了解された。地盤に関して、敷地内のすべての断層をH系断層で代表できるとし了解された。
 津波に関して、海底地すべりについては了解された。火山活動に関する審査は継続して行う(注;伊豆・小笠原の火山による津波への影響に関しては、2019年9月6日・第767回審査で論議)。
11:15 裁判長;双方の今後の予定はどうか。
原告・代理人:引き続き主張を行う。
被告・中電代理人:引き続き主張を行う。
裁判長;被告・国からは。
被告国・代理人:予定なし。
裁判長;次回期日は、12月14日(月)11:00~ 第一号法廷で。書面は一週間前に提出を。
                                 11:22終了

11:25 地域情報センターで報告集会
司会・長坂さん;今日は落合事務局長が、市議会の関係で遅れてきます。高柳さんも参加できないので、代わりに司会をします。不手際があるかもしれませんが、よろしくお願いします。
 最初に原告で陳述した林さんより報告をお願いします。
林克さん;準備書面(30)避難計画について。「避難計画の」の対象となる区域の特徴として、UPZでの防護措置の原則である屋内退避について。5~31kmでもし緊急事態が起きた時は、屋内退避をしてくださいと。まず御前崎市と牧之原市一部が避難をはじめて、他は屋内退避が原則だという取り決めになっている。ところが、IAEAが掲げたのは、まずUPZは「避難」だと言っている。屋内退避は被ばくする可能性が非常に高いということを言っている。「一日以上いてはいけない」ということもIAEAは言っている。もし、屋内退避をする場合は、いくつかの条件が必要だということを言っている。原災指針は、放射線が強くなって、500mSV以上になったら、避難に切り替えるとしか言っていない。全然安全のことを考えていない。
 しかも新潟県の検証委員会の資料によれば、木造の建物は、上からの放射線では一割しか低減されない。UPZの人たちは、木造の建物が多く、放射線を防ぐことはできないと主張した。
 ヨウ素剤服用のタイミングの問題点について。屋内退避の時に、ヨウ素剤の服用が大事だと言われている。16時間以上たつと効果がないと。的確に与えなくてはいけない。原災指針ではあいまいになっている。住民の安全を考えていない。
東海地震、南海トラフ地震のことを考えると、建物の崩壊で10万人を超える人達は避難が予想され、屋内退避ではもっと大変なことになると指摘した。
 要配慮者の避難について。高齢者、障がい者、乳幼児などの要配慮者の避難が最も困難。しかし「原災法」でなく「災対法」によって対応すると。本来放射線被害の対策なのに、それをなくしてしまって、施設に責任を負わせている。どうしてこんなことが起きるのか。「原災法」でやりますよといいながら、やりやすいところでやるということからきている。
 最後に、規制委員会は、100テラベクレル(1テラ=1012)の事故想定で、避難計画策定を指導しているので、原災指針も福島第一原発事故の1/100の規模の事故想定で策定されていることと思われる。第4層の対策がすべてうまく機能することが前提となっている。そもそもIAEAの深層防護の大原則から逸脱していることを指摘した。
11:32 司会・長坂さん;今日の口頭弁論では、原告被告の双方で何が主張されたのか、弁護団から説明をお願いします。
阿部弁護士:原告の方からは、引き続き、避難計画の問題について、林さんから補充をしてもらった。中電からは、基準地震動についてはしっかりした根拠があるという書面が出てきた。中電は、政府の基準地震動の策定決定をもとに、きちんとやっているので耐えられるというが、こちらは、これまで何回も基準地震動を超える地震が起きているではないか、科学的装いをしているが、本当に信用できないのではないかという原告の主張に対して、中電の準備書面は、いろんな知見を踏まえて、大丈夫だというものだ。
 もう一つ、準備書面ではないが、証拠書類として中電が出してきたものは、原子力規制委員会が裁判対策用に作ったもので、その資料をもとに主張するのだというもの。
 今後何をするかを、いろいろ考えているが、今日のやりとりはそういうことだ。
11:36 塩沢弁護士;前回の準備書面の(29)、今回の準備書面(30)について。(29)は避難計画の総論的なもの。今回の(30)は静岡県に当てはめた場合に、具体的にいかに避難計画が違うかを明らかにしている。準備書面の作成では、私なども加筆を行った。地震とか、津波とか活断層とか理系のことについては分からなくとも、文系の方々には避難計画がいかにずさんで、こんなことで本当に防げるのかと分かると思う。
 いずれこの問題は、いまの県知事がリニアの問題で頑張っているが、今日の法廷での中電の弁護士が説明している内容で、いずれ規制委委員会がOKを出した時、地元の知事や自治体の長が、こんなずさんな避難計画で地元の自治体が同意をしていいのかが問われる。その時のために、我々の主張はこうだということを示している。
 宮城県の女川原発で、規制委員会が合格として、県と地元が再稼働にどういう態度をとるかがクローズアップされ、宮城県知事が同意しそうだ。避難計画は静岡県も宮城県もずさんだ。県知事は同意をするなと、住民が再稼働同意差し止めの仮処分の訴えを行った。その根拠となるのが避難計画のこと。残念ながら、7月6日仮処分の申請が却下された。その理由は、差し迫った具体的な危険を立証していないと。住民は一生懸命頑張っているが、いずれ再稼働を止めるための争点となる。
11:40 阿部弁護士;女川の仮処分の中身について補足すると、これは原発が危険だという理由としては、避難計画のずさんさしか主張していない。その前に地震・津波のことで事故が起きているが、その点は主張していない。避難計画のずさんな原発はそれ自体としては、住民の具体的危険性を持っているのだと主張したが、それはIAEAの深層防護の考えに基づいてやった。深層防護の1~4層、5層が避難計画。深層防護の考え方は、1~4層がダメであっても、5層で持ちこたえられると。各層は独立してとらえていなくてはいけない。どこか一つでも欠ければ、被ばくする危険性があると言っている。答弁はその点をあいまいにしていて、女川の仮処分決定は、原告は避難計画だけで、実際に原発が事故を起こした時の問題を出していない。避難計画の不備だけでは、その危険性は立証できないと述べている。
そこはこれから避難計画を裁判所が判断するときに、問題になると思う。避難計画をそれとして判断した例はないと思うが、女川原発はそこだけを問うた。規制委員会は規制基準をつくる時に、避難計画を入れなかった。そもそも自治体がやることで、電力会社がやることではないと。前提としてそこに大きな間違いがある。
 もう一つ。実は今日時間があれば、伊方原発差し止めの広島高裁決定にふれるつもりだった。時間がなくて今回は取りやめたが、簡単に言うと、伊方原発は、前回一度、仮処分で止まった。あれは、期限がついていた。今回は、岩国支部の決定に対する高裁の判断。一つは、伊方原発は、中央構造線という大断層帯に沿っていて、瀬戸内海に突き出している半島の根っこのところにある。原発から2km以内に活断層がある場合は、特別な深層防護をしなくてはいけないとなっているが、四国電力は、音波調査などで活断層はなかったという。中央構造線断層帯第2版という資料には、活断層があるかないか分からないと書いてある。裁判所としては、それを採用して、もっと広い範囲に活断層があるかもしれないと、審議が不十分だ。
 もう一つ。火山によって原発が被害を受ける恐れがある。火山は、立地の評価と火山灰の影響   評価の二つがある。立地の評価は、火砕流が原発を襲うのであれば、火山そのものが危険で、阿蘇山の火砕流が海を越えてくる危険があるという疑問が出されるが、誰も来ないものとしている。来た時にどうするか。予見していなくていいのか。
 阿蘇山から伊方まで火山が噴火して、それによっての対策が取られていないからダメと、二つの理由で決定を出している。
次回、準備書面でやりたい。
11:50 塩沢弁護士;中電の弁護人は、火山の問題では、浜岡原発への影響はどこからかと聞いている。
阿部弁護士;多分、富士山ではないか。
 林弘文さん;今の火山のことは、私も気になった。今の規制委員会では、実際には陸の火山のこと
が問題になっている。今日の話では、中電の説明では、原子力規制委員会の5回の審査で、プレート間地震について、審査をやったという。「敷地内のすべての断層をH系断層で代表できる」と言っていた。この意味を詳しく聞きたい。海底の地滑りは、了解したという。中電からもっと聞きたいと思っていたので残念。火山は継続審議とのことだが、規制委員会の議事録をよく読んでいない。
桜井さん;(当日の発言に加筆してもらったものを、ここに掲載しました。) 中部電力は原子力規制委員会に対し2つのことを認めてくれるよう要求していました。
 1つめは「敷地内のすべての断層をH系断層で代表できる」というもので、2つめは「一番南側のHm4~一番北側のH9までの14本あるH系断層を、H9断層で代表できる」というものでした。原子力規制委員会は1つめの「敷地内のすべての断層をH系断層で代表できる」を認めました。敷地内にある他の断層より、H系断層の方が活動時期が新しく、しかも「H系断層が12~13万年前以降に活動していないならば、すべての敷地内断層が活断層ではない」ということになります。この結果、中部電力としては南北方向の断層を無視してよいことになり、基準地震動策定に大きく前進したと評価しています。私たちにとっては良くないことですが。
 2つめの「H系断層のすべてはH9断層で代表できる」について、原子力規制委員会はこれを認めず、継続審議となりました。理由は「H系断層の細粒部(断層境界面)の針貫入試験の結果、かなり柔らかく、中部電力が主張するように100~200万年以上前の断層というより一回り新しい断層である可能性がある」「反射波のデータからも中部電力が主張するように比較的浅い面に沿って、ドミノ的土砂崩れで同時期にH系断層ができたとは言い切れない」と指摘しました。中部電力の狙いはH9断層が上載地層である泥層(中部電力は12~13万年前に堆積した地層と主張している)を切っていないことを理由にH9断層が「活断層ではない」と主張できると自信を持っています。これが否定されたことは大きく評価できることだと思います。実は東西に走るH8断層の30mほど南に東西方向の活断層(相良層の上に8万年前に堆積した笠名礫層をこの断層が切っている)が見つかっています。この活断層はH8断層と同時期に形成された可能性が指摘されています。私はこの断層に注目しています。中部電力はこの断層のすぐ近くにあるBF2という地点を掘って調査していますが、データが公開されていません。その100mほど北側の御前崎礫層(12~13万年前に堆積)がH9断層の上に載っていると考えられるBF3地点の調査結果も公開されていません。活断層議論はこの付近に焦点がありそうな気がしています。
林克さん;「敷地内の断層を東西方向のH系断層で代表する」ということですが、県のリニアのことで活躍している塩坂さんは浜岡原発の本庁裁判でも、東京高裁でも「南北方向の断層がH系断層より優先する」という考えを主張しています。今回の規制委員会の判断はどういう意味なのか、7月26日に、産業経済会館で塩坂さんの講演が静岡であるので是非参加してお聞き下さい。
司会;今日は詳しく補足説明があり、参加者のとってはよく分かったと思います。ほかにはどうですか。
林弘文さん;静岡県の危機管理部の原子力学術会議で、津波に関する京都大学の今村さん、火山学会の会長の藤井さん、委員にしていながら話を聞いたことがない。もっと各先生方の発言を聞きたい。聞く機会を設けてほしい。
司会:次回口頭弁論は、2020年12月14日(月)11:00~ です。多くの参加をよろしくお願いします。
                                                  12:05終了
                                                 (文責・長坂)


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浜岡原発永久停止裁判 第28回口頭弁論 
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