浜岡原発永久停止裁判 第23回口頭弁論

カテゴリー │口頭弁論

概要
2018年4月23日(月)晴れ
●中電から準備書面(14)(15)を提出。陳述があった。準備書面(14)の要点の説明「規制委員会の適合審査に合格するよう津波対策工事を行い、手続きを行っている」。準備書面(15)の要点の説明「原子力発電は、エネルギー密度が高く、燃料の再利用など、供給安定性に優れ、環境性、経済性にも優れたもので、欠くことのできない電源だ。核燃料サイクルも今後も堅持することが重要だ」と。

準備書面(15)では、福島の原発事故により、すでには破たんしている論理を繰り返している。原発事故への反省が見られない。

●原告から準備書面(24)(25)を提出。陳述があった。準備書面(24)の要旨を説明「被告中部電力の準備書面(10)のうち、『地震対策に係る主張に対する反論』に対する反論を述べた。
準備書面(25)の要旨を説明「被告中部電力の準備書面(10)のうち,『設計基準事故対処設備における共通要因故障の防止に係る主張に対する反論』に対する主張を述べた。

●次回は、9月28日(金)11:00~ 一号法廷(はじめて金曜日の予定)

●地域情報センターで報告集会
・原告の準備書面(24) 準備書面(25)の簡単な説明。
・弁護士から、たくさんの論点でやり取りしているが、いまどうなっているかが分からなくなっている。一度論点整理して全体像が分かる工夫は必要だ。いずれ論点整理を裁判所が行うが、そろそろ原告もそれをやる必要があるという意見が出された。
・今回は、福島の生業訴訟の代理人弁護士からの報告があった。
「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟の紹介と、裁判で求めている3つの内容の紹介、そして、「なぜ集団訴訟を起こさなければならなかったのか」の話があった。
10月10日生業訴訟判決で明らかになったこと(4年7か月のたたかい)の報告があった。
「想定外」の津波(約15m)による事故ではない。国と東電の責任を明確にした。
許しがたい東電の柏崎刈羽再稼働に向けた動き~賠償のための再稼働。モラルとしてもあり得ないこと。乞食の思想には立たない。「金さえもらえば出所は問わない」とはしない。
名誉の問題だとの話は、強く心に響いた。

※詳しくは、以下の「口頭弁論記録」を見てください。

浜岡原発永久停止裁判 第23回口頭弁論
2018年4月23日(月)晴れ
10:00 浜松市地域情報センターホールに原告や傍聴者が集まり始めた。
10:30 裁判所内の部屋で傍聴抽選の予定であったが、全員が傍聴できた。

10:59 裁判が開始。
裁判長は上田賀代、右陪審は荒井格、左陪審は安藤巨、
原告訴訟代理弁護団計20名の弁護団のうち、今日の参加者は10名
大橋昭夫、森下文雄、塩沢忠和、杉山繁二郎、阿部浩基、佐野雅則、平野晶規、
北上紘生、栗田芙友香、青柳恵仁、
被告側は国と中電で15名。

11:00 裁判長;書面の確認。中電から準備書面(14)(15)が提出。陳述がある。その他の書証の確認。

11:01 被告・井上代理人:準備書面(14)の要点の説明(被告の準備書面より抜粋)。本件原発の津波対策強化について。本件原発が過去に繰り返し発生している南海トラフ沿いの震源域に位置し、地震・津波が敷地に与える影響が大きいので、設計・建設時に十分考慮し、その後の最新の知見を検討して、対応してきた。
平成23年3月の東北地方太平洋沖地震での福島第一原発事故を踏まえて、津波対策の大幅な改善をしている。中電は、敷地内浸水対策として、防波壁を設置。防波壁は天端高さT.P+22mで、長さ12mのブロックを連続的に並べたもの。その基礎は、地中壁を岩盤まで達する根入れ構造で液状化の影響を受けにくいものにした。
津波による敷地内への浸水対策は、原子炉建屋をはじめすべての出入り口に水密扉を設置。強化扉で二重化している。電源、注水機能の著しい損傷を防止する対策を講じている。
南海トラフ検討会の最大クラスの津波を踏まえた基準津波に対し、防波壁対策等敷地内浸水対策で敷地内の浸水は防止できることを確認している。原告は津波に対する安全性の確保がされていないと主張するが、理由がない。

準備書面(15)の要点の説明(被告の準備書面より抜粋)。エネルギー資源の乏しい我が国で電力の安定供給が不可欠。各種電源のバランス良い確保が必要。原子力発電は、エネルギー密度が高く、燃料の再利用など、供給安定性に優れ、環境性、経済性にも優れたもので、欠くことのできない電源だ。核燃料サイクルも今後も堅持することが重要だ。
原告の使用済み核燃料の再処理、放射性廃棄物の処分に難点があるとの主張、原発がなくとも電力供給に支障はなく、発電コストも高いなどの主張は、原発や核燃料サイクルへの正しい理解を欠いたもので、いずれも理由がない。

11:05 裁判長;原告から準備書面(24)(25)が提出。陳述がある。その他の書証の確認。

11:07 原告・青柳弁護士から準備書面(24)の要旨を説明(以下、準備書面をそのまま掲載する)。
本書面では、まず被告中部電力の準備書面(10)のうち、「地震対策に係る主張に対する反論」(同書面16頁から19頁)に対する反論を述べる。

1 「(1)耐震基準に係る主張に対する反論」に対して
(1) 被告中部電力の主張
被告中部電力は、「新規制基準における要求を踏まえ、不確かさを考慮して作成された基準地震動ないしそれに準ずる地震動が施設の供用期間中に発生する可能性は極めてまれであって、それが繰り返し発生する事態はおよそ考えられないし、基準地震動を用いた耐震安全性の確認にあたっては、地震荷重の繰り返しに対する耐震安全性も含め、基準地震動に対して相当の余裕をもって設計や規制が行われているのであるから、基準地震動ないしはそれに準ずる地震動が施設の供用期間中に繰り返し発生することにより耐震重要施設の安全機能が損なわれるかのようにいう原告らの主張には理由がない。」とする。
しかし、このような被告中部電力の主張は、地震動の予測の不確かさを軽視し、さらに原子力発電所施設の耐震安全性をも過信したものであり、信用できるものではない。

(2)予測の不確かさ
地震は岩盤の破壊現象であるから、原理的にその発生を予測することは困難であり、現状とし
て過去のデータに頼らざるを得ない。しかし、大規模な地震の発生頻度は必ずしも高いものではない上に正確な記録は近時のものに限られている。
かつては重力加速度である980ガルを超える揺れは起きないというのが地震の専門家の間の通念であったが、1995年の阪神淡路大震災(兵庫県南部地震)を契機として日本の地震動観測網が整備され始めると、1000ガルを越えるような揺れが次々と観測されるようになった。特に2004年新潟県中越沖地震では柏崎刈羽原発1号機で1699ガル(解放基盤表面) 、2008年岩手・宮城内陸地震では KiK-net 観測点IWTH25(一関西)の地表の三成分合成値として4022ガル という極めて大きな地震動が観測され、関係者を驚愕させた。
また、世界全体ではM9を超える地震が時々発生していたにもかかわらず、2011年東北地方太平洋沖地震が起きるまで、日本の多くの地震学者は、日本海溝はプレートの固着が弱く、M9級の地震がないと言える地域性があると思い込んでいた。現在は、東北地方太平洋沖地震は600年に1回程度の地震とされている 。
このように近年の地震観測は、「想定外」の繰り返しである。また、東北地方太平洋沖地震によって、600年に1回程度の地震を「想定外」にしてしまうのが地震の科学の実力であり、近年の地震観測だけで「大地震が起きない地域性がある」等と考えると甚大な被害を生むおそれがあることが明らかとなった。
以上のとおり現在の地震学・地震工学は、大地震の予測の力は明らかに不十分であり、原子力発電所の耐震安全性確保に必要な信頼性を備えているとは言えない。

(3)「極めてまれ」の危うさ
被告中部電力の主張の中で書かれている「極めてまれ」という表現は、2006年9月に正式決定された「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」(いわゆる新指針)のうち、「S1」と「S2」が統合された基準地震動「Ss」が登場し、これが「施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があり、施設に大きな影響を与えるおそれがあると想定することが適切な地震動」と定義された中の文言を用いていると考えられる(傍線は原告代理人による。)。
この「極めてまれ」という表現であるが、一見、基準地震動を超過することを許容する規定になったように見えるが、旧規定の基本方針である「想定されるいかなる地震力に対してもこれが大きな事故の誘因とならないよう十分な耐震性を有していなければならない」との規定が耐震設計に求めていたものと同等の考え方であるとされている 。
東京電力福島第一原発では、基準地震動Ssが600ガルと評価されたが、これも直ぐに超過してしまった。同原発事故後には「検討用地震動」として最大水平加速度900ガルという値が採用されている 。
このように日本の原発においては、段階的に基準地震動を引き上げているが、以後は万が一にも深刻な事故を起こさないためには、抜本的な基準の見直しが必要であり、事故発生ごとに事後的に基準を引き上げて済ますような策定方法は止めるべきである。

(4)繰り返し発生しうる大地震
被告中部電力は「・・・基準地震動ないしそれに準ずる地震動が施設の供用期間中に発生する可能性は極めてまれであって、それが繰り返し発生する自体はおよそ考えられない…」とする。
しかしながら平成28年4月14日及び16日に発生した熊本地震では、前震が最大1580ガル、本震が最大1362ガルであり、九州電力川内原子力発電所の基準地震動である620ガルを優に超えた。その他にも620ガルを越える地震動は前震で1回、本震で8回もあった 。
このように、現実に「基準地震動ないしそれに準ずる地震動が施設の供用期間中に発生」している以上、これを「およそ考えられない。」とする被告中部電力の主張は適切でない。

(5)安全余裕への過信
新規制基準では、基準地震動による地震力等に対し、建物・構築物について「妥当な安全余裕」を要求しているが、そのことにより、「基準地震動を超える地震が発生しても、耐震重要施設の安全機能が喪失しないことがあり得る」とは言えても、「基準地震動を超える地震が発生しても、耐震重要施設の安全機能が喪失することはない」とは到底言えない。
「考え方」には「実際の終局耐力に収まっていれば、基準地震動を超過しても、即座に耐震重要施設が損傷するということにはならない」という当たり前のことが書かれているが、問題は、基準地震動相当の揺れが原発を襲った際に実際の終局耐力に収まるかどうかには、様々な不確実な要因が影響してくるということである。
この点、被告中部電力は、「この基準地震動を用いた耐震安全性の確認に関し、新規制基準は、『建物・構築物については、常時作用している荷重及び運転時に作用する荷重と基準地震動による地震力との組み合わせに対して、当該建物・構造物が構造物の変形能力(終局耐力時の変形)について十分な余裕を有し、建物・構造物の終局耐力に対し妥当な安全余裕を有していること』などを要求している。」、「原子力規制委員会は、『耐震重要施設に基準地震動による地震力よりも相応の余裕をもって設計や規制が行われ、また、設計上や規制上の終局耐力を超えたとしても実際の終局耐力に収まっていれば、基準地震動を超過しても、即座に耐震重要施設が損傷することにはならない。・・・』としている。」と主張する。
換言すれば、具体的な耐震設計上の安全余裕として、①規制上の安全余裕、②設計上の安全余裕、③施工上確保される安全余裕があり、実際の終局耐力に収まっていれば,基準地震動を超過しても即座に耐震重要施設が損傷するということにはならないという主張である。
しかし、上記①及び③については、材質や寸法のばらつき、溶接や施工、保守管理の良否といった諸々の不確定要素を考慮して、やむを得ず設けられる「余裕」にすぎない。逆に言うと、いかに品質管理を尽くしても、溶接や施工、保守管理の不備等の不確定要素がこの「安全代」によってすべて補われるとは限らない。溶接や施工、保守管理の不備による種々の事故・事象は、日本の原発でも頻繁に報告されている。
例えば、1991年2月9日、関西電力美浜原発2号機で蒸気発生器細管がギロチン破断するという炉心溶融に至りかねない危険な事故が起きている。この原因は、腐食と疲労、金具がきちんと挿入されていなかったことが重なったものと判明している 。製造時の品質管理も、稼動以後の保守管理も、人間が行うものであるため完璧ではあり得ない。
また、応答解析を行う際には建屋や地盤をある程度単純なモデルにする必要があるが、モデル化に伴う誤差も避けられない。さらに、原子炉の運転に伴い、原子炉圧力容器、蒸気発生器、各種配管等には温度差による熱荷重が繰り返しかかるが、これを解析するにも不確定性が伴う。前記②の余裕についても、こういった不確定要素によって食い潰されてしまうかもしれない。
しかも、現在適合性審査が行われている原発を含む日本の原発は、元々、現在の水準よりかなり低い設計基準地震動で設計されている。その後たびたび基準地震動を超過する地震動が観測される等して、基準地震動は段階的に引き上げられ、それに伴い安全余裕は着実に削られてきた。福島第一原発事故後には、事業者において配管を固定する等の弥縫策的な耐震補強を行っているところもあるようだが、初めに低い基準地震動で建設された原発の耐震安全性を抜本的に見直すことは不可能である。これまで基準地震動を超える地震動を観測しても、地震動によって大事故が発生したと明確に確認されている事例は今のところないが、それは前記のような不確定要素がたまたま安定していたに過ぎない。着実に安全余裕が削られている実態からすれば、次に基準地震動を超過すれば大事故につながるおそれがあると考えるべきである。

2 「(2)残余のリスクに係る主張に対する反論」に対して
被告中部電力は、「新規制基準においては、『仮に、基準地震動を超えるような地震が発生し、重大事故等が発生した場合においても、これに対処するための設備を整備するとともに、関連する手順書、体制を整備することを求めています』としている(乙E第6号証別紙2第7頁)」とした上で、「このように、新規制基準においても策定された基準地震動を上回る強さの地震動が生起する可能性を考慮した対応が求められており、『残余のリスク』に関する具体的定めが存在しないからといって、新規制基準が不合理であるとはいえない。」とする。
しかし、新規制基準では「これに対処するための設備を整備するとともに、関連する手順書、体制を整備することを求めています」としかなく、これは、「具体的な定めが存在」するとは言い難い。            以 上

11:16 原告・佐野弁護士から準備書面(25)の要旨を説明(以下、準備書面をそのまま掲載する)。
本書面では,被告中部電力の準備書面(10)のうち,「(6頁から9頁)設計基準事故対処設備における共通要因故障の防止に係る主張に対する反論」に対する主張を述べる。
被告中部電力は、原子力規制委員会の「考え方」に沿った主張をし、それに反する原告らの主張には理由がないと結論付けている。
以下では、被告中部電力が寄って立つところの原子力規制委員会の「考え方」の該当箇所を整理し、反論を加える。

共通要因故障に起因する設備の故障を防止する考え方
○設計基準対象施設(設置許可基準規則第2章)における,共通要因に起因する設備の故障(共通要因故障)に対する基本的な考え方はどのようなものか。
○設計基準対象施設(設置許可基準規則第2章)における設備の偶発故障に対する対策はどのようなものか。
○設置許可基準規則における共通要因に起因する設備の故障(共通要因故障)に対する考え方はどのようなものか(外部事象関係)。
○地震や津波などの外部事象によって,安全機能を有する系統が多数同時に故障することを想定し,安全機能を損なうおそれのない設計を求めないのは不合理ではないか。
○「単一故障の仮定」の考え方とはどのようなものか。

【原子力規制委員会の考え方の要旨】 乙A2号証104頁以下
1 設備の偶発故障に対する対策
(1)設置許可基準規則第2章は,安全施設に対し,安全確保のために必要な機能の重要性に応じて十分に高い信頼性を確保し,かつ,維持し得る設計であることを要求するとともに,重要度の特に高い安全機能を有する系統については,その構造,動作原理及び果たすべき安全機能の性質等を考慮して,多重性又は多様性及び独立性を備えた設計であること,また,その系統を構成する機器等の単一故障が発生し,かつ,外部電源が利用できない場合においても,その系統の安全機能が達成できる設計であることを要求することにより,複数の設備が同時に故障し安全機能が失われることがないよう設計することを求めている。

(2)「単一故障の仮定」の考え方は,安全機能を有する系統のうち,安全機能の重要度が特に高い機能を有するものについて,多重性又は多様性の要件を満たすかを確認するための解析手法であり,評価すべき系統の中の一つが原因を問わず故障した場合を仮定し,その場合でも当該系統が所定の機能が確保できることを確認するものである。

(3) 設備は,高度の信頼性が求められることから,偶発故障を引き起こすこと自体まれであり,かつ,想定される環境条件及び運転状態において,物理的方法又はそのほかの方法によりそれぞれ互いに分離することが求められることから,共通要因や従属要因によって複数の設備が同時に偶発的に故障を起こすことは極めてまれであるといえ,設計基準としては,単一の設備故障のみを考慮すれば十分な安全性を確保できる。

2 外部事象による故障に対する対策
設置許可基準規則第2章においては,想定すべき外部事象を起因として安全機能が喪失することがないように設計することを要求している。すなわち,共通要因による故障の原因となることが予見される自然現象等をも含めた設計上の考慮を要求している。
したがって,地震や津波などの外部事象に対しては,安全機能を有する構築物,系統及び機器が多数同時に故障することを条件として評価を行うことを要求していないとする設置許可基準規則の体系に不合理な点はない。

【反論】
1 福島第一原発事故の教訓:設計段階における共通要因故障の配慮が足りなかったこと
(1)「考え方」が述べるとおり新規制基準は,偶発事象による故障及び外部事象による故障のいずれについても,設計基準として,外部電源の喪失を除き,共通要因故障を想定していない。
しかし,福島第一原発事故のような深刻な災害が万が一にも起こらないようにするためには,設計基準においても,共通要因故障による複数同時故障を想定すべきである。
(2)まず,東京電力は,福島第一原発事故の原因の一つが外的事象を起因とする共通要因故障防止への設計上の配慮が足りなかったことにあることを認めている 。
また,新潟県の柏崎刈羽原発においても,2007年の中越沖地震によって3000箇所以上の設備の同時損傷が発生していた 。
(3)IAEA安全基準「原子力発電所の安全:設計」 の「5 全般的発電所設計」「要件24 共通原因故障」は,「設備の設計は,多様性,多重性,物理的分離及び機能の独立性の概念が,必要とされる信頼性を達成するためにどのように適用されなければならないかを判断するため,安全上重要な機器等の共通原因故障の可能性について十分に考慮しなければならない」と規定している。
設計において共通要因故障を考慮することが,国際的に求められている。
(4)原子力規制委員会の発電用軽水型原子炉の新安全基準委関する検討チームにおいて,第2回会合で配布された資料2-3「設置許可基準(シビアアクシデント対策規制に係るものを除く)の策定に向けた検討について別紙個表」 の「④要求事項の抽出に向けた整理(信頼性,試験可能性)」では,福島第一原発事故の教訓として,
・設計上の想定を超える津波により機器等の共通要因故障が発生
・非常用交流電源の冷却方式,水源,格納容器の除熱機能,事故後の最終ヒートシンク,使用済燃料プールの冷却・給水機能の多様性の不足が指摘され,設計基準で検討すべき論点として,現行の「多重性又は多様性」としている要求の「多様性」への変更の要否の検討が掲げられている。
そして,同検討チーム第4回会合において配布された資料2‐3「多様性の適用について」 における「多様性の適用に係る考え方の整理案」では,以下のように整理されている。
・これまで,多重性又は多様性が要求される重要度の特に高い安全機能を有する系統は,基本的に多重化による対応がとられていると考えられる。
・東京電力福島第原子力発電所事故から,設計基準を超える津波に対する最終ヒートシンクの喪失等の特定の機能喪失モードに対しては,位置的分散による独立性の確保だけでは不十分であり,代替電源設備(空冷ガスタービン発電機),代替ヒートシンク設備(フィルターベント)などといった多様性を備えた代替手段を要求する必要がある。
・したがって,多重性又は多様性を選択する際に,共通要因による機能喪失が,独立性のみで防止できる場合を除き,その共通要因による機能の喪失モードを特定し,多様性を求めることを明確にする。
このように原子力規制委員会の発電用軽水型原子炉の新安全基準に関する検討チームにおいては,設計基準対象施設について,共通要因を考察し,多様性を必要とするものには多様性を求めることと整理されていた。
(5)以上のとおり,東京電力は,福島第一原発事故の原因の一つが共通要因故障防止への設計上の配慮が足りなかったことにあると認めている。また,IAEA安全基準においても,福島第一原発事故の教訓を踏まえて新規制基準の検討を行っていた検討チームにおいても,設計基準対象施設について共通要因故障を考慮することを求めている。
しかし,現行の新規制基準は,その規制上の要求が欠けており,福島第一原発事故の教訓が生かされていない。

2 偶発故障が一度に1つしか起こらないという保証はどこにもないこと
(1)「考え方」は,偶発故障は1つの原因から1つしか起こらず同時に複数は起こらない(単一故障)と仮定し,想定した1つの故障によって安全機能が失われないかどうかを評価するとする(単一故障の仮定)。
しかし,偶発故障が一度に1つしか起こらないという保証はどこにもない。
(2)日本の原発でもこれまでに多数の偶発故障が発生している。偶発故障 の結果国際原子力事象評価尺度(INES)のレベル2相当に該当する事故に至ったものとして,例えば,以下の①ないし⑦の事故がある 。
①再循環ポンプの水中軸受リングが破損し脱落,炉心に30~33キログラムの金属粉が流出した事故(1989年1月1日,福島第二原発3号機,BWR)
②主蒸気隔離弁を止めるピンが疲労破断し,弁体が弁棒から脱落して主蒸気管を閉塞,原子炉圧力が上昇して中性子束高に至り,原子炉が自動停止した事故(1990年9月9日,福島第一原発3号機,BWR)
③蒸気発生器伝熱細管の1本が完全に破断し,約55トンの一次冷却水が漏洩して,非常用炉心冷却装置(ECCS) が作動した事故(1991年2月9日,美浜原発2号機,PWR)
④タービン駆動給水ポンプのうち1台の流量の制御にかかる誤信号が発信され,駆動用タービンの蒸気加減弁が急閉したため原子炉への給水流量が減少し,原子炉給水量が低下して原子炉が自動停止した事故(1991年4月4日,浜岡原発3号機,BWR)
⑤B-蒸気発生器の主給水バイパス制御弁の駆動用空気を制御するブースター・リレー感度調整用絞り弁にシールテープ屑が残留していたため,制御系の特性が変化し,蒸気発生器の水位変動が大きくなり,原子炉が自動停止した事故(1991年9月6日,美浜原発1号機,PWR)
⑥タービン保安装置のリセット機構の掛け金部に動作不良が生じて制御油圧が低下した上,補助油ポンプが自動起動しなかったためさらに油圧が低下し,タービンバイパス弁が閉となって原子力圧力が上昇し原子炉が自動停止した事故(1992年6月29日,福島第一原発1号機,BWR)
⑦定期点検中の弁の誤操作により炉内圧力が上昇し3本の制御棒が抜けて臨界となり,スクラム信号が出たが制御棒を挿入できず,手動で弁を操作するまで臨界が15分間続いた事故(1999年6月18日,志賀原発1号機,BWR)
(3)INESのレベル1とされた事故はさらに多く,近年の統計だけでも,偶発故障によるレベル1の事故は,以下のとおり35件報告されている。

1992年
蒸気発生器伝熱管からの漏えい 1件
高圧復水ポンプ電源盤の復帰操作の誤り 1件
原子炉高圧注水ポンプのタービン入口弁モーターの焼損 1件
1994年
原子炉核計装系の定期試験手順書の不備による原子炉自動停止 1件
1995年
復水スラッジ分離水の逆流によるスクラム排出容器の水位上昇 1件
蒸気発生器細管の応力腐食割れ等 1件
1996年
誤操作による内部故障リレーの作動 1件
化学体積制御系統配管からの漏洩 1件
1997年
制御棒1本が挿入動作せず 1件
制御棒1本が引抜き動作せず 1件
1998年
原子炉停止操作中における中性子高に伴う原子炉自動停止 1件
1999年
再生熱交換器の高サイクル熱疲労 1件
2001年
蒸気配管の曲がり部破断による蒸気漏洩とHPCIの自動停止 1件
2002年
炉心シュラウドのひび割れ 4件
再循環系配管のひび割れ 6件
2004年
2次系配管の破損 1件
2006年
ハフニウム板型制御棒のひび等 3件
2007年
非常用ディーゼル発電機2台の動作不能 1件
2008年
高圧注水系と原子炉隔離時冷却系の運転上の制限逸脱 1件
制御棒駆動機構と制御棒の結合不良 1件
気体廃棄物処理系の希ガスホールドアップ塔の温度上昇に伴う
原子炉手動停止 1件
2009年
操作していない制御棒1本の挿入 1件
非常用ディーゼル発電機2台の待機除外 1件
管理区域内での放射性廃液の漏洩 1件
2012年
非管理区域での放射性物質による汚染の確認 1件
(4)さらに,INESで評価されていないかまたはレベル1未満とされた事故の中には,誤操作による制御棒の引き抜け事故が,1978年から2000年までの間に10件あり,うち1978年の1件は,志賀原発でのレベル2の事故(上記⑦)と同様,臨界に達している 。
(5)2013年版原子力施設運転管理年報 「表XⅣ‐1‐11原子力発電所における事故故障等の原因」(273頁)によると,1966年から2012年までの事故の総件数758件のうち「外部要因」(24件),「その他」(55件)及び「原因不明調査中」(5件)を除いた674件が偶発故障として報告されている。
また,同年報の「表XⅣ‐1‐4原子力発電所における事故故障等報告件数」(274~277頁)によると,原子炉1基当たりの事故故障等報告件数は,1993年から2010年まで17年間にわたり0.3ないし0.4であり事故割合は減っていない。1990年代以降もコンスタントに事故が発生していることが分かる(なお,2001年から2003年は0.2に減っているが,これは2000年に東京電力による修理記録改ざんが内部告発されたことを契機に定期検査期間が長期化して設備利用率(稼働率)が大幅に低下したことによるものである 。また,2011年と2012年が0.1に減ったのは福島第一原発事故により全原発の稼動が停止したためである。)。
(6)国外の原発では,スリーマイル事故(レベル5)やチェルノブイリ事故(レベル7)のように外部事象にも内部事象にもよらないで発生した過酷事故があるほか,チェルノブイリ事故以後2006年までの約20年間だけを見ても,偶発故障により発生したレベル2~3の事故はBWRで約100件,PWRも同様に約100件あると報告されている 。レベル1の事故を加えると,さらにその数倍以上の件数があると考えられる。
(7)以上のように偶発故障による事故は決して無視できるレベルの数・割合ではない。
「考え方」は,異常影響緩和機能を有する系統の設備は「偶発故障を引き起こすこと自体まれ」であると述べる。しかし,上記アないしウの事故の中には,①「止める」機能を阻害する制御棒のトラブル,②「冷やす」機能を阻害する蒸気発生器電熱細管の破断・トラブル,高圧注水系・原子炉隔離時冷却系のトラブル,炉心シュラウドのひび割れ,再循環ポンプ・同配管のトラブル,非常用ディーゼル発電機のトラブル,③「閉じ込める」機能を阻害する主蒸気隔離弁のトラブル,再循環系配管のひび割れ等,異常影響緩和機能を有する系統の設備の偶発故障が30件以上報告されている。これらの故障の頻度は,「まれ」とはいえない。
また,上記⑵⑥の事故では,○aタービン保安装置のリセット機構の掛け金部に動作不良が生じる故障に加えて,○b補助油ポンプが自動起動しないという故障も重畳している。偶発故障が同時に生じたのである。これは異常影響緩和機能を有する系統の事故ではないが,安全性・信頼性が要求される原発において現に偶発故障が複数同時に生じたことは重大である。
まして,運転開始後40年を経過した原発をさらに延長して稼動させるときは,偶発故障の頻度はさらに上がることが予想される。
そうすると,原発の安全性を確保するためには,設計基準において偶発故障の複数同時発生を想定し,それによっても安全機能が失われない対策を立てるべきなのであり,単一故障の仮定をもって安全評価を行うことは不合理である。

3 福島第一原発事故の調査・分析を行った複数の事故調査委員会も単一故障の仮定による評価の不十分さを指摘していること
(1)国会事故調報告書は,福島第一原発事故以前の安全審査指針類の「内容が不適正」であったと指摘した上で,「十分に原子炉の安全性が確保されてこなかった」例として,「発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査指針では,安全性を検討するために想定する『事故』を,原因が原子炉施設内にある,いわゆる内部事象,かつ,機器の単一故障によるものと仮定している。」ということを挙げている 。
(2)また,政府事故調報告書は,「IAEA等の国際基準の動向も参照して,国内基準を最新・最善のものとする普段の努力をすべきである」と指摘している 。
前記のとおりIAEA安全基準「原子力発電所の安全:設計」(SSR-2/1)の「5 全般的発電所設計」「要件24 共通原因故障」 は,「設備の設計は,多様性,多重性,物理的分離及び機能の独立性の概念が,必要とされる信頼性を達成するためにどのように適用されなければならないかを判断するため,安全上重要な機器等の共通原因故障の可能性について十分に考慮しなければならない」と規定し,設計において共通要因故障を考慮することを求めている。
政府事故調も,共通要因故障の可能性を十分に考慮した設計を求めたものと解される。
(3)さらに,政府事故調のメンバーであった淵上正朗らの解説書「福島原発で何が起こったか 政府事故調技術解説」は,福島第一原発事故の調査分析を踏まえ,同様の事故を防止するために考えておくべき事項について,以下のように指摘している 。
“あり得ることは起こる”と考えることである。
重大なものを考え落としなく見つけるには,あり得ることは起こると論理的に考えることである。論理的に考えればあり得るが,実際にはまだ起こっていないことは世の中にはたくさんある。さらに,“あり得ると思うことができないようなことさえ起こる”というところまで考える必要がある。
人間は,何かを真剣に考えようとするとき,考えの範囲を決めてその中を子細に考えようとする。しかし,一度その範囲を決めてしまうと,その外側についてはまったく考えなくなる。考えないということは当然,何も対策を打たないということである。
あり得ることは起こると考えること,すなわち偶発故障の複数同時発生を想定し,設計基準をたてることが必要である。
(4)また同書は,ボイラー,鉄道,自動車,航空機等の技術の発展の歴史から,一つの産業分野が十分な失敗経験を積むには200年かかるとの考えを示し,それらの技術に比べて原発はまだ60年が経過したに過ぎない未熟な技術であることを指摘する。
人類は,ヒューマンエラーによるスリーマイル事故,設計思想の誤りによるチェルノブイリ事故,自然災害による福島第一原発事故を経て失敗経験を積んだが,懸念される事故原因がまだ残っている。同書はその例として,テロなどの人間の悪意による事故に加え,「偶然の重なり」を挙げる 。偶然の重なり,すなわち偶発故障の複数同時発生を今こそ想定し,設計基準に反映しなければならない。

4 想定を超える外部事象が発生することも考慮した設計を行う必要があること
「考え方」は,共通要因による故障の原因となることが予見される自然現象等をも含めた設計上の考慮を要求しているから,地震や津波などの外部事象に対しては,安全機能を有する構築物,系統及び機器が多数同時に故障することを条件として評価を行うことを要求していないとする設置許可基準規則の体系に不合理な点はない旨述べる。
しかし,低頻度・大規模自然災害の脅威と科学の限界という厳然たる事実を真摯に受け止めた規制を行わなければ,第二の福島第一原発事故の発生を防ぐことはできない。想定を超える外部事象が発生することも考慮した設計を行わなければならない。新規制基準における外部事象の評価は過小となり,かかる想定を超える外部事象が発生する可能性は十分にある。
したがって,設計基準として,共通要因故障を想定していない新規制基準は,不合理というほかない。

5 まとめ
以上のとおりであり、原子力規制委員会の考え方こそが正しいと して反論する被告中部電力の主張こそが不合理である。 以上

11:24 裁判長;工事に関して中電から説明を。
被告・中電;安全性付帯工事 4号機のカメラの設置、雨水対策工事、非常用電源工事。HPで公表。3.5号機については付け加えることなし。適合審査は、地盤・地質等で3回の審査が行われた。

11:25 裁判長;今後について。
原告;どの論点かはこれからだが、被告の主張に対する反論をしたい。
被告;さらに反論したい。
裁判長;それぞれ、期日までに準備してほしい。次回は、9月28日(金)11:00~ 一号法廷で。       11:30終了

11:35 地域情報センターで報告集会
司会・ 落合勝二;司会の落合です。最初に口頭弁論について、阿部弁護士からお願いします。
阿部弁護士;原告、被告双方からの主張がされた。原告は準備書面(24)(25)を提出した。

青柳弁護士;準備書面(24)について、簡単に説明する。
被告は、基準地震動を超える地震動の発生する可能性は極めてまれで、繰り返し発生する事態はほとんどなく、仮に地震が起きても余裕をもって設計や規制を行っているので、原告らの主張には理由がないとする。しかし、このような被告中部電力の主張は、地震動の予測の不確かさを軽視し、さらに原子力発電所施設の耐震安全性をも過信したものであり、合理的理由にならない。どの点が理由にならないかを4点で主張した。
①地震の予測が困難。近年の地震は、予想を超える「想定外」の繰り返しである。
②被告の主張には「極めてまれ」がたびたび出て来るが、これは「もしかしたらあるかもしれない」ということだ。「極めてまれ」という表現は、基準地震動を超過することを許容しているのではなく、旧指針のでは「いかなる地震に対しても対応する」の意味である。
③被告は繰り返し発生しうる大地震は起こらないと言うが、熊本地震では起きた。事実で反論した。
④安全余裕への過信が被告になる。被告は基準に基づいて設計しており、安全のために余裕を持たせているというが、人間のミス、目が届かないリスクを吸収するための余裕であって、基準地震動に対する余裕ではなく、見当違いだ。
次に、被告の「残余のリスクに係る主張に対する反論」で、規制基準で、これこれのことを言っていると言うだけで、具体的なことは何もしていないと指摘した。

11:44 佐野弁護士;準備書面(25)について、法廷で説明したとおりだが、一つの事故があった時に、同時に施設が止まってしまう点について。規制委員会の考え方では、そうならないように設計しているから、そういうことはないと言う。偶然的な事故もまれだと。同一事故では一つの故障という考え方。
外部事故に対しても、それに耐えられるように設計していると言うだけ。その考えで失敗したのが福島の事故だと分かりやすく指摘した。単一事故と言うが、過去に複数の事故例をあげて反論した。
重要な言葉として、政府事故調のメンバーの解説書からの引用を載せた。
「“あり得ることは起こる”と考えることである。重大なものを考え落としなく見つけるには,あり得ることは起こると論理的に考えることである。論理的に考えればあり得るが,実際にはまだ起こっていないことは世の中にはたくさんある。さらに,“あり得ると思うことができないようなことさえ起こる”というところまで考える必要がある。
人間は,何かを真剣に考えようとするとき,考えの範囲を決めてその中を子細に考えようとする。しかし,一度その範囲を決めてしまうと,その外側についてはまったく考えなくなる。考えないということは当然,何も対策を打たないということである。」
福島原発事故からの教訓だ。7年経過しての現実なので、福島のことを改めて考えたい。

11:48 阿部弁護士;被告の主張は、津波対策は十分やっている。22mの防波壁で十分だ。たとえ浸水してきても浸水防止の扉が付いているから大丈夫だ。電源政策では、原発は必要だと主張した。
原発の裁判では、伊方原発の広島高裁の仮処分決定で勝った。地震で勝たせてくれたのではなく火山の火砕流のことで勝った。玄海原発では負けた。大間原発の函館での裁判は、建設途中で規制委員会でのOKが出ていないので、いまは危険性がないとして、逃げた形だ。
ミサイル攻撃に限っての仮処分の裁判では、北朝鮮のミサイル攻撃を前提にしたもので、政府の反撃があっても、万が一にも当たる可能性はないというもので、危険性はないとして却下した。
東電の経営者への刑事裁判は、津波対策に関する内部の意見が上がっていたということが裁判で明らかになっている。重要な裁判だ。

11:53 司会;何か意見や質問があればどうぞ。
参加者;使用済核燃料のことは、何もなかったが。

大橋弁護士;すでにこちらの書面では、何回も主張している。被告は核燃料サイクルで使用済み核料はまだまだ使えると相も変わらず主張する。資源のない国では原発はまだまだ必要だと主張する。
阿部弁護士;使用済み核燃料の危険性や、最終処分後の保管のことは、今日はやっていない。
塩沢弁護士;訴状ではすべての論点で争っている。訴状の中身では、原告・被告相互にやり取りしている。原告は準備書面が(25)まで。被告は準備書面が(15)まで出している。たくさんの論点でやり取りしているが、いまどうなっているかが分からなくなっている。一度論点整理して全体像が分かる工夫は必要だ。いずれ論点整理を裁判所が行うが、そろそろ原告もそれをやる必要があると思った。

11:57 司会;膨大な資料でやりとりしているから、整理する必要があるという発言だと思う・
林(県の会代表);今、塩沢弁護士の言う通りで、弁護団・原告団会議でも話されている。今日の二人の弁護士の論点は明確でよかった。これまで大橋弁護士が言っていたとおり、法廷外の運動が重要だ。今年、静岡市の金曜アクションは300回を超えた。いろんな人が出て、マイクを握っている。リニア新幹線のことも林県評議長とも一緒にやっているが、JR東海は資料を出してくれない。かつて中電も、1970年代は一切資料を出さなかった。JR東海は、企業秘密だとして出さない。南アアルプスの地下で事故が起こると、リニアから地上までは1.4kmもある。事故の時、どういう方法で避難するのかは決まっていないと言う。唖然とした。

12:02 塩沢弁護士;今日の赤旗しんぶんで、元裁判官の井戸謙一弁護士の記事が出ていた。ぜひ読んでほしい。個々の論争よりも、全国の裁判を通しての感想が語られている。記事を紹介すると、「3/11の前は、原発は必要だということでの裁判所の判断があった。今は、判決の中では、原発は必要だという前提には立っていない。裁判所に勇気を与えることが必要で、そのための運動が大切だ」と言っている。

12:05 司会;福島の生業訴訟のことの報告を鈴木雅貴弁護士にお願いします。

鈴木弁護士;磐田市出身。研修で福島に行った。それから5年(以下は、当日配布されたレジュメ「生業訴訟の到達点と今後の展望」生業弁護団 弁護士鈴木雅貴(あぶくま法律事務所)をもとに紹介)。

1.「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟の紹介
 (1) 原告数
県内59市町村のすべてに原告がいて、最初は800人から。提訴時には4340名に。
(2) 裁判で求めている3つの内容
・国と東京電力の加害責任を明確にすること~「想定外」の事故ではない。
被告はいまでも「想定外」という。これでは同じ過ちを繰り返すことになる。国と東電の責任を絶対に明らかにすることが重要。
・事故前の地域に戻すこと~除染・原状回復
・事故により平穏な生活を奪われた心の苦しみ~慰謝料請求
被害の切り捨ては許さない。
(3) なぜ集団訴訟を起こさなければならなかったのか
・加害者(国と東電)が、被害者と賠償額を一方的に決めた。
一方は賠償する、他方では賠償しないと、被害者を分断する政府・東電の対応。
・被害者同士の不和を乗り越え、お互いの置かれた状況を理解する必要性。

2.10月10日生業訴訟判決で明らかになったこと(4年7か月のたたかい)
(1) 「想定外」の津波(約15m)による事故ではない。国と東電の責任を明確にした。
ア 裁判所の判断
国と東電は、2002年中に約15mの津波は予見可能であり、8年間も津波対策を行う猶予期間があった。
裁判所は、2002年7月の地震本部による「長期評価」を重視した。 
イ 「長期評価」とは
「長期評価」は、福島県沖を含む三陸沖から房総沖において、今後30年以内にM8クラスの大地震が起きる確率を20%と評価した。
 → 国と東電は「長期評価」を無視したが、裁判所は「長期評価」の信頼性を認め、直ちに福島第一原発に来襲する津波の試算を行い、必要な津波対策を取るべきであったと判断した。
ウ 小括
福島第一原発は、2003年1月から2011年3月まで、8年間も津波に対する安全性を欠いた状態(=違法操業状態)で運転されてきた。
(2) 年間20ミリシーベルト(毎時3.8マイクロシーベルト)の被ばくでは被害は発生しないという東電の主張が排斥された
ア 酷い!東電の主張(年20ミリシーベルト受忍論、支払い済み)一か月10日過ぎれば賠償しないと。
イ 原告の主張~平穏生活権の侵害
ウ 裁判所は国の賠償指針を上回る慰謝料の支払いを命じた。
・自主的避難等対象地域(23市町村)の大人…16万円(額は少ないが)
      (対象となり得る住民数は約120万人)
・県南(9市町村)の大人…10万円
(対象となり得る住民数は約12万人)
(3) 小括
生業訴訟により、国と東電の加害責任が明らかとなり、大多数の原告に慰謝料の支払いが認められた。
生業訴訟は、10月23日、当事者全員が控訴したことにより、第一陣の訴訟は控訴審に移った。第二陣の訴訟(2016年12月提訴)は、引き続き福島地裁で審理。
生業原告団・弁護団は、引き続き原発事故被害の全体救済を目指し、法廷内外でのとりくみを活発に行っていく。

3.県民運動を作り上げるために必要な視点
 (1) 賠償請求(生業訴訟)は福島の復興にどのように役に立つのか?
ア 問題意識 住民の感情(復興と言われても…。風評被害が気になるから…。)
風評被害を引き起こすという意見が出て来るが、そういう人も被害者の一人。もう被害は受けたくないと。原発被害者の中で健康な人は立ち上がれるが、健康を害している人は、立ち上がれない。その人のことも考えてくださいと説得している。
イ 賠償請求と現状の復興の得意分野・苦手分野を自覚すること
・賠償請求(生業訴訟)は、マイナスをゼロにするとりくみである。
得意…被害住民の心の苦しみを癒し、原発事故後、前を向いて歩きだすことのできなくなった被害住民に、前を向くきっかけを与える。
国の責任を明らかにし、被害者救済の施策を実現させる。
・現状の復興は、地域を維持発展させ、プラス成長を目指すとりくみである。
苦手…賠償請求(生業訴訟)の得意分野がそのまま苦手。
たとえば、立派な道路ができても、被害住民の心の苦しみは癒されない。
ウ 賠償請求と現状の復興も、いずれも福島の復興に必要であるという相互理解が重要。
(2) 追加提訴の重要性
裁判は大変で苦しいけれども、被害の全体救済のためには、原告団の輪をさらに広げる必要がある。目指せ!1万人訴訟。
(3) 原発ゼロへ
・許しがたい東電の柏崎刈羽再稼働に向けた動き~賠償のための再稼働
モラルとしてもあり得ないこと。乞食の思想には立たない。「金さえもらえば出所は問わない」とはしない。名誉の問題だ。
・ふるさとに原発は要らない
福島の事故を繰り返さない。全国各地の裁判は地元の励ましにもなっている。

12:25 司会;いろんな原発の裁判が起こっている。とりくみのき強化が大切。広島高裁仮処分の原告の人から団結していこうと。交流をしていきたい。
鈴木弁護士の今の話への質問はありますか。私は郡山の視察に行った。原発による子どもの被害に対して郡山市が130億円の予算をかけて真剣にとりくんでいた。それを東電に請求し、1%、1.3億円を支払わせた。郡山市の除染では700億円かかった。全額東電に支払わせた。
小泉元首相らの原発ゼロ法案が出され、さらに野党4党共同提案の原発ゼロ法案も出た。小泉元首相は、6月5日に浜松に来る。アクト大ホールでの入場整理券(20枚)があります。皆さんどうぞ。
次回は、9月28日(金)11:00~。月曜日ではなく金曜日。
                                       12:30 終了
                                        (文責;長坂)
 


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浜岡原発永久停止裁判 第23回口頭弁論
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