浜岡原発永久停止裁判 第26回口頭弁論  2019年7月1日(月) 概要

hamaoka

2019年08月09日 16:44

浜岡原発永久停止裁判 第26回口頭弁論  2019年7月1日(月) 概要

 裁判長の交代により、更新弁論が行われた。
●原告から、阿部、平野、大橋、各弁護士より更新弁論の説明。
  「第1 福島第一原発の事故をふまえなければならないこと」、「第2 地震の問題」では、各地の原発で基準地震動を超える地震動に見舞われているが、基準地震動は地震の平均値を採っていること、耐震基準は、繰り返しの地震を想定していないことなどの問題点を指摘した。「第3 活断層の問題」では、浜岡原発の敷地内のH断層について、被告中部電力の主張、立証は不十分であることを主張した。「第4 津波」では、被告中電は、当初の18mとした防潮堤を4mかさ上げして22mの防潮堤を建設したが、被告は従来よりも厳しい条件で試算した結果、22.5m(それまでの想定は21.1m)になったと明らかにした。「第5 避難計画の問題」では、段階的避難は絵に描いた餅であること、病人や老人など災害弱者の避難計画も実効的なものはない。地震・津波と原発事故の同時発生の場合は、放射性物質の影響の及ばない地域に避難させるのは不可能であると主張した。「第6 使用済み核燃料の問題」では、現在、浜岡原発に使用済核燃料6564体がプールに存在する。仮に再稼働すればすぐ に最大貯蔵量に達する。このプールが破壊をされると、大量の放射性物質が環境に放出されることになる。使用済核燃料の処分は現在の技術ではできない。「核燃料サイクル」は、六カ所再処理の工場の操業停止、高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉決定により、既に破綻していると指摘し、各項目について、引き続き補充の主張を行うとした。
●原告から準備書面(28)を提出。栗田弁護士が要約を説明した。
「第1.原発をめぐる国内外の動向と差し止め訴訟の現状」では、政府は原発に固執するが、再稼働している原発の老朽化、原発の新設となれば、安全対策費は膨大な金額となり、経済的合理性を欠くことが明らかであり、世界でも原発に経済的合理性がないことは隠しようがない。他方で、再生可能エネルギーのコストダウンが、驚異的なスピードで進んでいる。原発差し止め訴訟の現状は、3・11以降原発の運転差し止めを求めた訴訟で、原告住民側の訴えを認めた判決・決定が出された。しかし司法判断の潮目が変わったと思われたのも束の間、これらの判決や決定は上告審で悉く覆されていった。「第2.原発の安全性と必要性はどう関係するか」では、3・11により原発の安全神話が崩壊したが、今や原発必要神話も崩壊したと主張した。
●中電からは、「本件原子力発電所の安全確保について」、代理人から書面の概要説明があった。
「はじめに」で、原告の主張は抽象的危険性をいうにとどまるものであるとし、「1、本件原子力発電所の安全確保」、「2、地震に対する安全性」「3、津波に対する安全性」の項目で、中電がこれまで主張立証してきた原発の安全確保の概要、最も重要な地震・津波の安全性について説明した。

●次回口頭弁論は、11月20日(水)11:00~ 第一号法廷で行う(月曜日でないことに注意を!)。
                                 
●地域情報センターで報告集会
 法廷での原告の主張・説明内容の解説と、参加者からの質問・意見に対する弁護士とのやり取りがあった。中電と国を被告にしているが、勝利判決を勝ち取るためには、法廷内外での闘いが重要であることが強調された。


浜岡原発永久停止裁判 第26回口頭弁論
2019年7月1日(月)晴れ
10:00 浜松市地域情報センターホールに原告や傍聴者が集まり始めた。
10:30 裁判所内の部屋で傍聴抽選の予定であったが、全員が傍聴できた。

11:00 裁判が開始。
裁判長は川淵健司、右陪審は荒井格、左陪審は丸谷昴資。
 訴訟代理弁護団計22名の弁護団のうち、今日の参加者は10名。
 大橋昭夫、森下文雄、塩沢忠和、杉山繁三郎、阿部浩基、佐野雅則、平野晶規、北上紘生、栗田芙友香、青柳恵仁。
被告側は国と中電の16名。
11:00 裁判長;裁判官の変更のため、弁論更新を行う。また原告から準備書面(28)の陳述、被告・中電より弁論陳述がある。原告から30分、中電より20分の弁論がある。原告から説明を。
 原告・阿部弁護士、平野弁護士、大橋弁護士:更新弁論の説明(ここでは更新弁論をそのまま掲載する)。
(3人の弁護士が分担をして、弁論更新の書面のほとんどを読み上げながら説明を行った)
第1 福島第一原発の事故をふまえなければならないこと。
2011年3月11日に発生した、東京電力福島第一原発の事故から既に8年以上の時間が経過した。しかし、依然として多くの人々が避難生活を余儀なくされており、避難によりこうむった被害の実態に即した賠償もなされず、明日をも知れぬ不安な日々を過ごしている。また、形ばかりの避難指示解除がなされた地域に戻った人々も、かつての豊かなふるさとは失われ、真の復興とはほど遠い状況に置かれている。これらの事実は、ひとたび原発事故が発生すれば、多くの人々の平穏な生活を喪失させ、自然環境を破壊し、長期間にわたり深刻かつ甚大な被害をもたらすことを如実に物語っている。現在、全国で約30件、1万2000人以上の被害者が国や東京電力を相手に裁判闘争を続けている。2017年3月の前橋地裁判決を皮切りに、千葉地裁、福島地裁、2018年には東京地裁、京都地裁、福島地裁いわき支部、2019年には横浜地裁、千葉地裁、松山地裁で相次いで判決が下されている。いずれに判決においても国ないし東京電力の責任が認められている。もはや原発事故は人災である。浜岡原発も他人ごとではない。浜岡原発を廃炉にしない限り福島の惨劇は繰り返される。静岡県内ひいては日本の国土に取り返しのつかない悲劇を及ぼすことは明らかである。人間の知恵と勇気さえあれば原発をなくすことはできるはずである。
第2 地震の問題について 訴状 準備書面(13)
 1 原発は地震に耐えられるように耐震設計をしているが、耐震設計の元となるのが基準地震動である。安全のためには基準地震動を高く設定するのが良いが、そうすると耐震工事に時間と費用がかかるので、事業者は基準地震動をできるだけ低く設定しようとする。そのためこれまで各地の原発で何度も基準地震動を超える地震動に見舞われている。このことにつき、福井地裁平成27年4月14日決定は、「いずれの原発においても、その時点において得ることができる限りの情報に基づき当時の最新の知見に基づく基準に従って地震動の想定がなされたはずであるにもかかわらず結論を誤ったものといえる。本件原発の地震想定が基本的には上記4つの原発におけるのと同様、過去における地震の記録と周辺の活断層の調査分析という手法に基づきなされ、活断層の評価方法にも大きな違いがないにもかかわらず、債務者の本件原発の地震想定だけが信頼に値するという根拠は見いだせない。」と判示している。基準地震動を設定する際には、過去の地震を元にするが、その際、過去最大の地震を参考にするのではなく、多くの地震の平均値を採っていることが極めて問題である。
 活断層の状況から、地震動の強さを推定する方式の提言者である入倉孝次郎教授は、新聞記者の取材に応じて、「基準地震動は計算で出た一番大きな揺れの値のように思われることがあるが、そうではない。」「私は科学的な式を使って計算方法を提案してきたが、平均からずれた地震はいくらでもあり、観測そのものが間違っていることもある。基準地震動はできるだけ余裕を持って決めた方が安心だが、それは経営判断だ」と答えている(甲B22)。つまり、基準地震動を超える地震が起こることはありうるということである。
2 また耐震基準は、繰り返しの地震を想定していない。本震と同程度の前震や余震の発生することは平成28年4月の熊本地震で誰もが知るところとなったが、原発の耐震設計はそのような事態を想定していない。したがって、一度目の地震には塑性変形の範囲内で耐え得たが、余震で破壊されてしまうことが起こり得るのである。
第3 活断層の問題について 訴状 109頁 準備書面(9)
 新規制基準では、原発の耐震重要施設は活断層の上に設けてはならないことが明確にされている。地震に対しては耐震工事で対応できるが、活断層が動いて地盤が変位する場合、有効な対策はないとされている。新規制基準では、活断層を「将来活動する可能性のある断層等」としており、それは後期更新世以降(12~13万年前以降)の活動が否定できない断層等と定義している。浜岡原発の敷地内には海岸線と並行して走る5本の断層がある(H断層)。しかし、現在、敷地内のH断層の上にどのような地層が載っているのかは直接確認できない。そこで、被告中部電力は、原発の敷地外の地層を調査し、敷地内のH断層が12~13万年前以降動いていないことを証明しようとしている。そのためには、敷地外の断層と敷地内のH断層とが同時期に形成されたと言えること、敷地外の断層の上に載る地層が12~13万年よりも前のものでかつ断層によって切られていないことの証明が必要であるが、被告中部電力の主張、立証は不十分である。この点については、補充する予定である。
 なお、本訴訟ではまだ主張していないが、H断層とは別に陸側から海側にH断層と交差する様に走る断層の存在も指摘されている。
第4 津波について
 1 被告中電は、被告が想定する津波に対処すると称して浜岡原発の周囲にT.P(東京湾の平均水面から測った海抜)22mの防潮堤を建設している。T.P 18mとして設計されたものが南海トラフの巨大地震モデル検討会の報告を受け、T.P 19mの津波の襲来を前提として4mのかさ上げがなされたのである。しかし、原告は、津波の遡上効果(津波は山の斜面等においてそのままの高さを保って遡上する性質を持つ)及びその運動エネルギーの大きさからして、浜岡原発周辺で想定される遡上高は30mから40mにも達し、T.P 22mの防潮堤をもってしても、予想される最大の津波を防ぐことができないと主張してきた。これに対し、被告は現状の高さでは越流が生じることのみを認めているところであった。
  ところが、被告は令和元年5月24日、南海トラフ巨大地震で浜岡原発に押し寄せる最大の津波高について、従来よりも厳しい条件で試算した結果、22.5m(それまでの想定は21.1m)になったと明らかにした。これは、原子力規制委員会が昨年12月、さまざまな可能性の検討が必要として、再試算を被告に要請したことを受けてのものである。浜岡原発周辺で想定される津波高はT.P 19mを超える可能性があることはかねてから原告が主張してきたところであるが、従来の被告の試算への疑問が相次いでいる。
2 その他、原告は①津波により浜岡原発の敷地前の砂防堤防は崩壊するおそれがあること、②沖合取水塔から海底の通路(取水トンネル)を通って敷地内の取水槽まで冷却水を運んでいること(これは他に類を見ない構造である)に伴う危険性、③越流により原発敷地が水没してしまい、いかに浸水対策をしたところで建屋等への海水流入を防ぐことなど不可能であること等を主張しており、今後も各主張を補充する予定である。
第5 避難計画の問題について  準備書面(6)、(15)、(18)、(20)、(21)
1 IAEAの深層防護の第5層
  深層防護の第4層はシビアアクシデント対策であるが、シビアアクシデントが起こり、施設外に放射性物質が放出された場合でも、人体への放射性物質の影響を緩和することを目的とするのが第5層である。避難計画は第5層の問題である。
2 日本では、避難計画は事業者の義務ではなく、規制基準にも入っていないが、このこと自体が間違いであり、IAEAの基準は、避難計画の実行可能性、実効性まで事業者に求めるものである。
3 仮にそうではなくとも、IAEAの定めた深層防護の第5層の実効的な避難計画を欠く原発の稼働は、シビアアクシデント発生時に住民を放射線被曝させる具体的な危険性があるものであって許されない。
4 避難計画に実効性はない。
  ア 福島第一原発事故の際のセシウム放出量は1万テラベクレルであるのに対して、全国の避難計画はその100分の1の100テラベクレルの放出量を前提として計画を立てられている。
イ 原子力災害対策指針では、全面緊急事態の場合は、PAZ(原発から5キロ以内)は即時避難開始、UPZ(原発から30キロ以内)は屋内退避となっており、段階的に避難させること想定しているが、人間の心理からして一斉に退避しようとすることは想像に難くなく、段階的避難は絵に描いた餅である。一斉に住民が車で退避しようとすれば道路の渋滞で避難に手間取り、その間に放射線に被曝することは目に見えている。
ウ 病人や老人など災害弱者の避難計画も実効的なものはない。
  エ また地震や津波と原発事故が同時に発生した場合は、道路が寸断されたり、地震で倒れた建物が道路を塞いだり、橋の損壊などで避難予定の道路が使用できなくなることも十分有り得る。浜岡の場合は原発から31キロ圏内の人口は96万人もあり、この人口をすみやかに放射性物質の影響の及ばない地域に避難させるのはおよそ不可能と言える。
第6 使用済み核燃料の問題について
 1 使用済核燃料プールの危険性
(1) 現在、浜岡原子力発電所内のプールには、3号機、4号機、5号機の使用済核燃料6564体が存在する。最大貯蔵量を100パーセントにすると浜岡原発の場合既に87パーセントを貯蔵しており、仮に再稼働することになると残り容量は13パーセントであり、すぐに最大貯蔵量に達する。使用済核燃料は原子炉から取り出され、原子炉建屋の上部にある使用済核燃料プールに保管される。
(2) この保管方法では、地震等により使用済核燃料プールが破壊をされるとプールの水位が下がり、使用済核燃料が冷却できなくなり、水が沸騰を始め、使用済核燃料を冷やす水が全くなくなってしまう。その結果、使用済核燃料は冷却されず、二酸化ウランUO2の粉末を固めたペレットの被覆管のジルコニウムが燃えあがり、プールが破壊される。原子炉建屋の上部にプールがあるから、プールが破壊されれば原子炉も破壊され、大量の放射性物質が環境に放出されることになる。
(3) 東日本大震災における福島第1原発4号機の使用済核燃料のプールは、水素爆発のため、プール下が破壊されて、水位が低下し、大惨事に発展する危険性があったが、偶然が重なって、危機を免れたことが判明している。原発内の使用済核燃料プールは、放射性物質の量からすれば原子炉の何十倍もの危険性を有しながら、特に高い耐震性は要求されておらず、格納容器のようなもので覆われているわけでもなく、むき出しの原子炉といっても過言ではない。浜岡原発は、現在、稼働を停止しているが、東海大地震の震源域の真上にあり、使用済核燃料プールに6564体もの使用済核燃料が保管されている以上、常に地震による危険性を抱えていると言っても過言ではない。
 2 使用済核燃料の処分は現在の技術ではできない。
(1) 原発でウラン燃料を燃やした後の使用済核燃料(核のゴミ、死の灰)は、崩壊熱を出し続け、桁違いに強い放射性物質を発する。原子力発電が始まった当初から使用済核燃料の管理、処分方法が議論されてきたが、現在に至ってもこの問題は解決しておらず、人類や環境にとって大きな脅威となっている。
(2) 今、全国の原発で生み出された核分裂生成物は、広島の原爆の1 1 0万発分を突破していると言われている。核分裂生成物は確認されているものだけでも200種類位ある放射性核種の集合体である。この中には長寿命の核種と短寿命の核種があるが、代表的な核分裂生成物であるセシウム137の半減期は30年で、それが1000分の1に減るまでには300年を要するという。又、長崎原爆の材料となったプルトニウム239の半減期は2万4000年で、それが1000分の1になるまでには24万年も要するという。
(3) この使用済核燃料の毒性をなくす方法は未だ見つかっておらず、使用済核燃料は人類の生活環境から隔離するしか方法はないと言われている。この使用済核燃料をどのように処理するかが人類と環境にとって焦眉の課題である(「トイレなきマンション問題」と言われる)。
処分方法としては2つある。1つは、「直接処分」といわれる方法で、使用済核燃料をそのまま地下深くに埋めてしまうやり方で、現在、オルキルオト原子力発電所の立地するフィンランドのエウラキヨという町にオンカロ(洞穴)と呼ばれる直接処分場が建設されている。もう1つは、わが国で提唱されている「再処理」といわれる方法である。使用済核燃料を3センチメートルから4センチメートルの長さに切断し、それを硝酸で溶解する。ウランと核分裂生成物は硝酸に溶け出し、溶液となる。この溶液に有機物の薬剤を加えて、ウラン、プルトニウムと残りの核分裂生成物が分離される。この残りの核分裂生成物をわが国では「高レベル放射性廃棄物」と呼び、ビーズ玉のようなガラスを溶解炉で溶かし、これをステンレス製の薄い金属容器に入れて固体化する(「ガラス固化体」という)。「ガラス固化体」の表面線量は、ごく短い時間で致死量に達する程、放射能が強い。取り出したプルトニウムはモックス燃料にして高速増殖炉で燃やすことが予定されている。
ガラス固化体は30年から50年保管し、放射性物質から発せられる放射能が少なくなってから最終処分場に指定された300メートル以上の深さの地層に埋設される。ガラス固化体は、長期にわたる管理、隔離処分が必要で、しかも、1万年をはるかに超える期間が必要とされる。このために、国際原子力機関は、「高レベル放射性廃棄物」を地下に埋め捨てにする「地層処分」を勧めている。
 わが国では、2000年に「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」が制定され、原子力発電環境整備機構(NUMO)が設置され、この機関に最終処分地の選定、最終処分場の建設、廃棄物の埋設、管理を委託している。 しかし、政府の旗振りにも関わらず最終処分地の選定は一向に進んでいない。そもそも地層処分が可能になるには、万年単位に及んで安定し、しかも地下水の影響の少ない地層が必要であるが、プレート境界にあって、世界有数の火山国、地震国でかつ雨の多い日本にはそのような適地は存在しない。 使用済核燃料を再処理してプルトニウムを取り出しモックス燃料として高速増殖炉で燃やすという「核燃料サイクル」は、六カ所再処理の工場の操業停止(ガラス固化体の製造失敗)、高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉決定により、既に破綻している。
3 原発稼働と使用済核燃料
原発を再稼働すれば使用済核燃料が増え続け、各地の原子炉建屋内の貯蔵プールは数年で満杯になり、浜岡原子力発電所でも、5,6年で満杯になる。 この一事をしても、原発の再稼働は将来世代に大きな危険を負担させ、現代を生きる者に対しても大きな脅威を与えることは目に見えている。
 4 使用済核燃料と差止めの法理
  以上述べたとおり、使用済核燃料の処分方法はなく、又使用済核燃料を安全に保管する方法はないのであるから、これ以上使用済核燃料を生産する原発稼働が許されないことは明白である。代に生きる人間には、人格権の一内容として、命を後世につなぐ権利があり、後に生まれくる子孫を放射線被曝による健康被害から守るべき権利があると言うべきである。浜岡原発を稼働させることは処分のあてのない使用済み核燃料を大量に生産することを意味し、原告ら住民とその子孫の生存にとって最大の危機になるものであるから、原告らは人格権に基づいて浜岡原発の永久停止、稼働の差止めを求める権利がある。

11:20 栗田弁護士;準備書面(28)の要約を説明した(ここでは準備書面をそのまま掲載する)。
第1.原発をめぐる国内外の動向と差し止め訴訟の現状
1.原発再稼働をめぐる国内の状況と世界の動き

(1) 昨年7月、安倍政権は「第5次エネルギー基本計画」を閣議決定したが、その内容たるや未だに原発を「重要なベースロード電源」とし、2030年度の電源構成中原発を20~22%とするなど、将来にわたり原発に固執している。
しかし、3・11福島原発事故以前に54基あった原発のうち、福島第一・第二を含め24基の廃炉が決まっており、残り30基のうち現在9基が再稼働しているものの、この中には運転期限の40年を間もなく迎える老朽化原発が多く、政府の基本計画をやりとげようとすれば、例外的に認められるとされていたはずの60年期限を原則化し、なおかつ原発の新設までしなければならない。しかし、運転期間を60年に延長する場合の安全対策費は膨大な金額となり、経済的合理性を欠くことが明らかになりつつある。加えて、世論は圧倒的に脱原発である中で、原発の新設などおよそあり得ない。
(2) さらに今、この国で原発を動かすことの限界が来ていることの表れと見るべき事態が生じている。それが、テロ対策の施設が未完成ならその時点で原発の運転を停止させるという方針を本年4月24日、原子力規制委員会が決めたことである。大飯・高浜・伊方・川内等、再稼働済みの原発を含む13基が、規制委員会が求めている期限内にテロ対策施設を設置する見通しが立って
いない。もはやこれを自前で設置するには電力会社側の経済的負担が余りにも大き過ぎる事態となっているのである。しかし電力会社の求めに応じてこの先延ばしを認めてしまっては、規制委員会の存在意義がなくなる。今や、電力会社の体力からみてもコストのかかり過ぎる原発はやめる潮時が来ていると見るべきである。
(3) 一方目を世界に向ければ、もはや原発に経済的合理性がないことは隠しようがない。100万キロワット級の原発の建設費用は、福島原発事故前は4000億円程度であったが、新規制基準に適合させるため、大間原発は6000億円程度を要するだろうと言われている。しかし、福島原発事故によって安全規制が厳しくなったのは、当事者である日本よりも欧米諸国であり、アメリカでもヨーロッパでも、建設費用は一基で一兆円を下らない。日本の原発輸出政策が総崩れになったのはそのためである。その上、福島原発事故の処理費は、経産省での試算でも20兆円、民間のシンクタンクの試算では70兆円に達するとされている。他方で、再生可能エネルギーのコストダウンが、驚異的なスピードで進んでいる。日本でも原発依存政策の中でそのスピードは遅れているが、諸外国での太陽光発電のコストは、1キロワット時当たり2~3円であり、2025年には1円までコストダウンするだろうと言われている。脱原発が世界の流れであることははっきりしている。
2.原発差し止め訴訟の現状
(1) 3・11福島原発事故は日本社会にこの上なく大きな衝撃を与え、安全神話に取りつかれていた司法に対しても反省を迫るものであった。3・11以降原発の運転差し止めを求めて多数の起訴や仮処分が提起され、既に相当数の司法判断が示されているところ、原告住民側の訴えを認めて運転差し止め(一部を含む)を命じた判決・決定が3つの裁判体により5例出された。大飯原発・平成26年5月21日福井地裁判決は、「(福島原発事故のような)事態を招く具体的な危険性が万が一にもあるのかが判断の対象にされるべきであり、福島原発事故の後においてこの判断を避けることは、裁判所に課せられた最も重要な責務を放棄するに等しい」と述べ、裁判官としての矜持を示してくれた。また、高浜原発・平成28年3月9日大津地裁仮処分決定は、現に稼動中の原発の運転差し止めをはじめて認定した決定であり、さらに、伊方原発平成29年12月13日仮処分抗告審決定は、期限付きとはいえ、稼働中の原発を初めて止めた決定であった。
(2) このように、3・11以降は原発をめぐる司法判断の潮目が変わったかのごとく思われたのも束の間、前述した判決や決定は上告審で悉く覆されていき、平成30年3月の函館地裁判決(大間原発)以降住民側の訴えを退ける判断が続いている。広島高裁判決の差し止め効力も消滅し、現在、司法が稼働を差し止めている原発は存在しなくなった。本件原告らは、今、裁判官は再び司法消極主義の殻に閉じこもろうとしているのではないかとの危惧を抱かざるを得ない。
しかし現在、全国各地の原発のうち女川と東通を除く各原発をめぐり、運転差止・廃炉を求める裁判が、北は札幌から南は鹿児島まで、19の地裁と7つの高裁で訴訟が28件、仮処分5件、合計34件が係属している。
ごく最近では今月20日、北陸電力の株主8人が、同社の代表取締役5人に対し、同社の原発再稼働に向けた行為は同社及び地域住民・将来世代等に対し回復不能な損害を生じさせる恐れがあり、取締役として注意義務違反に当たるとして、志賀原発1・2号機の運転差止めを求める訴訟を、富山地裁に提訴した。原発の経済性・必要性そのものが争点となる新たな原発訴訟である。
さらに今、女川では、争点を避難計画の不備という一点に絞っての提訴が準備中であると聞く。裁判所が司法消極主義の殻に閉じこもっていられる状況では決してない。
第2.原発の安全性と必要性はどう関係するか
1.3・11福島原発事故前、請求棄却判決の根拠の一つとなっていた原発の必要性
「女川原発は電力需要に対する供給電源としての必要な施設である」(女川原発一審判決)、「少なくとも現時点において、原子力発電所による一定の電力供給の確保という必要性は否定できない」(同二審判決)、「現時点での我が国における原子力発電所の必要性を否定することができないことは明らかである」(志賀原発二審判決)等々、福島原発事故前、差し止め請求を棄却した判決は異口同音に原発の必要性を述べていた。これらの判決を言い渡した裁判官たちが原発過酷事故の発生に危惧を抱かなかったとは思えない。しかし、差し止めるという判断ができなかった裁判官たちの免罪符が「原発の必要性」だったのである。
2.安全神話のみならず必要神話も今や崩壊した
3・11により原発の安全神話が崩壊したことはもはや多言を要しないが、今や原発必要神話も崩壊したことが明らかになりつつある。原発がなくても電力供給に支障がないことは、2013年から2015年までの2年間、原発が一基も動かなくてとも日本の電力供給に支障が生じなかったことで証明された。生命の危機があるとまで言われた昨夏、原発が動いていたのは関西電力と九州電力管内だけだったが、節電要請はどこからも出なかった。その上今では、原発が実は超コスト高であること、世界的に再生可能エネルギーのコストダウンが驚異的スピードで進行し、原発にしがみつくことに経済的合理性がないことが明らかになってきた。
つまり、かつて原発差し止めの判断ができなかった裁判官たちの免罪符だった原発の必要性が失われつつある。原発がなくても社会が困らないとなれば、裁判官は「危険だ」と思った原発の運転を躊躇なく止めることができるはずである。
第3.必要神話崩壊のもとで原発に求められるべき安全性のレベル
一般に、この社会が危険な科学技術を受け入れているのは、その科学技術に社会的必要性があるからであり、必要もないのに危険だけを受け入れる理由はない。裁判官たちが原発に求められる安全性は「絶対的安全性」ではなく「相対的安全性」に止まると判断したとき、その背景には、原発に社会的有用性あるとの認識があった。しかし原発は、電力供給のための必要も、コスト面での必要もないことが明らかになったのである。もし社会が、それでも原発の運転を許容するのであれば、過酷事故は絶対に起こさないという絶対的安全性を備えること、仮に論理的に「絶対的安全性」を求め得ないとすれば、絶対的安全性に限りなく近い安全性を求めることこそが、今日における“社会通念”と言うべきである。その意味で、最近の司法判断が、原子力規制委員会が策定した新規制基準が社会通念に一致するとの前提で盛んに「社会通念」論を持ち出すことは、明らかに誤っている。

11:25 裁判長;次に中電から説明を。
 被告中電・堤代理人:「本件原子力発電所の安全確保について」という書面の概要説明(被告の書面より抜粋)。
「はじめに」で、原告の主張は、具体的危険性というよりも、抽象的危険性をいうにとどまるものであるとし、中電がこれまで主張立証してきた原発の安全確保の概要、最も重要な地震・津波の安全性について説明するとしている。
「1.本件原子力発電所の安全確保」では、中電準備書面(1)(3)(5)(13)(14)(16)を基に、放射性物質の封じ込め、放射性物質の危険性を顕在化させない対策を講じている。立地場所の調査、設計での配慮、環境中に放出される放射性物質の管理・監視、事故防止対策として重層的な対策、維持管理、中央防災会議の知見等を踏まえた評価・検討を不断に行っている。
「2.地震に対する安全性」では、中電準備書面(1)(2)(3)(5)(13)を基に、南海トラフ沿いの地震についての調査をもとに設計・建設を行った。その後も必要に応じて、耐震上の余裕を向上させる工事を行った。新規制基準に沿って地震動評価を行い、基準地震動を策定し、それに対する重要施設の安全機能が損なわれることがないことを確認している。
「3.津波に対する安全性」では、中電準備書面(1)(2)(3)(5)(7)(14)を基に、南海トラフ沿いの地震に伴う津波についての調査をもとに検討を行い、その都度安全確保に支障のないことを確認した。基準津波については防波壁前面の最大上昇水位を21.1mと評価した。津波浸水防止のため、敷地海側1.6kmにわたり天端高さ22mの防波壁を設置し、安全機能が損なわれないことを確認した。仮に基準津波を超えて越流する津波にも浸水防止対策を講じている。電源等の対策も強化している。
11:40 裁判長;次に中電から工事の現状の説明を。
被告中電・代理人:安全対策向上工事の2月以降について。県と御前崎市の点検を受け、被告中電のウエブサイトで公表している(以下の一部は、ウエブサイトからの引用)。3.4号機の共用施設の建屋などの貫通部から外への水漏れ防止のための溢水対策工事を行った。4号機緊急時海水取水設備(EWS)の電源供給のための通電の状況、フィルタベント設備の工事も県と御前崎市の点検を受けて公表している。5号機は特になし。
 原子力規制委員会の新規制基準適合審査の状況は、2月以降、地盤、地震、津波について、地質構造で1回、プレート間地震の津波について2回、会合が持たれた。プラント関係で、沸騰水の重大事故について2回審査が行われ、これらについてコメントが出され、審査が続いている。プラント関係はおおむね了解されている。
11:44 裁判長;被告・国からは。
被告国・代理人:特になし。
 裁判長;本日は以上。次回の双方の準備書面の予定は。
原告阿部代理人;避難計画について、それ以外についても、書面を用意したい。
被告・中電;主張を準備する。
裁判長;次回期日は、11月20日(水)11:00~ 第一号法廷で。書面は一週間前に提出を。
                            11:50終了

12:00 地域情報センターで報告集会
司会・落合;今日は、裁判長の交代による更新弁論を行った。弁護士のみなさんから発言をお願いします。
阿部弁護士;弁論更新は、法廷で述べた通りですが、福島原発事故を忘れてはならないということ、福島原発事故を踏まえることを冒頭に言った。特に原発事故被害者から国や東電に対する損害賠償請求裁判が全国各地で起こっている。判決が続々と出ている。その状況について簡単に報告をした。全国で約30件、1万2000人以上の被害者が裁判を起こしている。2017年3月の前橋地裁判決以降、千葉地裁、福島地裁、東京地裁、京都地裁等と、続々と判決が出ている。いずれも国ないし東京電力に対して、津波被害の予見は可能であることが前提になっている。この秋には、東電の首脳部に対する刑事件の判決も多分あるだろう。
地震の問題について。南海トラフの震源域の真上に浜岡原発はある。地震でどこが争点なのかを簡単に言うと、基準地震動をもとに耐震設計をするが、全国どこでも基準地震動を甘く見ていた。  そのためこれまで各地の原発で何度も基準地震動を超える地震動に見舞われている。基準地震動の策定そのものがおかしいということを言っておいた。難しい数式を使った、入倉孝次郎教授は、新聞記者に語ったことでは、「基準地震動は計算で出た一番大きな揺れの値のように思われることがあるが、そうではない。」「私は科学的な式を使って計算方法を提案してきたが、平均からずれた地震はいくらでもあり、観測そのものが間違っていることもある。基準地震動はできるだけ余裕を持って決めた方が安心だが、それは経営判断だ」と答えている。経営判断に任せれば、基準地震動を高く取って、時間やカネがかかることはやらない。つまり、基準地震動を超える地震が起こることはありうるということである。
  耐震基準では、建物が壊れることを考えるが、壊れる中に二つ意味があって、完全に壊れる場合と、壊れはしなくて、機能自体は壊れない、放射能が漏れない場合とがある。原発は塑性変形、1回揺れて、元に戻らなくても、ゆがんだままでも放射能を外に漏らさない状態の設計をすればいいということになっている。それは、1回の地震だけについて言っている。1回目の地震では壊れなくても、次の地震で壊れるかもしれない、しかし、そういう繰り返しは想定していない。同じ規模の地震が起こることは、熊本地震で証明されている。そのことに触れた。
活断層の問題について。浜岡原発の敷地内にはH断層がある。12~13万年前以降の活動があったかどうかは、直接確認できない。そこで、中電は、原発の敷地外の断層を調査し、敷地内のH断層が12~13万年前以降動いていないことを証明しようとしている。その点で中電も苦労しているように見える。中部電力の主張、立証は不十分である。この点については、補充する予定である。
 津波については、平野弁護士から。避難計画については、一番分かりやすいことで、説明することもないと思う。新規制基準に含まれていない。事業者がやることでなくて、行政がやることだから関係がないという考え方で、規制委員会では、検討をしない。だから規制委員会で再稼働OKという判断が出たとしても、それは、避難計画が十分だという判断ではない。しかし原発事故が起きた場合、住民が放射線被害を受ける可能性がある。裁判としては避難計画のことも主張する。車やバスで避難することが想定されているが、道路や橋が壊れていることも想定されるし、東名が壊れることが起きれば、車が渋滞する。90万人の人が速やかに放射能のないところに避難することは不可能だ。だからこういうところに原発を作ること自体が間違いだと。
平野弁護士;津波に関しては、最近の新聞に出ていますが、中電が試算をした結果、22.5m(それまでの想定は21.1m)になったところを中心に述べた。東日本大震災までは海抜18mとして設計されたものが、南海トラフの巨大地震モデル検討会の報告を受け、4mのかさ上げがなされた。昨年12月、原子力規制委員会がさまざまな可能性の検討が必要として、再試算を被告に要請したことを受けてのものである。その他、越流により原発敷地が水没してしまい、いかに浸水対策をしたところで建屋等への海水流入を防ぐことなど不可能であること等を主張した。
大橋弁護士;使用済み核燃料の問題について、処理の方法もないということを述べた。ここのところが大変重要だと思う。原発を巡っては、以前からいろんな議論がある。使用済核燃料を含めて、核の平和利用ができるのではないか、その最たるものが原発ではないかと言われていた。いまは核を制御することはできないが、何十年も経てば、人類の能力からして必ず制御できると考えられてきたが、残念ながらそういうことにはなっていない。将来も人類の知識ではできない。そして東日本大震災に至り、そこで核の平和利用はなくなった。浜岡原発ではあと4~5年で使用済核燃料プールはいっぱいになる。高速増殖炉「もんじゅ」も破綻しているし、六ヶ所村の再処理工場も破綻している。イギリスでもフランスでも、使用済み核燃料を受けてくれるところはない。しかしなかなかそのようにとらえないが、我々の将来にどういう意味を持っているのか、責任ある態度なのかについて、今日述べた。
栗田弁護士;準備書面(28)の要約を説明した。原発をめぐる国内外の動向と差し止め訴訟の現状、そしてこれまで触れなかった点について話をした。まず国内の動きについて。安倍政権は、原発を「重要なベースロード電源」とし、原発を20~22%とするなど、あくまで原発に固執している。こんなことでは、例外的に認められるとされていたはずの60年期限を原則化し、なおかつ原発の新設までしなければならない。しかし、安全対策費は膨大な金額となり、経済的合理性を欠くことが明らかになりつつある。しかも、今年4月24日、原子力規制委員会がテロ対策の方針を決めた。テロ対策の工事が完成していなければ、その時点で原発は停止。しかし原発の13基が、規制委員会が求めている期限内にテロ対策施設を設置する見通しが立っていない。新設などあり得ない。一方目を世界に向ければ、福島原発事故によって安全規制が厳しくなって、建設費用は一基で一兆円を下らない。他方で、再生可能エネルギーのコストダウンが、驚異的なスピードで進んでいる。日本でも原発だ、原発だと言っているが、諸外国での太陽光発電のコストは、1キロワット時当たり2~3円であり、2025年には1円までコストダウンするだろうと言われている。脱原発が世界の流れであることははっきりしている。
原発差し止め訴訟の現状はというと、福島原発事故後、原発の運転差し止め訴訟で、住民側の訴えを認めて運転差し止めを命じた判決・決定が5例出された。流れが変わったかなと思われたが、上告審で悉く覆されていき、現在、司法が稼働を差し止めている原発は存在しなくなった。これをどう考えるかと言うことだが、そもそも、3・11前、国民が原発止めろといっても、いやいやこれは必要だからと言って、差し止めずにきた。しかし、3・11により原発の安全神話が崩壊したこと
は言うまでもないことですが、2013年から2015年までの2年間、原発が一基も動かなくてとも日本の電力供給に支障が生じなかったことで証明された。しかも海外では再生可能エネルギーが安価で利用できるようになった。原発にしがみつく必要性が全くなくなった。必要がないものを残しておくことはないということを、話をさせてもらった。例えば、車では交通事故で亡くなる方がいる。それでも車が社会にあるのは必要があるからだ。原発は必要かと言えば、必要でないことは明らかだ。しかもものすごく危険だと。甚大な被害を与える原発を、必要もないのに受け入れなければいけないのか。裁判官が今まで原発に求められる安全性は「絶対的安全性」ではなく「相対的安全性」に止まると判断したとき、その背景には、原発に社会的有用性あるとの認識があった。しかし原発は、電力供給のための必要も、コスト面での必要もないことが明らかになったのであれば、原発が過酷事故は絶対に起こさないという絶対的安全性を備えることだ。もし論理的にそれが難しいというのであれば、絶対的安全性に限りなく近い安全性を求めることこそが、今日における“社会通念”と言うべきではないかという話をした。
   
12:22 司会・落合;ありがとうございました。皆さんの方から質問・意見等あれば、発言お願いします。
片山;被告・中電からは発言があるが、被告・国からの発言がない。原告は国に対して何を求めているのか。国が何も反論しないなら、中電とのことより先に、国との関係では、原告が勝つのではないか。
塩沢弁護士;全国で30いくつかの訴訟がある中で、行政訴訟、建設途中の原発で国が設置の許可を出したとか、本来40年の原発を例外的に60年に延長すること、この許可を取り消せという訴訟は、当然、国を被告としての裁判となる。同時に、電力会社と国を被告にして、民事訴訟で原発の差し止めの裁判、さらには住民が苦しんでいる、その慰謝料を払えという国家賠償法にもとづく裁判、そういう裁判は、川内、玄海、浜岡と3つだ。私が第5次訴訟から加わったのは、国を被告にして裁判をやりたいという願望があったからだ。何かといえば、皆さんもお分かりかとも思うが、栗田弁護士が指摘したように、原発は経済的合理性がなくなりつつある。経済的損失については中電は分かっている。世界的には原子力産業は終焉。ほっておいてもなくなる、2050年には斜陽産業だとも言われる。それでもなぜしがみつくのか。国策だからだ。国が、日米軍事同盟ともかかわる核抑止力との結びつく、経済問題ではなく、国策になっているから。だから本当に原発を止めようとすれば、国に対してこんな政策を止めよと、堂々と法廷で主張したいからやったのだ。ただその後、国を被告にすると印紙代が倍になるので、途中から国を被告にするのはなくなった。重点ではなくなっているが、私は、これから国に対して、これほど経済的合理性のなくなった原発にどういう意味があるのか、なおかつ、原発は「悪」でしょう、未来に悪を残す。夢を与えてくれるものではない、原発を止めさせるためには国に対して徹底的に追及する必要がある。
長々と話をしているが、最近の6月28日の「朝日」の寄稿に、非常に鋭いことを指摘する作家の高村薫さんが言っていることも同じ。「巨大地震が明日起こってもおかしくないこの地震国の日本で、原発を稼働させている人間の営みは、理性では説明がつかない。仮に破局的な事故を免れても、そう遠くない将来、使用済み核燃料の処理もできない、廃炉の技術も、費用も十分に確保できないことは火を見るよりも明らかだ。次々に耐用年数を終えた原発が次々と放置される。AIがどれだけ発達しても、AIはこれを片づけてはくれない。これを片づける意思を持つのは人間だけだ。人間にその意思はあるのか」と。人間といっているけど、これは政府に対して呼びかけているもの。本来、国を被告にしたことに大きな意味があるが、それがなくなりつつある中で、もう一度その重要性を確認するために、私なりに答えた。
大橋弁護士;国が言わないからといって、勝てるわけではない。今、情勢が悪くなっているので、ここはじっくりやって、変化を待とう。みなさんから先行きが分からないという声も聞こえてきますが、長期戦を覚悟していこうと。
塩沢弁護士;国を被告にしているのは運動上のことだ。裁判で国に勝つことは、中電に勝つことよりもはるかに難しい。そのことは分かった上で、我々は気構えとしてやっている。
12:30 林 弘文さん;一つ気になったことは、A17断層のこと。第717回の規制委員会で、実質的に活断層と見ている。M7.2の予想をしていて、規制委員会で議論されている。6月23日の新聞を読んだ時に、津波の参考値の話が出て来る。議事録には出てこない。22.5mの参考値のことや、越流を起して破壊されたものと見なすとか、防波堤はないものとみなしなさいとかが書いてある。これは深刻な問題だ。H断層については、中電ではかなり詳しい資料が出ていて、正断層で、どれだけずれているかも出ている。しかしA17断層の方が深刻だと思っている。
12:33 司会・落合;ありがとうございました。ではどんなことでも結構です。どなたか? 遠くから見えている方、どうですか。
 板垣さん(東部・沼津);私も東部の方でやらせてもらっている。もっと原告を増やすようにと皆さんから言われている。2年前、大橋弁護士の話を聞いて、分かりやすい話で良かった。改めて今日参加したのは、更新弁論があるので、これまでのことをキチンと知ることができると思い参加した。ポイントを知ることができて良かった。ありがとうございました。
12:35 司会・落合;続いて、清水さん、地元の動きはどうでしょうか。
清水さん;原発とは関係がないのですが、環境をめぐる面では同じであるが、いま御前崎市は、産業廃棄物処分場のことが住民の中で大きな問題になっている。県知事に対してこの問題を取り上げてもらおうと、1回目として7,700人の署名を提出した。その後、これは住民投票でやれと、そのための1万5千筆の署名が集まって、最終的には1万2千筆になったが、住民の声を重く受け止めるとして議会に提出され、6月議会ではできなくて、3か月以内には住民投票が実施されるよう、7~9月の議会の審査が進められている。1回目の集まりが7月8日にある。請求人を呼んで、意見を聞きながら、住民投票をやる方向ですすめたい。原発を含めて、環境を邪魔するものに反対する運動を続けていきたい。
12:38 司会・落合;その他、発言はありますか。
塩沢弁護士;ここにいる弁護士は自由法曹団という団体に属している。2日前の土曜日に、御殿場で、自由法曹団として、モリカケ問題で辞任した元文科省の、良心のある、官僚としての矜持を持った前川さんの話を聞いた。その中で、安倍内閣が教育、メディアにどのような影響を与えているかを生々しく聞いた。最高裁人事を通じて、いろんな司法の分野で、司法ですら安倍内閣の力が及んでいる。前川さんが担当して進めていた高校授業料無償化の件では、朝鮮学校への無償化の裁判でも、とんでもない理屈で国を勝たせている。これだけ脱原発の国民の原発なくせの世論が大きくなり、世界的な流れでエネルギー問題が大きく変わろうとしている時に、それに対して、ブレーキをかけているのは、司法ではないかと、前川さんが言った。なるほどと思った。あれほど司法判断が下されたのに、上級審でことごとく覆されたのか。これは偶然ではない。何か意思が働いていると思わざるを得ない。だから私たちは単純に法律論で勝てるとは思ってはならない。私たちは、そういうつもりではやっていない。裁判闘争は大きなとりくみの中の一つの結節点だと思う。それだけに、私たちは、1回、1回の法廷も重視してほしいと思う。私たち弁護士も頑張るが、大きな運動の中で原発を止めることを再確認してください。次回もそういう思いで来ていただきたい。私たち弁護団もそういう思いで、1回、1回の法廷を準備したいと思っている。
12:41 司会・落合;ありがとうございました。次回期日は、11月20日(水)11:00~ 第一号法廷。少し参加者も少なくなっているかなと思いますが、運動面でも力を入れていきたいと思います。よろしくお願いします。
                 12:45終了                (文責・長坂)

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