2023.12.11 第37回口頭弁論

カテゴリー

2023.12.11 第37回口頭弁論

 被告中部電力からは、浜岡原発の現状報告と、規制委員会では、断層の活動性を審査中で、次回にどのような報告ができるか分からないとの審査報告がなされた。
原告からは、新規制基準では将来活動する可能性のある活断層とは、後期更新世(12~13万年前)以降の活動が否定できない断層等としており、事業者側が12~13万年前以降活動していないことを立証する責任がある。活動したか否か不明の場合は、立証できていないことになる。という趣旨の準備書面(41)を提出し、その内容を説明した。

1.H断層が、12~13万年前以降活動していないこと

(1)立証責任

 上記に指摘した立証責任が被告側にあることを指摘した。

(2)被告中部電力の証明方法
 「上載地層法」という方法によってH断層が12~13万年前以降に活動していないことを立証しようとしてきた。「上載地層法」とは、活断層の上に載っている地層が活断層によって切られていなければ、その地層は活断層ができた後に堆積したことになり、もし切られていれば、堆積後に活断層が動いたことになるという理屈から活断層の動いた時期を推定
する方法である。
この場合、活断層の上に載っている地層の推定年代が確定していなければならない。

(3)浜岡原発の敷地内には東西方向に5本のH断層が走っているが、そのいずれにも上載地層は存在しない。
 そこで、被告中部電力は、敷地外のH9断層の中のBF4地点に上載地層である「泥層」が存在することに着目し、その泥層が12~13万年前に堆積したとされる古谷泥層に相当するとして立証を試みようとした。新規制基準が策定されて以降、敷地内H断層が新規制基準をクリアできるか否かはBF4地点の「泥層」の堆積年代の立証にかかっていた。その場合、H1からH9までのH断層系が、同時期に形成されたものであり、H9断層でH断層系の活動性を代表させることができるということが前提となる。この点に関する被告中部電力の立証の経緯と規制委員会の審査状況を原告の準備書面(33)(34)(38)(39)で紹介したが、規制委員会は、中部電力の立証を了承しなかった。

(4)被告中部電力の立証の行き詰まり・BF4地点での立証を断念
  被告中部電力は、2023年3月6日の第1122回審査会合においても、「火山灰を用いた検討により、『泥層』中に年代指標となる火山灰(降灰層準)が認められる場合は、これが基準適合性を説明するための明確な根拠となることから、年代既知の堆積物との関係を用いた検討は不要となるが、これまでの調査で噴出年代が明らかな広域テフラを起源とする火山ガラス等が『泥層』から検出されないことから、火山灰を用いた検討及び年代既知の堆積物との関係を用いた検討は並行して実施し、両検討結果を今後説明していく」などとしていた(甲B46,47)。ところが、2023年6月23日の第1162回審査会合において、様々な追加調査を行ったものの、「泥層」の堆積年代・堆積環境を補強するデータは得られなかったとし、BF4地点の上載地層である「泥層」による立証ができないことを事実上認めてしまった(甲B48,49)。甲B49,16頁「BF4地点の『泥層』の堆積年代の評価に関する追加調査結果」によると、火山灰分析結果でも火山ガラス・重鉱物はほとんど検出されず、貝化石、花粉、珪藻化石、有孔虫化石、放散虫化石、石灰質ナンノ化石は検出されないか極微量しか検出されず、CNS分析でも淡水堆積物相当の結果が出るなど、被告中部電力の期待する12~13万年前に堆積したことを裏付ける調査結果は得られなかった。甲B49の12ページでは、次のようにまとめている。
【火山灰を用いた検討】
「泥層」中に含まれる角閃石の主成分の分析からは、同じ化学成分を持つ粒子が一定量まとまって確認できておらず、「泥層」に降灰基準を認めるには至っていない。
【年代既知の堆積物との関係を用いた検討】
古谷泥層との対比を念頭に、BF4地点付近の地表調査・検土杖・トレンチ調査を実施し、泥層堆積物の一定の広がりを確認し、BF4地点南側では層厚約2m以上の泥質堆積物を確認した。しかし、採取資料からは、海生生物化石や海由来の化学成分(硫黄)、花粉について、従来検査で説明済の結果を上回るような量を確認できておらず、「泥層」の堆積年代や堆積環境を補強するには至っていない。結局、H9断層上のBF4地点の「泥層」が12~13万年前に堆積したことを立証することを立証することはできなかったのである。

 (5)新たな立証の方法
 そこで、被告は古谷泥層とされるBF1地点の泥層の下に断層があるとして、その断層がH断層系に属することを証明することにより、敷地内H断層が12~13万年前以降活動していないことを立証することに方針を大きく変更したのである(甲B48,49)。しかし、H9断層(BF4地点)とBF1地点とは1キロメートルも離れており、従来被告中部電力が主張しBF1地点の下にある断層がH断層系に属するものかどうか、その断層でH断層系の断層すべての活動性を代表させることができるかどうかについての調査、立証はいまだなされていない。。

2.避難計画について
  原告は、実効性ある避難計画を欠く本件原子力発電所は原告住民らに放射線被ばくの具体的危険性をもたらすとして、原告準備書面(29)(30)にて詳細に主張したが、被告は何の反論もせず無視している。東北電力女川原発の差し止めを求めた訴訟は、避難計画の不備を唯一の争点として提起したものであるが、一審仙台地裁判決は、避難計画の実効性について判断することなく、原告の請求を棄却した。しかし、控訴審では、裁判長が「看過しがたい過誤、欠落があれば、避難計画を理由に人格権侵害の危険性を認める余地がある」との考えを示し、東北電力側に「実質的、具体的な反論が必要だ」と伝えたと報じられている(甲H50,51)。
本件訴訟においても被告中部電力は原告準備書面に対する認否、反論を行うべきである。被告中部電力としても、福島第一原発の事故を経験した後において、規制委員会の審査に合格しさえすれば、避難計画がどんなに杜撰なものであっても、お構いなしに原発を稼働させることができると考えているわけではないであろう。

    次回 第38回口頭弁論
               2024年 3月 4日(月)11:00~ 



 
(文責;長坂)

  

     
   



 
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
2023.12.11 第37回口頭弁論
    コメント(0)