2022.7.25 浜岡原発第33回口頭弁論

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2022.7.25 浜岡原発第33回口頭弁論    
原告から準備書面(37)の説明。

富増弁護士;準備書面(37)の内容の説明。札幌地裁は、2022年5月31日、泊原発の運転差し止めを認める判決を下した。準備書面(37)では、この札幌地裁の判決の紹介および評価を行う。

第一に、審理継続を相当としなかったこと。北海道電力の、原子力規制委員会の審査を待って主張するという主張を排斥し、原告は、主張立証は尽くしたとして、審理の終結を求めている。本件では、長期間が経過しても、被告の主張立証を終える時期の見通しが立っておらず、審理の継続は相当でないと判断し、判決をしている。
北海道電力の主張立証の遅滞を厳しく指弾する判決であり、北海総電力にとっては、自ら招いた差し止めと言わざるを得ない。
今回の札幌地裁判決は、行政の判断とは別個に司法の判断は可能であることを示した。

第二に、安全性を主張立証する責任は、実質的には被告にあること。
原子力発電所が原子力規制委員会の策定した基準を満たすか否かについては、当該原子力発電所を保有し運用する被告において知見や資料を有することから、それらに基づいて、主張立証する必要があるというべきであり、被告がこれを尽くさなければ、当該原子力発電所が安全性を欠き、周辺住民の人権侵害のおそれがあることが事実上推定される。
札幌地裁判決は、説明責任を公平に分担させたものと評価でき、このような枠組みは、全国の原発訴訟において原告が主張してきた論理が受け入れられたものと言える。
本件浜岡原発訴訟においても、被告らは、自らの原発の安全性にしっかりと主張立証できなければ、原発を動かすべきではない。

第三に、津波問題で初の差し止め判断をしたこと
札幌地裁判決は、津波問題で、「基準津波が敷地の高さを上回るので、津波防護施設の設置が必要になる。被告は、原子力規制委員会の指摘する点について、相当な資料による裏付けをしていない。また、津波防護機能を保持することのできる津波防護施設は存在していない。そうすると、泊発電所が津波に襲われた場合に予想される事故による人権侵害のおそれが推定される。」として、津波問題で原発の安全性を初めて認めなかった。
本件浜岡訴訟においても、基準津波の策定及び最大上昇水位、砂丘堤防及び防波壁の安全性、これら防潮堤の液状化及び洗堀による影響、建屋内浸水防護対策について、被告中部電力は十分な主張立証を尽くすべきである。

第四に、運転の差し止めが認められる原告の範囲
札幌地裁判決は、次のように述べて、差し止めが認められる原告を施設から30km圏内に住む住民に限定した。
「原告の主張する範囲については採用できないが、泊原発で事故が発生した場合、原発から30km以内の範囲に居住する住民に放射性物質による健康被害が及ぶ蓋然性があることを前提に、当該範囲外への避難計画を作成するとされていることから、最低でも、泊原発から30km以内の範囲に居住する住民については、放射性物質による生命・身体の侵害のおそれがあることは明らかである。」

第五に、津波以外のことにも言及している。
この判示は、適切な防災計画がない場合は、それだけで運転差し止めを認めるべきものと判断するものである。このような判断は、東海第二原発についての水戸地裁判決に続く2例目である。
本件浜岡原発訴訟においても、避難計画の適否が大きな争点になっており、避難計画の不備は大きな差し止め理由となる。

阿部弁護士;準備書面(38)令和4年3月18日の原子力規制委員会第1035回審査会合では、前回に続き、H断層問題が審査された。審査会合におけるH断層の議論を紹介する。 
前回の審査会合では、H断層系の評価を、H9断層の活動性の評価で代表させることができるかどうかについて、H9断層の中のBF4地点でのデータの補充が求められていた。中部電力からは追加データの提出があったが、審査で残された問題は、H9断層(BF4地点)の上部にある泥層が12~13万年前に形成された古谷泥層に相当するかどうかという点である。
しかし規制委員会は、BF4地点の地層からは、堆積年代を示す有意な指標(例えば火山灰や花粉)が得られていないので、中部電力の説明では実証がなされていないので、なお不十分だとしている。

中部電力からは準備書面(25)の説明がされた。また安全性向上対策工事の説明。規制委員会の審査(4/15、6/10,7/15)状況の説明がされた。
次回では、原告は津波のことで追加をしたい、被告は安全性について主張したいとし、原告側から被告に対して、規制委員会の審査はどのくらいかかると考えているかを問うと、難しい質問だ、審査を受けている立場では、あとどのくらいかは申し上げる立場ではないとした。
次回の第34回口頭弁論は、2022年12月12日(月)11時~

地域情報センターでの報告集会(11:35~)
司会;落合;大変お疲れさまでした。報告集会を開催します。今日は新しく弁護士さんが登壇され、準備書面(37)の陳述がなされました。富増弁護士からご報告をお願いします。
富増弁護士;準備書面(37)陳述を行いました。今回は泊原発の運転差し止めを認める札幌地裁判決の紹介と評価を行いました(詳しくは、上記の陳述を参照)。
司会;落合;ありがとうございました。続いて阿部弁護士、お願いします。
阿部弁護士;H断層を取り上げました。中部電力は今日の準備書面の中で、H断層のことで解決済みと書いてありますが、全然そうではない。
(続いてH断層の問題点について言及しているが、その内容は上記の陳述を参照)。
  地層の年代を決める方法はいろいろあるようですが、火山灰とか貝の化石とか、花粉とか、年代を特定できるものが出てくれば年代を特定できる。しかし、BF4の層からはそういうものが発見されていない。直接年代を決めるものが発見されていないので、それで中部電力は周りから攻めて、その蓄積で年代を決めようとしているが、その実証が弱いので、ちゃんと調べて、火山灰や花粉などがないか、証拠を示せと規制委員会は求めたが、やっぱりそういうものは出てこない。
ただ出てきたのは、ザクロ石とかの天竜川地形のものだとかが出て、そういうものが出てくるということは、その層が海からできたものだという理屈をたてて、その高さなどを見ていくと、確かに12~13万年前には、そのあたりは海であったと。
規制委員会はそれでは不十分だと。確かに堆積したとは言えても、必ずしも海での堆積とは言えないのではないかと。
  今回の原告の陳述では、規制委員会の見解を紹介しただけで、こちらの見解を示したわけではない。もっとも重要なのは、単に12~13万年前に活動していたかどうかだけでなく、12~13万年前の活動が否定できないものであることが規制基準の要であり、実証責任が問われている。
  それから今日は中部電力の準備書面の中身の説明が向こうの弁護士からなされたけど、何も新しいことはなく、活断層の問題にしても、地震動の問題にしても、津波の問題にしても、過去の主張を紹介しただけで、たいした中身のないものだった。
司会;落合;ありがとうございました。個人的感想ですが、活断層の問題にしても、津波の問題にしても、いよいよ双方の主張が佳境に入ってきたという感があります。
皆さんからのご質問ございましたら、お願いしたいと思いますが、どうでしょうか。
桜井さん、BF4の話も出まして、今日の話を受けて、解説等ございましたら、どうですか。
桜井さん;古谷泥層は12~13万年前にできたと。笠名れき層というのは、10万年前から7万年前くらいまでのもの。だから私たちが主張したように、12~13万年前はずいぶん前だ。笠名れき層の堆積も海だった。上に乗っかっている地層がH9という一番北側の分かっている断層の上にあって泥の地層ですが、その泥の地層が北の方にあるBF1というところでは少し状況が違うのではないかと言われている。BF1 という下のところではずっと地層が深くまで積み重なっている。そこではそれを反映した花粉が発見されている。BF4という少し南のところでは、明確に地層が重なっている。再度堆積したと思われる。
12~13万年前では、BF1とBF4は深さ、高さが同じだった。600mくらい離れているが、同じくらいの高さだ。いまはどうか。13mくらい高さの差がある。この差がいつ生まれたか。10万年前は同じ高さだということが分かっている。いまは13mの差がある。素人考えでは、10万年後から大きな地滑りが続いて起こって13mの差ができたと考えるのが妥当だ。地滑りの後、海面がおおうようになり、そこでまた削られ、再堆積したと考えると非常に納得ができる。10万年前から7万年前にH断層ができたと考えるとよく分かる。発見されている枝分かれの断層と思われるのが8万年前。H9断層の上に笠間れき層が乗っかっていることははっきり証明できるが、それがない。H8の断層が通ったと思われるところでは、笠間れき層を削っていて、中部電力がいま駐車場にしている。その時の資料が本当はあるのではないか。そこのところを丁寧に指摘された阿部先生がよく勉強されていて、いいところを突いたなと。笠間れき層のことに触れるのが私たちにとっての非常に希望だ。
落合;ありがとうございました。私の方から一つ。
桜井;はいどうぞ。
落合;ザクロ石というものが出てきて、天竜川由来のものだと言われているとのことですが、標高50mもあるところになぜ天竜川から流れて来ているのか。
桜井;今の海岸線よりも、ずーと北側に海岸線があった。天竜川から流れてきている。海流で運ばれてきた。海岸線がずっと北にあったので、そこに堆積することは十分にあった。その当時、入り江状態になっていた。そこに天竜川のザクロ石が堆積したことは十分にある。それがいつ運ばれてきたかは証明できていない。だから阿部先生が言われたように、ザクロ石がH9断層にあったからといっても、12~3万年前にできたとは言えない。断層が波に洗われて、一回混ざって堆積したこともありうる。
落合;もう一つ。いまの説明である程度理解はできたが、H9断層と言うのは、東西に走っている1kmくらい北の断層だ。その当時、そのあたりまで海岸線が後退していたという理解でいいですか。
桜井;そこには島のようなものがあったと。名残があると。地層が曲がっていて、お椀を伏せたようになっていて、そこに地滑りがおこり、断層ができ、いま分かっているのがH9。そしてH10、H11がある。BF1と言うところにH11がある。ボーリングをしっかり行っていれば、H9だけでなく、H10、H11も分かったと思う。それから海側にもあと5本ありますね。
落合;ありがとうございました。皆さんの方でいかがでしょうか。いまのことでも結構ですが。
傍聴者1;防護壁のことで、先日の報道では中電は、これ以上やるのは困難だというような方向だと思うのですが、そういうことになると、もう、中電そのものが原発を稼働させる価値はもうないのではないかと私は思う。どれ一つとってもと思うのですが、その辺の正確な情報があれば教えてほしい。
落合;はい。それではそちらの方。
傍聴者2;関連ですが、前回の時、避難計画の問題で、まともなものは多分ないだろう、たぶんできないであろうと。だが必要だと。それは分かるのですが、準備書面(37)の一番最後の「どれ一つとっても安全性に欠ける場合は、人権侵害のおそれが認められる」とあり、その中のひとつに、津波対策のことがあって、先ほど中電の説明の中に、浸水しても大丈夫だと。対策をしているから大丈夫だとして22.7mを認めた。防護壁は22m、そして0.7mを認めた。津波対策ができていないということだ。
中電は防護壁を追加するという。
再稼働に関しても聞きたい。
阿部弁護士;ご存じの通り、福島第一原発が津波でやられたということで、中部電力は津波の高さが出る前に、防波壁の工事に着工した。最初、18mの防波壁を作っても、これで大丈夫だと思っていた。そのあと、南海トラフの巨大地震によって、その程度の津波が起きる。内閣府が19mを出して、それを見た時にかさ上げして22m。
いま規制委員会でやっているのはそうではなくて、津波の高さが22.7mに達する場合があることを認めた。22.7mの津波が起こった場合は、原発は水浸しになる。それに対してどういう対策をとるか。その対策はまだ明らかになっていない。ただ、津波が中に入ってきても、重要な機器は防水していて、中に水が入らないように工事をしているので、それで大丈夫だと。ただそれだけで十分かと言うと、それで大丈夫だとは思っていないと。今回は、中電は22.7mはありうると、自分の方から認めて、それをもとに、防波壁をどうするのか、作り直すのか、さらにかさ上げするのか、そのあたりの議論が出てくると思う。それが終わらないと。
落合;ご質問の方、いかがでしょうか。
傍聴者2;再稼働については?
大橋弁護士;それは分かりません。悪いことも、ときたま、いいことも出るかもしれませんが、我々はしっかりと立証をしていきたい。
落合;津波の問題で、一つだけ発言させていただきます。今度中部電力はいろんな計算をした結果、22.7mの津波がくると。阿部弁護士とも話をしたのですが、津波というのは、もう少し考え直した方がいいのではないか。
津波というのは、津波がじわーと来るのでなく、水平方向に高速で進行してくる。
想定するところ、秒速10mくらいの速度を持った海水が押し寄せてくる。一つの例として、福島第一原発事故の時は、実際津波がどのくらいの高さで来たかというと、最高約40m。これは、スピードを持ってくるのでそこで止まらない。止めようとするとはねあがる。はねあがる高さがどのくらいかというと、福島第一原発事故の時は建屋の倍の高さ、50mの高さになった。
 浜岡原発の場合、22mの防波壁があるから、22.7mの津波がくると70cm超えるということを意味しない。22mの防波壁をおそらく5m以上乗り越える。問題は、乗り越えた時、相当のスピードを持ってきますから、中部電力はせいぜい50cmくらいだというのですが、とてもそんなことではだめだ。
もう一つ、非常に重要なことは、松林がある。砂がある。それを一緒に巻き込んで、大量に敷地内に運びこんで来る。冷却水を取ることが事実上不可能になる。これだけで福島原発の二の舞になる。津波という問題を改めて、我々はしっかりととりくむ必要がある。ところが22.7mの津波があるという立証は正直非常に難しい。いろんなモデルを作っているようですが、それが妥当かどうか、それは私たちには難しい。ただ言えることは、22.7mの津波が来た時に、どのくらいの水位になるか、どのくらいの水量が来るかは、比較的容易に立証できるのではないかと思う。そういうことをもっともっと我々も研究しながら、難しい問題ですが、我々も取り組んでいく。これだけでは済まないよということはご理解いただきたい。
落合;それ以外の問題でも結構ですが、どうですか。
阿部弁護士;22.7mの最大の津波の可能性があるということは、こちらが立証する必要はない。中部電力も規制委員会も最大の津波を決めているので、こちらはそれを前提にしたうえで、それに対する対策を我々も取り組んでいけばいい。
落合;はい、よくわかりました。それ以外にありますでしょうか。
野沢さん(磐田);いま規制委員会で問題になっているのは、先ほどの中電が言う津波22.7mのことは継続審査だとのことですが、活断層の問題と、津波に対する対策とが審査になっているとのこと。規制委員会の審査の問題点を教えてほしい。
阿部弁護士;いま規制委員会で審査しているテーマは、先ほど弁護団も言ったように三つある。地震動の問題と、津波の問題と、活断層の問題。地震動の問題は、細かなこと分かりませんが、ほぼ規制委員会の了解はできた。活断層の問題は、さっき私が報告した通りで、最終的にどうなるかはまだ分からない。津波の問題は、審査はこれからでどうなるかはわからない。どのくらいかかるかも分からない。
地震動の問題、活断層の問題だけでは、どのくらいかかるかは言えても、津波の問題は、どのくらいかかるかは分からない。
落合;はい、よろしいでしょうか、野沢さん。他にありますでしょうか。ご意見がございましたらどうぞ。それでは、大橋先生からよろしくお願いいたします。
大橋弁護士;津波の問題、落合さんがずっと前からやってくれて、東海大学の先生もやってくれて、実験までやってくれた。ただ、その段階でこちら側も阿部先生が言ってくれたように、これから何を問題にするかだ。我々も頑張っていきたい。1~2年の問題ではない。少なくとも5年はかかる。弁護士もこれから頑張って、しっかり立証していきたい。規制委員会の動向も見て、じっくりやっていく。この裁判は長引く。今日も傍聴席に原告の方々が来てくれています。
非常に残念なことが一つあります。皆さん、お聞きになっておられると思いますが、は、山本義彦さん、林弘文さんが死去されたこと、林先生は静岡大学で研究会からずっと原発のことを取り組んでこられた。 私たちも力が抜けたという感じです。(このあと林先生のこれまでの経歴や活動のお話がありました。)
落合;はい、ありがとうございました。林先生におきましては、心よりご冥福をお祈りいたします。
 では、最後に快く原告団長を引き受けてくださった清水さん、ご挨拶をお願いします。
清水;みなさん、ご苦労さまです。いまご紹介いただきました御前崎の清水です。6月の弁護団会議で落合さんから、林先生の体調が思わしくないと言われ、原告団長をという話があり、務まらないとお断りしたが、どうしてもということで引き受けました。私も第一次原告団長として、この裁判では阿部先生をはじめ、多くの皆さんの力をお借りして、これで浜岡原発をなくすことができるのではないかと、誇りをもって闘ってきました。
私も浜岡原発の600mのところに住んでいて、皆さんの力をお借りしながら、必要な情報は皆さんにお伝えしながら、頑張っていきたいと思います。これからもよろしくお願いします。
 次回は、第34回口頭弁論は、2022年12月12日(月)11時~
     (12:20 終了)
                          (文責 長坂)


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