2023.12.11 第37回口頭弁論

カテゴリー

2023.12.11 第37回口頭弁論

 被告中部電力からは、浜岡原発の現状報告と、規制委員会では、断層の活動性を審査中で、次回にどのような報告ができるか分からないとの審査報告がなされた。
原告からは、新規制基準では将来活動する可能性のある活断層とは、後期更新世(12~13万年前)以降の活動が否定できない断層等としており、事業者側が12~13万年前以降活動していないことを立証する責任がある。活動したか否か不明の場合は、立証できていないことになる。という趣旨の準備書面(41)を提出し、その内容を説明した。

1.H断層が、12~13万年前以降活動していないこと

(1)立証責任

 上記に指摘した立証責任が被告側にあることを指摘した。

(2)被告中部電力の証明方法
 「上載地層法」という方法によってH断層が12~13万年前以降に活動していないことを立証しようとしてきた。「上載地層法」とは、活断層の上に載っている地層が活断層によって切られていなければ、その地層は活断層ができた後に堆積したことになり、もし切られていれば、堆積後に活断層が動いたことになるという理屈から活断層の動いた時期を推定
する方法である。
この場合、活断層の上に載っている地層の推定年代が確定していなければならない。

(3)浜岡原発の敷地内には東西方向に5本のH断層が走っているが、そのいずれにも上載地層は存在しない。
 そこで、被告中部電力は、敷地外のH9断層の中のBF4地点に上載地層である「泥層」が存在することに着目し、その泥層が12~13万年前に堆積したとされる古谷泥層に相当するとして立証を試みようとした。新規制基準が策定されて以降、敷地内H断層が新規制基準をクリアできるか否かはBF4地点の「泥層」の堆積年代の立証にかかっていた。その場合、H1からH9までのH断層系が、同時期に形成されたものであり、H9断層でH断層系の活動性を代表させることができるということが前提となる。この点に関する被告中部電力の立証の経緯と規制委員会の審査状況を原告の準備書面(33)(34)(38)(39)で紹介したが、規制委員会は、中部電力の立証を了承しなかった。

(4)被告中部電力の立証の行き詰まり・BF4地点での立証を断念
  被告中部電力は、2023年3月6日の第1122回審査会合においても、「火山灰を用いた検討により、『泥層』中に年代指標となる火山灰(降灰層準)が認められる場合は、これが基準適合性を説明するための明確な根拠となることから、年代既知の堆積物との関係を用いた検討は不要となるが、これまでの調査で噴出年代が明らかな広域テフラを起源とする火山ガラス等が『泥層』から検出されないことから、火山灰を用いた検討及び年代既知の堆積物との関係を用いた検討は並行して実施し、両検討結果を今後説明していく」などとしていた(甲B46,47)。ところが、2023年6月23日の第1162回審査会合において、様々な追加調査を行ったものの、「泥層」の堆積年代・堆積環境を補強するデータは得られなかったとし、BF4地点の上載地層である「泥層」による立証ができないことを事実上認めてしまった(甲B48,49)。甲B49,16頁「BF4地点の『泥層』の堆積年代の評価に関する追加調査結果」によると、火山灰分析結果でも火山ガラス・重鉱物はほとんど検出されず、貝化石、花粉、珪藻化石、有孔虫化石、放散虫化石、石灰質ナンノ化石は検出されないか極微量しか検出されず、CNS分析でも淡水堆積物相当の結果が出るなど、被告中部電力の期待する12~13万年前に堆積したことを裏付ける調査結果は得られなかった。甲B49の12ページでは、次のようにまとめている。
【火山灰を用いた検討】
「泥層」中に含まれる角閃石の主成分の分析からは、同じ化学成分を持つ粒子が一定量まとまって確認できておらず、「泥層」に降灰基準を認めるには至っていない。
【年代既知の堆積物との関係を用いた検討】
古谷泥層との対比を念頭に、BF4地点付近の地表調査・検土杖・トレンチ調査を実施し、泥層堆積物の一定の広がりを確認し、BF4地点南側では層厚約2m以上の泥質堆積物を確認した。しかし、採取資料からは、海生生物化石や海由来の化学成分(硫黄)、花粉について、従来検査で説明済の結果を上回るような量を確認できておらず、「泥層」の堆積年代や堆積環境を補強するには至っていない。結局、H9断層上のBF4地点の「泥層」が12~13万年前に堆積したことを立証することを立証することはできなかったのである。

 (5)新たな立証の方法
 そこで、被告は古谷泥層とされるBF1地点の泥層の下に断層があるとして、その断層がH断層系に属することを証明することにより、敷地内H断層が12~13万年前以降活動していないことを立証することに方針を大きく変更したのである(甲B48,49)。しかし、H9断層(BF4地点)とBF1地点とは1キロメートルも離れており、従来被告中部電力が主張しBF1地点の下にある断層がH断層系に属するものかどうか、その断層でH断層系の断層すべての活動性を代表させることができるかどうかについての調査、立証はいまだなされていない。。

2.避難計画について
  原告は、実効性ある避難計画を欠く本件原子力発電所は原告住民らに放射線被ばくの具体的危険性をもたらすとして、原告準備書面(29)(30)にて詳細に主張したが、被告は何の反論もせず無視している。東北電力女川原発の差し止めを求めた訴訟は、避難計画の不備を唯一の争点として提起したものであるが、一審仙台地裁判決は、避難計画の実効性について判断することなく、原告の請求を棄却した。しかし、控訴審では、裁判長が「看過しがたい過誤、欠落があれば、避難計画を理由に人格権侵害の危険性を認める余地がある」との考えを示し、東北電力側に「実質的、具体的な反論が必要だ」と伝えたと報じられている(甲H50,51)。
本件訴訟においても被告中部電力は原告準備書面に対する認否、反論を行うべきである。被告中部電力としても、福島第一原発の事故を経験した後において、規制委員会の審査に合格しさえすれば、避難計画がどんなに杜撰なものであっても、お構いなしに原発を稼働させることができると考えているわけではないであろう。

    次回 第38回口頭弁論
               2024年 3月 4日(月)11:00~ 



 
(文責;長坂)

  

     
   



 

2023.7.10 第36回口頭弁論

カテゴリー

2023.7.10 第36回口頭弁論

 被告中部電力からは、浜岡原発の現状報告と、規制委員会での審査報告がなされた。

   原告からは、原告求釈明への被告中部電力回答が不十分のため、再度求釈明を行った。
   1.南海トラフでの地震発生状況の図面での等水深線の入った海底地形図の提示すること。
   2.中電は津波の波長の回答はできないというが、海水面低下の継続時間の根拠を提示すること。
   3.数値シミュレーションの条件である数値データの一覧表を示すこと。
   4.テトラポットの流出の危険性について流出しないというが、模型実験での相似則や実験条件を
     明らかにすること。
5.5号機取水塔位置における地盤の隆起量は、1.25mとされているが、今回の回答の、断面の敷
     地前面の地殻変動量はゼロメートルとなっている。1.25mとの関連性を明らかにすること。

   次回 第37回口頭弁論
               2023年 12月11日(月)11:00~ 


                                                (文責;長坂)


   <浜岡原発永久停止訴訟・県の会総会と学習会>の報告
     2023年8月26日(土)13時~16時 会場 御前崎市佐倉地区センター
      総会
       ・浜岡原発永久停止訴訟の到達点と今後の展望  阿部浩基弁護士
       ・県の会 活動報告、会計報告、役員体制、
       ・学習会 「H断層系は8万年前の活断層か?」 越路南行氏
       
      断層現地見学 



 

2023.3.20 第35回口頭弁論

カテゴリー

2023.3.20 第35回口頭弁論

原告準備書面(40)求釈明に対する中部電力の回答の要旨と、原告準備書面(40)求釈明のポイント
   
2022年7月15日の規制委員会第1061審査会合では、被告中部電力は津波の評価について概略次のような説明をした。
「プレート間地震が発生した際に地面が大きく動く大すべり域の位置を選定し、その代表ケースに、すべり量やライズタイム(断層破壊時間)などの評価条件を設定し、津波高さを算出したら原発敷地前面での最高水位は海抜22.7メートルなった」

原告準備書面(40)求釈明のポイント
① 想定した大すべり域の位置はどこか、すべり量及海底の隆起や沈下の量、上昇水位と下降水位はどのくらいかを海底地形図に図示すること
② 基準津波の上昇高さ、下降高さを示すこと
③ 地震による原発敷地及び取水塔位置での地盤の隆起や沈下の量

求釈明に対する被告回答のポイント
②に対して、現在、新規制基準適合性に係る審査が行われており、被告は審査の状況も踏まえて更に検討しているところであり、検討結果を踏まえて基準津波を策定する


   第36回口頭弁論  2023年7月10日 11:00~

                                    
 (文責 長坂)

 



 

2022.7.25 浜岡原発第33回口頭弁論

カテゴリー │口頭弁論

2022.7.25 浜岡原発第33回口頭弁論    
原告から準備書面(37)の説明。

富増弁護士;準備書面(37)の内容の説明。札幌地裁は、2022年5月31日、泊原発の運転差し止めを認める判決を下した。準備書面(37)では、この札幌地裁の判決の紹介および評価を行う。

第一に、審理継続を相当としなかったこと。北海道電力の、原子力規制委員会の審査を待って主張するという主張を排斥し、原告は、主張立証は尽くしたとして、審理の終結を求めている。本件では、長期間が経過しても、被告の主張立証を終える時期の見通しが立っておらず、審理の継続は相当でないと判断し、判決をしている。
北海道電力の主張立証の遅滞を厳しく指弾する判決であり、北海総電力にとっては、自ら招いた差し止めと言わざるを得ない。
今回の札幌地裁判決は、行政の判断とは別個に司法の判断は可能であることを示した。

第二に、安全性を主張立証する責任は、実質的には被告にあること。
原子力発電所が原子力規制委員会の策定した基準を満たすか否かについては、当該原子力発電所を保有し運用する被告において知見や資料を有することから、それらに基づいて、主張立証する必要があるというべきであり、被告がこれを尽くさなければ、当該原子力発電所が安全性を欠き、周辺住民の人権侵害のおそれがあることが事実上推定される。
札幌地裁判決は、説明責任を公平に分担させたものと評価でき、このような枠組みは、全国の原発訴訟において原告が主張してきた論理が受け入れられたものと言える。
本件浜岡原発訴訟においても、被告らは、自らの原発の安全性にしっかりと主張立証できなければ、原発を動かすべきではない。

第三に、津波問題で初の差し止め判断をしたこと
札幌地裁判決は、津波問題で、「基準津波が敷地の高さを上回るので、津波防護施設の設置が必要になる。被告は、原子力規制委員会の指摘する点について、相当な資料による裏付けをしていない。また、津波防護機能を保持することのできる津波防護施設は存在していない。そうすると、泊発電所が津波に襲われた場合に予想される事故による人権侵害のおそれが推定される。」として、津波問題で原発の安全性を初めて認めなかった。
本件浜岡訴訟においても、基準津波の策定及び最大上昇水位、砂丘堤防及び防波壁の安全性、これら防潮堤の液状化及び洗堀による影響、建屋内浸水防護対策について、被告中部電力は十分な主張立証を尽くすべきである。

第四に、運転の差し止めが認められる原告の範囲
札幌地裁判決は、次のように述べて、差し止めが認められる原告を施設から30km圏内に住む住民に限定した。
「原告の主張する範囲については採用できないが、泊原発で事故が発生した場合、原発から30km以内の範囲に居住する住民に放射性物質による健康被害が及ぶ蓋然性があることを前提に、当該範囲外への避難計画を作成するとされていることから、最低でも、泊原発から30km以内の範囲に居住する住民については、放射性物質による生命・身体の侵害のおそれがあることは明らかである。」

第五に、津波以外のことにも言及している。
この判示は、適切な防災計画がない場合は、それだけで運転差し止めを認めるべきものと判断するものである。このような判断は、東海第二原発についての水戸地裁判決に続く2例目である。
本件浜岡原発訴訟においても、避難計画の適否が大きな争点になっており、避難計画の不備は大きな差し止め理由となる。

阿部弁護士;準備書面(38)令和4年3月18日の原子力規制委員会第1035回審査会合では、前回に続き、H断層問題が審査された。審査会合におけるH断層の議論を紹介する。 
前回の審査会合では、H断層系の評価を、H9断層の活動性の評価で代表させることができるかどうかについて、H9断層の中のBF4地点でのデータの補充が求められていた。中部電力からは追加データの提出があったが、審査で残された問題は、H9断層(BF4地点)の上部にある泥層が12~13万年前に形成された古谷泥層に相当するかどうかという点である。
しかし規制委員会は、BF4地点の地層からは、堆積年代を示す有意な指標(例えば火山灰や花粉)が得られていないので、中部電力の説明では実証がなされていないので、なお不十分だとしている。

中部電力からは準備書面(25)の説明がされた。また安全性向上対策工事の説明。規制委員会の審査(4/15、6/10,7/15)状況の説明がされた。
次回では、原告は津波のことで追加をしたい、被告は安全性について主張したいとし、原告側から被告に対して、規制委員会の審査はどのくらいかかると考えているかを問うと、難しい質問だ、審査を受けている立場では、あとどのくらいかは申し上げる立場ではないとした。
次回の第34回口頭弁論は、2022年12月12日(月)11時~

地域情報センターでの報告集会(11:35~)
司会;落合;大変お疲れさまでした。報告集会を開催します。今日は新しく弁護士さんが登壇され、準備書面(37)の陳述がなされました。富増弁護士からご報告をお願いします。
富増弁護士;準備書面(37)陳述を行いました。今回は泊原発の運転差し止めを認める札幌地裁判決の紹介と評価を行いました(詳しくは、上記の陳述を参照)。
司会;落合;ありがとうございました。続いて阿部弁護士、お願いします。
阿部弁護士;H断層を取り上げました。中部電力は今日の準備書面の中で、H断層のことで解決済みと書いてありますが、全然そうではない。
(続いてH断層の問題点について言及しているが、その内容は上記の陳述を参照)。
  地層の年代を決める方法はいろいろあるようですが、火山灰とか貝の化石とか、花粉とか、年代を特定できるものが出てくれば年代を特定できる。しかし、BF4の層からはそういうものが発見されていない。直接年代を決めるものが発見されていないので、それで中部電力は周りから攻めて、その蓄積で年代を決めようとしているが、その実証が弱いので、ちゃんと調べて、火山灰や花粉などがないか、証拠を示せと規制委員会は求めたが、やっぱりそういうものは出てこない。
ただ出てきたのは、ザクロ石とかの天竜川地形のものだとかが出て、そういうものが出てくるということは、その層が海からできたものだという理屈をたてて、その高さなどを見ていくと、確かに12~13万年前には、そのあたりは海であったと。
規制委員会はそれでは不十分だと。確かに堆積したとは言えても、必ずしも海での堆積とは言えないのではないかと。
  今回の原告の陳述では、規制委員会の見解を紹介しただけで、こちらの見解を示したわけではない。もっとも重要なのは、単に12~13万年前に活動していたかどうかだけでなく、12~13万年前の活動が否定できないものであることが規制基準の要であり、実証責任が問われている。
  それから今日は中部電力の準備書面の中身の説明が向こうの弁護士からなされたけど、何も新しいことはなく、活断層の問題にしても、地震動の問題にしても、津波の問題にしても、過去の主張を紹介しただけで、たいした中身のないものだった。
司会;落合;ありがとうございました。個人的感想ですが、活断層の問題にしても、津波の問題にしても、いよいよ双方の主張が佳境に入ってきたという感があります。
皆さんからのご質問ございましたら、お願いしたいと思いますが、どうでしょうか。
桜井さん、BF4の話も出まして、今日の話を受けて、解説等ございましたら、どうですか。
桜井さん;古谷泥層は12~13万年前にできたと。笠名れき層というのは、10万年前から7万年前くらいまでのもの。だから私たちが主張したように、12~13万年前はずいぶん前だ。笠名れき層の堆積も海だった。上に乗っかっている地層がH9という一番北側の分かっている断層の上にあって泥の地層ですが、その泥の地層が北の方にあるBF1というところでは少し状況が違うのではないかと言われている。BF1 という下のところではずっと地層が深くまで積み重なっている。そこではそれを反映した花粉が発見されている。BF4という少し南のところでは、明確に地層が重なっている。再度堆積したと思われる。
12~13万年前では、BF1とBF4は深さ、高さが同じだった。600mくらい離れているが、同じくらいの高さだ。いまはどうか。13mくらい高さの差がある。この差がいつ生まれたか。10万年前は同じ高さだということが分かっている。いまは13mの差がある。素人考えでは、10万年後から大きな地滑りが続いて起こって13mの差ができたと考えるのが妥当だ。地滑りの後、海面がおおうようになり、そこでまた削られ、再堆積したと考えると非常に納得ができる。10万年前から7万年前にH断層ができたと考えるとよく分かる。発見されている枝分かれの断層と思われるのが8万年前。H9断層の上に笠間れき層が乗っかっていることははっきり証明できるが、それがない。H8の断層が通ったと思われるところでは、笠間れき層を削っていて、中部電力がいま駐車場にしている。その時の資料が本当はあるのではないか。そこのところを丁寧に指摘された阿部先生がよく勉強されていて、いいところを突いたなと。笠間れき層のことに触れるのが私たちにとっての非常に希望だ。
落合;ありがとうございました。私の方から一つ。
桜井;はいどうぞ。
落合;ザクロ石というものが出てきて、天竜川由来のものだと言われているとのことですが、標高50mもあるところになぜ天竜川から流れて来ているのか。
桜井;今の海岸線よりも、ずーと北側に海岸線があった。天竜川から流れてきている。海流で運ばれてきた。海岸線がずっと北にあったので、そこに堆積することは十分にあった。その当時、入り江状態になっていた。そこに天竜川のザクロ石が堆積したことは十分にある。それがいつ運ばれてきたかは証明できていない。だから阿部先生が言われたように、ザクロ石がH9断層にあったからといっても、12~3万年前にできたとは言えない。断層が波に洗われて、一回混ざって堆積したこともありうる。
落合;もう一つ。いまの説明である程度理解はできたが、H9断層と言うのは、東西に走っている1kmくらい北の断層だ。その当時、そのあたりまで海岸線が後退していたという理解でいいですか。
桜井;そこには島のようなものがあったと。名残があると。地層が曲がっていて、お椀を伏せたようになっていて、そこに地滑りがおこり、断層ができ、いま分かっているのがH9。そしてH10、H11がある。BF1と言うところにH11がある。ボーリングをしっかり行っていれば、H9だけでなく、H10、H11も分かったと思う。それから海側にもあと5本ありますね。
落合;ありがとうございました。皆さんの方でいかがでしょうか。いまのことでも結構ですが。
傍聴者1;防護壁のことで、先日の報道では中電は、これ以上やるのは困難だというような方向だと思うのですが、そういうことになると、もう、中電そのものが原発を稼働させる価値はもうないのではないかと私は思う。どれ一つとってもと思うのですが、その辺の正確な情報があれば教えてほしい。
落合;はい。それではそちらの方。
傍聴者2;関連ですが、前回の時、避難計画の問題で、まともなものは多分ないだろう、たぶんできないであろうと。だが必要だと。それは分かるのですが、準備書面(37)の一番最後の「どれ一つとっても安全性に欠ける場合は、人権侵害のおそれが認められる」とあり、その中のひとつに、津波対策のことがあって、先ほど中電の説明の中に、浸水しても大丈夫だと。対策をしているから大丈夫だとして22.7mを認めた。防護壁は22m、そして0.7mを認めた。津波対策ができていないということだ。
中電は防護壁を追加するという。
再稼働に関しても聞きたい。
阿部弁護士;ご存じの通り、福島第一原発が津波でやられたということで、中部電力は津波の高さが出る前に、防波壁の工事に着工した。最初、18mの防波壁を作っても、これで大丈夫だと思っていた。そのあと、南海トラフの巨大地震によって、その程度の津波が起きる。内閣府が19mを出して、それを見た時にかさ上げして22m。
いま規制委員会でやっているのはそうではなくて、津波の高さが22.7mに達する場合があることを認めた。22.7mの津波が起こった場合は、原発は水浸しになる。それに対してどういう対策をとるか。その対策はまだ明らかになっていない。ただ、津波が中に入ってきても、重要な機器は防水していて、中に水が入らないように工事をしているので、それで大丈夫だと。ただそれだけで十分かと言うと、それで大丈夫だとは思っていないと。今回は、中電は22.7mはありうると、自分の方から認めて、それをもとに、防波壁をどうするのか、作り直すのか、さらにかさ上げするのか、そのあたりの議論が出てくると思う。それが終わらないと。
落合;ご質問の方、いかがでしょうか。
傍聴者2;再稼働については?
大橋弁護士;それは分かりません。悪いことも、ときたま、いいことも出るかもしれませんが、我々はしっかりと立証をしていきたい。
落合;津波の問題で、一つだけ発言させていただきます。今度中部電力はいろんな計算をした結果、22.7mの津波がくると。阿部弁護士とも話をしたのですが、津波というのは、もう少し考え直した方がいいのではないか。
津波というのは、津波がじわーと来るのでなく、水平方向に高速で進行してくる。
想定するところ、秒速10mくらいの速度を持った海水が押し寄せてくる。一つの例として、福島第一原発事故の時は、実際津波がどのくらいの高さで来たかというと、最高約40m。これは、スピードを持ってくるのでそこで止まらない。止めようとするとはねあがる。はねあがる高さがどのくらいかというと、福島第一原発事故の時は建屋の倍の高さ、50mの高さになった。
 浜岡原発の場合、22mの防波壁があるから、22.7mの津波がくると70cm超えるということを意味しない。22mの防波壁をおそらく5m以上乗り越える。問題は、乗り越えた時、相当のスピードを持ってきますから、中部電力はせいぜい50cmくらいだというのですが、とてもそんなことではだめだ。
もう一つ、非常に重要なことは、松林がある。砂がある。それを一緒に巻き込んで、大量に敷地内に運びこんで来る。冷却水を取ることが事実上不可能になる。これだけで福島原発の二の舞になる。津波という問題を改めて、我々はしっかりととりくむ必要がある。ところが22.7mの津波があるという立証は正直非常に難しい。いろんなモデルを作っているようですが、それが妥当かどうか、それは私たちには難しい。ただ言えることは、22.7mの津波が来た時に、どのくらいの水位になるか、どのくらいの水量が来るかは、比較的容易に立証できるのではないかと思う。そういうことをもっともっと我々も研究しながら、難しい問題ですが、我々も取り組んでいく。これだけでは済まないよということはご理解いただきたい。
落合;それ以外の問題でも結構ですが、どうですか。
阿部弁護士;22.7mの最大の津波の可能性があるということは、こちらが立証する必要はない。中部電力も規制委員会も最大の津波を決めているので、こちらはそれを前提にしたうえで、それに対する対策を我々も取り組んでいけばいい。
落合;はい、よくわかりました。それ以外にありますでしょうか。
野沢さん(磐田);いま規制委員会で問題になっているのは、先ほどの中電が言う津波22.7mのことは継続審査だとのことですが、活断層の問題と、津波に対する対策とが審査になっているとのこと。規制委員会の審査の問題点を教えてほしい。
阿部弁護士;いま規制委員会で審査しているテーマは、先ほど弁護団も言ったように三つある。地震動の問題と、津波の問題と、活断層の問題。地震動の問題は、細かなこと分かりませんが、ほぼ規制委員会の了解はできた。活断層の問題は、さっき私が報告した通りで、最終的にどうなるかはまだ分からない。津波の問題は、審査はこれからでどうなるかはわからない。どのくらいかかるかも分からない。
地震動の問題、活断層の問題だけでは、どのくらいかかるかは言えても、津波の問題は、どのくらいかかるかは分からない。
落合;はい、よろしいでしょうか、野沢さん。他にありますでしょうか。ご意見がございましたらどうぞ。それでは、大橋先生からよろしくお願いいたします。
大橋弁護士;津波の問題、落合さんがずっと前からやってくれて、東海大学の先生もやってくれて、実験までやってくれた。ただ、その段階でこちら側も阿部先生が言ってくれたように、これから何を問題にするかだ。我々も頑張っていきたい。1~2年の問題ではない。少なくとも5年はかかる。弁護士もこれから頑張って、しっかり立証していきたい。規制委員会の動向も見て、じっくりやっていく。この裁判は長引く。今日も傍聴席に原告の方々が来てくれています。
非常に残念なことが一つあります。皆さん、お聞きになっておられると思いますが、は、山本義彦さん、林弘文さんが死去されたこと、林先生は静岡大学で研究会からずっと原発のことを取り組んでこられた。 私たちも力が抜けたという感じです。(このあと林先生のこれまでの経歴や活動のお話がありました。)
落合;はい、ありがとうございました。林先生におきましては、心よりご冥福をお祈りいたします。
 では、最後に快く原告団長を引き受けてくださった清水さん、ご挨拶をお願いします。
清水;みなさん、ご苦労さまです。いまご紹介いただきました御前崎の清水です。6月の弁護団会議で落合さんから、林先生の体調が思わしくないと言われ、原告団長をという話があり、務まらないとお断りしたが、どうしてもということで引き受けました。私も第一次原告団長として、この裁判では阿部先生をはじめ、多くの皆さんの力をお借りして、これで浜岡原発をなくすことができるのではないかと、誇りをもって闘ってきました。
私も浜岡原発の600mのところに住んでいて、皆さんの力をお借りしながら、必要な情報は皆さんにお伝えしながら、頑張っていきたいと思います。これからもよろしくお願いします。
 次回は、第34回口頭弁論は、2022年12月12日(月)11時~
     (12:20 終了)
                          (文責 長坂)



 

2022.3.23 第32回口頭弁論

カテゴリー

2022.3.23 浜岡原発第32回口頭弁論    

中部電力からの準備書面(24)の説明。原子力発電所内の火災対策について。発電所内への浸水による安全機能喪失防止対策などについて。安全性向上対策工事の説明。規制委員会の審査(12/17、3/18)状況の説明。

原告から準備書面(36)の説明

栗田弁護士;準備書面(36)の内容の説明。浜岡原発の広域避難計画は、実行可能性、実行しうる体制が整えられていると言うにはほど遠い状態にあり、深層防護の第5の防護レベルを欠いている。この状態で再稼働させることは、人権侵害の具体的危険がある。
2021年3月18日の東海第二原発に関する水戸地裁判決(注;運転差し止め判決)に関して、マスコミは、この判決の他の原発訴訟への影響の大きさに触れ、「原発30キロ圏内の人口」では、「東海原発が最多(94万人)で、次いで浜岡原発の約83万人、柏崎刈羽原発が約44万人で、これだけの人口密集地域での原発立地は世界で例がない」と指摘した。
よって、浜岡原発による人格権侵害の具体的危険性を考える上で、実現可能な避難計画及びこれを実行しうる体制が整っているかどうか、厳密に検討されるべき重要課題である。
浜岡原発周辺の住民は、PAZ(おおむね5km圏内)・UPZ(おおむね30km圏内)合計で、約82万6千人であり、東海第二に次ぐ人口密集地域の原発立地である。
県及び原発災害対策重点区域関係自治体(11市町)における避難計画の策定状況では、「避難先」として、「原発単独災害」「地震・津波などとの複合災害」の二つに分けて、避難先として、各市町ごとに県内と12都県の市町村名を示している。
しかし避難経路が実はなかなかの難問である。「避難先の地域と協議のうえ定める」という作業も、かなりの困難を伴っている。この11市町のうち、焼津市と藤枝市は、いまだに避難計画策定自体ができていない。避難元自治体としての広域避難計画がほぼ「確定した」と言えるのは、11市町のうち、5市だけである。この策定作業自体が“道半ば”であって、避難計画の実施可能性等を問う以前の状況というほかない。
浜岡原発周辺地域における避難の困難性(実現不可能性)と、実行し得る体制の不備に関して、項目だけをあげれば、1.避難の各段階における問題、2.広域避難計画における移動距離、3.移動の困難さ、4.避難の所要時間、5.避難先の問題、6.屋内退避の困難性、7.ヨウ素剤配布の非現実性、8.避難に必要な情報の取得について、9.要支援者と集団輸送体制、10.人的リソースの不足、11.要支援者と集団輸送体制、
よって結論として、静岡県及び原発災害対策重点区域関係自治体(11市町)における避難計画策定の現状や、この地域における避難そのものの困難性及びこれを実行し得る体制作りの困難性に照らすと、本件浜岡原発に係るPAZ及びUPZにおいて、原発災害対策指針が想定する段階的避難等の防護措置が実現可能な避難計画及びこれを実行し得る体制が整えられているというには、ほど遠い状態にあると言わざるを得ない。
少なくとも、本件浜岡原発に係るPAZ及びUPZ圏内に居住する約83万人住民とに関係においては、深層防護の第5レベルに欠けるところがあり、この現状で本件浜岡原発が再稼働されることになれば、人格権侵害の具体的危険性があることが明白である。
次回の弁論では、引き続き主張をしたい。

次回の第33回口頭弁論は、2022年7月25日(月)11時~

地域情報センターでの報告集会(11:20~)

司会;落合;大変お疲れさまでした。報告集会を開催します。被告の主張について、弁護団から説明お願いします。

大橋弁護士;まだ被告の準備書面が弁護団に渡っていない。

司会;落合;了解しました。桜井さん、地層のことでお話、お願いします。

桜井;二つのことが話された。一つはH断層のこと。14本のうち、どれをとっても同じであるので、どれでも代表になりうる。おおむね評価をもらったと。中電の主張のH9。分かっている断層では一番北にある。断層の上に泥の層が載っている。活断層でない時代にたまったもの。それ以来、切られていないので、活断層ではないと。これについては追加報告をしろと指摘をした。資料がそろったところで現地調査をすると。

司会;落合;中電側の書類がまだ来ていないので、詳細が分からないが、おやっと思った点はありませんか。

阿部弁護士;今の点は、準備書面に書いていたことではなくて、最新の審査会合の内容について報告があったということだ。活断層のことについては、これまでも、何回か審査会合が開かれていて、いままでの会合の内容については、原告の準備書面で書いてまとめて主張してきた。今回の3/18の会合については、まだ把握していなかったので、次回にその内容を紹介したいと思っています。肝心のH9断層の上に載った地層が、12~3万年以降、活動があったかどうかについて、原発にとって活断層であるかないかは大事な点で、前回の審査会合でも議論がされ、今回も規制委員会の納得のいく説明がなされなかったと。その内容についても、次回にまとめて紹介したい。

司会;落合;ありがとうございました。何か質問はありますか。これまで2回の規制委員会の会合が開かれた。昨年の12/17の規制委員会では、津波のことで若干の議論がされた。中電側も最大限の状況を見た場合、22.5mの津波がくることを審査委員会で議論したと。詳細は分かりませんが、そんな話でした。
  こちら側からの準備書面について、塩沢弁護士からお話を伺いたい。

塩沢弁護士;今日の法廷に入れなかった原告の方はどのくらい見えますか。ご苦労様です。コロナを理由に座席を制限し、なおかつたくさんの人が集まったところで、長時間の説明はまずいので、発言時間を5分にお願いしたいと。今回の準備書面は、5分ではとても話せない内容ですが、栗田弁護士がきわめて要領よくまとめました。実はかなりの力作をいってよい内容です。浜岡原発にかかわるPAZ及びUPZの11市町について、県の避難計画を受けての避難計画の全体を見て言及をしました。焼津市は先日、計画を形ばかりのものですが、作成したようですが、藤枝市はまだだ。
  避難計画がどのくらい実行されるのかを、全体を見ながら俯瞰し、その上で、交通工学の専門家である上岡直見という方の論文が出ています。これに準拠した、いかに静岡県の極めて危険なところに、しかも80万人を超える人口のところで、災害があった場合、一体どうなるのか、それを具体的に危険性を論証しているこの論文に基づいて、浜岡に当てはめた場合、どうなるのかを、論じています。目を通していただきたい。
  いま全国の原発差し止め訴訟で特徴的なことは、仙台の女川原発の差し止めでは、避難計画に踏み込んで裁判が進められています。電力側はどういう主張をしているか。
およそ事故は起きない、第5層の防護で大丈夫か。福島原発のような事故は起こりえない。起こりえないけれども、念のため防災の観点から避難計画がある、避難計画を作ったから 原告は本当に危険と言うのであれば、女川原発で、福島の事故のような具体的危険性を、立証すべきであると。それに触れずに、避難計画だけ言ったって、具体的危険性があるわけではないと。つまり第5層の考えを完全に否定する考えだ。
第5層の深層防護は、第4層で大丈夫だではなくて、第5層は単独でも必要だというもの。だから東海第二原発の判決で、避難計画のことで運転差し止めを命じている。
女川原発での被告の主張は、これを根本的に否定する考えだ。避難計画が不備であるかに答えない。釈明にも応じないというもの。こういう状況で仙台はどういう判断を下すか。高裁がどういう判断をするかがすごく大事になっている。
さて、浜岡原発ですが、避難計画で全国的な裁判の動きに注視しながら、どう中部電力が出てくるか、注目してください。
昨日の朝日で、「福島の事故から11年。原発は未来に禍根を残す」という長い社説を掲載している。当時、朝日新聞自身が、安全神話に取り込まれていたことを深く反省して、社説で原発に否定的な考えを繰り返し主張していますが、今回もそういう立場で言っている。「ロシアのウクライナ侵略も原発の危険性を明らかにしている。朝日は震災後、原発に頼らない社会を早く作ることを提言し、段階的に低減することを訴えてきた。その主張は揺るぎがない。福島の内部放射線被害で、普通の生活ができる 福島を忘れてはならない」
これからも原発の危険性を訴えていきたい。

司会;落合;ありがとうございました。避難計画の問題に触れていただきました。林さん、避難計画の問題では特別に強い思いがあると思いますが、一言発言お願いします。

林 克;塩沢先生、ありがとうございました。私はIAEAのとりくみを浜岡原発に当てはめて主張した。
今回の原告の書面は県民が関心を持っているところにスポットライトを当てて、避難計画の実例にもとづいた主張で、具体的で分かりやすい書面であった。運動でも使っていけるものだった。浜岡原発は、H断層をはじめ、論点はいっぱいある。避難計画を含めて、浜岡原発は世界一危険だというのは、誰でも分かっている。震源域の真上にあるので、避難そのものが難しいので、そこで押していくことはとても大事だと思う。お疲れさまでした。ありがとうございました。

司会;落合;地元の運動や様子はどうですか。ご質問等、遠慮なくご発言ください。地元の清水さん、ご発言願えますか。最近の寒さの中で、電力がひっ迫していることを受けて、「それ見ろ」とばかり、日経連の会長は原発を早く再稼働しなくてはと。一層そういう傾向が強まるのではないかと思いますが。

清水;一週間前、中電の社員と話す機会があった。「浜岡原発は10何年止まり続けているが、今後どうなるのか」と言ったところ、「もう、ちょっとね……」と。規制委員会は早く動かしたいという気持ちを持っているかもしれないが、中電社員自体が現状を考えると、動かすことまで言っていない。UPZの仲間と会うと、原発事故の悲惨さを考えると、世界一危険な原発という認識は非常に高まっているので、簡単に動かすことにはならないと。仲間と結束して引き続き運動を取り組んでいきたい。

桜井;東電の電力供給について、大変ひっ迫していると。節電を!と。震災時、計画停電と。今では「だまし」の戦術だったということが分かってきているが、昨日の東北の電力のひっ迫状況を政府もあげて大騒ぎしているが、どうとらえてらいいのか。

大橋弁護士;意図は分からないが、本当にそうかもしれない。そのことを利用して原発再稼働の方向にもっていくかもしれない。電力不足の心配。脆弱性をもっている日本。原発はなくさなくてはいけない。再生可能エネルギーにもっていくことに確信していきたい。
  先ほどの清水さんの話。11年も動かずの施設、お釈迦になる。中電自身、そう思っているのではないか。経団連会長の発言もあったが。1~2年で終わることにはならない。規制委員会の長が推進派の人に変わった。審査を進めていくだろう。10年くらいは続くだろう。

桜井;100%を何をもとに決めたのか? 予定した量に対しての100%だ。発電容量の98%とかいうことではないと思う。やはり、だましが入っているのではないか。

塩沢弁護士;ついしゃべりたくなる。改めてどのくらい電力に依存していくかをしみじみと感じる。水と電気はなくてはならない。エネルギー政策を根本的に考え直さなくてはならないことは間違いがない。相変わらず原発に頼っていることの見通しが、今だからこそ考えていく必要がある。

司会;落合;他にいかがですか。今日の中日新聞に中電のことが載っていた。福島の二つの原発が地震で動けなくなった。原発に頼らない世の中にしていくべきだと。
  3/27 福島原発の生業訴訟。鈴木正樹弁護士(磐田市出身)が浜松に来て講演をしてくれる。この会場で講演予定だ。ご参加ください。

  次回は、7月25日(月)11:00~ 第33回口頭弁論です。  
    (11:50 終了)

(文責 長坂)




 

2021.12.13 浜岡原発第31回口頭弁論

カテゴリー │口頭弁論

2021.12.13 浜岡原発第31回口頭弁論

中部電力からの準備書面(23)の説明。安全性向上対策工事の説明。規制委員会の審査(6/4、7/16)状況の説明。

原告から準備書面(34)(35)の説明。
 阿部弁護士;準備書面(34)の内容の説明。H断層関係の規制委員会の審査状況を説明したもの。H-9断層とBF4に関して審査がされている。
 H断層に関しては、原発の重要施設の地下にH1~5までの断層がある。このH断層が12~13万年以降に動いたことが否定できない活断層であれば、浜岡原発の再稼働は許されない。活断層の動いた年代を推定する方法としては、被告中部電力は、断層の上に載っている地層を切っているかどうかという手法を用いている。
 しかし、原発の地下を走っているH1~5の断層についてはその上に載っている地層は存在しない。従って上載地層法という方法をとることができない。そこでH9断層の上に載っている泥層に着目する。そのためには、H1~9の断層が同じ時期にできたかどうかが前提となる。その点は、規制委員会では最終的には了解されていない。
 H9断層の上に載っている泥層が12~13万年前以降にできたと言えるかどうかが大問題となる。中部電力は、H9断層の上に載っているBF4泥層が、古谷泥層という12~13万年前にできた泥層と同じ時期にできたと主張する。
 規制委員会はどういったのか。規制委員会は、BF4という地点には、地層の年代を示す火山灰や花粉がない。BF1が古谷泥層であるということは確定している。BF4とBF1は似ているから同じ時期にできたと、中部電力は主張する。地形による対比、層相による対比、粒度・密度、含有鉱物などを比較して、BF4とBF1は似ているから同じ時期にできたと主張している。
 それに対して、規制委員会は、BF1とBF4とは、1km位離れていて、直接つながっているわけではない。現状のデータだけでは、BF4をBF1と似ているからといって評価するのは、難しいのではないか、と考えていると述べている。中部電力と規制委員会の議論を見る限りでは、規制委員会が方針を変えない限りは、H9断層が12~13万年前に以降活動していないとは言えないことになるはずだ。
塩沢弁護士;準備書面(35)について(以下は、準備書面を参照した)。
 本年3月18日,水戸地裁は「日本原電」に対し,実効可能性のある避難計画及び実行しうる態勢が整えられない限り、安全性に欠けるとして、東海第二原発の運転差し止めを命ずる判決を下した。
 この判決には、浜岡原発訴訟の原告にとって看過できない問題点を含んではいるが、しかし基本的にはこの判決には、当裁判所の判断においても採用されるべき点を含んでおり、評価したい。
 この判決は750ページにわたる大作であり、そのためか判例時報などに掲載されていない。そこで、浜岡原発訴訟の代理人の立場で見ると、こう理解されるという見方を述べるものである。いずれきちんとした判例が世に出れば、訂正なり補充も必要になるということをあらかじめ述べておきたい。
 準備書面の「第2 水戸地裁判決の特徴,結論及び理由の骨子」(準備書面P7)。
東海第二原発は,2011年の津波被害を受けた原発であり,運転開始から40年以上を経過した老朽原発であり,首都圏唯一の,30キロ圏内に94万人が暮らす原発であり,しかも2.8キロという近くに多量の放射性廃棄物を抱える再処理施設が存在するという原発でもあり,それ故争点は多岐にわたる。
 争点の10項目のうち、9項目については、原告の主張をことごとく退けたうえで、避難計画についての判断で、76名の原告ら(PAZ及びUPZ圏内に居住する住民)に対して、東海第二発電所の原子炉を運転してはならないと結論づけている。
 その理由の骨子は、以下の通り。
 「当裁判所は、人格権に基づく原子炉運転差止請求に係る具体的危険とは、深層防護の第1から第5の防護レベルのいずれかが欠落し又は不十分なことをいうものと解した上で、本件訴訟の争点のうち、第1から第4の防護レベルに係る事項については、その安全性に欠けるところがあるとは認められないが、避難計画等の第5の防護レベルについては、本件発電所の原子力災害対策重点区域であるPAZ及びUPZ(概ね半径30km)内の住民は94万人余に及ぶところ、原子力災害対策指針が定める防護措置が実現可能な避難計画及びこれを実行し得る体制が整えられているというにはほど遠い状態であり、防災体制は極めて不十分であるといわざるを得ず、PAZ及びUPZ内の住民である原告79名との関係において、その安全性に欠けるところがあると認められ、人格権侵害の具体的危険があると判断した。」(準備書面P8)
 原告79名を、浜岡原発に当てはめてみると153名となる。東海原発では94万人が暮らすところ、浜岡原発では83万人となる。水戸地裁判決は深層防護の考え方に立っている。
 そして、他の科学的技術利用に伴う事故とは質的に異なる原発事故の危険性をあげている。また、事故原因の予測不確実性,絶対的安全性を要求することの困難性もあげている。
IAEAは第1から第5までの防護レベルによる深層防護の考え方を採用し、我が国の原子力基本法もこの国際的な基準を踏まえるものとしている。
 「そうすると、我が国においても、発電用原子炉施設の安全性は、深層防護の第1から第5の防護レベルをそれぞれ確保することにより図るものとされているといえることから、深層防護の第1から第5の防護レベルのいずれかが欠落し又は不十分な場合には,発電用原子炉施設が安全であるということはできず、周辺住民の生命,身体が害される具体的危険があるというべきである。」(準備書面P15)。「第1から第5の防護レベルのいずれかが欠落し又は不十分な場合には、発電用原子炉施設が安全であるということはいえない」この点が大事だ。
更なる重要な指摘として、本判決は、「福島第一発電所事故の教訓を生かして発電用原子炉施設の安全強化を図るべく改正ないし制定された法律及び規則が要求する安全性は,上記のとおり国際的な基準を踏まえ深層防護の考え方を取り入れたものといえるから,差止めの要件となる具体的危険の検討に当たり,重要な指標となるものである。」(準備書面P15~16)。この判決は福島原発事故の教訓を生かすことが重要なのだという立場に立っている。
 さらに「深層防護第1から第4の防護レベルに相当する事項と第5の防護レベルに相当する事項(避難計画等)とでは具体的危険の存否に関する判断枠組みが異なること」(準備書面P16)をあげていることも大事だ。
 また、判決要旨では触れていない結論個所で、括弧書きで「なお,第5の防護レベルについては、原子力規制委員会による許認可の際に審査を受けないため事情を異にする。」(準備書面P17)としている。この点が本判決の際立った特徴点というものである。「規制委員会は、何ら具体的な審査をするものではないから」こそ、避難計画において司法独自の判断を示しているのである(準備書面P17~18)。
避難計画をめぐる水戸地裁判決は「避難計画を検討する前提として、人口帯との隔離に係る立地審査がない点を疑問視していること」(準備書面P18~19)。この点が大事だ。
 「放射性物質が発電用原子炉施設周辺に異常に放出されるという緊急事態において、数万ないし数十万人に及ぶ住民が一定の時間内に避難することはそれ自体相当に困難を伴うものである上、福島第一発電所事故からも明らかなとおり原子力災害は、地震,津波等の自然災害に伴って発生することも当然に想定されなければならず、人口密集地帯の原子力災害における避難が容易でないことは明らかであることに照らすと、行法による原子力災害防災対策をもってすれば、電用原子炉施設の周辺がいかに人口密集地帯であろうと、実効的な避難計画を策定し深層防護の第5の防護レベルの措置を担保することができるといえるのかについては疑問があるといわなければならない。」(準備書面P20)。
「原子炉から一定の距離の範囲内は低人口地帯であることを求める考え方を取り入れ、当該発電用原子炉施設の周辺が緊急事態における避難を困難ならしめる人口地帯となっていないかについても審査するほかはないと考えられる。」(準備書面P20)
 避難計画については、「いかなる想定の上で避難計画を策定すれば、深層防護の第5の防護レベルが達成されているといえるか」につき、同レベルが達成されているというためには、少なくとも、「第5の防護レベルの中核」としての原災対策指針が定める「原子力災害対策重点地域、すなわちPAZ及びUPZにおいて、全面緊急事態に至った場合、同指針による段階的避難等の防護措置が実現可能な避難計画及びこれを実行し得る体制が整っていなければならないというべきである。」とする(準備書面P23)。
 ここが判決の分かれ道となる。重点地域内の住民は救済されるが、圏外の人の救済はどうなるのか。ここが判決の問題点だ。
 以上のごとき総論的判断を踏まえ、本判決は、茨城県及びPAZ並びにUPZ圏内の東海村をはじめとする14つの市町村の避難計画の策定状況及び原子力防災体制の現状に関する詳細な認定事実に基づき、判断を示している。
 最後に、準備書面は水戸判決の問題点を述べている。判決は「少なくともPAZ及びUPZ内の原告らとの関係において第5の防護レベルに欠けるところがあるとする一方、「UPZ外の住民との関係においては、深層防護の第1から第4の防護レベルが達成されている場合には、具体的な避難計画の策定がされていないことをもって、直ちに人格権侵害の具体的危険があるということはできない。」と言っている。
 ここで少なくともとか、直ちにとか言って、慎重な言い回しをしていますが、救済対象を30キロ圏内に絞り込んでいる。静岡県の場合、浜松市と静岡市との二大都市は、圏外になるため、何の手立ても実施されていない。福島第一原発事故において全村避難した飯舘村の村役場と同原発までの距離は約40kmであるのに対し、浜岡原発から浜松市役所までの距離は約39km、静岡市役所までの距離は約45kmである。静岡市も浜松市に居住する本件原告は、401名。考えてみると、深層防護の第5レベルが不十分であれば、それだけで安全性に欠けるという考え方に立つと、30キロ圏内では対象になり、それを超えると、対象にならないということは、重大な問題点だ。
 次回の弁論では、各地域で避難計画が整備されているか否かをについて、主張をしたい。

 次回の第32回口頭弁論は、2022年3月23日(水)11時~

地域情報センターでの報告集会
 司会;落合;今日の内容をもう一度、お話しください。 
 阿部弁護士;コロナ対策ということで、口頭弁論開かなかったり、開いたとしても入場制限をしたりなどがありますが、今日は、原告から二つの準備書面を出しました。
 私の方から出した準備書面は、H断層に関するものです。H断層というには、浜岡原発の敷地を東西に走っている断層で、陸地に5本、海の方に何本かあり、敷地外にも4本くらいあり、H断層の上には、原発の建屋など重要施設が存在します。活断層の上に原発の施設があると、もし活断層が動いてずれた場合、段差ができたりすると、原発そのものがアウトになるので、活断層の上に原発を立ててはいけないということになっている。
 この場合、何をもって活断層というかというと、地球の歴史で、12~13万年前以降、動いたことが否定できない断層は活断層とすると。これは原発の審査にあたっての基準です。12~13万年前という途方もない年代ですが、そういうことで判断すると決めている。12~13万年前以降に動いたかどうかと。活断層の年代を決めるには、活断層の上に載っている地層によって判断する。上に載っている地層を切っていれば活断層、切っていなければ、地層が形成された後では動いていないと。では、原発の下に走っている地層があったかどうかというと、地層はない、そこで中部電力は、いまは敷地の北側を調べていって、H断層はH1から9まであると。それが同時期に形成された。同じような断層がつながっていて、ある時期に同時に形成されたと。北側になるH9という断層、その上に地層が乗っかっている。そこに着目した。それは12~3万年前に形成された、この地域の古谷泥層。H9の上に載っている泥層が古谷泥層ではないかと、中部電力は主張している。これに対して、前回の審査会合では、確かに泥層は泥層であるが、泥層の中に年代を示す指標が入っていない。指標の代表的なものは火山灰とか花粉ですね。火山灰であれば、どこの火山の爆発による火山灰かが分かれば、年代を特定できる場合がかなりある。花粉も、寒い地方の植物なのか、温かい地方の植物なのかの指標になりうる。H9の地層にそういう指標がなかなか出てこない。中部電力はH9の上の地点と、1km近く離れた、古谷泥層と言われているところを比べてみたが、粒の大きさとか、いろんなことが似ているから、H9の上にあるのは、12~3万年前頃に形成された古谷泥層だと主張している。ところが前回の規制委員会は、似ているということだけではダメだよと。つながっていないではないかと。ダメだと。やはりH9の上のBF4というところの年代をしめすような指標を出しなさいと。
 それに対して中部電力は、「それは分かっている、さんざん調査してきたが見つからないのだ」として見解を示したのが、前回の審査会合だった。新しいものが発見されない限りはむずかしい。
 中部電力が審査状況を説明するということで、こちらの積極的な主張は渡してはいませんが、徐々にこちらの主張も出していきたい。
 塩沢弁護士;この中で法廷に入れなかった方おられますか? 結構おられますね。 はい、わかりました。5分で話すところを20分しゃべってしまい、疲れてしまった。裁判官から時間を守れと言われた。止められなかったからよかったのですが、今年3月の水戸地裁が、本文で750ページ、全部で780ページになる。普通にコピーすると、厚さが10cmくらいになる。それをコンパクトに要約することはとても無理。皆さんの手元に判決要旨が行っていると思います。膨大な資料をまとめたものなので、分かるようでいて分かりにくい。私なりにかみ砕いて話したいと思います。まともに話すとまた20分かかるので、どうしようかなと思っています。
 お手元の判決要旨の3ページ、これが判決のエッセンス。(判決要旨のことに触れて発言)、   「深層防護」という考え方、第1から第5の防護レベル、欠落してくると原発の安全性が保てなくなる、「深層防護」の考え方を皆さんが理解されているかどうか分かりませんが、ここが問題。要旨で言うと、3ページ、第1、第2、第3、第4と並んでいるところ。簡単に言ってしまうと、故障が起きないようにするのが第1点、第2点は万一故障が生じた時、事故につながらないように。3番目に、事故が起きた時にあらかじめこういう事故が起きたときは、想定事故として押さえておく、しかし想定された事故を超えてしまった場合、そうなった場合にもできる限り抑える、最後に、抑えきれなくて、放射性物質が漏れた時は、速やかに避難する、そういう5段階がある。いままでの考えは、第3、第4までしっかりやれば、避難計画が多少荒くたって、第4まで間違いなくやれるのだからいいではないかという考え方が何となくあった。
 水戸地裁はそれではだめだと。最後のところで安全が確保されたとしても、第5のレベルが不十分だったら、それだけで差し止めの理由があるのだと、そういう理由を述べているのが、ここのところだ。ではなぜそういう考え方に立つべきかと、判決はいろいろ言っている。
 まず第1に判決が答えているのが、他の科学的・技術的なことと本質的に異なる原発の危険性、自動車や飛行機などの一般の事故とは違って、「原発のどこに特質があるかというと、原発が有害な物質を多量に発生させることが不可避である。重大で深刻な被害を与える可能性を本質的に内在している。重大な被害の可能性をもともと持っている。いざ事故が起きた時、高度の科学技術をもって、複数の対策、かつ連続的対策を成功さなくてはいけない。一つでも失敗すると、最悪の事態、破滅的事態につながる、他の科学的・技術的事故とは質的に異なる特性がある。」こういうことをきちんと述べている。いろんな判決があるけど、この判決は特別にこういうところに目標がある。そうであるにも関わらず、事故の原因を予測することは不可能だ。
 最後に、絶対的安全性を求めることは、現在の科学技術に求めることは不可能だ。ではどうするか。5層の防護レベルで考える。1から4まであれば、5はなくてもいいではなくて、どれかが欠落していても、それでもって具体的な危険性が発生する。 
 さて、ここからがまた、問題が出てくる。第5のレベル、避難計画のこと、予定通り避難できる体制になっているかどうか。政策と実行できる体制が整っているかということを、規制委員会が審査して、適合して再稼働するならまだいい。規制委員会が審査するのは4までだ。5のレベルは、地方自治体に任せていて、防災対策の一環として対応する。県や市町村が対策を立てているが、このことは、規制委員会の審査を通っていないだけに、ここがきちんと司法がきちんと審査しなければだめなのだと、その立場できちんと押さえている。そうすると、東海第二と東海村を含めた茨城県の現在の避難計画の作成状況や、それをきちんと実行できる体制が整っているかどうかということを広報誌に全部出している。避難計画を非常に詳細に検討している。とてもではないが実行可能な体制になっているとは到底思えない。
 そこで、出てきた結論はPAZ及びUPZ、30km圏内、(浜岡原発では31キロ圏内になる)その圏内に居住する原告らとの関係は、こんないいかげんな計画では、日常生活における権利を侵害する恐れがあると。しかし圏外に置いては計画が作られていないので、その人たちの具体的な危険性があるとは言えない。30km圏内の人は規制される、それより外のところは安全だからと、乱暴な言い方ができる。
 31キロ圏内の本件訴訟の原告数は153名、静岡県内の二つの大きな都市は、浜松市と静岡市。浜松は39km、静岡市は45km。福島第一原発事故で全村避難になった飯館村は40kmで全村が避難を余儀なくされた。
 それからすると、浜松や静岡もいざとなると、すごく危ない。浜松、静岡に居住する原告は400人、水戸地裁判決は、第5の防護レベルが不十分であれば、それだけで差し止めの理由になるのだときちんと言った。
 救済の対象を30km圏内に絞り込んでいるということは、第5層の防護レベルが不十分であっても、安全とは言えないというのがこの判決の眼目なので、30km圏内はやばい、30kmを超えると、やばくないぞというのは必然性がない。なぜそうなるかというと、司法の禁欲主義。できるだけそこそこに抑えようと。水戸地裁判決は絞り込むことをどう言うかというと、「少なくとも、PAZ及びUPZらの原告は、第5層レベルの欠けるところがあるので」と、やはり避難計画をそうあるべきではないと。その一方、PAZ及びUPZ圏外については、第1から第5までが想定されている場合には、つまり浜岡原発の場合、ものすごくシビアになった時、なんとか閉じ込めることができるか。そこが確認できれば、具体的な避難計画ができたり、今の法制度から言うと、浜松や静岡市では避難計画はできない、立てたくても立てなくていいということになっている。「避難計画がなされていないことをもって、直ちに人格権侵害の具体的危険性があるとは言えない」と。少なくともこうだと、圏外の方は直ちに避難させることはできないと、非常に慎重な言い回しになっている。
 ここが判決の大きな弱点で、水戸地裁の原告はこの点で控訴します。控訴審でどう判断されるか。そうはいっても今までにない判決で、「避難計画の点で、安全性に欠けるところがある」と。そこで、東海第二原発の原告はそこで勝っている。他のところでは全部退けられていて、避難計画の点だけで差し止めとなった。想定外の要件だ。そういう意味では使える判決だ。もう一度言いますと、「実行可能な避難計画、それが実行できる体制が整っているか否か、整っていない場合は、安全性に欠けるところがありますよ」と。ではそれに基づいて、浜岡原発の場合、30km圏内の12の市と町、ここでの避難計画はどうなっているかと言うと、みんなで手分けをして調べて、それが実行可能なのかどうか、実行できる体制が整っているかどうかをまとめて、次回の法廷で主張します。ですから、市のHPで避難計画が手に入ると思うし、各12の市や町で、ネットで出てこないところもあると思うので、市や町で情報開示を求めるしかないので、ぜひそれをやっていただいて、弁護士が手分けして、いろんな力も借りて、事実に基づいて、差し止めが認められるかどうかについて努力をしなければと思います。誰がやるのかと。それをまた私がやるのかと。それはちょっと勘弁してもらいたいと。私もやりますが、みんなでやりましょうと。
 司会:落合;ありがとうございました。塩沢弁護士から各自治体の避難計画のことがでました。かなりの量になると思います。
 それでは、参加者の方で、質問やご意見がありましたらお願いします。
 清水:今の御前崎市の状況について報告します。御前崎の市議会は12月1日から本来は12月議会が始まるのですが、11月30日から始まりました。ある議員からいま原発が止まっているが、そろそろ動かしてはどうかと、5項目の提案を行った。この時、私は議員ではないので参加できなかったのですが、この5項目について他の議員は、何も言わなかった。非常に残念だった。一般質問が先日あった。議員の一人が、産廃のことや、原発が止まっているが、再稼働についての質問をして、市長が今後どうするかについて、「全国原子力発電所立地協議会」というところと相談をしたいと答弁した。議会の了解が取れれば、協議会のメンバーと市長とで規制委員会を訪問して再稼働の方向を伝えたいというので、私たち市民グループは、当面、御前崎、菊川、掛川、のメンバーで宣伝行動を行う。スタンディングを一週間に一度やろうとか、今後どんどん広げていって、再稼働は許さないと、そういうたたかいをしていこうと意思統一をしました。最終的には、UPZの人たちを協力して、ビラを作ったり、申し入れ書を作ったり、いろんなたたかいをしていこうと取り組んでいます。これからも皆さんの力を借りてたたかいを進めていきたい。よろしくお願いします(拍手)。
 塩沢弁護士;私と阿部先生の話、感想なんか聞きたい。ここはよく分からないとか。
 林弘文;水戸地裁の判決要旨のところで一つお尋ねしたい。判決要旨の10ページ、15行目「避難対象人口を抱える日立市及びひたちなか市や、市全域がUPZとなり避難対象人口27万人余を抱える水戸市は、いずれも原子力災害広域避難計画の策定に至っていない」と書いている。
塩沢弁護士;何ページですか。
 林弘文;10ページ、15行目。
 司会:落合;判決要旨の10ページ。後ろから12行目。
 林弘文;それから11ページで、2行目。「5つの自治体の避難計画についても、本部の機能維持とか、今後の検討課題を抱えている」と書いている。裁判では、5層の避難計画がないからという判決だけれども、5層の計画がないというのは、10ページの「避難計画がない」ということと、「検討課題を抱えている」という、二つのことを言って、勝利判決になっているのでしょうか。静岡のUPZの場合、たぶん、焼津と藤枝が計画を出していないのではないか。それ以外は策定しているのではないか。正確性に欠けるかもしれないが。
塩沢弁護士;浜岡原発のUPZのことでしょうか。「検討課題」であるし、策定まではしていないと。そもそも避難計画ができていないと、実行する体制もできていないので、こんなことでは避難計画が策定されているとは到底言えないよと、判決は言っている。
 浜岡原発の場合はどこまでいっているのか、できていない市が二つある。そういう状況なので、たぶん同じような状況は、浜岡原発のPAZ,UPZについてもいえると思う。そこはこれからの検討です。
 林弘文;すいません、追加です。そうすると、UPZ全部が作られた、しかし避難計画の中味について、今後の検討課題があるよ、と考えてよろしいでしょうか、
 塩沢弁護士;だから「検討課題」がどの程度あるか、検討課題だらけであって、その検討課題が、いざという時は大変ではないかという認定にかかってくると思います。
 司会:落合;そのほか、いかがでしょうか。
 塩沢弁護士;内容的には分かっていただけましたかね。何だか分からないなという感じなのか。ああそうか、そういうことなのかということなのか、ご理解いただけたと思っていいのでしょうか。
 林弘文;たいへん分かりやすい話で、詳しく話していいただいてありがとうございました。判決要旨を読ませていただいて、水戸判決のことが詳しく書いてあって、こういうことかと分かりました。ありがとうございました。
 それから静岡の方では、県の危機管理というところでレビューをやっていますが、この間話した時に、やはり、向こうの人が言うには、皆さんの声が聞けてありがたいと言っていました。やはり外からそういう声をどんどん出していけばいいことではないかと思います。
 司会:落合;それではこのへんでお開きにしていきたいと思います。
 次回の第32回口頭弁論は、2022年3月23日(水)11時~ いつもは月曜日ですが、次回は水曜日です。皆さんにお願いがあります。今日の資料の中に、署名用紙が入っています。これは福島から全国に避難された方の、各地での裁判で補償を勝ち取るためや、生業訴訟とかですが、勝ったり負けたりしております。最高裁での裁判もあり、全国的な課題として、ご支援いただきたい。署名はこの場で書いておいていってください。
今日の書面も少し余っていますので、必要な方は持って行ってください。
                                (文責 長坂)



 

浜岡原発永久停止裁判 第30回口頭弁論

カテゴリー │口頭弁論

次回の口頭弁論は9/27の予定でしたが、コロナの関係で延期になり、2021.9.22に、次回の日程の連絡がありました。第31回口頭弁論 2021年12月13日(月)11:00~ です。

浜岡原発永久停止裁判 第30回口頭弁論
2021年5月31日(月)晴れ
10:00 浜松市地域情報センターホールに原告や傍聴者が集まり始めた。
10:30 裁判所内の部屋で傍聴抽選。結果的に約20名が傍聴できた。
11:00 裁判が開始。
2020年12月14日の前回の口頭弁論の時と同じ事情(新型コロナ感染症の影響)のために、原告傍聴も、一般の傍聴も人数を半減にする措置がとられた。
裁判長は川淵健司、右陪審は三橋泰友、左陪審は野上恵里。
   訴訟代理弁護団計 21 名の弁護団のうち、今日の参加者は 8名。
    大橋昭夫、森下文雄、塩沢忠和、阿部浩基、平野晶規、北上絃生、栗田芙友香、富増泰斗、被告側は国と中電の 8 名。

11:00 裁判長;原告から準備書面(32)(33)が提出された。原告より陳述がある。被告・中電から準備書面(22)が提出された。陳述あり。
11:03原告の代理人・北上紘生弁護士が準備書面(32)の要約を説明した。
  (ここでは、準備書面(32)をそのまま掲載する)
はじめに
  大阪地裁は,令和2年12月4日,原子力規制委員会が平成29年5月24日付けで被告参加人(関西電力)に対して大飯原発3号機及び4号機についてなした設置変更許可処分(以下「本件処分」という)を取り消す判決をした(甲F6の1ないし2)。

第1 司法審査の在り方
 1 判断枠組み
   原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる発電用原子炉設置(変更)許可処分の取消訴訟における裁判所の審理,判断は,原子力規制委員会の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであって,現在の科学技術水準に照らし,原子力規制委員会の調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり,あるいは当該発電用原子炉の設置(変更)許可申請が上記具体的審査基準に適合すると判断した原子力規制委員会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があると認められる場合には,原子力規制委員会の判断に不合理な点があるものとして,その判断に基づく上記処分は違法であると解するのが相当である。そして,その理は,発電用原子炉の設置変更許可処分(法43条の3の8)の取消訴訟においても異ならないというべきである(発電用原子炉の設置許可の基準に関する法43条の3の6の規定は,上記処分について準用される。法43条の3の8第2項,(以上判決文80頁))。
 2 主張立証責任
   発電用原子炉設置許可処分(設置変更許可処分を含む。以下同じ。)についての上記取消訴訟においては、同処分が上記のような性質を有することに鑑みると,原子力規制委員会がした上記判断に不合理な点があることの主張,立証責任は,本来原告が負うべきものと解されるが,当該原子炉施設の安全審査に関する資料を全て原子力規制委員会の側が保持していることなどの点を考慮すると,被告の側において,まず,原子力規制委員会が依拠した上記の具体的審査基準並びに調査審議及び判断の過程等,原子力規制委員会の判断に不合理な点のないことを相当の根拠,資料に基づき,主張,立証する必要があり,被告が上記の主張,立証を尽くさない場合には,原子力規制委員会がした上記判断に不合理な点があることが事実上推認されるものというべきである。
(以上,最高裁昭和60年(行ツ)第133号平成4年10月29日第一小法廷判決・民集46巻7号1174頁,(以上判決文80頁))

第2 基準地震動を策定するに当たり行われた地震モーメントの設定が新規制基準に適合している旨の原子力規制委員会の判断に不合理な点があること
1 新規制基準における基準地震動の策定に関する定め
 (1)設置許可基準規則4条3項は,発電用原子炉施設のうち,一定の重要なものは,その供用中に当該施設に大きな影響を及ぼすおそれがある地震による加速度によって作用する地震力(基準地震動による地震力)に対して安全機能(設置許可基準規則2条2項5号参照)が損なわれるおそれがないものでなければならない旨を定める。
(2)基準地震動の策定に当たっては,敷地に大きな影響を与えると予想される地震について,震源の特性を主要なパラメータで表した震源モデルを設定しなければならない。この点について設置許可基準を受けて原子力規制委員会が定めた内規である当時の「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置,構造及び設備の基準に関する規則の解釈」(規則の解釈)は,基準地震動の策定過程に伴う各種の不確かさ(震源断層の長さ,地震発生層の上端深さ・下端深さ,断層傾斜角等の不確かさ並びにそれらに係る考え方及び解釈の違いによる不確かさ)については,敷地における地震動評価に大きな影響を与えると考えられる支配的なパラメータについて分析をした上で,必要に応じて不確かさを組み合わせるなど適切な手法を用いて考慮する旨を定める。
(3)そして,設置許可基準規則及び規則の解釈の趣旨を十分踏まえ,基準地震動の妥当性を厳格に確認するために活用することを目的として原子力規制委員会が定めた「基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド」(地震動審査ガイド)は,「震源モデルの長さ又は面積,あるいは1回の活動による変位量と地震規模を関連づける経験則を用いて地震規模を設定する場合には,経験式の適用範囲が十分に検討されていることを確認する。その際,経験式は平均値としての地震規模を与えるものであることから,経験式が有するばらつきも考慮されている必要がある
(本件ばらつき条項)。
2 本件ばらつき条項の意義
   経験式は,二つの物理量(ここでは,震源断層面積と地震規模)の間の原理的関係を示すものではなく,観測等により得られたデータを基に推測された経験的関係を示すものであり,経験式によって算出される地震規模は平均値である。そこで,実際に発生する地震の地震規模は平均値からかい離することが当然に想定されている。地震規模(地震モーメント)は,震源モデルの重要なパラメータの一つであり,その他のパラメータの算出に用いられるものであって,基準地震動の策定における重要な要素であるといえる。そうすると,経験式を用いて地震モーメントを設定する場合には,経験式によって算出される平均値をもってそのまま震源モデルにおける地震モーメントとして設定するものではなく,実際に発生する地震の地震モーメントが平均値より大きい方向にかい離する可能性を考慮して地震モーメントを設定するのが相当であると考えられる(例えば,経験式を導く基礎となったデータの標準偏差分を加味するなど)。ただし,他のパラメータの設定に当たり,上記のような方法で地震モーメントを設定するのと同視し得るような考慮など,相応の合理性を有する考慮がされていれば足りるものと考えられる。また,経験式が有するばらつきを検証して,経験式によって算出される平均値に何らかの上乗せをする必要があるか否かを検討した結果,その必要がないといえる場合には,経験式によって算出される平均値をもってそのまま震源モデルにおける地震モーメントの値とすることも妨げられないものと解される。
   本件ばらつき条項の第2文は以上の趣旨をいうものと解される。このような解釈は,平成23年3月11日に発生した東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発の事故を受けて耐震設計審査委指針等が改訂される過程において,委員から経験式より大きな地震が発生することを想定すべきであるとの指摘を受けて,本件ばらつき条項の第2文に相当する定めがおかれるに至った経緯とも整合する。
3 原子力規制委員会の調査審議及び判断の過程における過誤,欠落
   参加人は,本件申請において基準地震動を策定する際,地質調査結果等に基づき設定した震源断層面積を経験式に当てはめて計算された地震モーメントをそのまま震源モデルにおける地震モーメントの値としたものであり,例えば,経験式が有するばらつきを考慮するために,当該経験式の基礎となったデータの標準偏差分を加味するなどの方法により,実際に発生する地震の地震モーメントが平均値より大きい方向にかい離する可能性を考慮して地震モーメントを設定する必要があるか否かということ自体を検討しておらず,現に,そのような設定(上乗せ)をしなかった。
   原子力規制委員会は,経験式が有するばらつきを考慮した場合,これに基づき算出された地震モーメントの値に何らかの上乗せをする必要があるか否か等について何ら検討することなく,本件申請が設置許可基準規則4条3項に適合し,地震動審査ガイドを踏まえているとした。このような原子力規制委員会の調査審議及び判断の過程には,看過し難い過誤,欠落があるものというべきである(以上判決要旨2頁ないし3頁,判決文106頁ないし133頁)。

第3 上記判断に対する評価等
1 本件ばらつき条項について東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発の事故を受けた改正であることを踏まえた点は評価できること
   新規制基準が定められる前に用いられていた「発電用原子炉施設の耐震安全性に関する安全審査の手引き」では,本件ばらつき条項の第2文に相当する規定は置かれていなかった(判決文116頁)。
   その後,福島第一原発事故を受け,原子力安全委員会においては,地震等検討小委員会が設置された。その中での川瀬委員が,海溝型地震の想定断層域とマグニチュードの関係については,過去の平均則を使って想定してきているというのが現状であること,同じ想定域からマグニチュードがより大きな地震が発生する可能性はゼロではないことを認めていた(判決文116頁~117頁)。
   川瀬委員の発言の後,耐震設計審査指針の「5.基準地震動の策定」の「Ⅱ.基準地震動Ssの策定について」のうち, 「④経験則を用いて断層の長さ等から地震規模を想定する際には,その経験式の特徴等を踏まえ,地震規模を適切に評価することとする。」の次に, 「その際,経験式は平均値としての地震規模を与えるものであることから,その不確かさ(ばらつき)も考慮する必要がある。」との一文が付け加えられた。
   福島第一原発事故においては,その原因が地震による揺れによるものであるとの指摘が既に多数寄せられていることは周知の事実である。基準地震動の設定の数値が甘かったことが原因である。
   福島第一原発は過酷事故そのものであり,その後の審査基準が厳しくなるのは当然である。
   福島第一原発事故の後の基準において,ばらつきを考慮する旨の条項が入っていることを認めた今回の大阪地裁判決は,ばらつき条項追加以前の基準では基準として不十分であることを暗に示唆するものであって評価できる。
2 経験式によって算定される地震規模は平均値であること,平均値からのかい離も当然に想定されると述べた点は評価できること
  上記川瀬委員等の発言にもあるとおり,経験式によって算出される地震規模は平均値であることから,経験式によって地震規模が算出されたとしても,あくまでもその数値は平均値,すなわち参考となる数値ということになる。平均値である以上,当然に平均よりも上であることもあれば,下であることもある。
   地震規模を決める式である入倉・三宅式は,過去の地震53個における震源断層面積と地震モーメントのデータを基に回帰分析により導かれたものである(判決文92頁)。入倉・三宅式について問題がある点は,大飯原発の原告らが既に主張している。本書面では,入倉・三宅式の評価方法についての論評はしないが,入倉・三宅式において算定された地震規模が過去のデータを基に算定されたものである以上,算出された地震規模を超える地震が発生しないことを否定するものではない。
   原発の安全性を考慮するに際して,算定された地震規模はあくまでも平均値に過ぎないと述べた点は評価できる。
3 ばらつき条項の考慮に際して,実際に発生する地震の地震モーメントが平均値より大きい方向にかい離する可能性を考慮して地震モーメントを設定する必要があるか否かを検討すべきであると述べた点は評価できること
   上記の通り,入倉・三宅式によって算定された地震規模は,あくまでも平均値であることから,その数値以上の地震もその以下の地震の発生も否定できるものではない。
   原発の安全性に対して,事故が万が一にも起きないという厳しい基準で審査するものであるならば,ばらつき条項の考慮に際して,実際に発生する地震の地震モーメントが平均値より大きい方向にかい離する可能性を考慮して地震モーメントを設定する必要があるか否かを検討しなければ,およそ原発が耐震性を有すると判断することはできない。
  むしろ,実際に発生する地震の地震モーメントが平均値より大きい方向にかい離する可能性を考慮して地震モーメントを設定することをより積極的に実施すべきである。なぜなら,設定された基準地震動よりも上の地震が発生することはおよそ考慮するに足りない偶然の事情や事柄ではないからである。
  基準地震動よりも多くの地震が発生していることは,既に,福井地裁判決が指摘してきた。すなわち,福井地裁判決(平成26年5月21日)は,現に,全国で20箇所にも満たない原発のうち4つの原発に5回にわたり想定した地震動を超える地震が平成17年以後10年足らずの問に到来しているという事実を重視すべきは当然である旨述べ,基準地震動よりも多くの地震が直近で無視できない程度に発生していることを問題視していた。福井地裁判決の指摘はもっともであり,単純明快である。
  今回の大飯原発の判決も上記福井地裁判決に通じるものがあり,設定された基準地震動よりも規模の大きい地震が頻繁に発生していることから,平均値よりも大きい方向にかい離する地震モーメントを何ら検討しないという姿勢について,安易に基準地震動か下がることで耐震性が脆弱となることを危惧したものであると推察される。今回の大飯原発の判決は,福井地裁判決にも通じるものがあり評価できる。
                                   以上
11:09原告の代理人・阿部弁護士が準備書面(33)の要約を説明した。
  (ここでは、準備書面(33)をそのまま掲載する)
I H断層の活動性について
   浜岡原子力発電所と活断層の問題については、原告準備書面(9)で概略主張した。
   これに対して、被告中部電力は、準備書面(6)で反論している。
   本準備書面では、活断層問題についての原子力規制委員会での最近の審査会合での議論を紹介し、被告の主張の前提が未だに立証されていないことを述べる。

2 令和2年7月3日に行われた規制委員会の第871回の審査会合において、浜岡原子力発電所の活断層問題が審査された(甲B38)。
   浜岡原子力発電所の敷地内には東西方向に走る断層(H断層系)と南北方向に走る断層とが入り組んでいる。もし、これらの断層が活断層(12~13万年前以降の活動歴がある断層)ならば、浜岡原子力発電所は稼働させることはできない。
   被告中部電力の活断層についての説明は次のとおりである。
   第1 敷地内の断層の活動性をH断層系の活動性評価で代表させ得ること。
   第2 H断層系の活動性をH-9断層の活動性で代表させ得ること。
   第3 H-9断層が上部更新統に変位、変形を与えていないことからH断層系は将来活動する可能性のある断層等に該当しないこと。
   第871回の審査会合での議論の要点は次のとおりである。

2 第1の点について
   被告中部電力の結論は、甲B39・資料2-1「コメント回答」70頁にある。
   「他の断層に切られたり併合されたりすることなく数百mにわたって連続する南傾斜のEW系正断層(H断層系)が最新活動時期が最も新しい断層と考えられる。その他の断層はH断層系よりも最新活動時期が古い、または、H断層系を含むEW系正断層の活動に従属し形成された断層もしくは見かけ逆断層のEW系正断層であると考えられる。以上より、H断層系を活動性評価の対象とする断層として選定する。」
   そのように結論づけた理由は、南北方向のNS系正断層、NS系逆断層、東西方向のEW系正断層、EW系逆断層の切り、切られる関係を調査した結果、EW系正断層の中に他の断層に切られたり併合されたりすることなく東西に数百mにわたって連続する断層が存在するからである。そのEW系断層をH断層系と定義している。
   この点については、規制委員会も異論を述べておらず、了承している(甲B38、56頁)。
   つまり、H断層系の活動年代を調査し、12~13万年以降活動していないかどうかに焦点を絞ってよいということを規制委員会も認めた形となっている。

3 第2の点について
   被告中部電力は、H断層系は相良層が固結して以降、すなわち200万年以降は活動していないと主張している。
   断層の活動年代を推定する方法として上載地層法というものがある。断層の上に乗っている地層の堆積時期が判明している場合、断層がその地層を切っていればその地層が堆積して以降に断層が活動したことになるし、切っていなければ断層はその地層の堆積する前に活動を終えたと推定することができる。上載地層法の説明は被告中部電力準備書面(6)13頁にある。
   H断層系は、海岸と平行して走っており、原発敷地内に5本(海側からH-1、H-2、H-3、H-4、H-5)、敷地北側にH6、H7.H8、H9の4本ある。しかし、敷地内のH断層の上部の地層は剥がれていてほとんど存在しない。
唯一、H-2断層の立杭、被告中部電力のいう「Bライン立杭」の上には地層が残っているが、被告中部電力の調査では、その地層は1万年前に堆積した沖積層ということであるから、この地層をH-2断層が切っていないとしても、12~13万年前以降に活動していないことを証明するものではない。
   そこで、被告中部電力は、敷地外のH系断層に着目し、調査した結果、H-9断層(T11露頭、BF4トレンチ)の上部に地層が存在することがわかったという。被告中部電力によると、このうちT11露頭の調査の結果、「T11露頭において、H-9断層がその上部を覆う約10万年前に堆積した笠名傑層に対比される堆積物に変異・変形を与えていないことを確認した」とのことである(被告中部電力準備書面(6)、6頁)。しかし、10万年前以降活動していないとしても12~13万年前以降の活動歴を否定する根拠にはならない。
   結局、上載地層法で被告中部電力が12~13万年前以降の活動歴を否定できるのは「BF4トレンチ」部分だけである。「BF4トレンチ」のスケッチは被告中部電力の準備書面(6)の32頁にある。ここではH-9断層が12~13万年前以前に形成された古谷泥層に対比される堆積物に変位・変形を与えていないというのである(被告中部電力準備書面(6)6頁)。それゆえに、敷地内のH系断層も12~13万年前以降活動していない、というのが被告中部電力の論理である。
しかし、この論理が成り立つには、H断層系は全て同時期に形成されたものであり、H断層系の活動性評価はH9断層の活動性評価で代表できることが前提となっている。
  第871回審査会合ではこの点が集中的に議論された。
   規制委員会は、第1点については、被告中部電力の説明に異論を述べなかったが、H9断層でH断層系を代表させることができるとの被告中部電力の主張については、未だ論証不十分だとした。
   田上審査官はまず次のように問題提起している。(甲B38、63頁以下)
   「当方といたしましてもH断層系は相良層が固結する前の時代、未固結から半固結の時代、そういった時代に形成されたという点ですね、そこまでは一定の理解はできるというふうに考えております。」
   「その一方で、H断層系には、固結の低い細粒物質というのを伴います。それは先ほどの混交帯の両端にある実線で書かれている部分ですね、こういった部分がございます。事業者さんが言う、その形成後の活動というものを考えたときに、この細粒物質というのが御説明では固結度が低いという説明ですので、私どもとしては、形成後の活動というものが明確に否定できないのではないかと思います。」
   「こういった東西系の正断層であるH断層系というものは、その形成後の活動についても、審査において、より慎重に審査していく必要があるというふうに私どもは考えています。」「そこで、H断層系の分布、性状の中でも、特にこの細粒部の性状、細粒部の性状の調査結果に重点をおいて判断したいというふうに考えております。」
   具体的にはH断層系と針貫入試験のデータをもとに次のように指摘している。
   針貫入試験とは、針を用いて岩の貫入抵抗を測定し、岩の固結度、硬軟をしらべるものである。
   針貫入試験の結果(甲B39、コメント回答、23頁)、H-6断層上盤、H-6断層下盤などでは明らかに低い数値が出ており、それが細粒物質の固結度が低いということだとし、「このように周囲の固結、周囲は相良層群として固結しているという御説明ですが、その周囲の固結以降に、この細粒物質という部分で活動がなかったかとまでは言い切れないんではないかと考えております。」
「H断層系のいずれの断層の活動性評価、結果であっても、そのH断層系の全体の活動を評価できるというふうに事業者さんが言うようなロジック、それであれば私どもは、この細粒部につきまして各H断層系の間で、その組成、規模に違いがあるのかについて、あるのか否かについてですね、まずは整理していただく必要があると考えております。」
  これに対して、被告中部電力側は資料を挙げて反論したが、規制庁の菅谷技術研究調査官は、「相良層固結後のH断層系の活動性の説明に関しては、現時点ではまだ首肯できないということから、今私が申し上げた、この補足説明資料の82頁のところの、その『H断層系は、すでに活動を停正した正断層群Bと同様、現在は活動的ではないと解釈される。』という、この記載に関しては・・・・再考していただきたいというふうに考えております。」と述べた。
また内藤調整容も、「H系の活動性を評価するに際して、事業者さんは、今の方針は、いずれのH断層であっても、その活動性評価の代表となり得るということを主張されているんですけれどもまだ、ここは調査結果における観察事実に基づいて論理的に納得いく説明は得られていないと考えています。」「我々はH系の初成は、皆さん言っているのでいいかなというふうには考えています。ただ、軟弱部があると。針貫入のところで、さっき議論があって、開離型とゆ着型のやつの差ですと言っていたけど、開離型のやつの針貫入の値を見ると、最近動いた断層と遜色のない柔らかさなんですよね。針貫入のデータというのは。そういうのを考えていくと、皆さんは解釈として、水道になって固結が遅れましたといっているんだけど、それは解釈であって、逆に言うと、軟らかいものについて後から動いたということについて否定が、そんなことありませんと、まだ否定できていないと思っています。」と述べた。
   この第2の点について物証に基づいた論証ができない限り、第3の点の審査には進めない状況となっているのである。
                                           以上
11:17 被告・中電・代理人より陳述。
被告・中電の代理人は、準備書面(22)の概要説明を約3分で行った。
「1、原子力緊急事態における防護措置としての屋内退避」、「2、原告らの主張に対する反論」について、要点を説明した。
11:20 裁判長;その他にどうか。
被告・中電;安全性対策工事の報告と、規制委員会での審議の報告がされた。
裁判長;次回日程について。原告の主張はどうか。
原告;H断層と避難計画について主張したい。
被告・中電;引き続く主張する。
国;特になし。
裁判長;次回期日は、2021年9月27日(月)11:00~ 第一号法廷で行う。
                                    11:25 終了
※その後、裁判所より「コロナ感染状況をふまえて、延期」の打診があり、原告団として了解し、
次回の口頭弁論の日程調整を行ってきました。
2021.9.22に、日程の連絡がありました。
第31回口頭弁論 2021年12月13日(月)11:00~  です。

11:35 地域情報センターで報告集会(要約)
北上弁護士;大阪地裁の判決(令和2年12月4日)内容は、東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発の事故を受けて、経験式より大きな地震が発生することを想定すべきとして、「ばらつき条項」がおかれた。しかし原子力規制委員会は,経験式が有するばらつきを考慮した検討をすることなく,規制委員会の調査審議及び判断の過程には,看過し難い過誤,欠落があるものというべきである、という判決要旨であった。
  本件ばらつき条項について、東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発の事故を受けた改正であることを踏まえた点は評価できる。ここ10年の間に、5回も基準を超えた地震があったことを考えると、基準値は平均値ではないことは当然だと考える。
阿部弁護士;規制委員会の審査は4号機について地震動に関して進んでいる。活断層があればその上に原発は立てられない。浜岡原発は東西方向にH断層がある。南北方向にも断層がある。原発敷地内のどの断層を見ればいいのか。H断層を見ればいいということは規制委員会も同じ考えだ。北側のH9断層は切られていないが、H9断層と敷地内の断層が同じ時期にできたと言えないと証拠にならない。規制委員会でこの点の疑問が出た。2000万年前にできたといわれるが、針貫入試験でやわらかい。最近動いた可能性ありと規制委員会で指摘した。さらにH9の上の泥層は、12~3万年前の古谷断層と同じ地層という説明ができていない。審査はこれからだ。先日の勉強会では越路さんは8万年前ではないかという。

司会;8万年前にH断層ができたという、規制委員会の疑問点が出ている。西部地区労連ニュースの記事を参考にしてください。その記事の桜井先生、どうですか。
桜井さん;H9断層の上に載っている1~1.3mくらいの薄い泥の層が、越路南行さんは、8万年前にできたという。H断層自体が8万年前にできた。10万年前の同じ高さのBF1、BF4などが8万年前に大きな地滑りがあって、H断層ができて、13mの落差ができた。8万年前にできたH断層は活断層の証拠だ。その上の泥も8万年前。越路南行さんは、地球の寒冷化や温暖化で海面が上がったり下がったりして、海で削られて、また堆積してという説明をしている。

12:02 司会;清水さん、地元の雰囲気はどうですか。
清水;原発の入り口を改修している。門を入るとすぐ守衛室がある。いくつか段差があり、行きは遠回りをしないと守衛室にいけない。テロ対策かもしれない。
司会;3,4号機も再稼働を狙っている。中電が言うほどには、規制委員会の審査は進んでいない。
津波の審査はまだまだ不十分だ。次回は、2021年9月27日、11:00より。
阿部弁護士;中電から反論も出たので、避難計画を再度取り上げる予定だ。東海第二原発の水戸地裁判決(2021.3.18)では、差し止めの判決が出た。実行もできない避難計画で、不備を指摘している。避難計画の不備だけでの差し止めは、はじめての判決だ。これを取り上げたい。活断層の続きは出したい。それ以外にも原告団で議論して出したい。東海第二原発では30km圏内に94万人がいるとして差し止めとなった。浜岡も93万人だ。
                                       12:09 終了
 (文責・長坂)




 

浜岡原発永久停止裁判 第29回口頭弁論 

カテゴリー │口頭弁論

浜岡原発永久停止裁判 第29回口頭弁論
2020年12月14日(月)晴れ
10:00 浜松市地域情報センターホールに原告や傍聴者が集まり始めた。
10:30 裁判所内の部屋で傍聴抽選。結果的に約20名が傍聴できた。
11:00 裁判が開始。
7月20日の前回の口頭弁論の時と同じ事情(新型コロナ感染症の影響)のために、原告傍聴も、一般の傍聴も人数を半減にする措置がとられた。
裁判長は川淵健司、右陪審は三橋泰友(前回の28回口頭弁論の時も)、左陪審は丸谷昴資。
   訴訟代理弁護団計 16 名の弁護団のうち、今日の参加者は 7名。
   大橋昭夫、森下文雄、塩沢忠和、阿部浩基、平野晶規、北上絃生、 栗田芙友香、
被告側は国と中電の 10 名。
11:00 裁判長;被告・中電から準備書面(21)が提出された。陳述あり。原告から準備書面(31)が提出された。原告より陳述がある。
11:02 被告・中電・代理人より陳述。
被告・中電の代理人は、準備書面(21)の概要説明を約3分で行った。
「1、本件原子力発電所の安全確保対策」、「2、事故防止対策」、「3、福島第一原発事故を踏まえた炉心の著しい損傷防止対策及び格納容器の破損防止対策」として、それぞれの対策の要点を説明した。
11:05 原告の代理人・阿部浩基弁護士が準備書面(31)の要約を説明した。
  (ここでは、準備書面(31)をそのまま掲載する)
はじめに
広島高裁は、令和2年1月17日、伊方原発3号機について、申立を却下した山口地裁岩国支部の決定を取り消し、運転差止を命ずる仮処分決定をだした。広島高裁が伊方原発につき運転差止を命ずる仮処分を出したのは今回が二度目である。前回の平成29年12月13日決定(判例時報2367・2358合併号300頁)には、運転停止に期限が付されていたが、今回は期限はない。

第1 司法審査の在り方
1 差止請求の要件としての具体的危険性
原子炉等規制法の改正の経緯及びその内容からすると、同法は、①最新の科学技術的知見を踏まえて合理的に予測される規模の自然災害を想定した発電用原子炉施設の安全性の確保を求め、②その上で想定を越える事態が生じた場合の対処を求めるものであり、同法43条の3の6第1項4号の「災害」は上記①の自然災害を意味するものである。
   そして、差止請求の要件としての具体的危険性については、原則として、上記のような原子炉等規制法の改正の経緯を踏まえ、そこで求められている安全性を具備としているか否かが重要な指標となるということができる。ただし、その一方で、どの範囲までの危険が許されるかについては、社会通念をもって判断せざるを得ないことも否定できない。
抗告人らが絶対的安全性に近い安全性を主張したことに対しては、「福島事故のような過酷事故を絶対起こさないという意味での高度な安全性を要求すべきであるという理念は尊重すべきもの」とし、抗告人らの主張した具体的基準についても、その理念ないし精神に則った解釈適用が必要となることも否定できないとした。具体的には、ある問題について専門家の間で意見が対立している場合には、支配的・通説的な見解であるという理由で保守的でない設定となる見解を安易に採用することがあってはならないとした。

2 主張・疎明責任
(1)債権者において、自らが発電用原子炉施設の安全性の欠如に起因して生じる放射性物質が周辺の環境へ放出されるような事故によってその生命、身体又はその生活基盤に直接的かつ重大な被害を受けるものと想定される地域に居住していることを疎明すれば、当該原子炉施設の設置運転主体である債務者(事業者)の側において、上記の具体的危険が存在しないことについて、相当の根拠、資料に基づき、主張・疎明する必要があり、債務者がこの主張、疎明を尽くさない場合には、上記の具体的危険の存在が事実上推定される。
 (2)もっとも、相手方は、規制委員会から本件原子炉施設が新規制基準に適合するとして発電用原子炉設置変更許可を受けているところ、具体的な審査基準の設定及び当該審査基準への適合性の審査において、原子力工学に限らず自然科学分野を含む多方面にわたる極めて高度な最新の科学的、専門技術的知見に基づく総合的判断が必要であることなどに照らすと、規制委員会により、新規制基準に適合する旨の判断が示されている場合には、①現在の科学技術水準に照らし、当該具体的審査基準に不合理な点のないこと、②当該発電用原子炉施設が上記審査基準に適合するとした規制委員会の判断について、その調査審議及び判断の過程に看過しがたい過誤、欠落がないことなど、不合理な点がないこと、以上の2点を相当の根拠、資料に基づき、主張、疎明することにより、上記の具体的危険が存在しないことについて、相当の根拠に基づき主張・疎明をしたということができる。

第2 活断層
1 「敷地ごとに震源を特定し策定する地震動」

   内陸地殻内地震の地震動を策定するに当たっては、地震を引き起こす活断層の位置・形状・活動性を評価する必要がある。
その際、震源地が原発敷地に極めて近い場合は、地表に変異を伴う断層全体を考慮した上で、震源モデルの形状及び位置の妥当性、敷地及びそこに設置する施設との位置関係、並びに震源特性パラメータの設定の妥当性について詳細に検討するなど、基準地震動を策定するにあたって特別の規定を設けている。(設置許可基準規則解釈別記2)
そして、「震源が敷地に極めて近い場合」について、規制委員会は、震源から2km以上離れていれば浅部地盤の影響は無視し得るものの、敷地から2km程度以内の浅部地盤が変位する場合には、比較的軟らかい地盤の活動といえどもその影響を無視できないという研究結果をあらわしている。
2 佐田岬半島沿岸の活断層について
相手方は、佐田岬半島北岸部には活断層は存在せず、活断層が敷地に極めて近い場合の評価は必要ないとして、活断層が敷地に極めて近い場合の地震動評価を行っていない。
相手方は、詳細な海上音波調査を行い、その結果、本件発電所敷地沿岸部に活断層がないことを確認しているなどとして、佐田岬半島北岸部活断層は存在しないと主張する。
   しかし、政府の地震調査研究推進本部の出した「中央構造線断層帯長期評価」(第二版)には、伊予灘海域部については相手方により詳細な調査がされたことが記載されているのに、佐田岬半島沿岸については、そこに存在すると考えられる中央構造線(地質境界)について「現在までのところ探査がなされていないため活断層と認定されていない。今後の詳細な調査が求められる」と記載されている。これは相手方の主張する海上音波調査では不十分であることを前提にしたものである。
本件発電所の敷地至近距離にある地質境界としての中央構造線は正断層面を含む横ずれ断層である可能性は否定できない。その場合、地表断層から本件原子力発電所敷地までの距離は2km以内と認められるから、仮に調査が十分に行われて、活断層だということになれば「震源が極めて近い場合」の地震動評価をする必要がある。しかし、相手方は十分な調査をしないまま活断層は存在しないとして、原子炉設置許可等の申請を行い、規制委員会もこれを問題ないと判断したのであるから、規制委員会の判断には、その過程に過誤ないし欠落がある。
3 コメント
   常識的で無理のない判断である。

第3 火山事象の影響による危険性
 1 新規制基準と火山ガイド

新規制基準のうち、火山事象の影響による危険性に関して定めた内規として火山ガイドがある。
   火山ガイドは、火山事象の影響による危険性評価を、立地評価と影響評価の二段階で評価することにしている。
 2 立地評価
(1)火山ガイドの内容
   火山ガイドは、当該原子炉に影響を及ぼしうる火山を抽出し、①その火山が過去の火山活動の分析、地球物理学的、地球化学的調査により当該原子力発電所の運用期間中に活動する可能性が十分小さいとは言えない場合には、②噴火規模を推定し、噴火規模における設計対応不可能な火山事象が原子力発電所に到達する可能性が十分小さいかどうか評価し、これにより原子力発電所の立地の適否を判断する、としている。
 (2)火山ガイドの不合理な部分
上記の火山ガイドの内容からすると、過去の火山活動の分析、地球物理学的、地球化学的調査により、対象火山の噴火の時期や規模について、少なくとも原子炉の運転を停止し、核燃料物質を敷地外へ運び出すのに要する期間的余裕を持って、予測できることを前提としていると理解せざるを得ない。
しかし、現在の科学水準においては、噴火の時期及び規模についての的確な予測は困難であり、VE16以上の巨大噴火についても中長期的な予測の方法は確立しておらず、原子力発電所の運用期間中にその火山が噴火する可能性やその時期及び規模を的確に予測することは困難であるという見解が多数であり、この多数の見解を前提にして検討すべきである。
    したがって、火山ガイドのうち、予測が可能であことを前提とする部分は不合理である。
    そうすると、上記の①については、原子力発電所の運用期間中における検討対象火山の活動の可能性が十分小さいとは言えないことになり、②の設計対応不可能な火山事象が当該原子力発電所に及ぶか否かの判断に進むことになる。
(3)設計対応不可能な火山事象
火山ガイドは、巨大噴火とそれ以外の噴火とを区別しておらず、検討対象の火山の過去最大の噴火規模を想定して、設計対応不可能な火山事象が原子力発電所敷地に到達する可能性が十分小さいかどうか判断すべきことになる。
 阿蘇については、過去最大の噴火規模である阿蘇4噴火を想定して、この判断をすることになる。
本件発電所敷地は、阿蘇4の火砕流が到達した範囲に入り、阿蘇の噴火により設計対応不可能な火山事象が本件発電所敷地に及ぶ可能性はあるというべきである。
そうすると、火山ガイドによれば、立地が不適ということになる。
 (4)しかし、人格権に基づく差し止め訴訟における具体的危険性の判断にあたっては、どの範囲までの危険が許されるかという社会通念をもって判断する必要がある。
 破局的噴火が起きた場合には、原子力発電所から放射性物質が周辺の環境へ放出される事故が起きるか否かにかかわらず、周辺住民は、その生命、身体又はその生活基盤に重大な被害を受ける。
    現時点で阿蘇4噴火のような破局的噴火が起きた場合には、九州の中部以北は火砕流の直撃でほぼ全滅し、死者は1000万人を越え、北海道を含む日本列島全体が15cm以上の厚い火山灰で覆われて、家屋の倒壊が相次ぎ、ライフラインが機能停止し、食料生産も不可能になり、かろうじて生き残った人々も日本列島から海外への避難、移住が必要となる。
 にもかかわらず、これを想定した法規制や行政による防災対策が原子力規制以外の分野において行われているという事実は認められない。
    以上によれば、破局的噴火の場合におけるリスクに対する社会通念、すなわち、わが国の社会における受け止め方は、それ以外の自然現象に関するものとは異なっており、相当程度容認しているといわざるを得ず、破局的噴火による火砕流が原子力発電所に到達する可能性を否定できないからといって、それだけで立地不適とするのは、社会通念に反する。
(5)阿蘇4(VE17)による火砕流が原子力発電所に到達する可能性が否定できないことを理由に、立地不適として具体的危険性を認めるのは社会通念に反して許されないとしても、このような場合には、それに準じるVE16の噴火(噴出量数十㎦ )が起こる可能性も十分小さいとしはいえないとして、この噴火規模を前提にして立地評価をするのが当然である。 しかし、阿蘇4噴火の火砕流が本件原子力発電所に到達したかどうかについてさえ専門家の意見が分かれていることなどからすると、阿蘇におけるこの程度の規模の噴火で火災物密度流が本件発電所敷地に到達する可能性は十分小さい。
    したがって、立地不適ではない。
3 影響評価
阿蘇については、阿蘇4噴火に準ずる噴出量数十㎦の噴火規模を考慮すべきである。そうすると、その噴出量を20~30㎦としても、相手方が想定した九重第一軽石の噴出量(6.2㎦)の約3~5倍に上り、本件原子力発電所からみて阿蘇が九重山よりやや遠方に位置していることを考慮しても、相手方による降下火災物の想定は過少であり、これを前提として算定された大気中濃度の想定(約3.1g/㎥ )も過少であるといわなければならない。
相手方は、非常用ディーセル発電機の火山灰フィルターは上記3.1g/㎥に対して大きな余裕を持って工事をしていてると主張するが、3~5倍もの噴出量まで想定しているとは認められない。相手方は、想定される気中降下火災物濃度が約3.1g/㎥であり、ディーゼル発電機の機能は喪失しないことを前提に、原子炉設置変更許可、工事計画認可及び保安規定変更認可の各申請を行い、規制委員会もこれを前提として各申請を許可ないし認可しているのであるから、降下火災物濃度が不合理ならばそれを前提とした上記各申請及びこれに対する規制委員会の判断自体も不合理であると言うべきであって、非常用発電機が機能喪失した場合にも本件原子炉の冷却が一定期間可能であるからといって、上記判断は覆らない。
このように影響評価の点で規制委員会の判断は不合理だとした。
4 コメント
  阿蘇4のような巨大カルデラ噴火を想定するの「社会通念」を用いて否定した点に疑問があるが、影響評価での判断は常識的な判断である。

11:15 裁判長;その他にどうか。
被告・中電;安全性対策工事の報告と、規制委員会での審議の報告がされた。
裁判長;次回日程について。原告の主張はどうか。
原告;大阪地裁の大飯原発の判決で、基準地震動そのものについて、疑問が出されているので、それについて主張したい。活断層について、規制委員会の審査は途中であるが、現時点での問題点を主張したい。
被告・中電;引き続く主張する。
国;特になし。
裁判長;次回期日は、2021年5月31日(月)11:00~ 第一号法廷で行う。
                                    11:21 終了

11:30 地域情報センターで報告集会
司会・高柳さん;今日は落合事務局長が、市議会の関係で遅れてきます。
最初に阿部弁護士より報告をお願いします。

阿部弁護士;今日傍聴できなかった方はどのくらいいますか。結構いらっしゃいますね。コロナの関係で、法廷での発言も制限されていますので、今日のことを報告します。
その前に、原発をめぐる裁判で大きかったのは、大阪地裁で、大飯原発の許可が取り消された(注;2020年12月4日)という、衝撃的な判決がありました。設置許可そのものを取り消す行政処分は3.11以後初めてのこと。取り消した理由は、基準地震動の決め方が、平均値からはずれた値を考慮していないというもので、全国の原発の裁判に影響する内容だ。浜岡原発にとっても重要な判決だ。
今日の法廷で原告から出したものは、今年の1月に出た広島高裁の伊方原発についての運転差止を命ずる仮処分決定についてのもの。広島高裁が伊方原発につき運転差止を命ずる仮処分を出したのは今回が二度目である。前回は、平成29年12月13日でその時は、運転停止に期限が付けられていたが、今回の仮処分は期限が付いていない。
広島高裁の内容ですが、「差止請求の要件としての具体的危険性」があるかどうかが争点で、あれば差し止める、なければ止められないということで、我々もそうですが、全国各地の原告・弁護団は、具体的危険性については、絶対的安全性に近い安全性を主張した。裁判所はそこまでの安全性は採用しなかった。しかしながら広島高裁の判決のいいところは、「福島事故のような過酷事故を絶対起こさないという意味での高度な安全性を要求すべきであるという理念は尊重すべきもの」とし、具体的基準についても、その理念ないし精神に則った解釈適用が必要となることも否定できないとした。具体的にある問題について専門家の間で意見が対立している場合には、支配的・通説的な見解であるという理由で保守的でない設定となる見解を安易に採用することがあってはならないとした。
それから、規制委員会により、新規制基準に適合する旨の判断が示されている場合には、①現在の科学技術水準に照らし、当該具体的審査基準に不合理な点のないこと、②当該発電用原子炉施設が上記審査基準に適合するとした規制委員会の判断について、その調査審議及び判断の過程に看過しがたい過誤、欠落がないことなど、不合理な点がないことなど、相当の根拠、資料に基づき、主張したということができるとしている。
この判断は、かつての伊方原発に関する最高裁判決を援用したものです。
具体的な論点として、差し止め請求の根拠については、「活断層」がある。
原発で「活断層」が問題になるのは二つの場面がある。一つは、「活断層」の上に原発の需要施設を建ててはいけないという場面。浜岡原発の場合も、原発の敷地内に、5本の東西に走るH断層があり、その上に重要な施設があるので、もしそれが活断層ならば、運転停止となる。
もう一つの場面は、どれだけ大きな地震が原発を襲うかということ。それを計算するときに活断層が問題となる。長い活断層の場合、大きな地震動となる。活断層の長さから地震の規模を推定する。広島高裁の伊方の場合、この活断層が原発の近いところにあるのではないかと。その場合は、違った計算方法をしなさいと規制委員会が言っていた。どの程度近ければというと、原発から2kmという。原発から2kmの近くにあれば、計算方法は違いますよと。
伊方原発はご存じのように、四国の佐田岬半島の根っこのところにある。その伊方原発の沖合に大分方面に向かう「中央構造線」というのが通っている。それが活断層ではないかと。相手側は、海上音波調査を行ったけれども、活断層ではなかったと。
ところが政府の地質調査研究推進本部というところが、「中央構造線断層帯長期評価」(第二版)というのを出していて、伊予灘海域部については相手方により詳細な調査がされたけれども、佐田岬半島沿岸の沖合については「現在までのところ探査がなされていないため活断層と認定されていない。今後の詳細な調査が求められる」と記載されている。「中央構造線断層帯長期評価」(第二版)として、政府の地質調査研究推進本部というところが正式の報告書を出している限りは、調査すべきであるのに、相手は十分な調査をしないまま、活断層は存在しないとして、原子炉設置許可等の申請を行い、規制委員会もこれを問題ないと判断したのであるから、規制委員会の判断には、その過程に過誤ないし欠落がある。
もう一つ、火山についてですが、浜岡原発の場合は、火山の影響については論点にしていない。富士山の爆発がどうかということはありますが、論点にしていない。火山を論点にしている原発のところはかなりある。
伊方原発の場合の火山はどこの火山を指すかというと、特に大きな火山はない。中国地方には大山はあるが遠い。九州地方に阿蘇山や九重山など、過去に大規模の爆発をした火山がある。南九州にも大きな火山があるが距離的に遠い。阿蘇山の2万年前くらいの大爆発では、九州全部を覆う大噴火で、日本全国に火山灰が積もった。伊方原発のところにも火砕流が到達したという記述がある。そういうところに原発を建てていいのかということで立地不適と判断される。
何万年前に起きた火砕流が20年30年の間に起きるのかというと、起きないかもしれないけど、起きるかもしれない。どっちか分からない。その時は起きることを前提に考えなくてはならないと。
だけど裁判所は考え方を変えて、しかしながら日本の災害の例をみても、このような巨大な火山噴火を予想するような災害対策の法律はないではないかと。台風とか水害とか原発とかは想定しても、火山の大噴火を想定したような法律はないと。ということは、そういうことは想定しなくてもいいのだと国民や社会が考えているからではないかと。社会がそれを許容しているのだと。伊方原発はそういうものなので、だから立地不適ではない、と言っている。
しかし、影響評価という点では引っかかる。火砕流が直接原発に届かなくても、火山灰などの量が多いと、原発の運転に影響を与えるというもの。特に、非常用ディーセル発電機のフィルターは、九重山の噴火での火山灰を3.1g/㎥と想定して、それには備えていて、余裕を持って工事をしていると主張するが、阿蘇山の巨大爆発の噴出量は3~5倍くらいになる。さすがに、多少余裕をもたしているといっても、そこまで想定しているとは認められない。そういうことを前提に、規制委員会も認可している。
活断層のことと、火山の影響評価の点の2点において、規制委員会の判断には過誤ないし欠落があるとして、伊方原発を動かさない判断をした、ということを説明しました。
中部電力からは、準備書面(21)が出て、原発についていろんな安全対策をしているという説明をしていましたが、まだ十分読み込んでいませんが、やはり避難計画とか、大阪地裁で出た基準地震動や、活断層のことなど、比較的わかりやすい論点でやっていくことがいいのかなと思う。あまり細かなことで、技術的なところでやっても反論できないので、そういうことでやるよりも、裁判所にもわかりやすい論点でやったほうがいいと。

11:48 阿部弁護士:次回は、5月31日(月)11:00からです。すごく期間は空きますが、規制委員会の判断が出ていない間は、裁判所も判断ができない。広島高裁の伊方原発では、規制委員会が合格を出し、稼働しているので、規制委員会の審議や判断に問題がないかどうかの観点から、裁判所の決定が出された。浜岡原発は、基準地震動、活断層、津波など、まだ議論が途中なので、裁判所も規制委員会の判断が出てから、その判断がどうだったのかということで、書きたいのではないかと。そういう判断の仕方は問題なのだと、規制委員会の判断を待たずに、どんどん判決を出すべきという議論ももちろんあります。福井地裁の判決を書いた樋口元裁判官などもそういうように主張しています。

11:50 大橋弁護士;次回の弁護団・原告団会議は、2021年1月21日18:00~県教育会館地下で行います。そこでどういうことをやるか、また書面で出します。

11:52 塩沢弁護士;大阪地裁判決から勇気をもらった。そういう裁判官もいるのだと、私たちも確信をもって活動していかなくてはいけないと。裁判官は市民サイド、国民サイドの目を向けているわけではないが、若手の裁判官が判決を書いた。結論からみれば当たり前と言えば当たり前。原発というものを考える時に、これから起きる地震を平均的にとらえて、平均でとらえるというのはどう考えてもおかしい。平均を超える地震はいくらでもあるわけで、ばらつきを考慮すべきと言っていながら考慮しないで、規制委員会がゴーサインを出したのだからこれはおかしいと。非常に当たり前の判決だった。当たり前だと思ったから判決を書けたと思いますが、これで高裁ではどうなるか、非常に気になる。電力会社や規制委員会は、ばらつきをまったく考慮していないわけではないのだと、判決に誤認があると。平均値を出すときに、不確かな要素は考慮していると。ばらつきをいうなら、不確かな要素の考慮は言葉上のことで、根本的に違うのだと。
科学的な根拠でものを言ってくれる内山成樹先生が「原発地震動想定の問題点」という本をかなり前から出されている。ここで言われていることは、平均値を出す時の考慮について、それはめくらましであると。大事なことは、平均値からいかに乖離があるか、平均値からの最大の乖離、これが大事だということを非常に強く強調されていました。
最近、赤旗日曜版に、3・11以降、初めて差し止めの判決を書いたあの樋口さん、樋口さんはこう言ったのです。「原発を将来襲うであろう最大の地震の強さ、それに見合った対策を取るべきである。ところが今の地震学の勉強では、そういう計算がそもそもできない。できない以上は再稼働させるしか方法はない」と。より踏み切ったコメントだ。ばらつきを考慮することなど当たり前であって、全国各地の原発、浜岡原発の場合、どうなっているのか。規制委員会の判断がまだ出ていない。東京高裁ではどうか。

11:55 阿部弁護士;そこのところは、もう一度浜岡の場合は検討しなければいけないと思っています。3・11の前であれば、規模の小さい地震を想定しようとしていたけれども、3・11後は、南海トラフのことが出てきて、想定される最大規模の地震を出しなさいと。その結果浜岡には9mの津波。地震動もどこが破壊されるかなども出している。それにもとづいて、中電は検討している。まだ議論しているようだ。どの程度の地震がおきるかということについては、最大規模と言っているから、それが平均値とどうかかわるのか分からないが、地震学者が最大規模と言っているのであれば、それ以上の地震はないと裁判官はいう可能性がある。ただ、地震の規模がそういう事であって、そこから実際に原発を襲う地震動はそうではなくて、例えば駿河湾地震(注;2009年8月)の時、5号機が非常に強く揺れたということは、その地下に地震動に関して低速度層分(注;低速度層とは、5号機東側の地下浅部で、地震波であるS波の速度が周囲の岩盤に比べて3割程度低下している岩盤のこと)があったと言われているけれども、震源地から原発までの間にどういう地層があるかを考慮して、計算過程も計算方法も、いろんな平均値、ばらつきを考慮してやっていくしかないのかなと。

11:59 塩沢弁護士:もう一つ。今度話をしますが、10月15日に、NHKの「クローズアップ現代」という番組がありますね。あの番組で、核燃料サイクルの「まぼろしの見直し案―徹底取材」という非常に興味深い内容を取り上げていた。核燃料サイクルで、つまり原発で核のゴミが出る。それを六ヶ所村に持っていって、取り出したプルトニウムをMOX燃料に変えて、ぐるぐる回すとエネルギーが効率的に利用できるという夢のような話です。それがとうの昔に挫折していると。ある時に民間会社の担当者が「これは経済的に成りたたない。やめるべきだ」と。かなりのところまできっちり認識していて、電力会社のトップに提案していたけれども、それが国のいろんな圧力によって押しつぶされてしまって、いまのような状態が続いているという。それを詳しく取材したドラマというか、レポートです。これなどもビデオとして証拠として出したい。世論としてはどう考えても、エネルギー政策は破綻していることは明らかになっている。NHKは、だから反対だとはいわない。そういうことを抜きにして考えているのはおかしくはありませんかと、国民の前に問題点を提起して、議論する場が必要ではないかという提言なのです。そういうものも、再度皆さんに取り上げていきたいと思います。

12:02 司会;ありがとうございました。今日の裁判について、阿部弁護士から詳しい報告がありました。そのあと、原子力発電が持っている、最近出てきた問題点についてもていねいに触れられて、ありがとうございました。何か質問はあるでしょうか?
    最後に塩沢弁護士がいわれた番組というのは、取り出していくことはできるのですね?

塩沢弁護士;NHKの許可は必要でしょうね。

司会;できるのでしょうね。何か、何年か前に横浜に報道センターみたいなものができて、過去の番組をストックしてあると聞いたことがある。別のルートでも取れると思う。いま取り上げられた問題で、私も六ヶ所村では(核燃料サイクルは)絶対できないと思う。報道もそういう方向でなされていたと思いますが、急に、プルトニウムが使い物になるという論調が出てきたのは、意図して出してきたのかなと思います。少し余分なことを言いましたが、他に。

12;04 林 弘文・原告団長;いま塩沢弁護士がいわれたことですが、「プルトニウム」の問題について言うと、東大の先生で、ちょっと名前が浮かんでこないのですが、「プルトニウム」という本を書かれて、その方が夢のような燃料を取り出すためには、何回サイクルを回さなくてはいけないかの計算をしている。単純な計算ですが、60回燃料を燃やして再処理をして、また分解して再処理やって燃料を取り出す、こういうことを60回やらないとできないと、書いている。現在どういうことかというと、1回でもそれは非常に困難になっている。だから夢のような原子炉はできないというのが明らかになっている。
それから2番目ですが、大阪地裁の大飯原発3,4号機の判決文を福井の方が送ってくれたのですが、もし読みたい人は連絡していただければメールで送ります。183ページもあります。ようやくコピーを取りましたが、非常に読みがいのあるものではないかと思います。
今日は、阿部弁護士が分かりやすく説明していただきありがとうございました。これからどういう問題が起こるかについて言われましたが、浜岡原発の活断層の話がこれから出てくるわけで、先ほど桜井さんから非常にていねいな説明を受けたものですから、できれば桜井さんの方から何かコメントがあればお願いします。浜岡原発については、規制委員会が、871回目ですか、「針貫入試験」というのをやって、浜岡原発の調査をやって、非常に柔らかいという。そんなに古いものではないと言われだしている。桜井さんの方から何かコメントをお願いします。

12:06 原告・桜井;突然の話ですが、規制委員会が7/3の会合で、H断層が活断層の可能性があると指摘しています。中部電力がいろいろ言っても、しかしこれは、爪で傷がつくほどに柔らかいと。
そして最近起こった大きな断層と考えてもさしつかえないほど柔らかい。それについていま私たちが持っている知識でまとめてみました。赤い色の部分が浜岡原発の敷地になります。そして、一番下からH1からH9までH断層。そして海側にもⅯ0、M1、HM5ですか、とにかく海の側にも4つある。これまで指摘してきたのですが、そのうちの8番目の断層のすぐ東側に、活断層が見つかっている。H断層と同じように東西方向だ。中部電力はこのあたりからは点々で表わしていて、はっきりしないということです。でも実際にはこの延長線上のBF2と名前をつけられた場所を掘ってちゃんと調査している。ところがそのデータを一切示していない。そしてその40m南側に実は活断層が見つかっている。産業経済委員会ですか、国が関わっている機関の、坂本さんという方が最近、明らかに活断層だと。これが8万年くらい前に活動していることが分かっていると。ということは、H8断層も8万年くらい前に活動している。その延長上か、枝分かれとして、いま見つかっている活断層が動いているということが考えられる。その場所は、大きな三角形の先っぽのところということになる。
これについては、2月8日に、新潟大の地質の専門家である立石雅昭先生が静岡に来て、私たちが県連の弁護士と「浜岡原発の再稼働を許さない静岡県ネットワーク」として、記者会見で説明してくれるということになっています。私たちが説明をしても説得力はないですが、地質学者が記者団の前で説明をしてくれる。県の危機管理官ですか、そういう人たちにも説明をしてもらう。そのあと、現地見学会も考えている。立石先生もそこまでがんばるよと言っている。その前日には林克さんが中心にやっている「静岡原発をなくす会」が立石先生の講演を企画している。現実にH断層が活断層だということがはっきりしてきて、非常に面白くなってきている。裁判でもぜひやっていただきたいと思います。

12:11 林 克・原告 「静岡原発をなくす会」の林です。ひまわり集会(注;11月15日・駿府公園)の実行委員長をやりましたが、コロナ禍の下で少ないと思っていたのですが、700人の方たちに集まっていただき、ありがとうございました。そして来年知事選があり、浜岡原発再稼働に関しては大事な選挙になる。再稼働にタガをはめるには、茨城の伊藤さんや、新潟の検証委員会の方が言われていたように、県民が要求を出していくことが大事だと。この間、元東大総長で、文部大臣もやった有馬氏が亡くなった。原子力村の村長中の村長と言われていた人ですが、県知事も有馬さんには頭が上がらないと言われていましたが、これからは県の会議も変わるかもしれない。県知事選が大事。2月7日「静岡原発をなくす会」総会では、立石先生の講演があり、H断層の詳しい説明があります。弁護士の皆さんもぜひ参加を。裁判に生かしてほしい。
司会:ほかに質問などありますか。それでは、長い間のご参加ありがとうございました。次回口頭弁論は、2021年5月31日(月)11:00からです。多くの参加をよろしくお願いします。
                                       12:15 終了
 (文責・長坂)



 

  浜岡原発永久停止裁判 第29回口頭弁論

カテゴリー

浜岡原発永久停止裁判 第29回口頭弁論
2020年12月14日(月)

浜岡原発永久停止裁判 第29回口頭弁論  2020年12月14日(月) 概要

 被告・中電から準備書面(21)、原告から準備書面(31)がそれぞれ提出され、陳述を行った。
●被告・中電の代理人は、準備書面(21)の概要説明を約3分で行った。
「1、本件原子力発電所の安全確保対策」、「2、事故防止対策」、「3、福島第一原発事故を踏まえた炉心の著しい損傷防止対策及び格納容器の破損防止対策」として、それぞれの対策の要点を説明した。
●原告からは、原告の代理人弁護士・阿部浩基氏が約10分、準備書面(31)の要約を説明した。
  2020.1.17に広島高裁が、伊方原発3号機について、運転停止を命ずる仮処分を出したが、その広島高裁の判決内容を、「司法審査の在り方」「活断層」「火山事象の影響による危険性」の3点にわたって、簡潔に要約して紹介した。
  広島高裁の判決は、直接、浜岡原発に関わるものではないが、原発の再稼働に関わる考え方として、今後の原告の主張に生かすことができると位置付けた。

 ●次回口頭弁論は、2021年5月31日(月)11:00~ 第一号法廷で行う。
                                 
●地域情報センターで報告集会
  当日約40人の参加者であったが、裁判所のコロナ対策のため傍聴に参加できたのが20人くらいで、傍聴できなかった参加者が多かったため、阿部弁護士が準備書面(31)の陳述内容を詳しく説明してくれた。
そのあとで、塩沢弁護士から、大阪地裁の判決内容(大飯原発の過去に起きた地震規模の平均値でなく、それを超えるばらつきを考慮する点での規制委員会の審査に過誤、欠落があるため、国の設置許可を取り消す)に勇気をもらえたとのコメント、林弘文・原告団長の話、地元原告の桜井さんからのH断層の活断層の可能性に関する話、原告の林克さんの話、などがあり、12時15分に散会した。

なお、詳細は後日、掲載予定。



 

浜岡原発永久停止裁判 第28回口頭弁論 

カテゴリー │口頭弁論

 当初は、3月9日(月)の予定であったが、新型コロナ感染症のために、裁判所から延期の措置が取られた。

 特別傍聴席は、原告用としてこれまで30席であったが、6席となった。また、一般傍聴席は抽選で

多くて12席ということになった。結果的には法廷には陳述した原告を含めて17名、報告集会の会場で待機していた原告が23名で、合計40名の原告が参加した。



2020年7月20日(月)晴れ

10:00 浜松市地域情報センターホールに原告や傍聴者が集まり始めた。

10:30 裁判所内の部屋で傍聴抽選。結果的に合計17名が傍聴できた。



11:00 裁判が開始。

裁判長は川淵健司、右陪審は荒井格、左陪審は丸谷昴資。

   訴訟代理弁護団計16名の弁護団のうち、今日の参加者は6名。

     大橋昭夫、森下文雄、塩沢忠和、杉山繁三郎、阿部浩基、平野晶規、

被告側は国と中電の10名。

11:00 裁判長;コロナ感染の関係で傍聴を4割にする対応に協力いただき感謝する。それでも密な状態なので、弁論が簡潔にお願いしたい。

原告から準備書面(30)が提出された。原告より補足説明がある。被告・中電から準備書面(20)、被告・中電より証拠書類提出。

原告・阿部弁護士:準備書面の要約を原告本人の林克から説明を行う。

11:03原告・林克:(以下に「読み原稿」を掲載します)

準備書面(30)県民を脅かす原災指針に基づく避難計画

 コロナ禍が提起した原発災害における避難の困難をかみしめ、準備書面29の内容を踏まえ,静岡県の「原発事故における防護措置をする区域」についての問題点を述べます。

1.避難計画の対象となる区域の特徴

 静岡県における浜岡原発における防護措置をする区域の特徴は、当該自治体の総人口は約94万人,全国で茨城県の東海第二原発の防護区域に次ぐ人口数です。そしてこの区域内を東海道新幹線など日本の東と西を結ぶ大動脈が貫き,原発事故が起きれば甚大な社会的経済的影響が生じる区域です。

 またプレート境界型地震が周期的に繰り返されてきた地域であり,巨大な海溝型地震である南海トラフ地震も想定される危険区域です。また海からの圧力で生じた断層が数多く、一度プレート境界型地震が起これば断続的に強い地震が起きる可能性がある区域です。国の想定では最大死者数は約10万となります。

2.UPZでの防護措置の原則である屋内退避の問題

 UPZ(浜岡原発から5キロから31キロの自治体)の防護措置では、全面緊急事態において原則として屋内退避が行われます。しかし,IAEA国際原子力機関は,PAZだけでなくUPZにおいても,「最も効果的な」防護措置として「避難」を掲げています。原災指針は,国際基準がUPZにおいて最も効果があるする避難を基本的に採用しませんでした。

 IAEAは,屋内退避は1日以上実施すべきでないとして、食物,水,公衆衛生,電力,医療援助、モニタリングなどその例外基準を設けています。また屋内退避を実施する建物の性能について、致死線量を防ぐ大きな建物を選ぶことを重視しています。

 しかし,原災指針においては国際基準の「1日以上実施するべきではない」という限定規定は見られません。また,国際基準が提示する条件も記載されていません。にもかかわらず原災指針の屋内退避の期間に触れるのは、「プルームが長時間又は断続的に到来することが想定される場合避難に切り替える」というもの。こうした曖昧な規定では,避難する場合,住民は困惑するばかりです。

 新潟県の検証委員会によれば、屋内退避の意義と限界等について、「なぜ屋内退避を行うかといえば建物によって放射線の影響を避けるということ。一般的にはコンクリートの壁が厚いほど遮蔽効果は大きく、木造建物の遮蔽効果は小さい」としています。その資料によれば、木造家屋の上空成分(クラウドシャイン)からのガンマ線は1割しか低減されません。しかし,原災指針は「放射性物質の吸入抑制や中性子線及びガンマ線を遮蔽することにより被ばくの低減を図る防護措置である」と述べて,自宅の木造家屋でも十分な防護効果があるような印象を与えています。

 通常日本家屋は木造が多く、静岡県もその例外ではありません。その状況でIAEAの国際基準のような限定を付けない屋内退避を強いるのは住民の安全を脅かすものです。

3.「屋内退避」と安定ヨウ素剤服用のタイミングの問題点

 IAEAの国際基準では「屋内退避は安定ヨウ素剤の服用と同時に行う必要があり,公衆が安定ヨウ素剤を1日以上服用することは適切でないので,屋内退避の実施は制限される」とされています。

 それに対して国は「放射性ヨウ素にばく露される24時間前からばく露後2時間までの間に安定ヨウ素剤を服用することにより,放射性ヨウ素の甲状腺への集積の90%以上を抑制することができる」「しかし,ばく露後16時間以降であればその効果はほとんどないと報告されている。」「安定ヨウ素剤の服用効果を十分に得るためには,服用のタイミングが重要であり」「安定ヨウ素剤の備蓄,事前配布,緊急時の配布手段の設定等の平時からの準備が必要となる。」としています。

 ばく露後16時間以降であれば安定ヨウ素剤の服用の効果はほとんどないとされているにもかかわらず,UPZでは屋内退避が優先的な防護措置とされ,初動で安定ヨウ素剤を服用する旨の規定はありません。避難指示後に、一時避難所やスクリーニング検査場で安定ヨウ素剤を配布された時には既に服用のタイミングは過ぎているおそれが大きいと考えます。

 事前配布をすべきですが,住民に適切な服用のタイミングについて周知がされない限り,効果のない服用にならざるを得ません。

4.「屋内退避」に最も適さない地域 静岡県海岸部の地質の特徴と地震

 原災指針のIAEA国際基準からの逸脱にとどまらず、静岡県がやがて必ず来る東海地震の震源域であり,強烈な地震と津波に襲われることからも,静岡県では原則屋内退避はやめるべきです。

 2016年の熊本地震は,189名近い死者を出すなど,断続的な揺れ、特に2度目の揺れで大きな被害をもたらしました。熊本地震と静岡県では活断層型地震とプレート型地震という揺れの違いはあるものの,断続的な地震が襲うという点は同じです。直後の朝日のアンケートによると、原災指針の「屋内退避」について静岡県、牧之原市,掛川市,袋井市,藤枝市など37自治体が指針を「見直す必要はある」と答えています。

 静岡県で原災指針の通りに「屋内退避」を続ければ,予想を上回る甚大な被害が出るものであり、静岡県は屋内退避に最も適さない地域であり,これを押しつけることは静岡県民の生命,安全を犠牲にするものです。

5.「いかに実行が容易な対策にするか」を優先させてのIAEA原則からの後退

 原災指針は,IAEA国際基準の原則を後退させた理由として、JAEA の原子力防災情報文書によれば、「各国で適用する際には変更可能」「対策の実行可能性も加味」とあり、いかに実行が容易な対策にするかということを優先させて後退させたと言わざるを得ません。

 原災指針は,IAEAの国際原則を「対策の実行可能性」のために値切り,またそれを地域の特殊性も顧みないで自治体に押しつけ静岡県民の安全を二重の意味で脅かしています。

6.要配慮者の避難

 高齢者,障害者,乳幼児その他の要配慮者の避難が最も困難、原発災害の特殊性を見なければなりません。しかし国の責任で原災法に規定すべきにもかかわらず一般的な地震・津波の対応である災対法に分類されています。それゆえ,要配慮者がいる施設の避難の作成責任は,法的にその施設に委ねられています。

 様々なアンケートで施設側から「どうすればよいか具体的にわからない」の声が上がっており、もっとも困難な避難にもかかわらず手がつかない状況です。

 また要配慮者が利用する屋内退避施設(シェルター)は放射能除去などハード面の基準はあるものの、前述の国際的な基準、線量モニタリングや,適時の安定ヨウ素剤の服用といった「ソフト面」は皆無です。安全性を欠くことは明らかであり,しかも,設置は未だPAZ区域内に限られていますから,要配慮者の避難に有効な措置とは到底言えません。

 「効率的かつ実効的」な対応を大義名分として原災指針から要配慮者の避難を外したことが、一番困難な要配慮者放射能災害に対してノウハウのない自治体に押しつけ、老人や障がい者から安全な避難をする権利を奪っています。

7.深層防護の考え方に根本的に違反する事故想定、そして指針

 規制委員会は,最大でもセシウム137の放出量が100テラベクレルの事故を想定して避難計画を策定するよう支援(指導)していることから原災指針自体も,福島第一原発事故の100分の1の規模の事故想定を前提に策定されていることが窺えます。新規制基準で定めたシビアアクシデント対策(第4層)が全てうまく機能することが前提です。深層防護の,各層の間に優先劣後の関係は存在せず,各層が互いに依存することなく独立しているべきとする考え方に相反しています。この避難計画の前提がそもそも原発の安全を図る大原則、深層防護の原則から逸脱しています。



 大原則の逸脱を前提とし、「対策の実行可能性」を優先した原災指針に基づく避難計画は実効あるものとならず、それを欠く原発は県民を放射線被ばくの具体的な危険にさらすものです。

11:10 裁判長;被告・中電の準備書面(20)の説明と、浜岡原発の工事の現状について。

被告中電・代理人:準備書面(20)の概要説明。

原告が提出した準備書面(24)(H30年4月16日)に対しての反論。「岩盤が破壊する自然現象で

ある地震について、その揺れに関し不確定性を残すことなく予測することは困難を伴うとしても、地震学、地震工学の知見をふまえ調査をつくし、地域性を考慮し原子力発電所の安全性の確保の観点から適切な地震動として、基準地震動を策定することができる。そして、これを用いた耐震設計や既設の原子力発電所の耐震安全性の確認が行われることで、地震による施設の安全機能が損なわれることがないようにすることができる。」と主張。

被告中電・代理人:安全性向上対策工事の昨年11月以降について。

 4号機の電源設備、フィルター、スプレイ系、水質サポート強化、安全弁パラメーターの規制委員会への伝達等の工事を行った。

規制委員会の審査は5回行われた。プレート間地震の断層破壊について説明し了解された。地盤に関して、敷地内のすべての断層をH系断層で代表できるとし了解された。

 津波に関して、海底地すべりについては了解された。火山活動に関する審査は継続して行う(注;伊豆・小笠原の火山による津波への影響に関しては、2019年9月6日・第767回審査で論議)。

11:15 裁判長;双方の今後の予定はどうか。

原告・代理人:引き続き主張を行う。

被告・中電代理人:引き続き主張を行う。

裁判長;被告・国からは。

被告国・代理人:予定なし。

裁判長;次回期日は、12月14日(月)11:00~ 第一号法廷で。書面は一週間前に提出を。

                                 11:22終了



11:25 地域情報センターで報告集会

司会・長坂さん;今日は落合事務局長が、市議会の関係で遅れてきます。高柳さんも参加できないので、代わりに司会をします。不手際があるかもしれませんが、よろしくお願いします。

 最初に原告で陳述した林さんより報告をお願いします。

林克さん;準備書面(30)避難計画について。「避難計画の」の対象となる区域の特徴として、UPZでの防護措置の原則である屋内退避について。5~31kmでもし緊急事態が起きた時は、屋内退避をしてくださいと。まず御前崎市と牧之原市一部が避難をはじめて、他は屋内退避が原則だという取り決めになっている。ところが、IAEAが掲げたのは、まずUPZは「避難」だと言っている。屋内退避は被ばくする可能性が非常に高いということを言っている。「一日以上いてはいけない」ということもIAEAは言っている。もし、屋内退避をする場合は、いくつかの条件が必要だということを言っている。原災指針は、放射線が強くなって、500mSV以上になったら、避難に切り替えるとしか言っていない。全然安全のことを考えていない。

 しかも新潟県の検証委員会の資料によれば、木造の建物は、上からの放射線では一割しか低減されない。UPZの人たちは、木造の建物が多く、放射線を防ぐことはできないと主張した。

 ヨウ素剤服用のタイミングの問題点について。屋内退避の時に、ヨウ素剤の服用が大事だと言われている。16時間以上たつと効果がないと。的確に与えなくてはいけない。原災指針ではあいまいになっている。住民の安全を考えていない。

東海地震、南海トラフ地震のことを考えると、建物の崩壊で10万人を超える人達は避難が予想され、屋内退避ではもっと大変なことになると指摘した。

 要配慮者の避難について。高齢者、障がい者、乳幼児などの要配慮者の避難が最も困難。しかし「原災法」でなく「災対法」によって対応すると。本来放射線被害の対策なのに、それをなくしてしまって、施設に責任を負わせている。どうしてこんなことが起きるのか。「原災法」でやりますよといいながら、やりやすいところでやるということからきている。

 最後に、規制委員会は、100テラベクレル(1テラ=1012)の事故想定で、避難計画策定を指導しているので、原災指針も福島第一原発事故の1/100の規模の事故想定で策定されていることと思われる。第4層の対策がすべてうまく機能することが前提となっている。そもそもIAEAの深層防護の大原則から逸脱していることを指摘した。

11:32 司会・長坂さん;今日の口頭弁論では、原告被告の双方で何が主張されたのか、弁護団から説明をお願いします。

阿部弁護士:原告の方からは、引き続き、避難計画の問題について、林さんから補充をしてもらった。中電からは、基準地震動についてはしっかりした根拠があるという書面が出てきた。中電は、政府の基準地震動の策定決定をもとに、きちんとやっているので耐えられるというが、こちらは、これまで何回も基準地震動を超える地震が起きているではないか、科学的装いをしているが、本当に信用できないのではないかという原告の主張に対して、中電の準備書面は、いろんな知見を踏まえて、大丈夫だというものだ。

 もう一つ、準備書面ではないが、証拠書類として中電が出してきたものは、原子力規制委員会が裁判対策用に作ったもので、その資料をもとに主張するのだというもの。

 今後何をするかを、いろいろ考えているが、今日のやりとりはそういうことだ。

11:36 塩沢弁護士;前回の準備書面の(29)、今回の準備書面(30)について。(29)は避難計画の総論的なもの。今回の(30)は静岡県に当てはめた場合に、具体的にいかに避難計画が違うかを明らかにしている。準備書面の作成では、私なども加筆を行った。地震とか、津波とか活断層とか理系のことについては分からなくとも、文系の方々には避難計画がいかにずさんで、こんなことで本当に防げるのかと分かると思う。

 いずれこの問題は、いまの県知事がリニアの問題で頑張っているが、今日の法廷での中電の弁護士が説明している内容で、いずれ規制委委員会がOKを出した時、地元の知事や自治体の長が、こんなずさんな避難計画で地元の自治体が同意をしていいのかが問われる。その時のために、我々の主張はこうだということを示している。

 宮城県の女川原発で、規制委員会が合格として、県と地元が再稼働にどういう態度をとるかがクローズアップされ、宮城県知事が同意しそうだ。避難計画は静岡県も宮城県もずさんだ。県知事は同意をするなと、住民が再稼働同意差し止めの仮処分の訴えを行った。その根拠となるのが避難計画のこと。残念ながら、7月6日仮処分の申請が却下された。その理由は、差し迫った具体的な危険を立証していないと。住民は一生懸命頑張っているが、いずれ再稼働を止めるための争点となる。

11:40 阿部弁護士;女川の仮処分の中身について補足すると、これは原発が危険だという理由としては、避難計画のずさんさしか主張していない。その前に地震・津波のことで事故が起きているが、その点は主張していない。避難計画のずさんな原発はそれ自体としては、住民の具体的危険性を持っているのだと主張したが、それはIAEAの深層防護の考えに基づいてやった。深層防護の1~4層、5層が避難計画。深層防護の考え方は、1~4層がダメであっても、5層で持ちこたえられると。各層は独立してとらえていなくてはいけない。どこか一つでも欠ければ、被ばくする危険性があると言っている。答弁はその点をあいまいにしていて、女川の仮処分決定は、原告は避難計画だけで、実際に原発が事故を起こした時の問題を出していない。避難計画の不備だけでは、その危険性は立証できないと述べている。

そこはこれから避難計画を裁判所が判断するときに、問題になると思う。避難計画をそれとして判断した例はないと思うが、女川原発はそこだけを問うた。規制委員会は規制基準をつくる時に、避難計画を入れなかった。そもそも自治体がやることで、電力会社がやることではないと。前提としてそこに大きな間違いがある。

 もう一つ。実は今日時間があれば、伊方原発差し止めの広島高裁決定にふれるつもりだった。時間がなくて今回は取りやめたが、簡単に言うと、伊方原発は、前回一度、仮処分で止まった。あれは、期限がついていた。今回は、岩国支部の決定に対する高裁の判断。一つは、伊方原発は、中央構造線という大断層帯に沿っていて、瀬戸内海に突き出している半島の根っこのところにある。原発から2km以内に活断層がある場合は、特別な深層防護をしなくてはいけないとなっているが、四国電力は、音波調査などで活断層はなかったという。中央構造線断層帯第2版という資料には、活断層があるかないか分からないと書いてある。裁判所としては、それを採用して、もっと広い範囲に活断層があるかもしれないと、審議が不十分だ。

 もう一つ。火山によって原発が被害を受ける恐れがある。火山は、立地の評価と火山灰の影響   評価の二つがある。立地の評価は、火砕流が原発を襲うのであれば、火山そのものが危険で、阿蘇山の火砕流が海を越えてくる危険があるという疑問が出されるが、誰も来ないものとしている。来た時にどうするか。予見していなくていいのか。

 阿蘇山から伊方まで火山が噴火して、それによっての対策が取られていないからダメと、二つの理由で決定を出している。

次回、準備書面でやりたい。

11:50 塩沢弁護士;中電の弁護人は、火山の問題では、浜岡原発への影響はどこからかと聞いている。

阿部弁護士;多分、富士山ではないか。

 林弘文さん;今の火山のことは、私も気になった。今の規制委員会では、実際には陸の火山のこと

が問題になっている。今日の話では、中電の説明では、原子力規制委員会の5回の審査で、プレート間地震について、審査をやったという。「敷地内のすべての断層をH系断層で代表できる」と言っていた。この意味を詳しく聞きたい。海底の地滑りは、了解したという。中電からもっと聞きたいと思っていたので残念。火山は継続審議とのことだが、規制委員会の議事録をよく読んでいない。

桜井さん;(当日の発言に加筆してもらったものを、ここに掲載しました。) 中部電力は原子力規制委員会に対し2つのことを認めてくれるよう要求していました。

 1つめは「敷地内のすべての断層をH系断層で代表できる」というもので、2つめは「一番南側のHm4~一番北側のH9までの14本あるH系断層を、H9断層で代表できる」というものでした。原子力規制委員会は1つめの「敷地内のすべての断層をH系断層で代表できる」を認めました。敷地内にある他の断層より、H系断層の方が活動時期が新しく、しかも「H系断層が12~13万年前以降に活動していないならば、すべての敷地内断層が活断層ではない」ということになります。この結果、中部電力としては南北方向の断層を無視してよいことになり、基準地震動策定に大きく前進したと評価しています。私たちにとっては良くないことですが。

 2つめの「H系断層のすべてはH9断層で代表できる」について、原子力規制委員会はこれを認めず、継続審議となりました。理由は「H系断層の細粒部(断層境界面)の針貫入試験の結果、かなり柔らかく、中部電力が主張するように100~200万年以上前の断層というより一回り新しい断層である可能性がある」「反射波のデータからも中部電力が主張するように比較的浅い面に沿って、ドミノ的土砂崩れで同時期にH系断層ができたとは言い切れない」と指摘しました。中部電力の狙いはH9断層が上載地層である泥層(中部電力は12~13万年前に堆積した地層と主張している)を切っていないことを理由にH9断層が「活断層ではない」と主張できると自信を持っています。これが否定されたことは大きく評価できることだと思います。実は東西に走るH8断層の30mほど南に東西方向の活断層(相良層の上に8万年前に堆積した笠名礫層をこの断層が切っている)が見つかっています。この活断層はH8断層と同時期に形成された可能性が指摘されています。私はこの断層に注目しています。中部電力はこの断層のすぐ近くにあるBF2という地点を掘って調査していますが、データが公開されていません。その100mほど北側の御前崎礫層(12~13万年前に堆積)がH9断層の上に載っていると考えられるBF3地点の調査結果も公開されていません。活断層議論はこの付近に焦点がありそうな気がしています。

林克さん;「敷地内の断層を東西方向のH系断層で代表する」ということですが、県のリニアのことで活躍している塩坂さんは浜岡原発の本庁裁判でも、東京高裁でも「南北方向の断層がH系断層より優先する」という考えを主張しています。今回の規制委員会の判断はどういう意味なのか、7月26日に、産業経済会館で塩坂さんの講演が静岡であるので是非参加してお聞き下さい。

司会;今日は詳しく補足説明があり、参加者のとってはよく分かったと思います。ほかにはどうですか。

林弘文さん;静岡県の危機管理部の原子力学術会議で、津波に関する京都大学の今村さん、火山学会の会長の藤井さん、委員にしていながら話を聞いたことがない。もっと各先生方の発言を聞きたい。聞く機会を設けてほしい。

司会:次回口頭弁論は、2020年12月14日(月)11:00~ です。多くの参加をよろしくお願いします。

                                                  12:05終了

                                                 (文責・長坂)