2021年09月22日16:30
浜岡原発永久停止裁判 第30回口頭弁論≫
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次回の口頭弁論は9/27の予定でしたが、コロナの関係で延期になり、2021.9.22に、次回の日程の連絡がありました。第31回口頭弁論 2021年12月13日(月)11:00~ です。
浜岡原発永久停止裁判 第30回口頭弁論
2021年5月31日(月)晴れ
10:00 浜松市地域情報センターホールに原告や傍聴者が集まり始めた。
10:30 裁判所内の部屋で傍聴抽選。結果的に約20名が傍聴できた。
11:00 裁判が開始。
2020年12月14日の前回の口頭弁論の時と同じ事情(新型コロナ感染症の影響)のために、原告傍聴も、一般の傍聴も人数を半減にする措置がとられた。
裁判長は川淵健司、右陪審は三橋泰友、左陪審は野上恵里。
訴訟代理弁護団計 21 名の弁護団のうち、今日の参加者は 8名。
大橋昭夫、森下文雄、塩沢忠和、阿部浩基、平野晶規、北上絃生、栗田芙友香、富増泰斗、被告側は国と中電の 8 名。
11:00 裁判長;原告から準備書面(32)(33)が提出された。原告より陳述がある。被告・中電から準備書面(22)が提出された。陳述あり。
11:03原告の代理人・北上紘生弁護士が準備書面(32)の要約を説明した。
(ここでは、準備書面(32)をそのまま掲載する)
はじめに
大阪地裁は,令和2年12月4日,原子力規制委員会が平成29年5月24日付けで被告参加人(関西電力)に対して大飯原発3号機及び4号機についてなした設置変更許可処分(以下「本件処分」という)を取り消す判決をした(甲F6の1ないし2)。
第1 司法審査の在り方
1 判断枠組み
原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる発電用原子炉設置(変更)許可処分の取消訴訟における裁判所の審理,判断は,原子力規制委員会の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであって,現在の科学技術水準に照らし,原子力規制委員会の調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり,あるいは当該発電用原子炉の設置(変更)許可申請が上記具体的審査基準に適合すると判断した原子力規制委員会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があると認められる場合には,原子力規制委員会の判断に不合理な点があるものとして,その判断に基づく上記処分は違法であると解するのが相当である。そして,その理は,発電用原子炉の設置変更許可処分(法43条の3の8)の取消訴訟においても異ならないというべきである(発電用原子炉の設置許可の基準に関する法43条の3の6の規定は,上記処分について準用される。法43条の3の8第2項,(以上判決文80頁))。
2 主張立証責任
発電用原子炉設置許可処分(設置変更許可処分を含む。以下同じ。)についての上記取消訴訟においては、同処分が上記のような性質を有することに鑑みると,原子力規制委員会がした上記判断に不合理な点があることの主張,立証責任は,本来原告が負うべきものと解されるが,当該原子炉施設の安全審査に関する資料を全て原子力規制委員会の側が保持していることなどの点を考慮すると,被告の側において,まず,原子力規制委員会が依拠した上記の具体的審査基準並びに調査審議及び判断の過程等,原子力規制委員会の判断に不合理な点のないことを相当の根拠,資料に基づき,主張,立証する必要があり,被告が上記の主張,立証を尽くさない場合には,原子力規制委員会がした上記判断に不合理な点があることが事実上推認されるものというべきである。
(以上,最高裁昭和60年(行ツ)第133号平成4年10月29日第一小法廷判決・民集46巻7号1174頁,(以上判決文80頁))
第2 基準地震動を策定するに当たり行われた地震モーメントの設定が新規制基準に適合している旨の原子力規制委員会の判断に不合理な点があること
1 新規制基準における基準地震動の策定に関する定め
(1)設置許可基準規則4条3項は,発電用原子炉施設のうち,一定の重要なものは,その供用中に当該施設に大きな影響を及ぼすおそれがある地震による加速度によって作用する地震力(基準地震動による地震力)に対して安全機能(設置許可基準規則2条2項5号参照)が損なわれるおそれがないものでなければならない旨を定める。
(2)基準地震動の策定に当たっては,敷地に大きな影響を与えると予想される地震について,震源の特性を主要なパラメータで表した震源モデルを設定しなければならない。この点について設置許可基準を受けて原子力規制委員会が定めた内規である当時の「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置,構造及び設備の基準に関する規則の解釈」(規則の解釈)は,基準地震動の策定過程に伴う各種の不確かさ(震源断層の長さ,地震発生層の上端深さ・下端深さ,断層傾斜角等の不確かさ並びにそれらに係る考え方及び解釈の違いによる不確かさ)については,敷地における地震動評価に大きな影響を与えると考えられる支配的なパラメータについて分析をした上で,必要に応じて不確かさを組み合わせるなど適切な手法を用いて考慮する旨を定める。
(3)そして,設置許可基準規則及び規則の解釈の趣旨を十分踏まえ,基準地震動の妥当性を厳格に確認するために活用することを目的として原子力規制委員会が定めた「基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド」(地震動審査ガイド)は,「震源モデルの長さ又は面積,あるいは1回の活動による変位量と地震規模を関連づける経験則を用いて地震規模を設定する場合には,経験式の適用範囲が十分に検討されていることを確認する。その際,経験式は平均値としての地震規模を与えるものであることから,経験式が有するばらつきも考慮されている必要がある
(本件ばらつき条項)。
2 本件ばらつき条項の意義
経験式は,二つの物理量(ここでは,震源断層面積と地震規模)の間の原理的関係を示すものではなく,観測等により得られたデータを基に推測された経験的関係を示すものであり,経験式によって算出される地震規模は平均値である。そこで,実際に発生する地震の地震規模は平均値からかい離することが当然に想定されている。地震規模(地震モーメント)は,震源モデルの重要なパラメータの一つであり,その他のパラメータの算出に用いられるものであって,基準地震動の策定における重要な要素であるといえる。そうすると,経験式を用いて地震モーメントを設定する場合には,経験式によって算出される平均値をもってそのまま震源モデルにおける地震モーメントとして設定するものではなく,実際に発生する地震の地震モーメントが平均値より大きい方向にかい離する可能性を考慮して地震モーメントを設定するのが相当であると考えられる(例えば,経験式を導く基礎となったデータの標準偏差分を加味するなど)。ただし,他のパラメータの設定に当たり,上記のような方法で地震モーメントを設定するのと同視し得るような考慮など,相応の合理性を有する考慮がされていれば足りるものと考えられる。また,経験式が有するばらつきを検証して,経験式によって算出される平均値に何らかの上乗せをする必要があるか否かを検討した結果,その必要がないといえる場合には,経験式によって算出される平均値をもってそのまま震源モデルにおける地震モーメントの値とすることも妨げられないものと解される。
本件ばらつき条項の第2文は以上の趣旨をいうものと解される。このような解釈は,平成23年3月11日に発生した東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発の事故を受けて耐震設計審査委指針等が改訂される過程において,委員から経験式より大きな地震が発生することを想定すべきであるとの指摘を受けて,本件ばらつき条項の第2文に相当する定めがおかれるに至った経緯とも整合する。
3 原子力規制委員会の調査審議及び判断の過程における過誤,欠落
参加人は,本件申請において基準地震動を策定する際,地質調査結果等に基づき設定した震源断層面積を経験式に当てはめて計算された地震モーメントをそのまま震源モデルにおける地震モーメントの値としたものであり,例えば,経験式が有するばらつきを考慮するために,当該経験式の基礎となったデータの標準偏差分を加味するなどの方法により,実際に発生する地震の地震モーメントが平均値より大きい方向にかい離する可能性を考慮して地震モーメントを設定する必要があるか否かということ自体を検討しておらず,現に,そのような設定(上乗せ)をしなかった。
原子力規制委員会は,経験式が有するばらつきを考慮した場合,これに基づき算出された地震モーメントの値に何らかの上乗せをする必要があるか否か等について何ら検討することなく,本件申請が設置許可基準規則4条3項に適合し,地震動審査ガイドを踏まえているとした。このような原子力規制委員会の調査審議及び判断の過程には,看過し難い過誤,欠落があるものというべきである(以上判決要旨2頁ないし3頁,判決文106頁ないし133頁)。
第3 上記判断に対する評価等
1 本件ばらつき条項について東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発の事故を受けた改正であることを踏まえた点は評価できること
新規制基準が定められる前に用いられていた「発電用原子炉施設の耐震安全性に関する安全審査の手引き」では,本件ばらつき条項の第2文に相当する規定は置かれていなかった(判決文116頁)。
その後,福島第一原発事故を受け,原子力安全委員会においては,地震等検討小委員会が設置された。その中での川瀬委員が,海溝型地震の想定断層域とマグニチュードの関係については,過去の平均則を使って想定してきているというのが現状であること,同じ想定域からマグニチュードがより大きな地震が発生する可能性はゼロではないことを認めていた(判決文116頁~117頁)。
川瀬委員の発言の後,耐震設計審査指針の「5.基準地震動の策定」の「Ⅱ.基準地震動Ssの策定について」のうち, 「④経験則を用いて断層の長さ等から地震規模を想定する際には,その経験式の特徴等を踏まえ,地震規模を適切に評価することとする。」の次に, 「その際,経験式は平均値としての地震規模を与えるものであることから,その不確かさ(ばらつき)も考慮する必要がある。」との一文が付け加えられた。
福島第一原発事故においては,その原因が地震による揺れによるものであるとの指摘が既に多数寄せられていることは周知の事実である。基準地震動の設定の数値が甘かったことが原因である。
福島第一原発は過酷事故そのものであり,その後の審査基準が厳しくなるのは当然である。
福島第一原発事故の後の基準において,ばらつきを考慮する旨の条項が入っていることを認めた今回の大阪地裁判決は,ばらつき条項追加以前の基準では基準として不十分であることを暗に示唆するものであって評価できる。
2 経験式によって算定される地震規模は平均値であること,平均値からのかい離も当然に想定されると述べた点は評価できること
上記川瀬委員等の発言にもあるとおり,経験式によって算出される地震規模は平均値であることから,経験式によって地震規模が算出されたとしても,あくまでもその数値は平均値,すなわち参考となる数値ということになる。平均値である以上,当然に平均よりも上であることもあれば,下であることもある。
地震規模を決める式である入倉・三宅式は,過去の地震53個における震源断層面積と地震モーメントのデータを基に回帰分析により導かれたものである(判決文92頁)。入倉・三宅式について問題がある点は,大飯原発の原告らが既に主張している。本書面では,入倉・三宅式の評価方法についての論評はしないが,入倉・三宅式において算定された地震規模が過去のデータを基に算定されたものである以上,算出された地震規模を超える地震が発生しないことを否定するものではない。
原発の安全性を考慮するに際して,算定された地震規模はあくまでも平均値に過ぎないと述べた点は評価できる。
3 ばらつき条項の考慮に際して,実際に発生する地震の地震モーメントが平均値より大きい方向にかい離する可能性を考慮して地震モーメントを設定する必要があるか否かを検討すべきであると述べた点は評価できること
上記の通り,入倉・三宅式によって算定された地震規模は,あくまでも平均値であることから,その数値以上の地震もその以下の地震の発生も否定できるものではない。
原発の安全性に対して,事故が万が一にも起きないという厳しい基準で審査するものであるならば,ばらつき条項の考慮に際して,実際に発生する地震の地震モーメントが平均値より大きい方向にかい離する可能性を考慮して地震モーメントを設定する必要があるか否かを検討しなければ,およそ原発が耐震性を有すると判断することはできない。
むしろ,実際に発生する地震の地震モーメントが平均値より大きい方向にかい離する可能性を考慮して地震モーメントを設定することをより積極的に実施すべきである。なぜなら,設定された基準地震動よりも上の地震が発生することはおよそ考慮するに足りない偶然の事情や事柄ではないからである。
基準地震動よりも多くの地震が発生していることは,既に,福井地裁判決が指摘してきた。すなわち,福井地裁判決(平成26年5月21日)は,現に,全国で20箇所にも満たない原発のうち4つの原発に5回にわたり想定した地震動を超える地震が平成17年以後10年足らずの問に到来しているという事実を重視すべきは当然である旨述べ,基準地震動よりも多くの地震が直近で無視できない程度に発生していることを問題視していた。福井地裁判決の指摘はもっともであり,単純明快である。
今回の大飯原発の判決も上記福井地裁判決に通じるものがあり,設定された基準地震動よりも規模の大きい地震が頻繁に発生していることから,平均値よりも大きい方向にかい離する地震モーメントを何ら検討しないという姿勢について,安易に基準地震動か下がることで耐震性が脆弱となることを危惧したものであると推察される。今回の大飯原発の判決は,福井地裁判決にも通じるものがあり評価できる。
以上
11:09原告の代理人・阿部弁護士が準備書面(33)の要約を説明した。
(ここでは、準備書面(33)をそのまま掲載する)
I H断層の活動性について
浜岡原子力発電所と活断層の問題については、原告準備書面(9)で概略主張した。
これに対して、被告中部電力は、準備書面(6)で反論している。
本準備書面では、活断層問題についての原子力規制委員会での最近の審査会合での議論を紹介し、被告の主張の前提が未だに立証されていないことを述べる。
2 令和2年7月3日に行われた規制委員会の第871回の審査会合において、浜岡原子力発電所の活断層問題が審査された(甲B38)。
浜岡原子力発電所の敷地内には東西方向に走る断層(H断層系)と南北方向に走る断層とが入り組んでいる。もし、これらの断層が活断層(12~13万年前以降の活動歴がある断層)ならば、浜岡原子力発電所は稼働させることはできない。
被告中部電力の活断層についての説明は次のとおりである。
第1 敷地内の断層の活動性をH断層系の活動性評価で代表させ得ること。
第2 H断層系の活動性をH-9断層の活動性で代表させ得ること。
第3 H-9断層が上部更新統に変位、変形を与えていないことからH断層系は将来活動する可能性のある断層等に該当しないこと。
第871回の審査会合での議論の要点は次のとおりである。
2 第1の点について
被告中部電力の結論は、甲B39・資料2-1「コメント回答」70頁にある。
「他の断層に切られたり併合されたりすることなく数百mにわたって連続する南傾斜のEW系正断層(H断層系)が最新活動時期が最も新しい断層と考えられる。その他の断層はH断層系よりも最新活動時期が古い、または、H断層系を含むEW系正断層の活動に従属し形成された断層もしくは見かけ逆断層のEW系正断層であると考えられる。以上より、H断層系を活動性評価の対象とする断層として選定する。」
そのように結論づけた理由は、南北方向のNS系正断層、NS系逆断層、東西方向のEW系正断層、EW系逆断層の切り、切られる関係を調査した結果、EW系正断層の中に他の断層に切られたり併合されたりすることなく東西に数百mにわたって連続する断層が存在するからである。そのEW系断層をH断層系と定義している。
この点については、規制委員会も異論を述べておらず、了承している(甲B38、56頁)。
つまり、H断層系の活動年代を調査し、12~13万年以降活動していないかどうかに焦点を絞ってよいということを規制委員会も認めた形となっている。
3 第2の点について
被告中部電力は、H断層系は相良層が固結して以降、すなわち200万年以降は活動していないと主張している。
断層の活動年代を推定する方法として上載地層法というものがある。断層の上に乗っている地層の堆積時期が判明している場合、断層がその地層を切っていればその地層が堆積して以降に断層が活動したことになるし、切っていなければ断層はその地層の堆積する前に活動を終えたと推定することができる。上載地層法の説明は被告中部電力準備書面(6)13頁にある。
H断層系は、海岸と平行して走っており、原発敷地内に5本(海側からH-1、H-2、H-3、H-4、H-5)、敷地北側にH6、H7.H8、H9の4本ある。しかし、敷地内のH断層の上部の地層は剥がれていてほとんど存在しない。
唯一、H-2断層の立杭、被告中部電力のいう「Bライン立杭」の上には地層が残っているが、被告中部電力の調査では、その地層は1万年前に堆積した沖積層ということであるから、この地層をH-2断層が切っていないとしても、12~13万年前以降に活動していないことを証明するものではない。
そこで、被告中部電力は、敷地外のH系断層に着目し、調査した結果、H-9断層(T11露頭、BF4トレンチ)の上部に地層が存在することがわかったという。被告中部電力によると、このうちT11露頭の調査の結果、「T11露頭において、H-9断層がその上部を覆う約10万年前に堆積した笠名傑層に対比される堆積物に変異・変形を与えていないことを確認した」とのことである(被告中部電力準備書面(6)、6頁)。しかし、10万年前以降活動していないとしても12~13万年前以降の活動歴を否定する根拠にはならない。
結局、上載地層法で被告中部電力が12~13万年前以降の活動歴を否定できるのは「BF4トレンチ」部分だけである。「BF4トレンチ」のスケッチは被告中部電力の準備書面(6)の32頁にある。ここではH-9断層が12~13万年前以前に形成された古谷泥層に対比される堆積物に変位・変形を与えていないというのである(被告中部電力準備書面(6)6頁)。それゆえに、敷地内のH系断層も12~13万年前以降活動していない、というのが被告中部電力の論理である。
しかし、この論理が成り立つには、H断層系は全て同時期に形成されたものであり、H断層系の活動性評価はH9断層の活動性評価で代表できることが前提となっている。
第871回審査会合ではこの点が集中的に議論された。
規制委員会は、第1点については、被告中部電力の説明に異論を述べなかったが、H9断層でH断層系を代表させることができるとの被告中部電力の主張については、未だ論証不十分だとした。
田上審査官はまず次のように問題提起している。(甲B38、63頁以下)
「当方といたしましてもH断層系は相良層が固結する前の時代、未固結から半固結の時代、そういった時代に形成されたという点ですね、そこまでは一定の理解はできるというふうに考えております。」
「その一方で、H断層系には、固結の低い細粒物質というのを伴います。それは先ほどの混交帯の両端にある実線で書かれている部分ですね、こういった部分がございます。事業者さんが言う、その形成後の活動というものを考えたときに、この細粒物質というのが御説明では固結度が低いという説明ですので、私どもとしては、形成後の活動というものが明確に否定できないのではないかと思います。」
「こういった東西系の正断層であるH断層系というものは、その形成後の活動についても、審査において、より慎重に審査していく必要があるというふうに私どもは考えています。」「そこで、H断層系の分布、性状の中でも、特にこの細粒部の性状、細粒部の性状の調査結果に重点をおいて判断したいというふうに考えております。」
具体的にはH断層系と針貫入試験のデータをもとに次のように指摘している。
針貫入試験とは、針を用いて岩の貫入抵抗を測定し、岩の固結度、硬軟をしらべるものである。
針貫入試験の結果(甲B39、コメント回答、23頁)、H-6断層上盤、H-6断層下盤などでは明らかに低い数値が出ており、それが細粒物質の固結度が低いということだとし、「このように周囲の固結、周囲は相良層群として固結しているという御説明ですが、その周囲の固結以降に、この細粒物質という部分で活動がなかったかとまでは言い切れないんではないかと考えております。」
「H断層系のいずれの断層の活動性評価、結果であっても、そのH断層系の全体の活動を評価できるというふうに事業者さんが言うようなロジック、それであれば私どもは、この細粒部につきまして各H断層系の間で、その組成、規模に違いがあるのかについて、あるのか否かについてですね、まずは整理していただく必要があると考えております。」
これに対して、被告中部電力側は資料を挙げて反論したが、規制庁の菅谷技術研究調査官は、「相良層固結後のH断層系の活動性の説明に関しては、現時点ではまだ首肯できないということから、今私が申し上げた、この補足説明資料の82頁のところの、その『H断層系は、すでに活動を停正した正断層群Bと同様、現在は活動的ではないと解釈される。』という、この記載に関しては・・・・再考していただきたいというふうに考えております。」と述べた。
また内藤調整容も、「H系の活動性を評価するに際して、事業者さんは、今の方針は、いずれのH断層であっても、その活動性評価の代表となり得るということを主張されているんですけれどもまだ、ここは調査結果における観察事実に基づいて論理的に納得いく説明は得られていないと考えています。」「我々はH系の初成は、皆さん言っているのでいいかなというふうには考えています。ただ、軟弱部があると。針貫入のところで、さっき議論があって、開離型とゆ着型のやつの差ですと言っていたけど、開離型のやつの針貫入の値を見ると、最近動いた断層と遜色のない柔らかさなんですよね。針貫入のデータというのは。そういうのを考えていくと、皆さんは解釈として、水道になって固結が遅れましたといっているんだけど、それは解釈であって、逆に言うと、軟らかいものについて後から動いたということについて否定が、そんなことありませんと、まだ否定できていないと思っています。」と述べた。
この第2の点について物証に基づいた論証ができない限り、第3の点の審査には進めない状況となっているのである。
以上
11:17 被告・中電・代理人より陳述。
被告・中電の代理人は、準備書面(22)の概要説明を約3分で行った。
「1、原子力緊急事態における防護措置としての屋内退避」、「2、原告らの主張に対する反論」について、要点を説明した。
11:20 裁判長;その他にどうか。
被告・中電;安全性対策工事の報告と、規制委員会での審議の報告がされた。
裁判長;次回日程について。原告の主張はどうか。
原告;H断層と避難計画について主張したい。
被告・中電;引き続く主張する。
国;特になし。
裁判長;次回期日は、2021年9月27日(月)11:00~ 第一号法廷で行う。
11:25 終了
※その後、裁判所より「コロナ感染状況をふまえて、延期」の打診があり、原告団として了解し、
次回の口頭弁論の日程調整を行ってきました。
2021.9.22に、日程の連絡がありました。
第31回口頭弁論 2021年12月13日(月)11:00~ です。
11:35 地域情報センターで報告集会(要約)
北上弁護士;大阪地裁の判決(令和2年12月4日)内容は、東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発の事故を受けて、経験式より大きな地震が発生することを想定すべきとして、「ばらつき条項」がおかれた。しかし原子力規制委員会は,経験式が有するばらつきを考慮した検討をすることなく,規制委員会の調査審議及び判断の過程には,看過し難い過誤,欠落があるものというべきである、という判決要旨であった。
本件ばらつき条項について、東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発の事故を受けた改正であることを踏まえた点は評価できる。ここ10年の間に、5回も基準を超えた地震があったことを考えると、基準値は平均値ではないことは当然だと考える。
阿部弁護士;規制委員会の審査は4号機について地震動に関して進んでいる。活断層があればその上に原発は立てられない。浜岡原発は東西方向にH断層がある。南北方向にも断層がある。原発敷地内のどの断層を見ればいいのか。H断層を見ればいいということは規制委員会も同じ考えだ。北側のH9断層は切られていないが、H9断層と敷地内の断層が同じ時期にできたと言えないと証拠にならない。規制委員会でこの点の疑問が出た。2000万年前にできたといわれるが、針貫入試験でやわらかい。最近動いた可能性ありと規制委員会で指摘した。さらにH9の上の泥層は、12~3万年前の古谷断層と同じ地層という説明ができていない。審査はこれからだ。先日の勉強会では越路さんは8万年前ではないかという。
司会;8万年前にH断層ができたという、規制委員会の疑問点が出ている。西部地区労連ニュースの記事を参考にしてください。その記事の桜井先生、どうですか。
桜井さん;H9断層の上に載っている1~1.3mくらいの薄い泥の層が、越路南行さんは、8万年前にできたという。H断層自体が8万年前にできた。10万年前の同じ高さのBF1、BF4などが8万年前に大きな地滑りがあって、H断層ができて、13mの落差ができた。8万年前にできたH断層は活断層の証拠だ。その上の泥も8万年前。越路南行さんは、地球の寒冷化や温暖化で海面が上がったり下がったりして、海で削られて、また堆積してという説明をしている。
12:02 司会;清水さん、地元の雰囲気はどうですか。
清水;原発の入り口を改修している。門を入るとすぐ守衛室がある。いくつか段差があり、行きは遠回りをしないと守衛室にいけない。テロ対策かもしれない。
司会;3,4号機も再稼働を狙っている。中電が言うほどには、規制委員会の審査は進んでいない。
津波の審査はまだまだ不十分だ。次回は、2021年9月27日、11:00より。
阿部弁護士;中電から反論も出たので、避難計画を再度取り上げる予定だ。東海第二原発の水戸地裁判決(2021.3.18)では、差し止めの判決が出た。実行もできない避難計画で、不備を指摘している。避難計画の不備だけでの差し止めは、はじめての判決だ。これを取り上げたい。活断層の続きは出したい。それ以外にも原告団で議論して出したい。東海第二原発では30km圏内に94万人がいるとして差し止めとなった。浜岡も93万人だ。
12:09 終了
(文責・長坂)
浜岡原発永久停止裁判 第30回口頭弁論
2021年5月31日(月)晴れ
10:00 浜松市地域情報センターホールに原告や傍聴者が集まり始めた。
10:30 裁判所内の部屋で傍聴抽選。結果的に約20名が傍聴できた。
11:00 裁判が開始。
2020年12月14日の前回の口頭弁論の時と同じ事情(新型コロナ感染症の影響)のために、原告傍聴も、一般の傍聴も人数を半減にする措置がとられた。
裁判長は川淵健司、右陪審は三橋泰友、左陪審は野上恵里。
訴訟代理弁護団計 21 名の弁護団のうち、今日の参加者は 8名。
大橋昭夫、森下文雄、塩沢忠和、阿部浩基、平野晶規、北上絃生、栗田芙友香、富増泰斗、被告側は国と中電の 8 名。
11:00 裁判長;原告から準備書面(32)(33)が提出された。原告より陳述がある。被告・中電から準備書面(22)が提出された。陳述あり。
11:03原告の代理人・北上紘生弁護士が準備書面(32)の要約を説明した。
(ここでは、準備書面(32)をそのまま掲載する)
はじめに
大阪地裁は,令和2年12月4日,原子力規制委員会が平成29年5月24日付けで被告参加人(関西電力)に対して大飯原発3号機及び4号機についてなした設置変更許可処分(以下「本件処分」という)を取り消す判決をした(甲F6の1ないし2)。
第1 司法審査の在り方
1 判断枠組み
原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる発電用原子炉設置(変更)許可処分の取消訴訟における裁判所の審理,判断は,原子力規制委員会の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであって,現在の科学技術水準に照らし,原子力規制委員会の調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり,あるいは当該発電用原子炉の設置(変更)許可申請が上記具体的審査基準に適合すると判断した原子力規制委員会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があると認められる場合には,原子力規制委員会の判断に不合理な点があるものとして,その判断に基づく上記処分は違法であると解するのが相当である。そして,その理は,発電用原子炉の設置変更許可処分(法43条の3の8)の取消訴訟においても異ならないというべきである(発電用原子炉の設置許可の基準に関する法43条の3の6の規定は,上記処分について準用される。法43条の3の8第2項,(以上判決文80頁))。
2 主張立証責任
発電用原子炉設置許可処分(設置変更許可処分を含む。以下同じ。)についての上記取消訴訟においては、同処分が上記のような性質を有することに鑑みると,原子力規制委員会がした上記判断に不合理な点があることの主張,立証責任は,本来原告が負うべきものと解されるが,当該原子炉施設の安全審査に関する資料を全て原子力規制委員会の側が保持していることなどの点を考慮すると,被告の側において,まず,原子力規制委員会が依拠した上記の具体的審査基準並びに調査審議及び判断の過程等,原子力規制委員会の判断に不合理な点のないことを相当の根拠,資料に基づき,主張,立証する必要があり,被告が上記の主張,立証を尽くさない場合には,原子力規制委員会がした上記判断に不合理な点があることが事実上推認されるものというべきである。
(以上,最高裁昭和60年(行ツ)第133号平成4年10月29日第一小法廷判決・民集46巻7号1174頁,(以上判決文80頁))
第2 基準地震動を策定するに当たり行われた地震モーメントの設定が新規制基準に適合している旨の原子力規制委員会の判断に不合理な点があること
1 新規制基準における基準地震動の策定に関する定め
(1)設置許可基準規則4条3項は,発電用原子炉施設のうち,一定の重要なものは,その供用中に当該施設に大きな影響を及ぼすおそれがある地震による加速度によって作用する地震力(基準地震動による地震力)に対して安全機能(設置許可基準規則2条2項5号参照)が損なわれるおそれがないものでなければならない旨を定める。
(2)基準地震動の策定に当たっては,敷地に大きな影響を与えると予想される地震について,震源の特性を主要なパラメータで表した震源モデルを設定しなければならない。この点について設置許可基準を受けて原子力規制委員会が定めた内規である当時の「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置,構造及び設備の基準に関する規則の解釈」(規則の解釈)は,基準地震動の策定過程に伴う各種の不確かさ(震源断層の長さ,地震発生層の上端深さ・下端深さ,断層傾斜角等の不確かさ並びにそれらに係る考え方及び解釈の違いによる不確かさ)については,敷地における地震動評価に大きな影響を与えると考えられる支配的なパラメータについて分析をした上で,必要に応じて不確かさを組み合わせるなど適切な手法を用いて考慮する旨を定める。
(3)そして,設置許可基準規則及び規則の解釈の趣旨を十分踏まえ,基準地震動の妥当性を厳格に確認するために活用することを目的として原子力規制委員会が定めた「基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド」(地震動審査ガイド)は,「震源モデルの長さ又は面積,あるいは1回の活動による変位量と地震規模を関連づける経験則を用いて地震規模を設定する場合には,経験式の適用範囲が十分に検討されていることを確認する。その際,経験式は平均値としての地震規模を与えるものであることから,経験式が有するばらつきも考慮されている必要がある
(本件ばらつき条項)。
2 本件ばらつき条項の意義
経験式は,二つの物理量(ここでは,震源断層面積と地震規模)の間の原理的関係を示すものではなく,観測等により得られたデータを基に推測された経験的関係を示すものであり,経験式によって算出される地震規模は平均値である。そこで,実際に発生する地震の地震規模は平均値からかい離することが当然に想定されている。地震規模(地震モーメント)は,震源モデルの重要なパラメータの一つであり,その他のパラメータの算出に用いられるものであって,基準地震動の策定における重要な要素であるといえる。そうすると,経験式を用いて地震モーメントを設定する場合には,経験式によって算出される平均値をもってそのまま震源モデルにおける地震モーメントとして設定するものではなく,実際に発生する地震の地震モーメントが平均値より大きい方向にかい離する可能性を考慮して地震モーメントを設定するのが相当であると考えられる(例えば,経験式を導く基礎となったデータの標準偏差分を加味するなど)。ただし,他のパラメータの設定に当たり,上記のような方法で地震モーメントを設定するのと同視し得るような考慮など,相応の合理性を有する考慮がされていれば足りるものと考えられる。また,経験式が有するばらつきを検証して,経験式によって算出される平均値に何らかの上乗せをする必要があるか否かを検討した結果,その必要がないといえる場合には,経験式によって算出される平均値をもってそのまま震源モデルにおける地震モーメントの値とすることも妨げられないものと解される。
本件ばらつき条項の第2文は以上の趣旨をいうものと解される。このような解釈は,平成23年3月11日に発生した東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発の事故を受けて耐震設計審査委指針等が改訂される過程において,委員から経験式より大きな地震が発生することを想定すべきであるとの指摘を受けて,本件ばらつき条項の第2文に相当する定めがおかれるに至った経緯とも整合する。
3 原子力規制委員会の調査審議及び判断の過程における過誤,欠落
参加人は,本件申請において基準地震動を策定する際,地質調査結果等に基づき設定した震源断層面積を経験式に当てはめて計算された地震モーメントをそのまま震源モデルにおける地震モーメントの値としたものであり,例えば,経験式が有するばらつきを考慮するために,当該経験式の基礎となったデータの標準偏差分を加味するなどの方法により,実際に発生する地震の地震モーメントが平均値より大きい方向にかい離する可能性を考慮して地震モーメントを設定する必要があるか否かということ自体を検討しておらず,現に,そのような設定(上乗せ)をしなかった。
原子力規制委員会は,経験式が有するばらつきを考慮した場合,これに基づき算出された地震モーメントの値に何らかの上乗せをする必要があるか否か等について何ら検討することなく,本件申請が設置許可基準規則4条3項に適合し,地震動審査ガイドを踏まえているとした。このような原子力規制委員会の調査審議及び判断の過程には,看過し難い過誤,欠落があるものというべきである(以上判決要旨2頁ないし3頁,判決文106頁ないし133頁)。
第3 上記判断に対する評価等
1 本件ばらつき条項について東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発の事故を受けた改正であることを踏まえた点は評価できること
新規制基準が定められる前に用いられていた「発電用原子炉施設の耐震安全性に関する安全審査の手引き」では,本件ばらつき条項の第2文に相当する規定は置かれていなかった(判決文116頁)。
その後,福島第一原発事故を受け,原子力安全委員会においては,地震等検討小委員会が設置された。その中での川瀬委員が,海溝型地震の想定断層域とマグニチュードの関係については,過去の平均則を使って想定してきているというのが現状であること,同じ想定域からマグニチュードがより大きな地震が発生する可能性はゼロではないことを認めていた(判決文116頁~117頁)。
川瀬委員の発言の後,耐震設計審査指針の「5.基準地震動の策定」の「Ⅱ.基準地震動Ssの策定について」のうち, 「④経験則を用いて断層の長さ等から地震規模を想定する際には,その経験式の特徴等を踏まえ,地震規模を適切に評価することとする。」の次に, 「その際,経験式は平均値としての地震規模を与えるものであることから,その不確かさ(ばらつき)も考慮する必要がある。」との一文が付け加えられた。
福島第一原発事故においては,その原因が地震による揺れによるものであるとの指摘が既に多数寄せられていることは周知の事実である。基準地震動の設定の数値が甘かったことが原因である。
福島第一原発は過酷事故そのものであり,その後の審査基準が厳しくなるのは当然である。
福島第一原発事故の後の基準において,ばらつきを考慮する旨の条項が入っていることを認めた今回の大阪地裁判決は,ばらつき条項追加以前の基準では基準として不十分であることを暗に示唆するものであって評価できる。
2 経験式によって算定される地震規模は平均値であること,平均値からのかい離も当然に想定されると述べた点は評価できること
上記川瀬委員等の発言にもあるとおり,経験式によって算出される地震規模は平均値であることから,経験式によって地震規模が算出されたとしても,あくまでもその数値は平均値,すなわち参考となる数値ということになる。平均値である以上,当然に平均よりも上であることもあれば,下であることもある。
地震規模を決める式である入倉・三宅式は,過去の地震53個における震源断層面積と地震モーメントのデータを基に回帰分析により導かれたものである(判決文92頁)。入倉・三宅式について問題がある点は,大飯原発の原告らが既に主張している。本書面では,入倉・三宅式の評価方法についての論評はしないが,入倉・三宅式において算定された地震規模が過去のデータを基に算定されたものである以上,算出された地震規模を超える地震が発生しないことを否定するものではない。
原発の安全性を考慮するに際して,算定された地震規模はあくまでも平均値に過ぎないと述べた点は評価できる。
3 ばらつき条項の考慮に際して,実際に発生する地震の地震モーメントが平均値より大きい方向にかい離する可能性を考慮して地震モーメントを設定する必要があるか否かを検討すべきであると述べた点は評価できること
上記の通り,入倉・三宅式によって算定された地震規模は,あくまでも平均値であることから,その数値以上の地震もその以下の地震の発生も否定できるものではない。
原発の安全性に対して,事故が万が一にも起きないという厳しい基準で審査するものであるならば,ばらつき条項の考慮に際して,実際に発生する地震の地震モーメントが平均値より大きい方向にかい離する可能性を考慮して地震モーメントを設定する必要があるか否かを検討しなければ,およそ原発が耐震性を有すると判断することはできない。
むしろ,実際に発生する地震の地震モーメントが平均値より大きい方向にかい離する可能性を考慮して地震モーメントを設定することをより積極的に実施すべきである。なぜなら,設定された基準地震動よりも上の地震が発生することはおよそ考慮するに足りない偶然の事情や事柄ではないからである。
基準地震動よりも多くの地震が発生していることは,既に,福井地裁判決が指摘してきた。すなわち,福井地裁判決(平成26年5月21日)は,現に,全国で20箇所にも満たない原発のうち4つの原発に5回にわたり想定した地震動を超える地震が平成17年以後10年足らずの問に到来しているという事実を重視すべきは当然である旨述べ,基準地震動よりも多くの地震が直近で無視できない程度に発生していることを問題視していた。福井地裁判決の指摘はもっともであり,単純明快である。
今回の大飯原発の判決も上記福井地裁判決に通じるものがあり,設定された基準地震動よりも規模の大きい地震が頻繁に発生していることから,平均値よりも大きい方向にかい離する地震モーメントを何ら検討しないという姿勢について,安易に基準地震動か下がることで耐震性が脆弱となることを危惧したものであると推察される。今回の大飯原発の判決は,福井地裁判決にも通じるものがあり評価できる。
以上
11:09原告の代理人・阿部弁護士が準備書面(33)の要約を説明した。
(ここでは、準備書面(33)をそのまま掲載する)
I H断層の活動性について
浜岡原子力発電所と活断層の問題については、原告準備書面(9)で概略主張した。
これに対して、被告中部電力は、準備書面(6)で反論している。
本準備書面では、活断層問題についての原子力規制委員会での最近の審査会合での議論を紹介し、被告の主張の前提が未だに立証されていないことを述べる。
2 令和2年7月3日に行われた規制委員会の第871回の審査会合において、浜岡原子力発電所の活断層問題が審査された(甲B38)。
浜岡原子力発電所の敷地内には東西方向に走る断層(H断層系)と南北方向に走る断層とが入り組んでいる。もし、これらの断層が活断層(12~13万年前以降の活動歴がある断層)ならば、浜岡原子力発電所は稼働させることはできない。
被告中部電力の活断層についての説明は次のとおりである。
第1 敷地内の断層の活動性をH断層系の活動性評価で代表させ得ること。
第2 H断層系の活動性をH-9断層の活動性で代表させ得ること。
第3 H-9断層が上部更新統に変位、変形を与えていないことからH断層系は将来活動する可能性のある断層等に該当しないこと。
第871回の審査会合での議論の要点は次のとおりである。
2 第1の点について
被告中部電力の結論は、甲B39・資料2-1「コメント回答」70頁にある。
「他の断層に切られたり併合されたりすることなく数百mにわたって連続する南傾斜のEW系正断層(H断層系)が最新活動時期が最も新しい断層と考えられる。その他の断層はH断層系よりも最新活動時期が古い、または、H断層系を含むEW系正断層の活動に従属し形成された断層もしくは見かけ逆断層のEW系正断層であると考えられる。以上より、H断層系を活動性評価の対象とする断層として選定する。」
そのように結論づけた理由は、南北方向のNS系正断層、NS系逆断層、東西方向のEW系正断層、EW系逆断層の切り、切られる関係を調査した結果、EW系正断層の中に他の断層に切られたり併合されたりすることなく東西に数百mにわたって連続する断層が存在するからである。そのEW系断層をH断層系と定義している。
この点については、規制委員会も異論を述べておらず、了承している(甲B38、56頁)。
つまり、H断層系の活動年代を調査し、12~13万年以降活動していないかどうかに焦点を絞ってよいということを規制委員会も認めた形となっている。
3 第2の点について
被告中部電力は、H断層系は相良層が固結して以降、すなわち200万年以降は活動していないと主張している。
断層の活動年代を推定する方法として上載地層法というものがある。断層の上に乗っている地層の堆積時期が判明している場合、断層がその地層を切っていればその地層が堆積して以降に断層が活動したことになるし、切っていなければ断層はその地層の堆積する前に活動を終えたと推定することができる。上載地層法の説明は被告中部電力準備書面(6)13頁にある。
H断層系は、海岸と平行して走っており、原発敷地内に5本(海側からH-1、H-2、H-3、H-4、H-5)、敷地北側にH6、H7.H8、H9の4本ある。しかし、敷地内のH断層の上部の地層は剥がれていてほとんど存在しない。
唯一、H-2断層の立杭、被告中部電力のいう「Bライン立杭」の上には地層が残っているが、被告中部電力の調査では、その地層は1万年前に堆積した沖積層ということであるから、この地層をH-2断層が切っていないとしても、12~13万年前以降に活動していないことを証明するものではない。
そこで、被告中部電力は、敷地外のH系断層に着目し、調査した結果、H-9断層(T11露頭、BF4トレンチ)の上部に地層が存在することがわかったという。被告中部電力によると、このうちT11露頭の調査の結果、「T11露頭において、H-9断層がその上部を覆う約10万年前に堆積した笠名傑層に対比される堆積物に変異・変形を与えていないことを確認した」とのことである(被告中部電力準備書面(6)、6頁)。しかし、10万年前以降活動していないとしても12~13万年前以降の活動歴を否定する根拠にはならない。
結局、上載地層法で被告中部電力が12~13万年前以降の活動歴を否定できるのは「BF4トレンチ」部分だけである。「BF4トレンチ」のスケッチは被告中部電力の準備書面(6)の32頁にある。ここではH-9断層が12~13万年前以前に形成された古谷泥層に対比される堆積物に変位・変形を与えていないというのである(被告中部電力準備書面(6)6頁)。それゆえに、敷地内のH系断層も12~13万年前以降活動していない、というのが被告中部電力の論理である。
しかし、この論理が成り立つには、H断層系は全て同時期に形成されたものであり、H断層系の活動性評価はH9断層の活動性評価で代表できることが前提となっている。
第871回審査会合ではこの点が集中的に議論された。
規制委員会は、第1点については、被告中部電力の説明に異論を述べなかったが、H9断層でH断層系を代表させることができるとの被告中部電力の主張については、未だ論証不十分だとした。
田上審査官はまず次のように問題提起している。(甲B38、63頁以下)
「当方といたしましてもH断層系は相良層が固結する前の時代、未固結から半固結の時代、そういった時代に形成されたという点ですね、そこまでは一定の理解はできるというふうに考えております。」
「その一方で、H断層系には、固結の低い細粒物質というのを伴います。それは先ほどの混交帯の両端にある実線で書かれている部分ですね、こういった部分がございます。事業者さんが言う、その形成後の活動というものを考えたときに、この細粒物質というのが御説明では固結度が低いという説明ですので、私どもとしては、形成後の活動というものが明確に否定できないのではないかと思います。」
「こういった東西系の正断層であるH断層系というものは、その形成後の活動についても、審査において、より慎重に審査していく必要があるというふうに私どもは考えています。」「そこで、H断層系の分布、性状の中でも、特にこの細粒部の性状、細粒部の性状の調査結果に重点をおいて判断したいというふうに考えております。」
具体的にはH断層系と針貫入試験のデータをもとに次のように指摘している。
針貫入試験とは、針を用いて岩の貫入抵抗を測定し、岩の固結度、硬軟をしらべるものである。
針貫入試験の結果(甲B39、コメント回答、23頁)、H-6断層上盤、H-6断層下盤などでは明らかに低い数値が出ており、それが細粒物質の固結度が低いということだとし、「このように周囲の固結、周囲は相良層群として固結しているという御説明ですが、その周囲の固結以降に、この細粒物質という部分で活動がなかったかとまでは言い切れないんではないかと考えております。」
「H断層系のいずれの断層の活動性評価、結果であっても、そのH断層系の全体の活動を評価できるというふうに事業者さんが言うようなロジック、それであれば私どもは、この細粒部につきまして各H断層系の間で、その組成、規模に違いがあるのかについて、あるのか否かについてですね、まずは整理していただく必要があると考えております。」
これに対して、被告中部電力側は資料を挙げて反論したが、規制庁の菅谷技術研究調査官は、「相良層固結後のH断層系の活動性の説明に関しては、現時点ではまだ首肯できないということから、今私が申し上げた、この補足説明資料の82頁のところの、その『H断層系は、すでに活動を停正した正断層群Bと同様、現在は活動的ではないと解釈される。』という、この記載に関しては・・・・再考していただきたいというふうに考えております。」と述べた。
また内藤調整容も、「H系の活動性を評価するに際して、事業者さんは、今の方針は、いずれのH断層であっても、その活動性評価の代表となり得るということを主張されているんですけれどもまだ、ここは調査結果における観察事実に基づいて論理的に納得いく説明は得られていないと考えています。」「我々はH系の初成は、皆さん言っているのでいいかなというふうには考えています。ただ、軟弱部があると。針貫入のところで、さっき議論があって、開離型とゆ着型のやつの差ですと言っていたけど、開離型のやつの針貫入の値を見ると、最近動いた断層と遜色のない柔らかさなんですよね。針貫入のデータというのは。そういうのを考えていくと、皆さんは解釈として、水道になって固結が遅れましたといっているんだけど、それは解釈であって、逆に言うと、軟らかいものについて後から動いたということについて否定が、そんなことありませんと、まだ否定できていないと思っています。」と述べた。
この第2の点について物証に基づいた論証ができない限り、第3の点の審査には進めない状況となっているのである。
以上
11:17 被告・中電・代理人より陳述。
被告・中電の代理人は、準備書面(22)の概要説明を約3分で行った。
「1、原子力緊急事態における防護措置としての屋内退避」、「2、原告らの主張に対する反論」について、要点を説明した。
11:20 裁判長;その他にどうか。
被告・中電;安全性対策工事の報告と、規制委員会での審議の報告がされた。
裁判長;次回日程について。原告の主張はどうか。
原告;H断層と避難計画について主張したい。
被告・中電;引き続く主張する。
国;特になし。
裁判長;次回期日は、2021年9月27日(月)11:00~ 第一号法廷で行う。
11:25 終了
※その後、裁判所より「コロナ感染状況をふまえて、延期」の打診があり、原告団として了解し、
次回の口頭弁論の日程調整を行ってきました。
2021.9.22に、日程の連絡がありました。
第31回口頭弁論 2021年12月13日(月)11:00~ です。
11:35 地域情報センターで報告集会(要約)
北上弁護士;大阪地裁の判決(令和2年12月4日)内容は、東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発の事故を受けて、経験式より大きな地震が発生することを想定すべきとして、「ばらつき条項」がおかれた。しかし原子力規制委員会は,経験式が有するばらつきを考慮した検討をすることなく,規制委員会の調査審議及び判断の過程には,看過し難い過誤,欠落があるものというべきである、という判決要旨であった。
本件ばらつき条項について、東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発の事故を受けた改正であることを踏まえた点は評価できる。ここ10年の間に、5回も基準を超えた地震があったことを考えると、基準値は平均値ではないことは当然だと考える。
阿部弁護士;規制委員会の審査は4号機について地震動に関して進んでいる。活断層があればその上に原発は立てられない。浜岡原発は東西方向にH断層がある。南北方向にも断層がある。原発敷地内のどの断層を見ればいいのか。H断層を見ればいいということは規制委員会も同じ考えだ。北側のH9断層は切られていないが、H9断層と敷地内の断層が同じ時期にできたと言えないと証拠にならない。規制委員会でこの点の疑問が出た。2000万年前にできたといわれるが、針貫入試験でやわらかい。最近動いた可能性ありと規制委員会で指摘した。さらにH9の上の泥層は、12~3万年前の古谷断層と同じ地層という説明ができていない。審査はこれからだ。先日の勉強会では越路さんは8万年前ではないかという。
司会;8万年前にH断層ができたという、規制委員会の疑問点が出ている。西部地区労連ニュースの記事を参考にしてください。その記事の桜井先生、どうですか。
桜井さん;H9断層の上に載っている1~1.3mくらいの薄い泥の層が、越路南行さんは、8万年前にできたという。H断層自体が8万年前にできた。10万年前の同じ高さのBF1、BF4などが8万年前に大きな地滑りがあって、H断層ができて、13mの落差ができた。8万年前にできたH断層は活断層の証拠だ。その上の泥も8万年前。越路南行さんは、地球の寒冷化や温暖化で海面が上がったり下がったりして、海で削られて、また堆積してという説明をしている。
12:02 司会;清水さん、地元の雰囲気はどうですか。
清水;原発の入り口を改修している。門を入るとすぐ守衛室がある。いくつか段差があり、行きは遠回りをしないと守衛室にいけない。テロ対策かもしれない。
司会;3,4号機も再稼働を狙っている。中電が言うほどには、規制委員会の審査は進んでいない。
津波の審査はまだまだ不十分だ。次回は、2021年9月27日、11:00より。
阿部弁護士;中電から反論も出たので、避難計画を再度取り上げる予定だ。東海第二原発の水戸地裁判決(2021.3.18)では、差し止めの判決が出た。実行もできない避難計画で、不備を指摘している。避難計画の不備だけでの差し止めは、はじめての判決だ。これを取り上げたい。活断層の続きは出したい。それ以外にも原告団で議論して出したい。東海第二原発では30km圏内に94万人がいるとして差し止めとなった。浜岡も93万人だ。
12:09 終了
(文責・長坂)
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